なので、いつものように明るく楽しい鎮守府の話が読みたい方が見ることはオススメしません。
それでも大丈夫な方はどうぞ見ていってください。では、始まります…」
〜司令室〜
加賀「失礼します。提督、今日は…」
アリス「あっ、加賀さん、お疲れ様です」
加賀「アリスさん? どうしてここに…?」
アリス「提督さんに一日だけ提督の仕事を引き受けてもらえないかって頼まれてね…」
加賀「そうなんですか…。それで、提督はどちらに?」
アリス「友人に会いに行くって…それ以外は何も…」
加賀「友人? …あっ…そうか、今日は…」
そう言って加賀は近くに飾られていた写真を手にとった。
提督「ふぅ、やっと着いた…」
提督は鎮守府近くの駅から電車を乗り継ぎ、とある場所に来ていた。
提督「…久しぶりね。最近忙しくて来られなかったの。ごめんなさい…。…そのお詫びと言っては何だけどこれを買ってきたわ」
提督はここに来る途中に買っておいたお菓子を取り出した。
提督「喜んでくれるかしら…? …とは言っても、貴女には伝わらないわよね…」
そよ風が提督の体に当たり、長い髪が後ろになびく。天気はよく、海も穏やかだった。
提督「…こんな日だったわね…。…貴女が沈んだのは…。ねえ?」
―長門…
これは、楽しくも悲しい提督の過去の話。
〜三年前〜
長門「長門型戦艦一番艦、長門だ」
提督「…戦…艦…? やった! ついに私の鎮守府に戦艦が…!」
電「これで戦闘が楽になるのです!」
響「ハラショー」
青葉「おお! これはビックニュースですよ!」
提督「今日からよろしくね。長門」
長門「ああ、よろしく頼む」
その日から私は長門を秘書艦に任命した。長門は飲み込みが早く、提督としての仕事は大分楽になった。
長門「…提督、ここ間違っているぞ」
提督「え!? 嘘!?」
長門「この部分だ。本来はこうだろう?」
提督「…本当だ。う〜…これ時間かかったのに…」
長門「書き直しだな。そう拗ねるな、私も手伝おう」
提督「ありがと、長門」
戦闘においても、長門の右に出る者はいなかった。
提督「今回も長門がMVPね! おめでとう!」
長門「連合艦隊旗艦を努めた栄光に比べれば微々たるものだが、貰っておこう…か」
提督「…あんまり嬉しそうじゃないわね」ムス-
長門「何を言う。提督から渡されたものを嬉しく思わないわけ無いだろう?」
提督「(…真面目な顔でそんな事言うなんて…ずるい…///)」
長門「? 顔が赤いぞ? 熱でもあるのか?」
提督「!? な、なんでもないわよ!」
私は長門の事が大好きだった。いつも頼りになり、優しく、ちょっぴり鈍感な彼女が本当に好きだった。
そんなある日、本部から緊急の連絡が入った。
長門「戦艦…レ級…?」
提督「ええ、最近発見された新型の深海棲艦よ。今までのル級やタ級とは全く違うと書いてあるわ」
加賀「どのように違うのでしょうか?」
提督「はっきり言って化け物って言葉がよく当てはまるわ…レ級一隻で雷撃戦、航空戦、砲撃戦…全て可能らしい」
天龍「はあ!? 無茶苦茶じゃねえか!」
提督「…はっきり言って、この戦いは避けたい…最善の戦いをしても、必ず誰かに被害が出るもの…」
長門「大丈夫だ、提督。私達を誰だと思っている?」
金剛「絶対レ級を倒してきマース!」
榛名「榛名は大丈夫です!」
天龍「ふっ…腕がなるぜ…」
赤城「一航戦の誇りにかけて、必ずこの任務を遂行してみせます」
加賀「誰も沈ませはしません」
響「不死鳥の名は伊達じゃないよ」
雷「もっと私を頼っていいのよ? 司令官!」
電「電の本気を見るのです!」
提督「…そう…よね! みんなを信じるわ!」
私は宣言した。
提督「今回の任務は戦艦レ級、及びその海域にいる深海棲艦の討伐。作戦は…」
こうして、私は当時の全勢力をもってレ級との戦いに挑んだ。
榛名(中破)「…やだ…こんな…」
金剛(小破)「くっ、流石にヤリマスね…。デスが!」
長門「これで終わりだ! 全主砲、斉射! てーッ!」
レ級(中破)「……!」
長門の放った主砲は見事にレ級を打ち抜き、レ級の体が仰向けに倒れる。
天龍(中破)「いよっしゃ! ついにレ級を仕留めた!」
響(小破)「…やっとか」
金剛(小破)「お疲れ様デース!」
レ級を倒したとその場にいた全員が思った。
しかし、長門の目に映ったレ級の目は…まだ死んでいなかった。
レ級(大破)「………グ……ガアアァァ!」
沈みゆく体でレ級は主砲を構えた。自分のプライドにかけて、せめて一隻道連れにしようとしたのだ。
赤城(中破)「! 加賀! 危ない!」
加賀(大破)「…え…!?」
ドォンという爆音が響き、加賀がいたところに大きな水柱が上がる。
主砲を放ったレ級は力尽き、沈んでいった。
赤城(中破)「加賀!」
赤城は急いで加賀の方へ駆け寄る。しかし、そこにいたの加賀だけではなかった。
赤城(中破)「…え!?」
加賀(大破)「…どうして…」
加賀の前に長門が立ちふさがっていた。長門の腹部からは大量の血が流れ出ていた。
長門(大破)「…自然と体が動いていた…仲間を助けなければ…と」
木曾(小破)「!? おい! 何だあれ!?」
木曽が指差す方向を見ると、水平線近くに黒い点のようなものがずらりと並んでいた。
長門(大破)「…騒ぎを聞きつけたな…」
長門は全員に向けて言った。
長門(大破)「…全員退却。殿は…私が努めよう」
赤城(中破)「!? そんなの無茶です!」
天龍(中破)「…お前…死ぬ気か!?」
長門(大破)「…この有様だ…。誰かがやらねばならん…」
木曾(小破)「っ! それなら長門! お前は先に行け! 殿なら俺達が…!」
長門(大破)「あれだけの数だ…帰ってこれるとは限らない…それに、私は…もう…」
長門が声を荒らげる。
長門(大破)「いいから行け! このまま全員死にたいのか!?」
天龍(中破)「…っ…! すまねぇ…長門…!」
赤城(中破)「ごめんなさい…長門さん…!」
電(大破)「…嫌なのです…! 長門さん! 死んじゃ嫌なのです!」
雷(中破)「だめよ…そんなの絶対…」
響(小破)「二人とも行くよ…長門さんの思いを無駄にしないためにも!」
加賀(大破)「…っ!」
長門を残し全員が退却した。それを見送り、長門は敵を確認した。
長門(大破)「…ざっと二十…戦艦や空母がいないのがせめてもの救い…か」
長門はふーっと息を吐き、呼吸を整える。
長門(大破)「大破したとはいえ…ビックセブンの名は伊達ではない! 戦艦長門、出撃する!」
数時間後…
長門(大破)「はぁ…はぁ…。…これで…全部…か」
長門の周りには既に事切れた深海棲艦が転がっていた。
長門(大破)「…さて…、鎮守府に…戻ら…!」
その時、長門は大量に喀血し仰向けに倒れた。
長門の体は先程の深海棲艦達との戦いの時に限界を超えていたのだ。
長門(大破)「ぐっ…げほっ…、はぁ…はぁ…」
口からは絶えず血が流れ、意識が遠のいていく感覚に襲われる。
しかし、長門は満足していた。レ級との戦いを制し、この海域の深海棲艦をあらかた倒したのだ。
ただ一つだけ長門には心残りがあった。
長門(大破)「…提督」
昔、提督と交わした約束…
長門「…提督、もし私が沈んだら…どうする…?」
提督「!? いきなりどうしたの?」
長門「少し気になっただけだ…それで、どうする?」
提督「…考えたこともなかったわ。そんな事…」
長門「…後追いする…か?」
提督「…かも…ね」
長門「………0点だな」
提督「な!?」
長門「提督ともあろう人が艦娘一人失ったくらいで死んでどうする? 本当に後追いなんてしたらあの世では一言も口をきいてやらんからな」
提督「…わかったわよ…後追いはしないわ。…その代わり、約束してちょうだい…終戦を迎えるまで、私のそばにいる…と」
長門「…ふっ…それは無理だな」
提督「!? どうして!?」
長門「終戦を迎えるまで…では不十分だ。終戦後もずっと一緒にいる事を約束しよう」
提督「…バカ長門…///」
長門(大破)「……すまない…提督……約…束……守れ…」
ザザァ…
〜鎮守府〜
提督「…」
赤城(中破)「…ごめんなさい…提督…。…長門さんは…」
提督「…お疲れ様、みんな。大破している者からすぐにドックへ。申し訳ないけど、中破、小破している人は少し待ってて」
加賀(大破)「…提督…」
提督「そんな顔しないで、加賀。あなたのせいじゃない。私が長門だったら間違いなく同じ行動をしていたもの。…でも…」
提督の肩が少し震える。
提督「ちょっと…きつい…かな」
赤城(中破)「提督…」
提督「…ごめん…少し…一人にして…」
赤城(中破)「…わかりました」
ぞろぞろと艦娘達が出ていき、最後に赤城が提督に一礼して司令室から出た。
その瞬間、提督の目に膜が張られ、涙が頬を伝った。
提督「…っ!」
長門が…沈んだ…。ありえないと思った。いつも自分のそばにいたあの人が…もう…いない…。
提督「…長門…っ!」
名前を口にするとさらに涙が溢れた。
今までの思い出が脳内をかけめぐる。嬉しかったこと、悲しかったこと、苦しかったこと、楽しかったこと…その全てに長門がいた。
しかし、もう彼女は…いない。
提督「う…あ…ぁぁぁ…」
なぜあの時、無理にでも止めなかったのか。
止めていれば、長門はまだ生きていたかもしれない…なのに…。
提督「ぁぁぁ…長門……長門ぉ…!」
提督の目から涙は止まることはなかった…。
〜現在〜
提督「…結局、貴女は約束を守ってくれなかった…」
提督は目の前の慰霊碑に向かって話しかける。そこに長門がいない事はわかっているが、どうしても話さずにはいられなかった。
提督「…バカ長門…」
提督の目に薄い膜が張られたが、提督は泣くのを必死で堪えた。…泣いたら負けだ…と思った。
提督「ねえ、長門…? 私、うまくやれているかしら?」
―貴女のような、立派な人に…。
提督「…また、来るわね」
もう少しいたい気もしたが、流石にこれ以上アリスに仕事は押し付けられない。
私は踵を返し、鎮守府へ向かった。
まずはお詫びを…
全国の長門ファンの皆様、本当に申し訳ありませんでした!
長門は結構好きなキャラなんですが、こういう話を書こうと思った時に真っ先に当てはまったのが彼女だったんです…
今回はシリアスでしたが、また茶番九割の楽しい番外編も書いていく予定です。