やはり一色いろはの青春ラブコメは終わらない。   作:札樹 寛人
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やはり比企谷八幡の目はにごっている

 まさか、こんな風になるなんて学生の頃に想像したことも有りませんでした。

 THE コミュ障を自称していた先輩と、こんないかにもな面子で飲む事になるなんて……

 先輩も随分と社会人として社交性出てきたんですねー

 

「…………グイ……」

 

 ……さっきからあの人、一言だけ自己紹介してからずっとチビチビビール飲んでるだけなんですけど……

 全然社交性UPしてないじゃないですか……そんなにすぐに前言撤回させないでくださいよ。

 ここは、この宴会コンサルタントと呼ばれるわたしが、ちょっと盛り上げて……

 

 うーん……でも、先輩は絶対にそういうの鬱陶しがるんですよねー。 本当に面倒くさい人ですね、この人。

 わたしがそんな事を考えていると、友人が先輩に話かけていきました。

 これはちょっと見物です。 7年の歳月で先輩がどんな風に進化したのか、見せて貰いましょう!

 

「比企谷さんはお仕事なにされてるんですか?」

「ん……こいつ等と一緒だよ。 まぁ、有体に言って中間搾取業だ」

「大手商社さんですもんね!すごいですよね。お仕事忙しいんじゃないですか?」

 

「あ、ああ……」

 

 もう既に軽く詰まりかけてるじゃないですかっ!

 良くそれで商社マンになれましたね!?

 

「比企谷はこう見えて成績良いんだぜ」

「そーそー、ヒキタニ君、マジでパネェんだよな。 何か誰も知らん間に契約纏めてるの」

「うっせー 『こう見えて』とか『誰も知らん間』とか余計だ」

 

 先輩は、仕事に関しては誠実ですもんねぇ。 生徒会を手伝って貰っていた時の事が昨日の事のように思い出せます。

 仕事と言うフィールドにおいては、有能さは昔のままのようです。 仕事頑張っている男の人は、ポイント高いですよ。

 ちょっと見てみたい気がします。しませんか? 『サラリーマン八幡』 倍返しとかなんか陰湿にやりそうじゃないですか。

 

「何か言いたい事あるのか、一色」

「えー、なんでですかぁー?」

 

 おっと、急に矛先がこっちに向きました。

 ちょっと先輩の事観察しすぎだったでしょうか?

 

「ニヤニヤしながら、こっち見てるのが怖い。 まるで爆弾投下のタイミング伺われているみたいだ」

「えー、自意識過剰ですよぉ。せんぱぁい 」

 

「ご存知の通り、自意識高い系だからな」

「自意識じゃなくて、意識高くなれよ……比企谷」

 

 おー、普通に先輩にツッコミが入り、私の友人達も笑って和やかなムードが形成されています。

 やっぱり、先輩も大人になったんですねぇ。 嫌がりながらも、こういう空間に普通に合わせてると言うか……

 昔だったら、そもそも幾らわたしが引き留めても確実に帰ってましたよね。

 

 こんな機会、またと有るか分らないですし、今日は昨日の失敗は忘れて、わたしも飲みます。

 

 * * *

 

 時間は午後9時を少し回っています。

 流石に大手商社さん、当然のように何時の間にかお会計は終わってました。

 場の雰囲気としては、次に行くような感じです。

 

「この後どうする? 近くに良いお店あるんだけど、そことカラオケどっちが良いかな?」

 

 トベさん(仮称)がなかなかに手馴れた感じで提案してきました。

 帰ると言う選択肢をナチュラルに消している辺りがやりますね。

 ちなみにわたしの友人達も満更では無い様子。

 

 完全に空気は二次会に偏っている中で、相変わらず空気を読まない人が一人。

 

「じゃあ、あとは若い皆さんd「せーんぱい!!」

 

 

 周り右をしそうな先輩に無理矢理可愛く言葉を被せる。

 久しぶりだと言うのに、この人の言いそうな事は6年前と全然変わって無い。

 

「もーう、おっさんみたいな事言わないで下さいよ! 夜はまだまだ長いですよ!」

「もう俺も25だ。 立派なおっさんだよ」

「その理屈だとわたし達もみんなおっさんおばさんになっちゃうんですけど……」

 

 わたしと先輩がそんなやり取りをしていると、友人が私に耳打ちをしてきた。

 

「いっろはー……邪魔しちゃ悪いし、ここで分れよっか?」

「は?」

 

 な、なにをニヤニヤしてるんですかっ!?

 べ、別にわたし、先輩と二人で飲みに行きたいなんて言ってないじゃないですか!

 なんで言わなくても分ってるよみたいな顔してるんですか? すっごい腹立つんですけど!

 

「よし、プランBで行こう」

「そんなん聞いてないけど……どこにあったの、そのプラン」

「私達は、2対2で楽しくカラオケでも行くから、いろはすは、しっぽり夜の街に消えなさいな」

「あ、あのねー……わたしと先輩はそんなんじゃないんだってば」

 

「朝電話した時はテンション低すぎて引くくらいだったのに、比企谷さん来てから超ハイテンションじゃん? 視線ずっと比企谷さんだったじゃん?」

「は、はぁ!? そ、そんな事ないってー……いや、あったかもしれないけど、それは久しぶりに有った知り合いだったからで……」

 

 お、おかしいです。 合コンの支配者と呼ばれた事もあるわたしが何で、こんな弄られてるんですか。

 いや、弄られるにしても計算の範囲内で弄られるなら良いんです。 こんなん計算の範囲に入れてませんよ、わたし。

 

「で、どうすんのいろはープランAかプランBか早く決めないと比企谷さん、マジ、一人で帰るよ、あの人」

「ぷ、プランAとBの詳細を知らないんだけど……私……」

「Aは3対3で楽しくカラオケ、Bはいろはと比企谷さんは夜の街」

「……Aでお願いします」

「まっ、今日のところはそうしときますか」

 

 ……なんなんでしょうね。

 24歳にもなって、恋愛奥手の男子高校生みたいな感じじゃないですか、わたし。

 

「というわけでカラオケいきましょー!」

「おー!そうすっか」

「近くにバンドが生演奏してくれるところあったよな、そこにしようか」

「いや、何なのその意識高いカラオケ。 意識高すぎて若干浮遊してんぞ。 カラオケ初心者が足踏み込んで良いところじゃないだろ、それ」

 

 

 ちなみにこういう場では私は普通に歌いますよ。

 流石に昨日の接待カラオケみたいに『みんなのアイドルいろはちゃんだよー!』って宴会芸の披露はしません。

 オッサン受けだけです、アレ。引かれます。 何となく先輩には受けそうな気がしますけど……

 

 * * *

 

「おい、一色起きろ」

「うー……もう飲めません……」

「ラーメン伸びちまうぞ」

「あ、あれ……先輩……? 何してるんですか? ここどこですか?」

「ラーメン屋だろ。 お前が引っ張って来たんだろうが」

 

 全く記憶に無いんですが……二日連続でハメを外しすぎました。

 

「わたし……大丈夫でしたか? 余り記憶が無いです……途中から」

「お前の普段を知らんから何とも言えないが……まぁ、リア充大学生の二次会みたいなノリだったな

 

「…………そうですか」

 

 ……そこまでのやらかしは多分無かったと思います。断片的な記憶ですけども……

 そう言えばほかのみんなはどうしたんでしょうか?

 ラーメン屋にいるのはわたしと先輩の二人だけです。

 

「みんなは?」

「終電で帰った」

「何で先輩は帰らなかったんですか?」

「お前がどうしてもラーメン付き合えと脅したんだろうが」

 

 ……これ、絶対にみんなにあとで言われますね。

 別にプランBを決行に移したわけじゃないんです。

 完全に無意識です。 と言うか何をしてるんですか、理性の向こう側のわたし……

 

 でも、こうしてわたしの我儘に付き合ってくれる先輩は、本当に相変わらずだ。

 

「変わらないですね……先輩は」

「お前もあんま変わってないと思うけどな。 相変わらずあざとい。酔い方とか」

「あははは……そーでもないですけどねー」

 

 そう、わたしも先輩も実際は昔とは違う。

 それぞれに7年間と言う時間が有り、社会人になり、あの頃と同じようでも全然違う。

 それは、今日の短い時間の共有だけでもお互いにわかっている事だ。

 

「わたし、ラーメン好きなんですよ」

「……何か昔は凄い嫌そうな顔された覚えがあるんだが」

「あれからですよ。 ラーメン屋なんて行くようになったの」

「あんまりやると女子力が平塚先生並になるぞ。オシャレなカフェで中和しとけ」

「じゃ、今度連れて行ってください」

「へ?」

「昔は先輩がラーメン屋を選んで、わたしがカフェを選んだじゃないですか。

 今度は逆です。 先輩も大人になったんだから、それくらいのエスコートしてくれますよね?」

「ふぅ……グーグル先生に聞いておくわ……それにしても良く覚えてるなお前……」

 

 忘れるわけ無いじゃないですか

 

 その言葉は、敢えて口には出しませんでした。

 

「………ところで先輩」

「ん?」

「き、気持ち悪いです……」

「はっ? ちょっと待て、大丈夫か!? おい!!」

 

 この先の事は割愛します。 乙女には記述すべきで無い事もあるのです。

 

 つづく




感想・お気に入りありがとうございます。
基本的には1週間毎のつもりですが、今回は早く上がったので早めに投稿です。


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