やはり一色いろはの青春ラブコメは終わらない。 作:札樹 寛人
サーザエーさん♪ サザエさん♪
サザエさーんは愉快だなー♪
いろはさーんは憂鬱だなー♪
……サザエさん症候群と言う言葉があるらしいですが、学生時代のわたしは、余り月曜日を苦痛に感じたりはしませんでした。
いえ、多少は有りましたよ? 特に知らない内に勝手に生徒会長に推薦されているとかの弄り受けた時とか……
まぁ、それでもちょっと面倒だなーって思うくらいだった気がします。
わたしも外面をかなり作りこむ方なので、それが面倒臭くなる事は有りましたけど
ちやほやしてくれる男子も多かったですし、それが辛いと感じる事は余り無かったんですよねー
女子からの嫉妬や妬みはむしろ勲章くらいに思ってましたからね、当時のわたし。
あー、でもクリスマスイベントやった時は、流石にしんどかったですね。
先輩が助けてくれなかったら、今みたいな気分になってた可能性が高いです。
それ以降は……割と月曜日が待ち遠しいまで有りました。
はっ!? こんな事言うとまた勘違いされてしまいそうですけど、違いますからね。
単純に生徒会の仕事にやりがいも感じてきたのも有ったし、それに託けて奉仕部に遊びに行くのも楽しかっただけですから!
先輩と雪ノ下先輩と結衣先輩。 もしかしたら、あの3人の空間においてわたしはお邪魔だったのかもしれませんけど
それでも、わたしはあの空間が好きでした。
当時の自分を思いだして分析してみると、葉山先輩に惹かれながらも、全く逆の性質……
いや、本質的には似ていたのかもしれない、先輩にも惹かれてなかったかと言えばきっとウソになってしまいます。
もっとも、先輩にはあの二人がいましたからね。 わたしは、その物語の中心には入ることは出来ませんでした。
先輩が見ていたのは……雪ノ下先輩であり、結衣先輩。 でも、それで良いとわたしは思ってました。
そんな3人に、後輩と言う立場からちょっかいを出すのも楽しかったですから。
卒業した後に3人がどうなったのか、わたしは知りません。
もしかしたら答えを知るのが怖かったのかもしれません。
あの3人の関係性が変わってしまっていたら……だから、先輩達とは連絡を取りませんでした。
奉仕部は、わたしの高校生活の綺麗な思い出としてしまっておきたかったから。
答えを知らず、思い出としてしまう。 私の青春ラブコメ、まちがってないはずです。
でも、……偶然にも先輩に今日再会してしまいました。
再会した先輩の感じと部屋を見た限りですと、今現在、付き合ってるとかそういう事は無さそうです。
綺麗には片付いてましたけど、先輩の部屋には、女性が何時も来ているような匂いは全くしませんでしたから。
……自分で止めた時計の針です。 自分で動かす気は余りありません。
もしかしたら、先輩も今日の約束は無かった事にして、連絡はもう無いかもしれません。
それはそれで良いと思ってます。
あー……やっぱりわたし、答え知るの怖いんだなぁ……
……テレビの中でサザエさんがチョキを出しています。
うだうだ昔の事考えている間に、サザエさんが終了してしまったようです。
本当に明日会社に行きたくないです。
サザエさん見ながら体育座りしている自分なんてあんまり想像した事ありませんでした。
そう言えばサザエさんって設定年齢24歳らしいですね。 今のわたしと同じ年……
何だか少しやさぐれた気分になってきます。
ビールでも飲もうかな……
……駄目です駄目です。
今朝、もう当分飲みたくないって言ったばかりじゃないですか
何なら昨日の朝もそう思っていたまで有りますもん。
それに、今の気分でお酒なんか飲もうものなら深酒してしまって
明日の朝がよりしんどい物になるのが目に見えています。
よしっ! ここは前向きに明日に向けてtodoリストでも作りますか……
金曜日も客先との飲み会があったから、仕事幾つか放り投げてるんですよねー
全く、私を接待要員として使いたいなら、日常業務をもうちょっと減らして欲しいもんです。
さて、残ってる仕事はー……
これに優先順位を付けると……これは朝1で……あれも昼までで……この報告書も明日中の提出で……
多いっ!! やる事多いっ!!!
何ですかねー 可愛い入社2年目の女子社員にやらせる事ですかね??
どこの会社も人手不足らしいですけど、もっと人増やしてくれないとわたし辞めますよ。
自慢じゃないですけど、雪ノ下先輩とか先輩ほどの仕事に関する基本スペックは無いんです。
どっちかと言えば結衣先輩よりなんですから。 結衣先輩に怒られますね。 こんな事言うと。
ちょっと頑張る新入社員感を出し過ぎたかもしれません。
上司の皆さんに言われた事に何でも「はい!」「そうですね!」って元気良く言っていたらこうなってました……
学生時代の習性のまま、会社員やっちゃ駄目ですねー……まさかこんな事になるとは思ってなかったんですよー
大人の人とか偉そうな人に色々言われるとつい頷いてしまうクセは早く治さないと……
腰掛だけのつもりだったのに、結局こんだけ働いてるわたしも先輩の事言えないくらい社畜耐性高かったんでしょうね。
……ふぅ……全くため息が出てきます。
こうなったら、誰かにおしつk……アウトソーシングするか考えるべきですね。
上目遣いでお願いすれば、結果にコミットしてくれる同僚はいるはずです。
あ、今のわたし、ちょっと意識高いっぽい。
Priiiiiii
誰に結果にコミットさせようか考えていると、思考を中断させるように携帯が鳴り響きました。
だれですかー こんな時間にー
日曜日の6時半以降は、わたし鬱なんでやめてくださいよー
ディスプレイに表示されていたのは、友人の名前でした。
結局、色々考えたけど、面倒になってメッセージ返してなかったですからねー
心配になって……と言うか100%興味本意だと思いますけど。
絶対に電話に出たら今日の事根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。
無視しようかと思いましたが、それはそれで変な風に妄想されそうなので、出る事にしました。
「やっはーいろはー」
「本日の営業時間は終了しました」
「なーに言ってるんですか、いろはさん。
そんでどうだったの? 憧れの先輩とはしっぽり出来ましたかね?」
「ふぅ……言っておくけど、あの人はそんなんじゃないからね」
「えー? 良くいろはが大学の頃によく言ってた高校時代の先輩じゃないの?」
「いや、その人じゃないってば。 人当たり全然良く無いし、根暗だし、自意識高い系だし、目が死んでるし、わたしが言ってたのは、葉山先輩って人で……」
「んー? イケメンのサッカー部の葉山先輩だっけ? いや、 その人の事も聴いてたけど、目が死んでる先輩の事喋ってる時のがテンション高かったじゃん?」
「は?」
え? 何言ってるんですか、この友人は。 バカなんじゃないですか? いや、バカですね。
そもそも大学時代に先輩の事そんなに喋った事なんか無かったと思います。 記憶に無いですもん。
そういう事言って、わたしから失言でも引き出そうとする作戦ですね? その手には乗りません。
「運命の再会ってやつですなぁ。 私もセッティングしたかいがあったってもんだよ。うんうん」
「ちょっと、ちょっと待って……わたし、そんな記憶全く無いんだけど」
「え? 冗談でしょ?」
「そもそも先輩の事をそんなに喋った覚えないんだけど……」
「酔うといっつも言ってたじゃん。 自分が困ってたら何時も死んだ目しながら助けてくれたって。 超嬉しそうな顔で言ってるの聞いたの1回や2回じゃないよ」
…………
決めました。 わたし、本当にお酒やめます。
「そんで最終的には、大体泣き出してたじゃん」
「あ、あの……ちょっと精神的に持たない気がするから、その話は今度にしよ? って言うか封印しよう」
「そう? じゃ、証拠にいろはのあざと可愛い泣き顔の写メあとで送っておくね」
そんな時まであざといなんて流石わたし……じゃない!
お、おかしいですよ。 自分が思ってたのと周囲が認識しているわたしのキャラが違うんですけど。
もしかして、周り皆にそう思われてたんですか? わたし……バカ! 酔った時のわたしバカっ!!
「で? どうだったの?」
「ら、ラーメン食べて帰って来ただけだから!」
「ほほう」
くっ!! ニヤニヤ顔が目に浮かぶ……
こんな相手に言える訳が無い。 酔っ払った挙句部屋に泊まりました。
その上、別に何も無かったですって……どんなネタにされるか判ったもんじゃない。
「純情だねー いろはす」
「ご、ごめーん! ちょっと明日早いからもう寝なきゃ! 明日の朝4時起きだから! 出張で!! じゃあね!」
「ほいほーい、またゆっくり話聞かせてねー」
顔が火照っているのを感じる。
多分、今顔真っ赤な気がする……
駄目じゃないですかー いろはすはどんな味でも透明じゃないと……完全に色つきいろはすですよ。
アイデンティティの崩壊です。 もう何言ってるのか自分でも良く判りません。
時間はまだ20時……今日はもう本当にお風呂入って寝る事にします。
結局、その日……21時にはベッドに入ったわたしですが
昨日・今日の出来事を思い出して、全然寝付けず、意識を手放したのは恐らく2時を回っていました。
夜更かしは美容の敵なのに。 明日早起きしなきゃいけなかったのに。
責任取ってくださいね! せんぱいっ!!
つづく
日間2位になってる!?
これも読んで頂いた皆さんのお陰です。
本当にありがとうございます!!
頑張って更新していきますので、これからも宜しくお願いします。