ブレイブリーゼロ   作:山岳さん

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イデアは女神さま(恍惚)
イデア可愛いよイデア




 

かつて世界は神界により管理されていた。

しかし、数億の時を経て人間という種が地上に誕生すると、神々は世界の手をその人間に委ねた。

同士を慈しみ、自然を愛す彼らこそ、調停と平和を司る「運命の紡ぎ手」に相応しいと神は判断したのだ。

 

だが、人間という生き物は総じて脆弱である。

爪を牙も持たず、下級の獣にすら力で遥かに劣る。

挙げ句、神が創りしは魔魅が跳梁し、魔獣が跋扈する世界。

人が知恵と剣で生き抜くには余りに酷烈で、残酷な世界である。

結果、神の願いに反し、世は混沌と闇に呑まれた。

 

神は嘆いた。こんなハズではなかった。どうして人間などに望みを託したのか、と。

 

その時、世界を守護せし一人の天使が創造の神に語りかけた。

「人は確かに弱い。しかし、彼らは時としてあなたたち神をも凌ぐ力を発揮する」と。

 

「その力とは何か」、神は天使に問うた。

 

天使は言った。それは「心」だと。

 

神は嘲笑った。何を馬鹿な、そのように不確かなものが我々を越えるものか。

 

天使は満面の笑みを浮かべ言った。

「では私が証明してみせます」

 

天使は下界へ下り、人間たちの心の声を聞き続けた。そして何千、何万もの人間の祈りを通じ、ついに心の声を結晶化させるに至った。

 

その結晶こそが即ち「クリスタル」。天地を構成せし四つの元素、火、水、土、風から成る奇蹟の石である。

 

そして最後に天使は人間へクリスタルを生かし創られた、奇蹟の具現「魔法」を授けた。

そして人々は火を操り、水を生み出し、風を司り、地を動かすようになった。

人間は歓喜し、天使を崇めた。

私たちはあなたを崇拝すると。

 

しかし、これを快く思わぬ者がいた。

神である。

 

彼にしてみれば被創造物である人間が、同じく被創造物である天使に敬愛を捧げるなど許容できるわけがない。

 

神は激怒し、天使を神界に幽閉してしまった。そして彼女を二度と人間の前に姿を現せぬようにしたのだ。

 

人間は大いに嘆き、そして誓った。

天使が創りしこの「クリスタル」を必ず守護してみせると。

そして人間は最初に魔法を操りし者を「光の戦士」と呼び、そしてその者を、クリスタルを保護せし聖なる教団、クリスタル教の初代教皇に任命した。

 

全てはクリスタルを護るために。

 

そして天使が愛したこの世界に真の平和をもたらすために。

 

運命の中で今日も人間は抗うのだ。

 

 

 

 

 

 

クリスタル正教、教本「クリスタルと天使」第一節より

 

著:クリスタル正教 枢機卿レスター

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影と光の大地「ルクセンダルク」

 

その西大陸の北に位置する大国、「エタルニア公国」

 

過去の地殻隆起の影響により、国土の大半を長大な山々で埋め尽くされたこの国。

万年雪の檻に閉ざされた北東の僻地はかつてクリスタル正教の正教会が置かれた地であった。

 

冬は北海より吹き荒ぶ寒風により極寒と化すが、季節が春に移ると多少寒さは和らぎ、南より多数の商人と旅人が訪れ、市場と城下の街々は喧騒と活気に包まれる。

 

さて、この国に唯一存在する街より北方へ目を向けると、一つの要塞がその姿を見せる。土のクリスタルが安置された「不死の塔」に頭を並べるほど巨大かつ壮大に聳え立つそれは、まさしく堅忍不抜の名に相応しい偉容を誇り、この国に住まう民たちに絶対の安心感を与えている。

 

エタルニア公国軍総本部。

 

世界最高峰の練度と人材を併せ持つ公国軍、その総本山である。

カルディスラにて猛威を奮った公国空挺騎士団、フロウエルにて特別任務に就くブラッドローズ特務隊、最強の傭兵部隊である黒鋼之刃。そして公国軍最精鋭から構成される公国本軍。その全てを統括するエタルニア唯一にして絶対の軍務機関がそこにはあった。

「ヤァ!ハァ!」

 

今その要塞の練兵所にて一人の少女が剣を振るっていた。

端麗な顔立ちに、背丈に見合った鋼の鎧。振るう度剣風に靡く金沙のような髪と、透き通る碧き眼。

少女の名はイデア・リー。公国軍元元帥閣下の娘にして、数ヶ月前、世界を悪しき破壊神より救った「光の戦士」である。

「ッ!デァァァァァァアアアアアア!!」

 

バァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

イデアは剣を一度引くと、次の瞬間、弓弦より放たれた矢のように飛び出し剣を前方に突き出した。

その切っ先は音の鎖を軽々と突き放し、さながら光の一部となって目標の的を穿ち、粉々に破壊した。そして風が刃と化して練兵所を駆け巡る。

神速の刺撃、彼女が得意とする剣型の一つがその真価を発揮したのだ。

 

目標の破裂音に次いで辺りに砂塵が舞い、練兵所を包みこんだ。

二分後、砂も落ち着き、漸くイデアの金沙も剣風より解放される。

 

流石は光の戦士、齢16にして彼女の剣技は達人の域に達しており、また剣撃に至っては竜種(ドラゴン)すら一撃で討滅しうる程の威力を有していた。

その証左に彼女の前方十数メートルには細長く地面が削れた跡があった。無駄な破壊など一切なく、ただ真っ直ぐ剣創は練兵所の強固な外壁を撃ち削り、外にまで続いていた。

 

まさしく絶技。公国史上最強と称される「剣聖」や「聖騎士」もここまでの剣撃は放てまい。

さぞや満足のいく結果であろう。

 

しかし、少女の顔は一向にして晴れない。それどころか溜め息すらつくと、イデアは剣を腰の鞘に戻し、悄然とした面持ちのままその場に立ち尽くした。

 

強力な剣撃も、数多のジョブも、今彼女の抱える難敵を前にしては塵当然だった。

 

「ディズ、アニエス…」

 

弱々しい口調でかつての仲間の名を口にしながら、彼女はあの激動の日々に思いを馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神界の侵略を企み数多の世界を滅ぼした災厄の破壊神ウロボロス。その野望は四人の光の戦士の絆と力、そして天使の願いを継いだ吸血鬼と大魔導師の想いの前に潰えた。

 

闇のオーロラは消え、大穴も閉じ、世界とクリスタルに安寧が訪れ、数多の平行世界を巡る四人の冒険譚は幕を閉じた。

 

…ハズであった。

 

しかし、物語は必ずしも幸せの内に終わるのではない

その後イデア・リーを除き、他の戦士たちにはある運命がま待ち受けていたのだ。

ある者は腐敗した教団を復興すべく風の巫女の役職を全うし、またある者は弟の眠る墓標の前で昏睡しているところを発見され、

そして…またある者はその姿を消した。

 

 

残された彼女はこの現実を受け入れられずにいた。

 

風の巫女はまだいい。会おうと思えばいつでも会えるだろう。教団が例えそれを邪魔しても、公国軍元元帥閣下の娘という威名と、公国軍近衛騎士団次期団長の身分を活用すればさして難しいことでもない。

 

だが、あとの二人は別である。

昏睡した少年はあの後公国内の治療施設に収容され、土のクリスタルを用いた治療法を公国の医療チームから施されていた。命に別状はないと彼女は聞いているが、目覚める気配もない、と彼の治療に携わった医師たちは口々に語るのだ。

如何に彼女が優れた戦士であろうとも、いくら仲間の巫女が白魔法を熟知していても、原因不明の病は治せない。

彼女としては何も出来ない自分に歯噛みしつつ、鍛練と練兵に明け暮れ、無毛な時を空費するしか道がないのだ。

 

そして…

 

 

「なんであんたがいないのよ…」

 

かつて記憶を無くしていたギザな男。

 

女好きでマヌケで甲斐性なしで、だけど誰よりも優しく誰よりも自分を思ってくれたあいつ。

 

世界を渡ってまで自分たちを救おうとした大馬鹿者。

 

「リングアベル……」

 

好きだ、と微笑んだ愛すべき者。

 

優しく抱き締めてくれたあの腕はもうどこにもない。

明るく励ましてくれたあの暖かさは何処へ消え失せた。

 

「会いたいよ…」

 

剣の道に足を踏み入れた時、師に交わした「泣かず」の誓い。

それを破りイデアは嗚咽を漏らした。

目より溢れる大粒の涙。けれどそれを拭ってくれる最愛の人は何処にもいない。

 

 

 

 

その時だった。

 

「……えっ?」

 

突然大きな光りの輪が彼女の周りに現れ、何層にも連なり練兵所を呑み込んだのだ。その輝きは白の大魔術「ホーリー」すらも凌ぎ、イデアの視界を白一色に染め上げていった。

 

「何!?なんなの、何が起こるの!!?」

 

彼女の驚嘆を余所に、光は徐々に縮小しイデアに迫った。

 

「えっ?えぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!」

 

刹那、伸縮した円環は大きな扉と化しイデアの体を吸い込んだ。その後、扉は消えその場には静寂と剣創の刻まれた練兵所のみが残った。

 

 

 

その日、誰も知らぬ内に一人の少女が再び世界を渡ることになった。

 




ちなみに作者はブレイブリーセカンドをまだプレイしていません。(時間が足りぬぅ
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