ブレイブリーゼロ   作:山岳さん

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かつてない駄文が生まれた…(白目

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第3話

広場に深い沈黙が降りた。

落ちこぼれた少女が思わぬ才幹を見せつけ、召喚した使い魔は、なんと人間。

しかもその者は召喚者とさして年の変わらぬ少女だったのだ。見慣れぬ鎧と剣を身に帯びているが、金沙のような髪と透き通る碧眼は年端のいかぬ女のそれ。

何処ぞに仕える騎士だと一目で分かるが、なんとも珍妙な騎士がいたものである。

 

「あの~、えっ~と~」

 

驚愕したのは学園の者たちだが、困惑したのは呼び出された少女である。

騎士の少女__イデアは自分の置かれた状況を呑み込めずにいた。

悲哀と孤独に苛まれ、練兵所にて自身の無力を嘆いていると、突然現れた光の円環に吸い込まれ、此処にたどり着いていたのだ。

これを理解しろというほうが無理がある。

 

故にイデアは自分の正面に立ちすくむ桃色髪の少女に尋ねることにしたのだが。

 

「……」

 

見事に固まっている。

どうやら事態を理解できぬのは自分だけではないらしい。

一瞬安堵した彼女であったが、次の瞬間それが起きた。

 

『プッ!アハハハハハハハハハ!!!』

 

地を割るような豪笑が彼女らの左右前後より沸き上がったのである。それは他者の失敗を嘲笑うかのような、明確な悪意に満ちていた。

 

「見ろよ!ルイズの奴、人間を呼び出しやがったぜ!」

「しかもよく見りゃ異人じゃねーか!?」

「おいおいルイズ!いくら使い魔を呼べないからって異国の騎士を雇うのはどうかと思うぞ!」

ゲラゲラと下卑た笑いがルイズの頬を叩いた。

この上なく惨めだった。ルイズは泣きたくなるのを必死にこらえコルベールに願い出た。

 

「ミスタ・コルベール!どうかもう一度儀式をやり直させて下さい!何かの間違いです!人間、しかも女の子を使い魔にするなんて!」

コルベールは日に映えた頭をさすり、難しい顔をした。

 

「残念ですがミス・ヴァリエール、それは出来ないのです。使い魔儀式とは神聖で侵し難いもの。如何に目当ての使い魔を呼べなかったとはいえ契約が成立してしまった以上、やり直しはあり得ません」

「ミスタ!」

「何度言われてもこの結論は決して覆りません。

……さぁ、早く本契約の方へ」

「うぅ、こんなことになるなんて……」

 

強気な柳眉を下げ、ルイズは項垂れた。

そしてルイズの悲憤は、新たに契約を結ぶ少女へと向けられたのだ。

 

「あんたさえ、来なければ……」

 

安堵しているうちに状況が二転三転し、頭を抱えていたイデアであったが、ルイズの言葉に向かっ腹を立てたのか、碧眼を細めてルイズに食ってかかった。

 

「さっきから聞いていれば使い魔だの、儀式だの訳がわからないよ!此処が何処で、あんたたちが誰なのかちゃんと説明してよね!」

 

その言葉が鬱積したルイズの感情を爆発させた。

 

「黙りなさい!貴族に向かって騎士風情がなんて物言いなの!

そもそも私だって、あんたみたいな女召喚したくなかったわよ!だけどね、今回の儀式は私の昇級がかかってるの!魔法も全く使えない、挙げ句留年しただなんて、どうやって家族に言えばいいのよ!ちぃ姉様だって私の学園での晴れ姿を楽しみにしていらっしゃったのに……」

「そんなこと私の知ったことじゃないよ!」

「煩い煩い!!!」

「むぐぐ…」

「ぎぎぎ…」

 

まさしく売り言葉に買い言葉。金沙と桃色の少女は各々の不満、嘆き、怒りを全面に押し出し、互いに罵りあった。

 

「桃頭!」

「騎士(笑)!」

「むきー!!貧乳!」

「い、いい言ったわね!!あんたも貧乳じゃない!」

「煩い!私にはまだ可能性があるの!このコボルトの涎!」

「じゃあ、あんたはオークの尻ね!下品なあんたには誂え向きよ!!」

「むぐぐ…」

「ぎぎぎ…」

「あのミス・ヴァリエールにミス……?」

コルベールが仲裁に入ろうとしたが、金沙の少女の名を知らぬため、介入出来ずにいた。

イデアは、ふとルイズとの口論を止めると、コルベールに名乗りを上げた。

 

「イデアよ、イデア・リー」

「ではミス・リーと……姓を持っておられるということは、ひょっとして貴族の方ですかな?」

 

この時ばかりは、コルベールを始め、ルイズ、生徒たちの顔が蒼白となった。異国の、ましてや貴族階級の者を使い魔として呼び寄せてしまったのである。この騎士の少女がどの国出身であるかは定かではないが、どこであろうと大きな問題になるだろう。最悪、外交問題となり戦争にまで発展しかねない。

だがルイズたちの心配は杞憂となった。

 

「貴族がどんな役職かは知らないけど、私は違うかな。

ただの一騎士に過ぎないよ」

 

一騎士といってもエタルニア公国軍きっての精鋭部隊、近衛騎士団の次期団長候補なのだが、それは言わないでおいた。あくまで候補に過ぎず、また胸を張れるような武勲も持ち合わせていないのだ。

イデアの数多い美点の一つは、偉業を成し遂げてなお驕らぬ。増長とは無縁の性格にあるのだろう。

 

「なんだ、っことは平民か」

「驚かせやがって」

 

生徒たちは、イデアに対する侮蔑と嫌悪を露にした。

この国、いやこの世界ハルケギニアでは、平民は貴族より服従を強いられている。始祖ブリミルの誕生より始まった魔法至上主義、そしてその負の側面を最も強く体現する国こそが此処トリステイン王国であり、イデアもその身がトリステインにある限り傲慢な貴族たちの支配から逃れられぬのだ。

 

だが、彼女はイデア・リー。

誇り高き聖騎士ブレイブ・リーの娘にして、最強の剣聖カミイズミの愛弟子。

生憎、このような環境で挫ける程か弱く作られてはいない。

 

「ふーん?貴族とか平民とかよく分からないけど、随分陰気な所だね。私は好きじゃないな」

良くも悪く純粋なこの少女は思ったことをそのまま口に出す。本音と建前の駆け引きなどイデアにとって、モンクが持つ剣の如く無用なものであった。

 

「…何だと」

 

幸か不幸か、イデアの声は広場にハッキリと響いた。

彼女の言は、権力を鼻にかけ自尊心に溺れた貴族たちの逆鱗に触れるものであった。

先ほどまで広場を覆っていた冷笑はいつしか消え、剣呑な雰囲気が漂い始めていた。

 

「んん!!あー、ミス・ヴァリエール、そろそろ本契約の方へ」

「…はい」

 

空気の変化を感じとったコルベールは話の主軸を変え、本契約をルイズへ促した。ルイズは貴族の権威を無視したイデアの発言に顔をしかめつつ渋々彼女の下へ近づいていった。

 

「今度は一体何?」

「あんたはもう黙ってなさい」

 

契約、という言葉に難色を示すイデアを押し退け、ルイズは杖を高々と掲げ契約の呪を口にした。

 

「我が名はルイズ・フランソワ-ズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。

この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

 

杖を軽く振り、ルイズはイデアに寄り掛かるとその柔らかそうな唇をイデアの唇に重ねた。

一瞬の交差の後、二人の体が離れる。

 

「えっ?」

 

イデアの思考は再び混乱の淵に落とされた。

ルイズは恥ずかしそうに赤面し、イデアに背を向ける。

途端イデアの左手に焼き付くような痛みが生じた。

 

「ぐぅ!?」

 

火の魔法とは違った、体の内側を焦がすような激痛にイデアは思わず膝を付け、そのまま広場の土畳の上に倒れ伏した。

コルベールはイデアの左手の甲に注視して、現れた紋章を素早く手帳に書き記した。

 

「ふむ、見たことない紋章だな…

ああ、皆さんこれで使い魔の儀を終了とします。各自寮に戻って下さい」

 

コルベールがそう言うと、生徒たちは制服の懐から杖を取り出し、「フライ」の呪文と共に浮遊し、学園へと帰ってゆく。

 

「ルイズはそこの下賎な騎士様と一緒に歩いて帰れよ!」

 

口々にそう嘲り、傲慢な貴族たちは宙を駆る。

ルイズは羞恥と屈辱に肩を震わせ、未だ地より起きぬ使い魔へ怒声を飛ばした。

 

「あんたはいつまで寝てんの!さっさと起きなさい!帰ったら貴族がなんたるかをたっぷり教えてあげるわ!!」

 

しかし。イデアは黙ったまま仰向けに空を見上げている。

ルイズが痺れを切らし歩み寄ろうとした時、イデアは半身を起こして金沙の髪を頼りなく揺らした。

 

「ねぇ、ルイズって言ったっけ」

「気安く呼び捨てにしないで」

「月って空にいくつ浮かんでるのかな」

そして、およそ彼女らしくない、か細い声で質問した。その声には何処か縋るような、か弱さが含まれていた。

ルイズは質問の意図を理解せぬまま、当然のように答えた。

 

 

「?何言ってんの?月は二つに決まってるじゃない」

「っ!!そう…」

 

イデアは立ち上り、哀しみを孕んだ表情で言った。

 

「私…帰るね」

「あんた、何言って…待ちなさい!!」

 

ルイズが言い終わらぬ内に、イデアは学園とは反対の方角へ駆け出した。

ルイズはイデアの突然の行動に唖然とし、止めようと試みたが、その時にはイデアの姿は何処にもなかった。

 

 




ルイズとイデアのキスシーン…
百合っぽい空気なんてないよ!(断言)
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