受験にバイトにゲームに勉強、バイトにゲームに執筆に勉強。
趣味の時間が忙殺されていく~!!!
え?余計なものが混じってるって?
はは、何のことやら(汗)(;・∀・)つ3DS
「私は1800年前、レスター卿とユルヤナの老師の前に現れた天使です」
彼女はそう言うと背中より片翼を展開した。
それは物語に登場し、誰もが夢想するような、純白に映えた美しい翼だった。
しかし、いやそれ故に、翼に刻まれた無数の疵痕が妙に痛々しく、イデアは本来神聖であるはずのそれを直視出来なかった。
「翼の疵に関して、詳しいことは私の口から語ることは出来ませんが…」
心苦しそうに語る天使の手前、無理に聞き出すことはできない。最初からそんな気など微塵もないが、これにより彼女が絵画の天使である信憑性が大幅に増したといってもよい。
何しろ、彼の天使は助かる見込みもない傷を負った状態で二人の前に現れたというのだから。
そのことに関し、イデアには一つ疑問があった。
「…ねぇ天使様、あなたって死んだんじゃなかったっけ?」
老師とレスター卿曰く、天使は未来に起こるであろう三つの災厄を予言し、二人の前で息を引き取ったという。
二人の言を疑うつもりはないが、こうして天使を名乗る者が現れた以上、天使の生死の件については再考の余地がある。
そうした意図を込めたイデアの疑問だったが、天使は抑揚をつけて頭(かぶり)を振った。
「その件は私の言い及ぶところではありません。…そもそも私はルクセンダルクに関する事情を、あなたにお話出来ないのです」
「それって、どういうっ!!?」
イデアは驚愕のあまり、言葉を詰まらせた。
天使の身体が空に溶け込むように、透けてゆくのだ。
丁度、あのウロボロスがティズに化けた際、放っていた邪光によく似ている。
「…!時間はあまり残されていません、話せる範囲であなたの持つ疑問にお答えしましょう」
天使は真剣な眼差しでイデアを見た。
「まず、あなたをあの世界へ導いたのは私です」
「やっぱり…あの円環はあんたの仕業だったのね」
イデアの顔は厳しい。まともな説明もせぬまま、あんな所へ飛ばされたとあらば、いくら寛容な人間とて納得はしまい。
ましてや、彼女には元の世界で果たさねばならぬ宿命があるのだ。
「無礼なのは、重々承知しています。しかし、あなた方…光の戦士でなければならなかったのです」
その結果、光の戦士の中で唯一動けるイデアのみが世界を越えた。
そう、天使は語る。
その話を受け、イデアは溜飲を下げた。
「はぁ~、まぁいいや。天使様に呼ばれたのはこれが初めてじゃあないし…」
破壊神の尖兵であったエアリーに敗れた時、光の戦士たちはこの天使の力に救われたのだ。その事実を鑑みれば、感謝こそすれど憎む気持ちにはなれなかった。
天使は優しく微笑んだ。
「ありがとうございます」
「いいって、いいって…それよりさ、何で私をあの世界へ呼んだわけ?」
天使は居住まいを正し、真摯な顔でイデアに相対した。
「あの世界__ハルケギニアにとある危機が迫っているのです」
「危機?」
「どのような危機が差し迫っているのか、それは定かではありませんが、危機を招くであろう者を予言することはできます」
天使の顔に恐怖と嫌悪が同居した。口にするのは恐ろしく、そして穢らわしいと思っているのだろう。
「その者の名はウロボロス…破壊神ウロボロスです」
「!!」
光の円環に接触してより実に何度目の驚愕であろうか。
イデアは金沙を振り乱し、猛然と反論した。
「そ、そんなわけない!ウロボロスは確かに倒したはずだよ!」
イデアの脳裡にあの決戦の情景がよぎった。
下僕のエアリーを喰らい、世界さえその触手で吸収した破壊神。無限に再生を繰り返す機関を体内に宿し、光の戦士を幾度となく絶望の淵へ追いやった。
しかし、その再生機関は不死の吸血鬼レスター卿の犠牲によって封じられ、世界の捕食は平行世界の戦士たちの奮闘によって破られた。
再生も回復もままならぬ以上、あのウロボロスが復活することなどあり得ない。
金沙の少女の反駁を他所に、天使は頷いた。
「確かにウロボロスは光の戦士によって斃され、未来永劫、ルクセンダルクには干渉出来ません
しかし、ルクセンダルク以外の…文化も、歴史も、風土も、概念も完全に異なる世界ならば…あるいは」
「復活の可能性がある…?」
天使は消え入りそうな声で、はいと言った。
数多の光の戦士たちを屠殺し、数億年の時を生きた不滅の破壊神。確定ではないにしろ、その理外の化物と再び剣を交えなくてはならぬのだ。
それも光の4戦士ではなく、一人の騎士として。
快活で好戦的、楽観主義のイデアをして、この現実を前に頭を抱えずにはいられなかった。
「ウロボロスがもし復活を果たせば、ハルケギニアはルクセンダルクと運命を同じくするでしょう。当然です、彼の魔法世界にはアスタリスクのように強力な力など存在しないのですから」
しかし、と天使はイデアの左手に視線を向けた。
鮮血に塗装された不思議な紋章。それこそ天使が望みを託す、最後の希望だった。
「使い魔。魔法使いがその生涯に渡り使役するモンスターにして相棒…ハルケギニアでウロボロスに抗う術があるとすれば、それしかありません。そして、私はそれを成し得る唯一の存在…光の戦士をその席に添えようと考えたのです」
天使が腕を振るうと、イデアの左手の剣創はみるみるうちにふさがり、また血痕の肌は白磁の肌へとその姿を変えた。
ケアル。白魔法の初歩であるそれは、風の巫女が最も得意とした魔法の一つであった。
イデアは左手をかざし、今一度自身に刻まれた紋章を見た。
焼き付くような痛みと傲慢な輩の嘲笑、そしてあの桃頭との邂逅を経て不運にも獲得してしまったこの証が、あの破壊神を打倒しうる唯一の手段。
とてもそのような力を持ち合わせているとは思えないが、天使が嘘をついているとも思えない。イデアは疑念を飲み込み、天使に問うた。
「ねぇ…私は使い魔としてあの子に召喚されたんだよね」
「はい、あなたには申し訳ありませんが、そうする以外に有効な手段はなかったものですから」
「私は一生、あの子の使い魔を演じなきゃならないの?」
天使は一瞬表情を硬くしたが、次いで優しい笑みを浮かべた。
「いいえ、あなたに使い魔として活動してもらうのはハルケギニアにいる間のみです。危機が去れば、あなたは再びエタルニアの騎士としてルクセンダルクに帰ることができます」
「そう、それを聞いて安心したよ…」
次々と明かされる事実と迫り来る災難を前に意気を消沈させたイデアだったが、漸く落ち着きを取り戻した。
だがその時だった。再び、天使の体が空と同化するように透けていくのだ。しかも、先ほどより深く、まるで石が投じられた水面のように体がその輪郭を散らせていく。
「…もう時間ですね…最早この体ではハルケギニアに干渉できないようです」
自身の無力を悔いて、また自分の不甲斐なさを恥じて、天使は歯噛みした。
望みを託せたことは幸いだったが、また光の戦士としての責務を年端のいかぬ少女に押し付け、自身はその様を世界の外から傍観しようとしている。
天使の意図した所では全くないが、結果だけみれば同じこと。平和や運命などと耳障りのよい言葉を並べ、正義感の強い少女を今まさにこの世界に縛り付けてしまった。
そして彼女を縛った荒縄は世界の安寧をもたらさぬ限り、解けることはない…
(あぁ、自分の非力を呪いたくなります…しかし…)
世界を守らねばならない。それが守護天使たる己に課せられた使命なのだから。
天使は消え行く体を他所に、あることをイデアに伝えるべきか否かを熟慮していた。
本来語ることは愚か、その言をほのめかすこと自体禁忌とされている。しかし、世界を守るため過酷な運命に身を投じた彼女の覚悟に何としてでも報いたかった。
「天使様…体がもう…」
不安そうにこちらを見詰めるイデアを見て、天使は意志を固めた。
「イデア・リー、最後にあなたに伝えたいことがあります
あなた方と共に世界を救い、その姿を消した光の戦士…リングアベル改め、平行世界のアナゼル・ディーについて…」
「!!!」
イデアの顔が今日一番の驚愕に染まりゆく様を眺めながら、天使は己の肉体が遂に限界を越えたことを悟った。
次でゼロ魔主軸の話へ移行します