Lion Heart   作:koopa

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part.1

「死ね、クソカス」

 正面に映るガラの悪い男が持つガンブレードに若干似ている奇妙な武器の銃口から、毒々しい色合いの球体が複数も発生し、それらすべてが一挙に此方に向かって放たれる。

(なぜ、こんなことになっているんだ・・・・)

 内心でそう毒づきながらも、スコールは持ったガンブレードを構え、刀身に闘気を纏わせてジャンプ。空中で一回転斬りをする。

 それによって発生した衝撃波と爆炎が相手の放ったそれと正面からぶつかり合い、大爆発。行き場のないエネルギーが、衝撃波となってその場の二人を襲った。巻き込まれた木々が、幹を半ばから倒れてゆく。

 しかし、それらをものともせず、スコールはガンブレードを上段に構え、爆煙を目くらましにして突貫する。

 突然の奇襲。しかし相手も凄まじい反応速度で左腕を突き出してきた。機械か何かで武装していると思われるそれで鎖骨付近を断ち切ろうと迫る刃を受け止める。

「ハァハッハッハ! なんだ、おもしれぇじゃねぇか、テメェ」

「俺は、正直付き合いきれん」

「つれねぇな、オイ」

 男は、グク・・・・と刃を掴んだままの左腕を此方へかざすように無理やり押し込んでくる。その際、膨大な熱量をその手から感じ、スコールは咄嗟に男の水月を思い切り蹴った。人間の弱点を攻撃され、若干拘束の力が弱まる。

 機を逃さず、スコールは鋼鉄の腕による拘束を逃れたガンブレードを瞬時に引き戻し、下段に構え、下から上に切り上げるようにして一気に振り切る。すると、その場からエネルギーが立ち上がり、上空へ向かって走ってゆく。

 男の左腕から放たれた高熱のナパームとぶつかり合うが、その隙にスコールは安全圏まで後退していた。負傷は、今のところ無い。

 再び起こる爆発。今度は先の鋼鉄の腕に捕まらぬよう、スコールはガンブレードの柄を握り直し、上空へ刃の切っ先を向けて掲げた。

 刀身に自身の闘気を立ち上らせる。溢れんばかりの闘気の量を纏ったガンブレードから、漏れ出るように天に向かって立ち上る。そして、男の気配の在る方向へと全霊の一撃を込めて振り下ろした。

 スコールは、此方が放った攻撃によって発生した衝撃で煙が晴れ、切断されたように霧散するそれらの先に、確かにこちらの攻撃を食らった男の姿を確認した。

 スコールはすかさず己のガンブレードの間合いに接近し、下段からの切り上げで男の手に持つ武器を弾き飛ばした。

 カラン・・・・と音を立てて落ちる男の武器。その時には既に、スコールは対峙する男の首筋にガンブレードの刃を突きつけていた。

 男は左肩から下へ一直線に切られた傷が有り、武器も無い。一見すると無傷のスコールの勝利である。

「は~い。そこまでよ、お二人さん」

 突然、その場に割り込んで現れる存在があった。銀色の十字を意匠として施している本を片手に、女が一色触発の状態のスコールと男に、余りにも場違いな軽さで話しかけてきたのだ。

「・・・・?」

「チ・・・・姉貴か」

 姉と男が称した人物。何者かは目の前の男と同様に皆目見当もつかないが、とにかく、先程まで戦闘をしていた男の関係者であることは分かった。

 口ぶりから、戦いを止めに来たのだろうか。で、あるならば・・・・少しは話ができる人物であるかもしれない。スコールはそう判断し、少しでも話を円滑に進めるために、こちらの戦意が存在しないことを伝えるようにガンブレードを収納した。

「あら、話が早くて助かるわー。ごめんなさいね、ウチのヴェイが」

(人の良い笑顔を浮かべてはいるが、この状況で出張ってくるような奴だ。油断ならない。まあ、取り敢えずは口を合わせてみるか)

「・・・・いや、こちらは何ともない。それよりも、結果的に俺が傷を負わせてしまったのだから、非は俺にあるだろう。いきなりよく分からないことを言われ、襲撃された理由は聞かせて欲しいところだが。その・・・・」

「カレンよ。・・・・ああ、ヴェイのこと? だったら大丈夫よ、ほら」

 促されるままヴェイと呼ばれた男の方を見る。何故か先ほど与えた傷が、殆ど完治しようとしていたのだ。

「私ら、みんなこんなカンジなのよ。貴方への襲撃のことも、ヴェイの悪い癖でさ。同じ仲間に会いに行ったら、取り敢えず力試しみたいに戦い始めて、結果相手を殺しちゃう訳ねー。ま、今回は貴方が勝っちゃったみたいだけど。私としても、これ以上弟の傷つく姿は見たく無いってことで、この戦いを預からせてもらいに来たわ」

(自動治癒能力・・・・と言ったところか? G.Fにそんな能力持ちは居なかったが、俺が放った攻撃の属性もアルテマだから無属性の筈だしな。ここは、どこか遠い地だったりするのか? 俺の常識が通用しない、そんな場所・・・・)

「というわけだから、お詫びひとつで手打ちにしてもらえない? 流石にこっちの一方的な事情押し付けたままじゃ、私の家名に泥塗っちゃうのと同じなのよ」

「姉貴、ンな必要ねぇ。詫び入れるなら当事者の俺だ」

「いいから、おねえちゃんの顔を立てなさいな」

「チ・・・・」

 妙なこと言ったらただじゃすまねぇ、と言いたげな視線をぶつけながらも下がるヴェイ。スコールとしても、とにかく一番知りたい情報があったので、条件は既に思いついた。タダで教えてくれるようなら、利用しておく。

いつぞやの任務の際、情報料でごっそりと所持金を持って行かれた経験を持つスコール。正直この申し出を無碍にできるほど人間やめていない。

「ありがたい。早速だが、ここはどこだろうか? どうも、俺の常識が通用する場所ではないことは確かだ」

「ありゃ、魔法使ってこないなーって思っていたら、やっぱり次元漂流者ってヤツなのね?」

「“次元漂流者”?」

 単語の意味も理解できそうにない。スコールは、カレンの説明の続きを待った。

「前の世界・・・・いや、前に居た場所で、何か妙なものに触らなかった?」

「触った・・・・覚えはある。言う通り、妙な機械だった。俺はそれの突然の暴走に巻き込まれ・・・・」

「じゃあ、感染者じゃねぇのか? だとしたらその武器は本当にただの武器だったという訳か。なんだよ、俺の勘違いか」

「そういう事ね。ああ、感染者っていうのは・・・・今さっきヴェイがなったみたいに、自然に傷が癒えちゃったり、あと色んな攻撃ができるようになったり――」

「――人を殺さずにはいられなくなる、とかな」

「・・・・なに?」

 ヴェイの何気なく言ったその一言に、スコールは思わず視線を当人に向けた。

(感染者という単語から察するに・・・・人を殺さずには居られなくなる病気、そしてカレンの言った自然治癒能力と多彩な攻撃手段の会得はその副産物、と言ったところか?)

「おお、大分正解よ。やっぱり、頭も切れるみたいねー」

 結論を試しに言ってみたら、カレンは感心した様子を見せていた。実はもっと情報があるそうだが、長くなりそうなので、今のところはここまでの情報でいい。大雑把な情報さえ掴めば、後はなんとかなる。スコールは体感していた魔物との戦いでもそうだった。

 その後、今いる場所――異次元の世界という大いにぶっ飛んだ説明などを受けたスコールは、余計に途方に暮れていた。

(恐らく、当分帰る手段は見つからないだろう。どうするか・・・・)

「ううーん。あ、いいこと思いついちゃった」

「おい、姉貴。まさか、ねぇとは思うが言っとくぞ? そいつを――」

「我らフッケバイン一家に招待しちゃおうと思う」

「カレン!」

「別に悪ふざけではないわ。それにヴェイ。貴方と戦っても退けられる程の実力よ、局に取られたらすごく面倒だと思わない?」

「俺が負けるとでも言いてぇのかよ」

「いいえ。ただね、こんな人間が大量に増える可能性があること自体が問題なの。ここは恩を売っちゃったモン勝ちよ」

「わーったよ。姉貴に任せる」

「おい、不穏な会話をしているところ悪いが・・・・お前たちは一体何者なんだ?」

「ん? 私たち、世間一般で言うところの極悪非道な犯罪者集団だけど?」

「すまない。やはり別の、」

「ハイ、転送ぅー!」

 方法を探したい。そうスコールが言おうとした瞬間に、カレンの一言で遮られてしまった。

「――――な」

 途端にスコールの真下の地面に現れた光の輪。次の瞬間、スコールは辺りの景色が消えてゆく光景を見た。

 謎の高テンションで手を振るカレン。ダメもとでヴェイに視線を向けると、彼は同情の念を込めた視線を向けていた。曰く――諦めろと。それを受けたスコールは――

(いつぞや読んだ、UFOに纏わる御釈迦を体感している気分だ)

 最早諦観の姿勢である。

こうして、一人の青年の姿が人知れずに消えた。

 

 

 

 

「――――ってワケだから、今更逃げようなんて気は起こさない方がいいわよー?」

「そういうこったな」

「・・・・それは、半ばどころか完全に強制じゃないか」

 現在、スコールはあの後、飛ばされた場所についての簡単な説明を受けていた。

 首領のカレンが率いるフッケバイン一家が移動手段と住居として使用している船。それがこの『飛空艇フッケバイン』である。

 高速で高度の上空を移動するこの飛空艇。飛空艇という名称を聞いた途端に脱出なんて気は更々失せてしまっていたスコールだが、改めて聞かされると、どうもやるせない気持ちになってくる。

(厄介なことに巻き込まれてしまった。こいつら、どうも管理局とかいう組織に追われているらしい。武器の形状が主な捜査基準とか言っていたが・・・・ああ、くそ。俺のガンブレードじゃ、完全に誤解されてしまうな)

 嘘か誠かは定かではない。しかし妙に真実味のある口調で話すものだから、思わず信じでしまった。どうも実態験らしい話も多く含まれており、それを言うカレンやヴェイ(本名はヴェイロンというらしい)達のそれに、具体性や説得力が確かに在ったのだ。

(まあ、少なくとも好意的な態度を取ってくれている事だ。この世界の事を知る必要もある。ここは、しばらくの間は様子を見るか・・・・?)

 ふと、先導して歩いていたカレンの足が止まる。目の前に目的と思われる扉の目前まで来て、一体どうしたのだろうか。

 どうした、と声をかけようとしたその時――

「わ、忘れてたぁ――――!? ヴェイ、あとよろしく!!」

 と、大慌てでUターンして走り去っていった。

「・・・・なにが、どうなっている?」

「さあな、どっかの次元に用事でもあったんだろうよ」

 そっけなく返すヴェイの様子からして、どうやらよく見かけられる行動だったようだった。

「姉貴の代わりに、案内してやるから付いてきな」

 ヴェイに促されるまま部屋の中へと入る。

 一見すると、内装はそこまで豪勢というわけでもなく、と言って質素でもない。生活するに当たって、必要であると思われる品々がバランスよく配置されている。スコール自身の部屋と若干似ている気がなくもない。

 そして、部屋に足を踏み入れた途端から気になっていた事が・・・・

「おかえりー、ヴェイ兄! あれ、カレンねーちゃんはどうした――って誰だ、オマエは!?」

「・・・・!?(オロオロ)」

 巨大なテーブルの上に乗せられた、とても一食で食い切れそうもない膨大な量の食材が、それこそ埋まるように配膳されており、それをとんでもないスピードで食い散らかす活発そうな少女。ついでに、その少女と同じような理由で困惑していると思われる女の子が一人。

「そういやあ、お前の名前聞いてねぇわ」

「えぇー」

「・・・・(ヤレヤレ)」

 正確には、ヴェイとすらまともな自己紹介も済ませていない。

「俺はスコール。スコール・レオンハートだ」

「さっき言ったが、ヴェイロンだ。呼び方は好きにしな」

「此処に居るって事は、ねーちゃんが許可したんだろ? あたしはアルナージ。アルって呼んでいいぜ! それと――」

 アルナージ――アルが、隣に居た女の子の頭に手を置く。

「コイツはステラってんだ」

 アルの言った言葉に合わせ、ステラと呼ばれた女の子はペコリとお辞儀をしてみせた。

「しばらく厄介になる」

「いやいや、お前も運命共同体ってことで、もう家族! そんな硬いこと言うなってー」

「言い忘れていたが、そいつEC感染者じゃねぇぞ」

「・・・・はァ!? じゃ、なんで一般人乗せてきたんだよ!? ――って、ねーちゃんが許可したんだっけか・・・・うー、後で絶対詳しく聞いてやる」

「ああ、そうだ。ここの案内な、適任者が居るからそいつに聞け」

「ああ」

「――彼、ですか。首領が言っていた新しい仲間というのは?」

「来たか、後は頼むぞ。俺は昼寝する」

「ええ、任されました」

 新たに現れた人物。知的な雰囲気を纏う青年だ。

「私は、フォルティスといいます。話は首領から聞いています。はじめまして、スコール。取り敢えず、座りましょうか」

 青年――フォルティスは片手でソファ・・・・ではなく、その離れた位置にあるテーブル席の方へと促した。

「では、早速本題ですが・・・・あなたの乗船とファミリーの仲間入りに関して、少々ですが疑問があることは否めません。が、他ならぬ首領の言うことですから。私から、そしてほかのメンバーからの文句は何も。そこは明言させて頂きますよ」

「此方から質問、いいか?」

「ええ、答えられる範囲でならば」

「エクリプスウィルス、これの・・・・感染の条件などを知りたい。失礼は承知だが、ウィルスという単語だと、正直気が気でないのは確かなんだ」

「ああ、申し訳ない。つい言い忘れていました。感染についてですが、今こうして話しているような日常的な接触ではありえません。あ、ヴェイとの事のような戦闘で感染も無いですからね。ふむ、どなたか感染してしまうと困る方を待たせているとか?」

「まあ、そんなところだ。ありがとう。それが気がかりだった」

「いえいえ、お役にたてたのならば」

(だとすれば人為的、作為的な事柄が当てはまるのだが・・・・それがもし当たりだとして、そうであるならばこいつらはむしろ被害者なのか?)

「そうそう、私たちECウィルス感染者について、もっと詳しくご説明して差し上げる必要がありましたね。さて、どこから言ったものか――」

 その後、フォルティスの説明を粗方聞き終えたスコールは、現在、自身に宛てがわれた個室に通させてもらっていた。

「一通りの品物はそろってありますし、掃除も定期的におこなっていますから不便はないかと。ご自分の部屋だと思って使ってくださいね」

「本当に、恩に切る」

「あ――」

 スコールの最後の一言に、鋭く目を光らせたフォルティス。何事かとスコールが困惑しながらその様子を見守る。

「そうでした。スコールは幸い我々とは違い一般人と大差のない躰でした。いいことを思いつきましたよ・・・・スコール、少しお願い事があるのです。我々が使う日用品ですが――機会があれば、首都で買ってきてくださいませんか。申し訳ないのですが、ステラやアルが新しい服を買えとうるさいので・・・・」

「引き受けよう」

「・・・・いいのですか? 正直、面倒ではありません?」

「ECドライバーの在り方は聞いた。お前たちしか背負えない覚悟を持っていない俺では到底、お前たちの闘いに横槍を入れることはできん。だからせめて、俺が恩義に感じているお前たちの日常を手伝うことくらいはしてやりたい」

「・・・・ありがとうございます」

「もちろん、この船が攻められた時には防衛戦を手伝わせてもらうが」

「その方面でも、期待させてもらいましょう。ヴェイと渡り合って退けただけでなく、無事に生き残ったその力・・・・ウチの武闘派連中も興味津々ですからね」

 ――近いうちに、どちらかから決闘でも仕掛けられるのではないでしょうか。そんな恐ろしい発言を冗談のように残して、フォルティスは去っていった。

 フォルティスの背中を見送るのも早々に切り上げ、スコールは自室を自分なりに過ごしやすくリフォームしてしまおうと、早速行動を開始、仕上げは結局夕方までかかってしまっていた。

「はぁい、スコール。お邪魔するわよー?」

「なんだ?」

 自室で居住区の食堂から貰ってきた缶コーヒーを飲みながら、用意してもらった武器手入れ用の道具でガンブレードの整備をしていたところ、帰ってきていたらしいカレンが訪ねてきた。

 彼女は出会った時の格好とは違い、今は普通の、家でくつろぐようなラフな格好に変わっていた。当分はどこかへ出かける用事はないと見るが、何の用だろうか。スコールが思案していると―――

「食事よ♪」

 あっさりと解決した。

 大食い少女ことアルと無口な女の子ステラと最初にエンカウントした部屋。飛空艇フッケバインの居住区にあるその場所で、全員が集まって食卓を囲むのだそうだ。

 仲間内は皆仲が良く、堅苦しいことはせず、皆で楽しみながら食うのがモットーだと言う。確かに首領がこの調子だ、そうなるだろうと思えた。

 そしてその場を以て、スコールが未だに顔を合わせていないフッケバイン一家のメンバー――現在、飛空艇に乗船している者のみ――と紹介し合いっこをせよと指令が下った。首領命令だった。

 色々と複雑な事情もあったが懐かしいと思える名前の響きを持つサイファーという女、寡黙な巨漢の男ビル。取り敢えず二人はスコールの乗船に関して口を挟む気はないようだったが、

「ヴェイと服のセンスが似ているな」

 このように、二人が口を揃えて言ったものだから、アルがそれに乗じてからかい始め、更にカレンもが加わって更に引っ掻き回し始めた。収拾がつかないほどの喧騒を、スコールは久しぶりに体感することになった。

 実際、シルバーアクセ関連で気が合いそうだとは薄々感じていたスコールである。いずれ、ヴェイから良いブランドの店を聞いてみる算段を立てていた。

 

 

 

 

「――はーい。私から、みんなにお知らせがあるわよー」

 カレンが言うには、フッケバイン一家と同じくECウィルスに感染したと思われる人物が現れた可能性があるとのことだ。

 任務はメインでディバイダーとリアクトプラグの回収。可能ならばドライバーの勧誘も兼ねてもいいらしい。

 スコールは自分が、と挙手していたが、満場一致で却下されてしまった。たが、元の世界では社会人であるスコール。働かないまま過ごすことは我慢ならない。確かに条件付きで動くことを許可されてはいたが、まして飛空艇襲撃なんぞ中々起きるものではないし、買い物なんてそもそも仕事ですらない。

「――じゃあ、サポートってことで妥協したげよう。ヴェイ、いい?」

「足を引っ張らねぇことは身に染みて分かっているからな、別にかまやしねぇ」

「そう、じゃあ二人共。頼んだ――私はこれからちょいと出かけてくるからね。私たちの帰る家のこと、頼むわね」

 それじゃ、と部屋から出て行くカレン。どこに行くのかは知らないが、今は自身に与えられた任務に当ろうと、スコールはヴェイに打ち合わせをするため話しかけた。

「お前、関係ないヤツらを巻き込むことは嫌うタチか?」

「・・・・いきなり何だ?」

「いいか、俺が出向く以上は、目的のためならなんだってやる。呑気に暮らしている現地民だとかも必要なら殺す。お前、それを許せるかよ?」

(当然、許せるはずもない。だが、俺はEC感染者の内側を少しだけだが垣間見た。救えるのならば、こいつ等を救いたいとも思えたことは確かだ)

「言っただろう。俺は、お前たちの日常を護る手伝いがしたいだけだ。ヴェイ達が殺人をするとき、俺は手を出さん。ただ、全てが終われば・・・・俺と共に、全員で罪を償うことを約束してくれ」

「――――っは。お断りだ」

 切り捨てるように返事をしたヴェイがさっさと転送ポートへと向かって行ってしまった。スコールはひとり立ち止まったままだ。

(救うとか、偉そうなことを言う前に、ちゃんと向き合っていくことからだな)

 それも含め、長くかかることだろう。スコールは、フッケバイン一家とこれから長い付き合いになりそうだと改めて感じた。

 未だ飛空艇内部の構造を把握しきっていないスコールは、ヴェイを見失わないように彼の背を追いかける。堂々と、そして迷いのない背中だった。

 

 

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