入学式
桜舞う四月、どこの学校も入学シーズンであり、まだ着なれていない制服を着た初々しい新入生達をよく見かける。
『国立魔法大学付属第一高等学校』、通称『一校』もまた、今日この日が入学式であった。
そして一校の制服を着た一人の少年が、校門の前に立っていた。
(何で俺はここにいるんだろう・・・・・)
未だ現実を受け止められていないこの少年の名は、山田正人。
姓名ともによく聞く名前である。
さて・・・・彼が現実を受け止められない理由は二つ有った。
まず一つ目は、この一校は魔法科高校の中でも名門であり、本来入学できただけでも相当なエリートであるはずなのだ。
確かに正人の家は一応魔法士の家系である。
しかし、別に名家である訳ではない。全くの無名である。
むしろ魔法士の家系にしては、家族揃ってかなり性格がユルい。
一校にも、「ダメ元で受けてみるか(笑)。」ぐらいの気持ちで受験したのだ。
合格の知らせを受けた時には、母親が、「何かの手違いでは?」と学校に問い合わせたほどである。
しかし・・・・それだけであればまだ良かった。
重要なのはもう一つの理由・・・・彼の制服の肩に八枚花弁のエンブレムがついていることである。
一校は入学試験成績の上位者を一科生、他を二科生としている。
つまり、一科生になれるのは、ほんの一握りの優秀な魔法士だけなのである。
そんな所にダメ元で受験した人間が放り込まれれば、苦労するのは目に見えている。
故に正人の足取りは重いのである。
(まあ入ったもんは仕方ねえか。)
正人は諦めて校門をくぐった。
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敷地内に入ると、多くの新入生が入学式開場に向かっていた。
正人はその人の流れに乗って移動する。
そして、開場に入ったとき、あることに気付いた。
(あれ?席は自由だったはずだけど・・・・)
しかし、何故か前半分に一科生、後半分に二科生と別れていた。
とりあえず一科生が固まっている前半分で席を探し、そこに座る。
(何かマジで不安になってきた!ここにいる連中はほとんど名の知れた名家だろ。そんな所に俺みたいな庶民が紛れ込んじゃっていいのかよ!いや、絶対に浮く!そもそも「あの・・・」!?)
正人が反語を使ってしまうほどのネガティブ思考に陥っていると、小柄で癖毛のある髪の少女が話しかけてきた。
「隣の二席空いてる?」
「え、ああ、空いてるよ。」
見るとその少女の隣には茶髪をツインテールにしている少女がいた。多分友達なのだろう。
二人は正人の左側に空いていた席に座る。
「自己紹介しとくね、私は北山雫。よろしく。」
「わ、私は、光井ほのかです。」
ほのかは少し緊張しているようだ。
「俺は山田正人だ。モブの名前レベルで覚えにくいけどよろしく。北山さん、光井さん。」
「雫でいいよ。」
「あ、私もほのかでいいよ。」
二人は思っていたよりもフレンドリーらしい。
正人は、ガチガチのご令嬢じゃなくて良かったと安心した。
「じゃあ俺のことも正人でいいよ。雫とほのかは同じ中学?」
「うん、幼馴染みで家族ぐるみの付き合いだし、ずっと一緒にいるよね。」
「そうだね。・・・・・あ、ねぇ、正人君って私と実技の試験の時近くなかった?」
ほのかは思い出したかのように話題を切り出した。
「そうだったか?よく覚えてんな。」
「うん!間違いないよ。目立ってたからよく覚えてるもん。」
「ちょっと待て、・・・・俺が目立ってたってどういうことだ?」
正人の容姿は平均よりちょい上くらいで、髪の色もふつうに黒、髪型もただの短髪である。
とてもじゃないが目立つ見た目ではない。
「えーと、正人君を見かける前に凄い人が二人いてね、その人たちの次の番が正人君だったんだけど・・・・・・試験開場って凄い空気がピリピリしてるじゃない。でも正人君は全く緊張してる感じがしなくて、凄くリラックスしてるように見えたの。だから凄い落ち着いてるな、て思ったの。」
「ああ、そういうことか・・・・(落ち着いてたんじゃなくて、ダメ元だったからかなり気軽にやってたんだよな。)」
そう思ったが、わざわざ訂正することもないので、黙っておく。
そのあと、色々と雑談をしていると、二科生の男子生徒が一人入ってきて席についた。
すると、ほのかが目を見開いてその生徒を見ていた。
「どうしたーほのか。知りいか「何で・・・・・」は?」
「何であの人が二科生なの!?」
突然、ほのかが声を荒げた。
「ほのか?どうしたの?」
雫も事態を飲み込めていない。
そして、ほのかが口を開く。
「・・・・さっき、凄い人が二人いたって言ったでしょ。・・・あの人がその内の一人なの。」
「ああ?でもどう見ても二科生だぜ。見間違いじゃねえのか?」
「ううん、間違えるはずないよ。全く無駄のない完璧なコントロールだったもん。」
そう言われもう一度その生徒の顔を見る。
「そう言ってもなー・・・・・・ん?・・・・あ、アイツ実技の時俺の前にいた奴だ。」
「え、じゃあほのかの見間違いじゃないんだね?」
雫が正人に尋ねる。
「ああ、すげえ綺麗な彼女連れてたから、盛大にミスって大恥かいたらいいのにな~、て思って見てた。」
((器ちっさ!))
二人は正人の小物具合に驚愕する。
そんなやり取りをしていると、いつの間にか式が始まっており、次は新入生総代の挨拶だった。
そして、壇上に上がって来たのは、黒髪の艶やかなロングヘアをした、超絶美少女だった。
「わあ、綺麗な人・・・・・」
その美しさは、同じ女性である雫ですら、思わず見とれてしまうほどだった。
「「ああ!あの(娘)(人)は!!」
正人とほのかが当時に叫ぶ。
この数十分でずいぶんと息が合ってきた。
「雫!あの人だよ!もう一人の凄い人!」
「あの二科生の彼女だよ!クソ!やっぱりあんな綺麗な彼女がいるなんて許せねえ・・・・・・」
「ふ、二人とも落ち着いて。正人は彼氏を睨まないで。・・・・・はあ。」
結局そのまま入学式は終わってしまった。
深雪さんのセリフ全カットしました。ちゃんと出てきますのでご安心を。
次回から絡んでいきます。
そしてこのSSは森崎の出現頻度が高くなると思います。
性格も大分改変しますのでお楽しみに。