かなり優等生の方寄りの話になります。
では9話です。
放課後の教室、正人は森崎と喋りながら帰りの支度をしていた。
「剣術部への入部は諦めたのか?」
「ああ、乱闘起こすような部活で生きて行ける気がしねえし。」
正人はそう言い、溜め息をつく。
「まあ、家で親と組み手やってるから体が鈍ることはねえだろ。」
「ああ、北山達を助けたって言う母親か・・・・・強いのか?」
森崎は素朴な疑問を口にする。
「・・・・・・アレを同じ生物だと考えない方がいい。」
「どんな人なんだ・・・・・」
森崎は若干引いている。
「まあ、この間見せてもらった魔法を見る限り、確かに近接戦闘技術が必用だろうな。」
正人はエリカとの模擬戦のあと、一度森崎にオリハルコンの剣と盾を見せたのだ。
それを見た森崎の見解は・・・・・・オリハルコン自体はそこまでとてつもない魔法ではなく、使用者の身体的技能に依存する魔法だということだった。
「そ、だから毎日組み手やってんだよ。」
正人がそう言いった瞬間、いきなり校内に放送が流れた。
『キーーーン 全校生徒の皆さん!僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です。僕たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します!』
「な、何だこれは!?」
森崎は突然の放送に驚いている。
「へ~、そんな同盟あったんだ。てか最初のハウリング酷かったな。」
正人は特に驚くことはなく、単純に初耳だといった反応だ。
「いや、公認されてるものじゃない。仕方ない・・・・僕は放送室に向かう。」
「お~、何かよく分からんけど頑張れ~。」
そう言い、正人は森崎を送り出した。
「さて、帰るか。」
正人はこの一件によ4月最大のイベントが引き起こされるとも知らず、呑気に帰路に着いた。
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「 討論会ねえ・・・・」
翌日、正人は今朝の生徒会長からの発表について考えていた。
「・・・・・・・て言うかそれで何がどうなんの?」
・・・・・いや、何も理解していないだけのようだ。
「・・・・・・正人君・・・・・自分の学校のことなんだからもう少し関心を持って・・・・・・」
ほのかは正人の無関心ぶりに呆れている。
「簡単に言うと、生徒会長はみんなの前で有志同盟を論破して叩き潰そうとしてるんだと思う。」
「雫はもう少し言葉を選んで!」
雫のストレートな物言いにもほのかはツッコミをいれる。
「お前ら見に行くのか?」
「いや、そんなことなんかより部活で演習林が使える日だからそっちに行く。」
「私もそうするよ。」
雫とほのかは討論会には行かないらしい。
「二人とも行かないのか。じゃあ俺も多分行かねえわ。」
結局、三人は討論会には行かないということで一致した。
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そして討論会当日、正人は討論会の時間は食堂が空いていると考え、遅めの昼食を取っていた。
しかし、食堂は空いているどころか正人以外に誰もいなかった。
・・・・・所謂ボッチ飯である。
(クソ、森崎はともかく、まさかエリカとレオまで暇じゃないなんて。)
エリカもレオも正人と違い部活に入っているので、正人ほど暇ではないのだ。
寂しい食事を終え、やっぱり少し討論会の様子でも見に行こうかと思い、正人は席を立つ。
その時、突如爆発音が鳴り響いた。
「うええええ!?何だいまの!」
正人は外の様子を確認するために食堂から飛び出した。
・・・・そして出た先に5人組の男がいた。
その中の二人はマシンガンで武装しており、ほかの三人もナイフをもっていた。
完全な不審者である。
そしてマシンガンを持った男の一人が正人に気付き、目が合った。
『・・・・・・・・・・・・』
暫しの沈黙の後、マシンガンが乱射される。
「うおああああああ!!」
正人はすぐさま食堂に戻り、柱の裏に滑り込んだ。
そして、腰が抜けたかのように座り込む。
(ヤバイヤバイヤバイ!実弾じゃねえかよ!あんなのが何で学校にいんだよ!)
正人は柱の陰で息を整える。
(クソ!マジでヤバイ・・・・・どうにかして逃げねえと殺される!)
その時、正人は自分の体が震えていることに気付いた。
確かに正人は家で佳菜子と組手をしており、戦闘技術はかなり高いと言ってもいいだろう。・・・・しかし、それでも正人は普通の少年である。魔法の才能はあるが、別に家が特殊な仕事をしている訳でもないため、実戦経験などない。
ましてや、実際に本気で命を狙われるのはこれが初めである。
一歩間違えば死ぬ。命の保証など皆無。・・・・・そんな状況に陥ったことなどあるはずもなかった。
(落ち着け!戦う必要なんてない。CADも今はないんだ。とにかく逃げることだけを考えろ。)
正人は無理矢理自分を落ち着かせようとする。
(CADなしじゃ魔法の展開に時間がかかるけど・・・・・丸腰で逃げれる気はしねえし、幸い相手はこっちを見失ったみたいだから間に合うだろ。)
正人は魔法式を展開し、魔法の発動準備を進める。
しかし、まだ手足が震えていた。
(クソ!どんだけビビってんだよ!情けねえ!)
自分の臆病さに悪態をつきながらも、魔法式を展開していく。
「チ、隠れやがったか・・・・・・・お前ら、先に演習林の方に行っとけ。」
マシンガンを持った一人が他の男達に指示を出す。
「あのガキ始末したら俺もすぐ行くからよ。」
「分かった。行くぞ。」
そして、他四人の男達が食堂を離れていった。
相手が一人になったため、正人はかなり逃げやすくなったはずである。
しかし、正人は目を見開き、嫌な汗をかいていた。
(演習林?・・・・・・・待てよ、そこは・・・・・・・)
正人は今朝の会話を思い出す。
『部活で演習林が使える日だからそっちに行く。』
『私もそうするよ。』
(・・・・・雫とほのかがいるじゃねえか!!)
正人は事態が最悪の方向に向かっていることを理解した。
雫もほのかも優秀な魔法師しであるのは確かだ。しかし、相手はマシンガンで武装している。
さらに二人はこの間一度襲われ、殺されかけている。
もしそれがトラウマにでもなっていれば、いつも通りに動くことなどできないだろう。
(部活ってことは先輩達もいるんだろうけど・・・・・マシンガンを持ったヤツに奇襲されたらどうしようもねえぞ!)
どんなに優れた魔法師でも、いきなり銃を乱射されてしまえば成す術はない。
ここで、正人の頭の中にある二択が生まれた。
演習林にいる人間を助けに行くか、見捨てて逃げるかだ。
勿論、前者を選んだところで何の役にも立たないかもしれないし、後者を選んだとしても雫達が絶対に死ぬという訳ではない。
(・・・・・・俺が行ったところで助けられると決まってる訳じゃねえ。もしかしたら雫とほのかの先輩達がどうにかしてくれるかも知れねえ。それに風紀委員だって動いてるだろうしな。)
そう思いながら、正人は魔法を発動する。
すると、正人の右脚が白く光る。
「!?そこか!」
その光により隠れ場所がバレ、銃弾が乱射され、柱が撃ち抜かれる。
「ハハッ!魔法師とはいっても所詮はガキか。」
そう言いながら男は撃ち抜いた柱の裏を確認する。
しかし、そこには死体どころか人一人いなかった。
「な!?バカな、確かにここから光が・・・・」
そう言いかけた時、視界の端に人影が写った。
「チ!何時のに・・・・・」
男は再びマシンガンの引き金を引こうとするが・・・・・ドンッという音と共に正人の姿が消え、いつの間にか男の鳩尾に掌底を叩き込んでいた。
男は何が起きたのか分からないまま気を失った。
男を倒した正人の右脚は、白い半透明の鎧に覆われていた。
しかし、その鎧はすぐに消えてしまった。
(確かに俺が行っても何も出来ないかもしれないし、正直CADなしで勝てるかは微妙だ・・・・・・だけど・・・・だけどアイツらに何かあったら絶対に俺は後悔する!)
覚悟を決めた正人の脚は、既に震えてはいなかった。
そして、正人は食堂から飛び出す。
「山田!」
すると、食堂のすぐ前で森崎が走って来た。
「今校内にテロリストが侵入してる!お前は襲われたりしなかったか?」
「ついさっきマシンガン乱射されたよ。」
「何!?・・・・よく無事だったな。」
森崎は正人の返答に驚きを隠せない。
「思いっきり殴ったから食堂で伸びてる。」
「・・・・・自力で倒したのか。」
苦笑しながらも森崎は安心したようだった。
「とにかく無事で何より「森崎!演習林に向かうぞ!」は?おい!ちょっと待て!」
森崎の言葉を遮り、正人は駆け出した。
「どういうことだ?説明しろ!」
「俺を襲ったヤツの仲間が四人演習林に行きやがった!今あそこには雫とほのか達の部活がいるはずだ!」
正人は走りながら森崎に説明する。
「何!?・・・・分かった。でもそれは風紀委員の僕の仕事だ。お前は避難してろ。」
「相手の一人はマシンガンで武装してる。」
「!?」
森崎は目を見開く。
「さっきのヤツは不意打ちで倒したけど、今度は人数が多い!一人でやるのはきついだろ!」
「・・・・応援を呼ぶ時間もないか・・・・仕方ない!ただし、本当に危険だぞ。」
森崎は正人の覚悟を再確認する。
「分かってるよ・・・・・・・でも友達を助けるためだぜ?命かける価値はあるだろ!」
正人はそう笑って見せ、魔法式を右腕に展開し、戦闘に備える。
「・・・・ああ、違いないな。」
それに答えるように、森崎は拳銃型のCADを抜く。
「急ごう山田!」
「おう!」
モブ顔コンビが仲間を助けるため立ち上がった。
次回モブ顔コンビが暴れます。
オリハルコンの新バージョンの説明も次回しますね。
森崎の活躍にご期待ください( ̄▽ ̄)b