禪院直哉。
その男は禪院家に於いて、極端な評価をされている術師である。
態々荷作りを行っている真希と真依の前に現れた、二人にとって十歳離れた従兄妹関係。
自分達を出来損ないと殊更忌避し、憎悪する父・禪院扇を除けば最も顔を合わせたくない人物の一人だ。
「────しっかし、何で君等を噂の新人特級クンは欲しがるんやろ? 片や自力やと呪霊も見えへん猿の姉に、片や呪力量もセンスも凡の出来損ない。ゆーて身体目当てや言うても、流石に若過ぎる」
禪院家の中でも生得術式を保有し、高専資格条件で準一級以上の実力者で構成されている精鋭部隊『炳』。
その筆頭を名乗る事を許された、禪院直毘人当主を除いて禪院最強の呪術師。
そんな男の最大の特徴は──────。
「そういう趣味のロリコンと思て、ちょい聴き耳立てとった奴に話聞いてみれば……───ケヒッ。何とキミら、
「……ッ!」
「いやいや真希ちゃん凄いで君! 呪術も使えへん猿が、ええトコ孕み袋が関の山な惨めっぷりにまだ下があるとは! いやはや見識甘かったわぁ! 下には下があるんやねぇ!!」
そしてその強さへの誠実さに反し、禪院家で最も性格が悪く人望が無い男としても有名である。
禪院家の男尊女卑と、才能至上主義の煮凝り。
差別意識と旧態依然蔓延る禪院家内部でさえ、ロクデナシの屑の名を欲しいままにする論外の男。
禪院直毘人の数いる息子の中でも最も才に恵まれ、最も人の心を育まなかった直哉は、その性格に相応しい嘲笑で双子の姉妹を見下していた。
「前までなら猿の君なら兎も角、真依ちゃんならええ身体に育ったんやったらボクが手ぇ出してあげても良かったんやけど……。ゴメンちゃい♡ ボク鼠に勃たせる趣味ないねん!」
「テメェ……ッ!」
真依は、そんな聞くに耐えない侮蔑に一々反応しない。
禪院家の殆どの男は女子供にも『体罰』として躊躇なく手を出すが、直哉は特に躊躇いがない。
そして体罰ですらなく、それはただの暴行。
真依は痛みも恐怖も、当たり前に忌避する。
あるのは諦観であり、ただそれが過ぎるのを伏して待ち続ける。
ソレが呪術師としては生得術式こそ持って生まれつつも、才能と資質に乏しい真依の自己防衛手段であった。
だが、真希は違う。
良く言えば反骨心が強く、悪く言えば──────。
「まだ身の程知らんの?」
天与呪縛故に二級術師が行う肉体強化相当の膂力の真希を、直哉には容易く蹴散らす実力差があった。
蹴り飛ばされた勢いで襖を突き破り、そのまま庭先の砂利に転がる。
それを真依は駆け寄りたくなる衝動を必死に抑え、目を瞑りつつも姉を罵倒する。
何故、抗えるのか。
痛い思いをするのが、怖くないのかと。
「がッ!?」
「普段どんだけ転がされとるのも忘れたん? 流石にモノホンの猿でも、もうちょい学習能力あるで」
「クッソ……!」
真希の頭を踏み付ける所作に、躊躇が無い。
この光景は、直哉にとってありふれたモノである。
「下女としてやのうて
─────餞別代わりに、もう一回身の程刻み込んだるわ」
特に直哉にとって、真希は必要以上にこき下ろす理由があった。
使命さえ感じているかもしれない。
天与呪縛のフィジカルギフテッド。
本来持ち得る術式と呪力、術師としての素質を引き換えに常人離れの身体能力を、生来与えられるソレ。
一級上位の実力を持つ直哉にとって、たかがその程度の天与呪縛。
努めて重ねて来なかった、過去存在した憧れと重ねるには醜悪極まる不完全さに。
「──────何をしている」
そんな直哉に待ったを掛けたのは、必然禪院で無い者。
「あらパパに、……そちらが噂の新人特級クンかいな」
無機質で冷たい視線を向ける成人丁度の年頃の青年と、呆れた顔の禪院家当主が現れていた。
父の呆れた視線に訝しむが、即座に直哉は外様──幸に意識を注力する。
「あぁ、コレか? 幾ら何でも礼儀を知らんから、最後に躾しとこ思てたんよ。そこら辺弁えてる真依ちゃんなら兎も角、双子セットでの売りや聞きまして。このじゃじゃ馬をそのまま売り出すんは、流石に胸が痛みますよってね」
「発言には気を付けろ、禪院直哉特別一級術師」
ピシャリ、と。
幸は直哉の戯言を両断した。
「は?」
「お前の評判はある程度聞いている。酷いものだな、同じ禪院家からも悪評が飛ぶとは。その上で再度警告する。己の言動には注意し、呪術総監部から呪術師として呪術の使用を許可されている意味を再確認しろ」
「……なんや、けったいな話やな」
幸の言葉を、しかし直哉は本気で理解できなかった。
そこまで露悪的な人柄を想像していた訳では無かったが、幾ら何でも話が違う、と。
「キミ、二人を買ったんやろ? 何エエコちゃんぶっとんねん」
「研究目的と聞いて人体実験でも想像したか? 随分貧相な想像力だ。旧態依然の御三家は、人を売り買いする事を当然と思う下衆の勘繰りしか出来んと見える。それに、かなり大きな声で喚いていたから聞こえていたが……まさか、禪院家ではこの様な醜態を晒すことが常態化しているのか?」
捲し立てこき下ろす言葉に、呪骸越しでも隠し切れなかった怒り。
幸の当たり前の感情を、必死に背景に徹していた真依は感じ取っていた。
事実上の身請けと聞いて恐怖していたが、どうやら話が違うらしい、と。
当主の登場に頭を下げる事も忘れて、呆然と様子を見ていた。
「前評判の噂話故に……、信憑性は考慮していなかったから一応確認しておくが、禪院直毘人。よもや、このような呪詛師予備軍が、次期当主筆頭であるなどと宣う訳ではあるまいな」
「はっはっは。確かに性格と人望はご覧の有様だが、実力は俺を除けば一番なのでな」
幸の言葉の矛先は、そのまま直毘人にも向けられる。
つまり「一体どういう教育をしている」という、詰問だ。
ソレに対して、直毘人の返答は無関心。
才能至上主義の権化の様な禪院家の当主は、自らの才能を開花させて頂点に至った剛の者。
九十九由基という特級術師の誕生以前、下手をすれば呪術界最強だったかもしれないのが直毘人だ。
その為、彼はアニメと酒と術師の才能以外への興味は著しく薄い。
無論過去に存在していた天与の暴君の存在故に、その才能には真希の天与呪縛も含まれるが。
それは、差別意識の希薄さを意味している。
ある意味二人の扱いがこの程度で済んでいるのは、直毘人の配慮もあった。
だが同時に、そんな彼の要所以外の無関心は跡継ぎ候補筆頭の息子の、醜悪な人格形成を招いていた。
「それにしても、かなり当たりが強いな。それは真希と真依への憐憫だけではないだろう?」
「───お前達は禪院甚爾を犯罪者にした。彼への劣悪な虐待によって形成された人格は、察するに余りある。当時既に特級術師だった────後の最強に一度は勝利しうる人材を犯罪者にした。禪院家の罪は重いぞ」
「がっはっはっは! 返す言葉も無いな!!」
物理法則をその身一つで超越し、虚空を蹴り上げ空中機動さえ可能な超人。
それを禪院家は「呪力が全く無い」───即ち、術師としての才能の皆無さ故に迫害した過去がある。
無論直毘人が当主となる前の頃であったが、禪院家での彼の天与の暴君の境遇はそれはもう酷かったそうだ。
幸も流石に知らないが、幼少期に鍛錬用に捕獲した呪霊が放たれている『懲罰房』に何も持たされず放り出された事がある。
そしてそれは、彼より中途半端な天与呪縛の真希も──成長した暴君に刻まれたトラウマ故に格段にマシではあるが──劣悪な扱いなのは同様である。
「何やねんソレ、しょうもな。偽善振りがキショイで君」
いい加減苛立って来たのか、幸の言葉を直哉が遮る。
「君が何思おうが、一応コレもまだウチのモンや。人様の家の教育に口出さんといて───」
「───呪術規定、第9条」
「あ?」
そう、それは客観的杓子定規な目線から着目すると、あまりに致命的なものだった事を。
不幸にも直哉は勿論、禪院家の人間は誰も理解できていなかった。
「『非術師に対し、呪術を用いて危害を加えてはならない』────禪院家では、非術師を類人猿扱いする理解不能な風潮があるそうだが……。まさかそんな非常識な言い訳で、呪術規定を免れているつもりか?」
「はぁ!?」
直哉が愕然と声を上げるが、その客観的事実は否定しようが無い。
天与呪縛という特異性こそあれど、呪術規定に於いて真希は紛れもない非術師。
彼女の出自が、呪術師の名家・禪院家前当主の孫。そして現当主の姪であろうと何の関係もない。
仮に真希が高専に無理矢理入学し、どんな低位だろうと等級を得ていたなら別だった。
だが現在に於いて、それをどんな名目があろうが身内だろうと、彼女を呪力で以て傷付ければ規定違反となる。
仮に真希から鍛錬を申し込まれたとしても、直哉の最適解は『断る』か『呪力を用いず稽古する』。
或いは、総監部や高専に一度でも真希を呪術師扱いの特例手続きをするべきだった。その程度、幾らでも出来た筈だった。
それを禪院家の風習と傾向、差別意識が無自覚に考慮させなかったのだ。
彼女を非術師───猿と蔑み、虐げてきたのは他ならぬ禪院家。
今重要なのは、ただその事実のみであるが故に。
勿論直哉の性格上稽古を付けてやる、などといった殊勝な経緯は無いのだが。
そして禪院甚爾にまで問題を遡れば、当時彼を迫害した禪院家全員が規定違反の容疑者となる。
「アホ抜かせ、何を今更ッ……!」
「あぁ、その手の挨拶もまだだったな。改めて、自己紹介をしよう」
旧態依然を破壊する革新の寵児は、懐から取り出したタブレットに表示された一枚の画像を見せる。
その画面に表示された画像は呪術総監部からではなく、更にその上司である内閣総理大臣からの任命書。
「この度、総理肝入で新設された『呪術監査室』。その室長に任命された特級術師、与 幸吉だ」
『────ッ!?』
その宣言に、直毘人さえも瞠目する。
時代遅れでさえある、保守派で構成された呪術界の決定機関『呪術総監部』。
その総監部への推薦権を保有する御三家。
その全てへの、事実上のガサ入れを宣言したも同然なのだから。
同時にそれは、旧体制への死刑宣告でもある。
伝統という御題目に隠れた膿を一掃する、呪術界に今まで存在しなかった組織の新設。
その権限は必然その監査対象が総監部を含む為、緊急時に於いて総監部すら上回る。
旧来の総監部なら絶対に許容しない────しかし監査室の設立自体が、そんな総監部への任命権を持つ総理大臣による沙汰に他ならない。
「『この国のトップはあくまで呪術総監部』、そんな思い込みを当然と思う術師は多い。あの五条悟でさえそう思っていたのだから、術師家系の者ほぼ全てと言っていいだろう」
呪術界に浸透していた、その常識を幸は否定する。
そんな訳ねぇだろクソボケ、と。
「一般家庭出身の俺が言おう、“この国のトップは内閣総理大臣。ひいては、その選挙権を持つ国民だ”とな。どいつもコイツもアホ丸出しだ、勘違いも甚だしい。ここは国民主権の民主国家だぞ?」
国民に秘匿されている業界と組織、その決定機関が国の頂点など寝言も大概である。
総監部は秘匿性が高い事情故に、総理大臣からその権限を代行しているに過ぎない。
その総監部と、その推薦権を持つ御三家に問題が有れば、すぐにでも取り上げられる張りぼての権力だというのに。
そういう意味では、呪術師は全員国家公務員である。
「最早御三家と総監部の醜態は、総理や各大臣に周知。これからは御三家に許された『特別等級』も無くなり、呪術師は高専、ひいては政府に属する事になるだろうな」
「─────呪術界の根底を、根刮ぎ掘り起こしたか。一体何をした? 与特級術師殿」
「別に、特別な事はしていない。俺と夏油傑が現状の呪術界のアレっぷりを改めて調査し、汚職や問題行動の証拠を五条家当主である五条悟を含む、四名の特級術師全員で提出。改革を具申しただけだ」
「ガッハッハッ! 夏油特級術師と懇意とは知っていたが、……五条の倅ともか」
「無論、御三家全てに忖度無く査察は入る。そこで贔屓はしない」
「それは何より」
青褪める息子とは対照的に、呵々と直毘人は笑う。
ある意味、笑うしかないともいう。
国家転覆が可能であると認定された特級術師全員が、口を揃えて「今の呪術界は駄目」と理路整然に報告したのだ。
実際総監部、ひいては保守派筆頭として最も多くの総監部役員を推薦してきた加茂家などの癒着は語るまでもない。
「総監部は勿論、御三家もその特権を一時的に剥奪されるだろう。
総理を含む、内閣の大臣や議員は勿論非術師。そんな彼等からしてみれば、呪術なんて理解困難な生得技能を扱う連中の総監機関が腐敗し、国の頂点を僭称する───恐怖しない訳がない」
その気になれば国会中に乱入し、皆殺しにするなら一級術師でも可能な者は居る。
総監部をイキナリ裁くとなれば本来慎重にならざるを得ないだろうが、幸か不幸か意見具申したのが特級術師全員である。
幸の呪骸と夏油の呪霊で、総理含む大臣全員の警護は万全。
仮に特別一級術師であろうとも、ソコに加えて現代最強 五条悟が控えているとなれば、躊躇する理由が無くなったのだ。
しかし呪術界に政界は門外漢も良い所。
よって、呪術界を監査する組織が求められた。
寧ろ何で存在しないんだ、と叫んだ者も居たとかなんとか。
「今更だが、今回は禪院真希・真依の保護と、禪院家への監査に来た。勿論、先程の醜態も記録済みだぞ、禪院直哉」
「最初から、俺等の粗探しが目的やったんか……!」
「俺の術式なら、本来被写体に映らない呪霊や呪術も記録出来る。俺は上にとって都合が良い人材だった訳だ」
非術師である真希への暴行に、正当な理由など言い訳の仕様など無い。
真希への聴取が行われれば、それまで暴行を行った者も芋蔓式で規定違反となる。
「術師はその責務から特権を、相応の義務と責任と共に与えられている。どうやら名家と名高い御三家の惨状は、見るに耐えないらしい。そしてお前は現行犯だから、細かい調査や裏取りなど必要ない。お前の先程の醜態で証拠としては十二分だ。
言った筈だ。己の言動には注意しろ、と。無論、その忠告をした時点で、お前は詰んでいたがな」
「ッ……!」
進退窮まる。
禪院直哉の状況は、まさにそれだった。
御三家当主の子息という立場も、次期当主筆頭候補等といった肩書きは幸には通じない。
先程の言を信じるならば、総監部さえ幸の裁定対象なのだから。
「さて、お前を呪詛師予備軍扱いした理由の説明はこれで十分か?
────では禪院直哉、非術師への暴行の現行犯で拘束させてもらう」
この場を逃げても、果たして何処に逃げるというのか。
幸の術式が傀儡操術なのは、直哉も知っている。
目の前の幸も、幸本体が遠方より操る人形に過ぎないのも。
だが規定違反者にどのような罰が与えられるか、勿論規定されており直哉もよく知っている。
良くて謹慎や拘禁。幸の言う通り呪詛師認定や、最悪の場合公開・秘匿死刑もあり得る。
だが、直哉の真希への暴行は今回だけではない。
禪院家の全員に聴取が行われた場合、評判が『クズ。うんこ。うんこクズ』な直哉である。
謹慎や拘禁程度で済む訳が無いのだ。
だが、それ以上に。
「見下すなや……!」
直哉が真希に向けるような、いやそれ以上に幸の無機質な視線と態度が、直哉にとって許容出来るものではなかった。
「─────」
普段なら、直哉とてその選択は取らない。
寧ろ計算高い方である彼だが、進退窮まった状況が精神的にも追い詰められていた。
あり得るかもしれない未来に於いて、自分を差し置いて
幾ら混乱した情勢だとしても、直接殺害してでも己が当主にならんとする暴挙に及んだ様に。
自らを裁かんとする馬の骨を叩き潰す、という短慮を選ばせた。
「(コイツは、個人で軍隊を保有出来るからこその特級! 悟君とは違う!!)」
禪院直哉の術式は、父・直毘人と同様『投射呪法』。
現代最強である五条悟を除き、『最速』の術式である。
練度や経験値は直毘人に遠く及ばぬとはいえ、伊達に次期当主候補筆頭ではない。
「(目の前のコイツはあくまで呪骸。秒で解体、残穢から近くに居る貧弱な本体を引き摺り出して、手出し無用の縛りを結ばせたるッ!)」
一秒が24分割され、真希を踏みつけていた直哉が彼女と真依の視界から消える。
並の術師では、軌跡さえ捉えられぬ術式を発動し──────突然、その機能が停止した。
「は─────?」
間違いなく発動していたが故に、一瞬で幸から半歩の場所に移動。
しかし其処で前のめりに立ち止まった直哉は、呆然と声を漏らす。
先程の驚愕からのものではなく、理解不能故の疑問符。
生得術式が回路に例えられるなら、まるでその回路が焼き切れた様な錯覚に陥る。
少なくとも、領域展開を習得していない直哉にとって初めての感覚であった。
補足するならば、術師は程度の差はあれ術式とは殆ど物心付いた時からの付き合い。
それが急に使えなくなれば、大抵の術師は呪力操作さえ覚束無くなるだろう。
彼が呪力強化を維持出来ていたのは、彼唯一の長所である力への渇望と努力のお蔭か。
そして初めての体験に心身共に硬直した刹那、直哉は見た。
前のめりでガラ空きの顔の横っ面に迫る、幸の拳を。
「この人形風ぜッ」
「─────『黒閃』」
黒い火花が弾け、庭先を抉りながら吹き飛ばされた。
『黒閃』────打撃との誤差が0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる、特殊な発光現象。
これを撃てたかどうかで、術師としての境界を越えたかが定められるとさえ言われる、奇跡と偶然の産物。
狙って撃てる術師は、存在しない。
つい、最近まで。
「俺がこの家に足を踏み入れる前から、この家の人間全員の言動は全て録画済みだ。勿論、お前の暴言や暴行、今の軽挙妄動も含めて」
自分が何度もそうされていた様に。
同じ様に砂利の上で力無く転がる直哉を見て、真希の胸中に去来した感情は果たして何か。
ただ、同じ光景を見た真依と同じく彼女達は理解した。
これが、人生の転換点だと。
「──────追って沙汰が下る。精々これ以上醜態を晒してくれるなよ、屑」
Q「ドブカス君は仮に呪骸を破壊できたとして、幸に縛りを結ばせる事が出来たのですか?」
A「勿論直哉は幸の天与呪縛を知らないので、本体が近くにいると原作パンダ同様に勘違いしていました。
話の流れ的に真希への暴行の現行犯の方がまとまり良かったので今回はそうしましたが、仮にその場を凌げても他の禪院家の面々からの聴取で逮捕一択だった為、どう足掻いても詰みです」
Q「この後直哉はどうなりますか?」
A「実力が非常に高いので、処分と引き換えの縛りをバチバチに結ばされて呪霊狩りに従事して貰います。縛りで逃げる事も逆らう事も出来ません。縛りって便利!
それはそれとして、術師の規定違反の懲役とかそこらへんどうなってんだろう?無いんだったら無期懲役です」
非術師への術師の暴力は、一応原作で描写されている限り「プロヒモに拉致監禁された、黒井美里の奪還」時のみ。
つまり犯罪者相手といった相応の理由なしに、呪術師の非術師への暴行は規定通り禁じられている訳ですね。
あんなクソみたいな家訓? 掲げてる禪院家の粗が、幾らなんでも多すぎる。
◆『確定黒閃』
幸の発明の一つ。
クリティカルによる威力上昇、呪力操作能力を筆頭とした各種潜在能力解放。また一時的なゾーン入りなど、ぶっちゃけ単純威力よりその後が本番な『黒閃』を意図的に発生させる術。
打撃や斬撃の接着面のみに展開した結界で環境条件を整え、複数スパコンによる演算された機械的な呪力出力によって成立した、科学力のゴリ押し。
なので理論上、防御黒閃なんて芸当も可能。
開発協力・監修:東京都薨星宮在住の天元さん。
◆『
幸の発明の一つ。
領域展開直後の、所謂『術式の焼き切れ』現象に似た作用を錯覚・誘発する技術。
今回直哉に使用したのは、機械でなければ発声不可能な超音波に呪力を乗せたもの。
理屈は超音波版の簡易呪言なので、呪言同様に呪力で聴覚を防げば対処可能。
ただし呪言と違い超音波故に予備動作が無く、かつ行動強制ではなく誤作動の誘発なので術者に反動が一切無い。
また脳に作用出来れば音である必要はなく、光や匂い、高周波振動でも運用可能。
なので五感全てを呪力で常に防ぐ必要があり、乙骨並の劣悪な呪力効率を強制される。
加えて出力次第では、呪力防御を突破される場合もある。
勿論、術式を持たない術者には何の意味も無い。