思いついたSS冒頭小ネタ集   作:たけのこの里派

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【ポラリス】にまじないを。 2話

 

 

 

 私、星野アイは捨て子である。

 おかあさんにどんな葛藤や事情があったかは分からないけれど、私は客観的に見てどう考えても虐待の末に母親に捨てられた娘である。

 仮に私がアイドルになろうと、大好きな人の子供を三人も授かったとしても、それは変わらない。

 だってそれは、おとーさんが保障してくれたことだから。

 

『お前が母親と離縁する事になった件について、お前は何も悪くない。それこそ母親に中指おっ立ててFワード連発しても許される。魔性の諸相なんざ、生まれつき体がデカい位のモンだ。

 もし大人になってから会う機会があれば、精々罵詈雑言をくれてやるといい。そん時幸せだったら惚気けてやれば良い。

 つーか、「おとーさん」じゃなくて「先生」と呼べ馬鹿娘』

 

 私を引き取ったおとーさんは、頑なに私が『父』と呼ぶのを嫌がった。

 きっとあの人なりの考えがあったんだと思う。

 だけど、私にとっての父親はあの人だけだった。

 

『元より適応障害……自閉スペクトラム症、加えて愛着障害か。虐待の傷跡こそないが、やや欠食気味。とりあえず飯はちゃんと食えよ、タッパ伸びねぇぞ。米がダメならパン食え。

 良く食ったら、良く動いて、良く寝てりゃ心は兎も角身体は良くなる。そしたら心も良くなるかもしれんからな。

 スタイル良かったら、良い男捕まえんのにも役立つかもな』

『おとーさんは捕まってくれる?』

『えぇ……? まぁ、今付き合ってる女はケツと胸とタッパのデカい良い女だが……。最近の小学生はマセてんなぁ。いや、一周回ったのか?』

 

 おかあさんから色々聞いていたのか、私がガラス片を混ぜられてた(お米が苦手な)のとか、色々気を遣ってくれて。

 多分、おとーさんにとって私の治療期間だったんだろう。

 実際おかあさんに捨てられた私は、『愛』が何なのか解らなくなっていた。

 だから少しでも私を、当たり前の子供の様に抱き上げ、肩車をしてくれていた。

 これも治療の一環。だけど、少しずつ少しずつ、彼は私を愛してくれていると理解できるようになっていった。

 おかあさんの彼氏も色目を向けた私に、そういう興味なんて無いと何よりも行動が雄弁に語っていた。

 

 私はおとーさんに質問した。

 愛って、何? と。

 

『愛とは求める心。そして恋は、夢見る心。恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる────……と、誰の言葉だったか。

 少なくとも弩級の捻くれだったな、確か』

 

 聞いた時は勿論、今でも難しい話でキチンと理解なんて出来ていない。

 だけど、何となく納得は出来た。

 私はおかあさんに、当たり前の家族関係を求めていたんだ。

 

 そうして私は、解らない事を自覚した。

 おとーさんは、血も繋がっていない私を愛してくれている。

 ソレが出来るのは、おとーさんがすごい人だから。

 だけど、私はおとーさんを愛しているのかな? 

 

 解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない解らない。

 私の『これ』が愛なのか、それとも醜悪な執着なのか。

 だから必死に『嘘』をついた。

 おとーさんが求める理想の娘を。

 幸か不幸か、私には『嘘』の才能があったのか、学校でもソレ以外でも皆を偽ることが出来た。

 私がついた『嘘』に皆が騙されている間だけ、私は『私』に嘘がつける。

 私も、おとーさんにアイを返せているのだと、自分に嘘をつく事ができた。

 できた、のに。

 私のおとーさんは、特別だった。

 

『下手糞め。俺相手だと口の端が震えてるぞ、馬鹿娘。子供が家族相手に無用な気を遣うな、むず痒い』

 

 嘘吐き。

 そんな訳無いのに。私が何度、鏡の前で練習したと思ってるの? 

 おとーさんは、そんな私の嘘をアッサリ見破って。あんまりそうじゃないって言ってたけど、今思えば()()()ってヤツなのかな? 

 自分についた嘘さえ破り捨てる。

 なんて酷い人だろう。

 おとーさんは、『私』を私のまま愛してくれて───そんなおとーさんを「愛している」か解らない自分が、嫌で嫌で堪らなかった。

 

 あれだけ、おかあさんにアイを求めていたのに。

 今はおとーさんのアイに押し潰されそうだった。

 幸せなのに、おとーさんを「アイシテイル」かが解らない。

 そうなれば、もっと分からないことがある。

 どうして、おとーさんは私を愛してくれるの? 

 捨て猫を拾った人間のような感覚なのか、あるいは私に何かを見出してくれたのか? 

 

 私の不安はバカ丸出しだったけど、当たり前の恐怖は今でも当然のものだと思う。

 与えられた愛に意味など求めるな、なんて大きいことを私が言える訳が無いんだから。

 だから、そんな不安から一つの未来を妄想する。

 

 ───もし、おとーさんが私を愛してくれなくなったら? 

 

 ふと考えた最悪の可能性に、思わず足元が崩れる錯覚に陥る。

 恐怖だった。だってそうでしょう? 

 これだけアイしてくれているのに、碌にアイを返さない出来損ないの小娘が。

 一体彼をどうやって引き止め、繋ぎ止めるというのか。

 

 そんな時だ。

 私が、アイドルにスカウトされたのは。

 

 アイドル。

 テレビの前やステージの上で、皆に『愛』を振り撒くお仕事。

 私をスカウトした斉藤社長は、グラサンと金の短髪でドラマに出てくるヤクザ屋さんみたいな外見に反して、興奮する様に自分の夢を語った。

 

 スカウトなんて、よくされる。

 いつもは私の容姿だったり、おとーさんの言う『魔性』に惹かれて、下心も隠せない人ばかり。

 そういう人には無視一択で、しつこい営業だったら防犯ブザーを躊躇無く引き抜いてやるんだ。

 

『お前が術師だったら、躊躇無く技を仕込むんだが……コレばっかりは先天だからな。よってお前への護身術は心構えとか、あるいは道具一式への遠慮の無さか。

 武道? そういうのは、健康優良児になってからだ』

 

 でも、サイトウ社長は違った。

 自分の夢に真っ直ぐで、私をステージに立たせる想像に恋していた。

 ヤクザ屋さんみたいな外見の癖に、ドラマで見る熱血コーチみたいな人だった。

 

 だから、話を聞こうと思って。

 奢ってくれたジュースを飲みながら、昏い星を宿しながら私は嗤った。

 

「見る目無いね、しゃちょー」

 

 私に。愛の何たるか以前に、自身の愛の判別さえも判らない小娘が。

 アイドルなんて出来る訳がない。

 

「それとも、お客さんに嘘を吐くの?」

 

 詐欺も良い処だ。

 お金の代わりにお客さんに振り撒く筈の愛は、粘土を捏ね繰り回した泥団子も同然のニセモノ。

 

「客商売で笑顔作んのは当たり前だろ。営業マンはデフォで笑顔だと思ってんのか? そもそもアイドルは客に()()振り撒く仕事だぞ。アイドルなんて等身大の年頃の女子だからな、前提として。

 そんでもって、今のお前を見て確信したぜ。お前は正真の、『嘘吐き』の天才だ……!」

 

 それを、悪い笑顔で興奮気味に社長は肯定した。

 自身の愛の判別さえも判らない? なら先程まで被っていたペルソナ同様に、それっぽい仮面を被れば良い。

 嘘の一体何が悪い。

 嘘一つ吐けないで、現代社会で生活出来ると思っているのか。

 

「それにコレは少々無責任な発言だが、嘘がいつか本物になるかもしれないだろう。世間一般における『パクリ』ってのは、商業利用しない限り『学習』って呼ぶんだぜ。そして『愛』なんてモンに、商標登録なんて概念は介在しねぇ。全人類のフリー素材、パクリ放題だ」

 

 社長の口説き文句は、私の心を揺さぶるのには十二分が過ぎた。

 実際問題、私は学校での交友関係を「広いが極めて浅い」に成るように嘘を吐いている。

 小学生でも恋愛をしている生徒は居るし、教師から色目を向けられた事も一度や二度では足りない。

 多分当時は自覚していなかったが、どうやら私はその頃からおとーさん以外の男性が無理だったらしい。

 勿論部活動なんてものはしておらず、結果勉強くらいしか下校後にやることがなかったのだ。

 必然、学校にいる時間は減っている。

 

 嫌なら辞めれば良い。

 そんなある種軽い気持ちで、心の奥底の焦燥を隠しながら。

 取り敢えず、おとーさんに話を持っていったのだった。

 勿論、滅茶苦茶揉めたのだが。

 

 これが、私の2つ目の転機。

 1つ目は勿論、おとーさんの義娘になれたこと。

 

 これは後に、一番星のアイドルなんて呼ばれることになる私が。

 常に其処で輝き続ける北極星に、必死に手を伸ばす物語(じんせい)だ。

 あんまり他所様には、話せない物語だけれどね。

 

 

 

 

 

壱話 星野アイは愛してる

 

 

 

 

 

 星野アイの躍進は何時から始まったか。

 かつて雨宮吾郎だった頃には、既にアイはグループ『B小町』の中で最も際立った存在だった。

 そもそも俺がアイのファンになった切っ掛けである、先生の患者であった─────天童寺さりなちゃん。

 彼女に勧められ見せられた録画だけでも、彼女は隔絶していた。

 先生とさりなちゃんと共に、『B小町』のライブステージを観に行った時には、ガチファンと成り果てていた。

 十歳も年の離れたさりなちゃんと、完全にシンクロしていたと言っても良い。

 そんな醜態を先生に晒しながら、前述の疑問を聞いた所──────。

 

『最初のライブからだったな。デビューライブってんで、時間作って観に行った時はまだアソコまでじゃなかった……いや、あの時何かコツでも掴んだか? 

 アソコまで飛び抜けてると、他のメンバーはキツイだろうな。プロなら引き立て役に徹しつつ、独自の手前の顧客を確保しに動けるかもしれんが……』

 

 エラく舞台裏を意識したコメントを頂戴した。

 色々考えさせられたが、箱推しのさりなちゃんが大変喜んでくれた事で、そんな思索は投げ捨てた。

 あの思い出が、彼女の悔いをほんの少しでも減らせたと、祈るしかない。

 

 そして、アイの娘となった今でも彼女は変わらず輝いていた。

 俺とルビーが駄々を捏ね繰り回した事で、彼女のライブを観に行った。

 ついルビーと共にガチヲタ芸を見せ、SNSデビューとかいう壱護社長バチ切れのポカを晒したが、妊娠と出産という一大転機に際しても、彼女の魅力は1ミリも損なわれず、寧ろ魅力を増していた。

 

 既にアイドルとしてだけでなく、モデルなどのタレント業も行っていた。

 勿論他のメンバーにも他の仕事はあっただろうが、アイの仕事の数は段違いだった。それこそ高校を中退する程には。

 恐らく、俺達を養う為なのだろう。

 

『おとーさんは、私の為に沢山お金は遺してくれたんだ。けど、出来ることなら私が稼いだお金でアナタ達を養いたい。アナタ達を産んだのは、私の身勝手で我儘だから』

 

 何となく、俺達の出生の経緯を想像させる発言だった。

 少なくともこの発言時のアイは、まだ高校生。

 そんな彼女が三人も子どもを育てる負担は、未婚で子どももいなかった雨宮吾郎(おれ)には計り知れない。

 尚、必ず居るであろう俺達の父親。即ちアイの男とも呼ぶべき存在を、ルビーは完全否定しアイ処女受胎説を称えていた。

 あまりの厄介オタクにドン引きしたが、実際以前(ぜんせ)でお腹を大きくし患者として現れた時は、俺も相応に動揺したので気持ちは分かってしまう。

 一瞬とはいえ、転生条件「アイドルは排泄しない」とか言っちゃう奴なのか? と思ってしまったのは、仕方のないことだろう。

 

 そんな絶賛売り出し中のアイドルに、男の影は在ってはならない。

 若年出産が露見するなど、アイドル生命にとって致命だ。

 だから俺達三つ子の存在を知っているのは、アイを含めたった数人。

 

 アイ本人と、会社『苺プロ』の社長にしてアイをスカウトしアイドルグループ『B小町』を結成させた、斉藤壱護。その夫人……にしては、エラく物欲というか偽装結婚感というか、壱護社長への愛情というのはあんまり感じられない、斉藤ミヤコ。

 そして────俺達がアイの子供としての自分に馴染み始めた辺りで現れた、ベビーシッターだ。

 

『保育員の斉藤ジンです。よろしくお願いします』

 

 斉藤社長似の金髪を撫で付けた、ムカつくことにモデル顔負けの美少年。

 高校生なのか、大学生なのか判らない男の登場に、俺達は戦々恐々だった。

 苺プロにとって最高機密であるアイの子供の、アイ自身が仕事で忙しい間の面倒を見る人物である。

 余程信用できる人物でなければならない。

 名乗りが真実なら、社長の親族なのだろうが果たして信用出来るのか。

 

 そして最大の問題点。

 というかコレが一番ヤバいのだが─────アイとの距離がビックリする程近いのだ。

 初めて顔を合わせた際、アイは只管固まってジンを見続け、その後別室に社長達と共に移動してから─────控え目に言って、ベタベタしていた。

 

 イチャイチャではないとするのは、接触の殆どがアイからであったから。

 ジンはそれを軽くあしらい、彼女はそんな雑な扱いにも大喜びしている。

 ルビーは深夜キレ散らかしていたが、俺も穏やかでは居られない。

 

 自分達の父親候補筆頭が降って湧いて、自分達の世話をし始めたのだから。

 アイ処女受胎説を提唱しているルビーなんて、態とグズり喚き散らしてジンを困らせようとしたほどである。

 だが、

 

『元気なのは大変結構。が、その分幼稚が過ぎる。気持ちは解るが静かにしていろ』

 

 トン、と額に指を突き立てた途端、ルビーの意識が吹っ飛んで気絶? していたのだ。

 そのままオムツを鮮やかに交換し、此方を見据える。

 どこか見覚えのあるような、悪戯小僧の様な笑みで。

 

『お前もお灸が必要か? アクア』

 

 絶 対 バ レ て る。

 何故、どうして、いつ。

 様々な疑問を刹那の内に走らせるも、結果として俺は何も見なかった事にして、安らかな眠りについた。さらば愚かな妹よー。

 謎のベビーシッターとのファーストコンタクトは、こちらの全てを把握しているような圧倒的得体の知れなさ。

 トドメによくわからん謎パワー一発で築き上げられた、絶対の上下関係という結果で終わった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

「うん、そういう反応になるのは無理はない。ただ私から言えるのは『君の娘は狙われている』事と、私は『その犯人を認識できない』という事だ」

 

 長い白髪に、黒と白が基調の着物を着た女性と一人の少年が、鍾乳洞の中を歩む。

 その両者が結界で構築された命なきヒトガタの端末であり、日本呪術界に千年以上存在している呪術師であった。

 そこは日本全土に敷かれた、国を呪霊から護る大結界───日本浄界の基点の一つ。飛騨霊山浄界の内部。

 これはとある呪物を求め、現在海外に飛んでいる羂索と名乗る一人の呪詛師を討つ為。

 その施策として密かな道程の中で、行われていた会話だった。

 

「知っての通り、私は日本浄界を通じて結界内、つまり日本本州のほぼ全てを認識できる。特に私が星漿体との同化に失敗……いや、悟った気になって進化を受容した以降は、特にね」

「宜しい。そこ訂正しなかったら、由基の代わりに本体殴りに行ってたわ。つーか由基を薨星宮まで案内してサンドバッグにしてたわ」

「死なないからって、私に何しても良いと思っていないか? ───話を戻そう。君の義娘、アイの出産直前に殺人事件があったのは知っているだろう」

 

 その話題に少年───今は星野カイトという名を、奇妙な形で自らに与えた妙見の眼が酷く冷たくなる。

 その一件で殺された被害者は、彼にとっての娘の謎の妊娠を機に再会した教え子なのだから。*1

 

「犯人が逮捕された後、一度不起訴に成りかけた事があった。これは当人の錯乱具合から、責任能力の欠如を問われたからだ。幸い、無事五年の懲役を言い渡されたがね」

「錯乱ね」

「私がそれを知れたのは、周囲の人間の言動から逆算したからだ」

「…………」

「病院関係者に目撃された、二人の不審人物。私はその内の一人である雨宮吾郎の殺人犯、菅野良介を()()()()()()()()()()

「マジか。術式? いや、呪力特性か?」

「少なくとも、君や羂索の様な卓越した結界術の使い手を想定するより、余程建設的だろう?」

 

 天元の結界は『隠蔽』に特化している。

 呪霊の存在を千年非術師に隠し通せたのは、この結界の特性のお陰だ。

 だが、この世界に唯一無二などそうそうあり得ないのと同じように。

 その特性を有する存在が生まれても、何も不思議ではない。

 

 ただの悪質なストーカーによる犯行、などといった結論で終わらせて良い事件ではなかった。

 迂闊にも病院とその周囲の監視カメラに映り、雨宮吾郎に見付かった上に不用意に殺害。結果簡単に足がついた、衝動的な殺人事件ではないのだと、妙見は嫌そうに顔を歪める。

 

「妙見、君は星野アイと病院に結界を張っただろう。呪霊や術師といった、一定以上の呪力を持った者を阻む帳のような結界を」

「そりゃ、病院は呪力溜まりの一つだからな。ワンチャン呪霊に襲われたら事だ」

「恐らく、菅野良介とその共犯者はその結界に阻まれたんだ。だから途端に目標を見失った菅野良介は、簡単に捕まったんだろう」

「そのストーカーは呪詛師……いや、被呪者だったと?」

 

 件の犯人は非術師。

 そう判断した理由は2つ。

 一つは術師ならば警察に素直に逮捕される事も無く、何より残穢によって警察とは異なる者達に拘束される筈である。

 もう一つは、そして懲役という真っ当な形で裁かれている点。

 仮に犯人が術師ならば、人を殺している時点で秘匿死刑は確定している。

 そうでない以上、件の犯人は非術師であることが分かる。

 

 そして呪術には憑霊、という単語が存在する。

 呪霊が人に取り憑く、そう珍しくもない事例の一つだ。

 そもそもアイの悪質なストーカーだったとしたら、犯人はどうやって宮崎の病院まで辿り着けたのだろうか。

 

 もし犯人の言動が支離滅裂で錯乱していると判断されかけたのが、呪霊憑きであるのが原因だったのだとしたら。

 隠蔽に特化した呪霊ならば、呪術的にそこまで大きな事件でない以上、隠蔽を突破出来る程の術師は派遣されない。

 被呪者がそう判断されない結果が出来上がる。

 

 では、そこまで分かっていながら二人が動かない、動けない理由は何か。

 勿論、相対的にたかが一呪霊などに意識を払えない程の問題が存在しているからに他ならない。

 

「羂索によって私と日本全土の超重複同化がなされれば、最低でも日本が終わる」

 

 ───羂索。

 脳を入れ替えることで、他者の肉体を転々とし千年暗躍し続けてきた史上最悪の呪詛師。

 この『面白いと思ったから』という理由で、世界を滅ぼしかねない計画を立てているあんちくしょうが問題児すぎた。

 

「被害が日本全土、場合によっては全世界にまで波及する可能性がある以上、私達の当面の最優先事項は羂索だ。それ故に『天元(わたし)は現に関与しない』という、あの子の先入観(ゆだん)を破る訳にはいかない。我々の最大のアドバンテージだからね。

 だがそれが終われば、君はこの問題に着手する事になるだろう。犯人が本当に星野アイを目的にしていたとしたら、だが」

「はー、メンド」

 

 呪術の眼には映らない、呪術的な透明人間。

 真犯人、或いは黒幕が呪霊なのか呪詛師なのかさえ不明な、かつて義娘で今は母となったアイドルを付け狙う存在。

 妙見という千年現を歩む呪術師にとって、千年に渡る難事だと言えるのは、羂索という呪詛師による一連の呪術テロだと言えるだろう。

 

 だが星野カイトとしての難事は、間違いなくコレだと言えた。

 これは、一人の一番星を巡って起こった難事件(ものがたり)だ。

 

 

 

 

 

*1
この時の妙見は娘に逆睡姦されたことを知らない。つーかあまりにあんまりなんで、天元も言うタイミングを測っている




一端ここまで。

斉藤ジン
 斉藤社長の親戚を名乗る、高校生から大学生程度の謎の保育士。
 その正体は勿論星野家の唯一の野郎で、一端Tさんの外面をある程度整えられた事でコッチに回すことができた、結界で作成した端末。
 呪術界の現代最強(五条悟)にどう接触するか思案しつつ、斉藤社長夫妻に色々ぶっちゃけベビーシッターという形で行動する。
 基本的に育児をミヤコに丸投げされている状況へのフォローであり、当初乳児卒業程度で破棄する筈だった。
 尚、そのアイ譲りの整ったビジュアルにドハマリしたミヤコの懇願で、その後も保育員として行動する。
 端末成立の縛りは「本体であるカイトに仮想人格を設け、ほぼ無防備にする」こと。この端末が行動している最中は、本体であるカイトは外見通りの幼児である。
 名前はカイトの由来である「ジンカイト」から。とある呪いの王の双子の転生体の息子と同名なのは、完全に偶然。
 端末の外見は星野カイトをそのまま成長させたのを、髪を星野姉妹と同じ色にしたイメージ。つまりほぼ原作アクア。
 ちなみに金髪したのは、壱護の親戚をアピールするため。その時はアイのやらかしは知らなかった。
 その正体を察した愚娘(アイ)から自動的にやらかしを暫く先で知ることとなり、平安メンタル故に倫理的なアウト要素ではなく、その際に彼女が適当に盛った睡眠薬が完全に致死量だった事に切れ散らかした。
 平安時代当時のヘンタイ性癖は、シキブ・ムラサキ=サンから分かる通り、ジッサイヤバイとされている。

星野アイ
 義父を殺された復讐誓って数ヶ月で義父がリポップした、一番星のアイドル。
 彼女の嘘の悉くを見抜かれた義父に心から依存する。それを解きほぐす前に義父がどっかのメロンパンに殺された為に、執着と妄念に変貌した。
 当然非術師で、特性も元の呪力が漏れ出る程度の出力なので、術師は勿論非術師でもある程度の精神力で抵抗できる。ライブとか見に来る奴等は無防備なのでバチバチに効く。
 そこにアイドル活動というある種の儀式ともいえる形で呪力を整える事で、呪力特性が開花した。
 本来原作では双子がライブに来たことで覚醒したアイドルとしての才能が、本作では妙見が来たタイミング。そして三つ子出産後に、妙見の他殺された事を知った事で奇しくも原作ルビーと同じ形で二度覚醒している。
 その分他のメンバーに皺寄せが生じるも、当時復讐心から漏れ出た殺意に他メンバーが怖気付いた事と、アイドル契約に盛り込む程に妙見が念を入れて壱護に注意した事で、原作程表立った軋轢は生んでいない。
 ちなみに事に及んだ際、自身に処方されていた睡眠導入剤を良く考えずに妙見に盛った為、妙見が反転術式の達人でなければ死んでいた模様。
 謎のベビーシッターの出現により、幸せの絶頂に。
 ちなみに彼女の嘘を見抜く事に関して、当人は「こう、呪術師が相手の呪力配分や『起こり』で次の攻撃読んだりするじゃろ? アレの応用」とか供述しており。

元医者の赤ん坊
 作者の手癖「原作主人公のTS」の犠牲者で、「コレ男やからここまで叩かれるけど、女子やったらマシちゃう?」という判断の産物。
 謎のベビーシッターに、初対面で上下関係を刻まれた謎のベビーシッターの姉。自分が転生しているので、イキナリの謎パワーへの受容が早かった。
 流石に外見年齢的理由で、謎のベビーシッターの正体までは行き着いていない。
 ちなみに、先生かつ先輩には父性にも似た感情を持っていた。
 そんな義祖父となった男の死に関しての情報は、当然一切持っていない。
 とはいえ母となった元患者の傍に居ない事から、色々察している。

元終末期医療患者の赤ん坊
 憧れのアイドルにして母に現れた男の影に、色々現実を無視して存在ごと否定していたが、明らかに超能力的な力と何故か逆らえない自分に脳破壊されている。
 ちなみに前世に於いて主治医が反転術式の達人だったことで、根治こそ叶わなかったが一時期『B小町』のライブに車椅子とはいえ何度も行く事に成功している。
 彼女にとって近くに居るだけで病と治療の苦痛を無くしてくれる、父の様でもう一人の憧れの対象だった。
 そして兄同然の吾郎も含め、その死を知って母譲りの「人を騙し、操る嘘つきの才能」に目覚めるのは、もう少し先の話。

元天才アイドルの義父だった赤ん坊
 結界で作った端末に意識を移している為、縛りの都合上完全にただの乳児。
 現在羂索が日本浄界に仕組んだ死滅回游の結界にバックドアを仕込み、発動と同時にメルトダウンするように仕込みを行うため、ベビーシッターとは別の結界端末で天元と共に行動中。

斉藤夫妻
 脈は全然あるのに、実質偽装結婚めいた関係の『苺プロ』の社長夫婦。
 スカウトした売れっ子アイドルの、犯人不明で殺された義父がアイドルの息子になって現れるとかいうバグにエンカウント。
 とある経緯でアイが狙われていると知った妙見によって、呪術規定的に必要最低限ではあるが呪いの存在を教えられ宇宙猫に。
 ミヤコは最大のストレスである三つ子の保育役を代わって貰い、加えてアイ譲りの美貌の少年に事実上接待して貰え、当初理想としていた結婚生活?を大満喫中。
 尚、本作で一番割を食うのは壱護社長である。そこまでやるのは後三話くらい追加で必要なので、描くにしても当分先。

天元
 端末がかなりアッパー修正入って美少女になった、千年振りにセルフ監禁勤務から脱却したサウザンド社畜。
 渋谷事変そのものは阻止できなかったが、その後の死滅回游阻止には成功する。
 そんな約十年後でクソボケ好奇心の権化を止めた後は、幼女姿で「ツクヨミ」と名を偽ってとある姉妹に接触したり。つまりそういう事である。
 偶々ツクヨミと天元の外見が似てたのが悪い。

羂索
 加茂憲倫、虎杖香織など多くの名と体を奪い暗躍してきた、史上最悪の呪詛師。
 千年『北』に邁進し続けた、闇の松岡修造とも。
 原作主人公の兄の父にして、原作主人公の母な奴。
 原作【呪術廻戦】の元凶で、時系列的にまだ海外でとある呪物を探し中。
 渋谷事変では、「五条悟封印」こそ特級呪霊達の存在が邪魔で妙見達が介入できず成功するも、その後に特級呪霊達が祓われた後に封殺される。
 つまり千年前の術師の受肉と現代非術師の覚醒は成せたが、死滅回游自体は防がれた。
 加えて呪力に当てられた一部の器から呪物は摘出されたため、『天使』と『万』を含めた複数人は受肉失敗している。

カミキヒカル
 原作【推しの子】の元凶で、被害者要素が塗り潰される程に最大の加害者。
 本作のクロスオーバー要素でかなりアッパー修正された。正負双方のご都合な原作の、ガバガバな設定矛盾の齟齬を減らしたとも。
 原作と違いアイとの関係は一方的かつごく短期的であり、それ故にアッパー修正が必要だったとも。
 ちなみに妙見の血が入っていたりするが、完全にフレーバーである(妙見の血筋は術式の関係上、非常に広い)
 現在アイへの失恋から盛大に拗らせており、とある手段でその子供たちの存在を知った事で、その父親を嫉妬と殺意から捜索している。
 なのでアイの周囲で唯一の男性が被害に遭うことに。

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