がっこうぐらし!の世界にいつもの三馬鹿を突っ込み全力で鬱フラグを壊していくだけの内容
みーくん視点です、二部構成です
何気ない日常が崩壊してから、どれくらいの時間が経過しただろうか。既に外の陽は傾いており夕焼けの日が差し込んでいる。
喧騒で満ちていたショッピングモールは一転し、人の悲鳴や足音が響いていたがそれも聞こえなくなった。
微かに聞こえるのは不規則な多数の足音。
間違いない《奴等》だ。
「ねえ、美紀。何が起きたのかな……?」
私の隣で膝を抱えて蹲る圭は震えた声で私に話しかけるが、私は首を横に振ることしかできなかった。
私、直樹美紀は学校終わりの放課後にこのショッピングモール《リバーシティ・トロン》へ訪れていた。読書が趣味の私は新しい本が発売したと聞いて買いに来たのだ。親友の祠堂圭も新しい音楽のCDが欲しかったらしく一緒に来ることにしたのだ。
その後は暴動を知らせる館内放送、人を喰らう《奴等》、逃げ惑う人々
この時から平和な日常は終わった。
「……いつまでもここにいる訳にはいかないよね」
逃げ惑う人々や押し寄せる《奴等》により階段もエレベーターもエスカレーターも使えなくなった私達は二階の服売り場の試着室に二人で隠れている。
恐らく《奴等》に見つかるのは時間の問題。圭の言う通りいつまでもここにいる訳にはいかないだろう。
「でも圭、どうするの?」
「従業員専用のスペースがある上の階に逃げよう。もしかしたら私達以外にも人が居るかもしれない」
私の問いにそう答え、圭は試着室のカーテンを少しスライドさせて外を覗く。
私も圭のようにカーテンの間から外を覗いた。
遠くにはのっそり、のっそり、と緩慢な動きをする複数の個体が目に入る。
「あいつら動きは遅いみたい。走り抜けれるかも」
圭の言葉に私は頷いた。どの道、生き残るにはそれしかない。
未だに震える膝に鞭打ち立ち上がる。しかしいきなり動いたのが悪かったのか、思わずよろめいて圭の方へ倒れる形になってしまったが圭はすかさず受け止めてくれた。
「ご、ごめん」
「怖いのは、私も一緒」
そう言って圭は私の手を握る。
分かる。圭の手が震えているのが。
「行こう」
その言葉に私は頷いた。
圭はそれを合図に試着室のカーテンを開き、私達は一目散に駆け出す。
服屋から出て素早く左右を確認し《奴等》の数が少ない左の道を走る。
エレベーターは中に《奴等》が待ち構えている可能性があるため使えない。
エスカレーターはフロアの中心にあるため非常に目立つ。
必然的に使用出来るのは階段ということになる。
「あっ!」
途中で圭が声を上げ立ち止まる。
どうしたの、と声をかける前に私は理由を察してしまい思わず息を呑んだ。
階段前には《奴等》が沢山待ち構えていた。
どうも《奴等》は階段に弱いらしく段差で躓いたり引っかかったりしている。
《奴等》は階段を諦め周り道などする頭など無かったのだろう。しかし丁寧にも人間二人が走る際に立てた足音には反応したらしく、一斉にこちらへ振り返った。
「ひっ……」
数多くの感情の読み取れない不気味な視線を一身に受けた私は思わず後ずさる。
「別の道を探そう!」
すかさず圭が私の手を引いて元来た道を戻ろうとするが……
「嘘っ!?」
元来た道には逃げる私達に反応して追いかけてきたであろう《奴等》がいた。
その数は5。
不幸にもここは一本道、完全に囲まれてしまった。
《奴等》がじわじわと近づいてくる。
それはもはや死が近づいているのと一緒だ。
悲しみ、絶望、恐怖等の全ての感情がぐるぐると自分の中で回っていく。
「圭……」
そんな中で私は彼女の名前を呼ぶのが精一杯だった。
「美紀……」
彼女もまた、私と同じように名前を呼んだ。
圭のことだ、無茶を言って私を巻き込んだ自分を責めているかもしれない。
でも、私は圭のそういうところが好きだ。その行動力で助かったことは何度もあるし、それが圭のいいところだし、圭らしいと思う。
だから、そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。私が圭を恨むなんてこれっぽっちも……
「あ、生きてる人いるじゃん」
ふと、聞こえた誰かの声で我に返った。
「見たところピンチのようですわね」
「今行く」
声はどうやら元来た道の方からで、声の主は三人いるが全て女性だ。
三人とも、私達と同じ巡ヶ丘学院の制服を着ている。
その三人のうちの一人、日焼け肌が特徴の女子生徒がこちらへ向かって走る。
「っ……!」
突然のことに声が出なかった。
彼女は武器の一つも持たずなんと生身で《奴等》に向かっていくつもりなのだ。
来てはダメだ、と伝えるべきだったのだろう。しかし私は助かりたいとも思ってしまった。
どんなことが起きても、圭と一緒に助かりたいと。
しかし私の一瞬の葛藤は直ぐに無駄なものとなる。
「とうっ」
日焼け肌の生徒は手前に居た《奴等》二体が振り向く前にその後頭部を掴むと軽く前へ飛び全身の体重をかけながら「奴等」の頭を地面へ叩きつけた。
一面に真っ赤な血染めの花が咲く。
「ふっ」
手早く二体の《奴等》を仕留めた彼女は着地のしゃがんだ状態から飛び上がるようにサマーソルトの蹴りを放ち一体の《奴等》を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた《奴等》は壁に叩きつけられ動かなくなった。
「せいっ」
サマーソルトで立ち上がった彼女は手前の一体に回し蹴りの要領で足払いをかけて転倒させると頭部目掛けてジャンプして強烈な踏みつけをお見舞いする。うつ伏せに倒れたため、運良く噛まれてはいない。
「おらぁ」
残った一体にはシンプルに飛び蹴りをお見舞い。鋭い蹴りが炸裂し、こいつも壁に叩きつけられる結果となった。
「…………」
「大丈夫か」
一連の流れるような動きに私も圭も唖然とし、言葉を出すのを忘れていた。
日焼け肌の生徒が私たちの目の前で手をひらひらさせていた事に気付きようやく我に返る。
「あ、あの」
「スマん、ちょっと離れてろ」
私の言葉を遮ると彼女は後頭部を踏みつけられて未だに悶えている「奴等」の両足を掴むとその場でぐるぐると回る。
いわゆる「ジャイアントスイング」というやつだ。
彼女がこれから何をするのか、何を起こすのか、容易に想像出来てしまった。
「そぉい!」
掛け声と共に《奴等》の両足を掴んでいた手が離され、それは階段方向の《奴等》の群れに吸い込まれるように飛んでいき一網打尽にした。
《奴等》がバタバタと他を巻き込み倒れていく様はまるでボウリングのピンのようだった。
「これでよし」
やり遂げた表情でその光景を眺めた彼女は再び私達の方へ振り向いた。
「大丈夫か?」
そう尋ねる彼女の制服は《奴等》の返り血で赤黒く染まっていた。その姿に思わずビクリと震える。
「あ、ありがとうございます。助かりました」
言葉が出ない私の代わりに圭が礼を述べ、私は頷いて感謝の念を伝えた。
なんにせよ、この人のおかげで助かったのは事実なのだ。
「あー……今は着替えが無いんだ。この格好は我慢してくれ」
自分の姿が異常なことを自覚していたのか、彼女はバツの悪そうな表情で謝りを入れた。よく見れば彼女の制服には先程付着したものとは別の赤黒い染みがいくつもある。
「大丈夫ですか?」
事態がひと段落ついたのを見計らったのか、残りの二人がやってきた。
「見たところ私達と同じ巡ヶ丘の生徒ですわね。手短に自己紹介します、2年の天田レイラですわ」
煌めく金色のブロンドヘアーにお嬢様口調の生徒は優雅な仕草と共に名乗る。
この人は外国人のハーフで、よく注目されていた人だ。
「1年の如月千夜だよ、よろしくぅ」
続いて水色髪の生徒が名乗る。丁寧な天田さんと違って微妙におちゃらけているように感じる。
その雰囲気から想像できないが、確かメカトロニクス部所属で一年生にして既に優秀な成績を納めていたと記憶している。
「3年の黒川大河だ」
最後に私達を助けてくれた日焼け肌の生徒が名乗った。
類い稀なる身体能力で数々の部の助っ人として活躍し、プロのスカウトが来るほどの先輩だったはず。
三人が三人とも学院の人気者だった人物だ。
「私は2年の祠堂圭と申します。こっちが友達の……」
「同じく2年の直樹美紀です。先程は助かりました」
黒川先輩の後にすかさず圭が名乗り、それに続いて私も名乗る。
やっと落ち着きを取り戻し、話せるようになった。
「祠堂さんに直樹さんですね、分かりました。私達は生存者の方を探しているのですが、他の生存者を見かけませんでしたか?」
「私達は……ずっと二人で隠れていたので、他の人のことは分かりません」
「すみません……」
おそらく三人のまとめ役であろう天田さんが他の生存者のことを尋ねるが圭も私も首を横に振ることしかできなかった。
「謝らなくて結構ですわ。こんな状況ですもの、自分の身が最優先です」
「それよりさっさとこの場を離れようぜ。またいつ襲われるかたまったもんじゃねえ。あと着替えたい」
色々と訊きたいことはあったのだろう。
しかし黒川先輩の意見に皆が賛成してこの場を離れることになり、私と圭はこの三人と一緒に行動することが決まった。
そして、この不思議な三人組との出会いが私と圭の未来を変えたと分かるのは後の話になる。
ゾンビサバイバルホラーシリアスはここまで
次回からスタイリッシュゾンビアクションが始まります