はぁ・・・めんどくさい。
頭だけを上げて時刻を確認すれば、もう今日の授業は終わりを告げていた。
クラスの中では放課後になったのにわいわいがやがやと盛り上がっていやがる。
もう入学式から1週間が過ぎたから友達などとのたわいもない会話だろうな。
机に突っ伏して寝ていたアタシがゆっくりと目を覚ますと一瞬だけだが会話が止まった。
アタシはすぐに鞄を手に持つとなにも言わずに教室を出た。
クラスメイトには入学式の時から恐がられてるんだよな。
そりゃあ、入学式早々に先生と一悶着あればこんな反応になるわな。
この音ノ木坂に入学したのもそもそも親が勝手に決めたことだ。
近いし、母の母校でもあるからって言う意味不明な理由でな。
だから別にここに興味があって入学した覚えはないから好きにしてる。
だが、学校に行かなきゃ面倒な事になるから登校はしてる。
帰ろうと思ったが、家に帰ってもやることはない。
宿題なんてのは最初から選択肢にないし、お金もない。
「・・・ったく、これからどうすっか・・・な?」
不意にどこからか聞こえてくるピアノの音。
普通ならそんなに気にもしないんだが、スッと耳に入って来る気持ちの良い音色にアタシは足を止めた。
ピアノがある場所って言ったら・・・音楽室だよな。
このピアノ演奏者が気になったアタシは音楽室へと向かった。
徐々にピアノの音の方に近付いて行くと歌声も聞こえてきたのであった。
音楽は好きだ。
演奏するのも歌うのも大好きだ。
中学の時は1人カラオケに夢中だったな・・・今でもだけどよ。
音楽室に着いた・・・のだが、先客が居た。
サイドポニーでオレンジ髪の女が食い入るように音楽室の中を覗き込んでいた。
アタシは気にせずそいつの横に座り込んだ。
「貴女もこの曲に引き寄せられた感じ・・・かな?」
はっ?なにいきなり話しかけてきてるの?コイツ。
「私も屋上に居たらさ~聞こえて来たから駆けつけたんだ!歌も上手いし、ピアノも上手だし、それに・・・アイドルみたいで可愛い!!」
まだ続くのかよ・・・。
「もしかして・・・貴女も音楽が好きなの?」
「・・・お前には関係ねぇ」
「えぇ~!!教えてよ~!!」
あぁ・・・これは面倒な奴に捕まった。
子供のような駄々を口にしたかと思えば、グイッと近寄って来て「ねぇ?」と一向に引き下がらない。
だが、丁度演奏が終わったので逃げる思いでいきなり音楽室の扉を開けた。
教室の中ではいきなり現れた2人に対して驚く赤髪の女の子が居た。
その人物には見覚えがある。
いや、つい最近な気がすると思ってリボンを見ればアタシと同じ青リボン。1年生だ。
あぁ・・・確か名前は西木野だったな。
「西木野!歌、良かったぜ」
「うんうん!感動しちゃった!!」
「・・・・・あ、ありがと///」
チラッとピアノの方に目を向けたがそこには楽譜とかが見当たらない。
手に持っている雰囲気もないし、もしかして・・・オリジナルか?
「なぁ・・・さっきのky「ねぇ!アイドルやってみたいと思わない!!」はぁ?」
いきなり割り込んで来たかと思えば、アイドルだぁ~?
コイツ本当にヤバい奴かも。
「なにそれ、イミワカンナイ!!」
あっさり断わって去って行く。
誰でもそんなこと言われたら同じこと言うさ。
アタシは帰ろうとする西木野の後を追った。
「西木野!お前っていつも放課後はあそこにいんのか?」
「・・・・・そうよ」
「じゃあ明日も聞きに行ってもいいか?」
「別に・・・いいわよ」
「OK、じゃあな?歌姫さん♪」
「うえぇ!?」
顔を真っ赤にした彼女の肩をポンと叩けばアタシは西木野と別れた。
自作で曲を作ってる奴なんて初めてだ。
アタシだってコピーぐらいしか出来ないのに・・・。
まぁ・・・これでつまらない高校生活だと思っていたが、ひとつ楽しみが出来た。