あの日以来彼女達には会っていない。
と言うよりも会いたくない。
カッとなったのもあるが、和菓子の礼も言ってなかった。
あの穂むらまんじゅうは美味かった。
もう放課後だ。
今日もあいつらは屋上で練習をしているはずだ。
アタシはさっさと帰るかな・・・。
「咲ちゃん、もう今日は帰るん?」
「・・・・・」
「なんでうちのこと無視するん!」
「面倒事に巻き込まれると思って」
「あぁ、ひどいな~」
このスピリチュアルに絡むとろくな事がない。
いつもなにかに巻き込まれる時はコイツからだ。
だから、特に今は会いたくない。
「生徒会の仕事サボってんじゃねぇぞ」
「んふふ・・・心配してくれるん?」
「んな訳ねぇだろ!」
「今日はご機嫌ななめみたいやね」
コイツのこの笑顔。
アタシはいつもなにかを見透かされてる気がして気味が悪い。
すると彼女は不意に一枚のカードを取り出した。
そして、彼女の口から思い掛けない一言が発せられた。
「もうアイドルは諦めるん?」
その一言にアタシは目を見開いた。
アイドルを諦める?その言葉に唇を噛み締める。
忘れたい過去だ。でも、なぜコイツがそのことを知ってるんだ。
鋭い目つきで睨むアタシに臆せず、彼女は言葉を続ける。
「本当は中学3年の時にアイドル目指してたんやろ?」
「そんなことねぇよ!」
「でも、オーディション受けたんやろ?」
「・・・・・なっ!?」
誰にも口にしたことない秘密をあっさり彼女は口にした。
アタシは自分の顔が真っ赤になるのがわかる。
スピリチュアルか!?スピリチュアルなのか!!
「良く会いに来てくれた時にオーディションの封筒をちょこっと・・・ね♪」
思い出した。
本当はアイドルのオーディションのことを相談したかったんだ。
でも、あの時はまだ相談するほど勇気がなくて諦めたんだった。
些細な変化も見逃さないな・・・コイツ。
「だから、アタシをアイツらに会わせたのか?」
「そうやで」
「・・・・・とんだお人好しだな」
「咲ちゃんの為やと思ったんよ」
アタシの為・・・か。
こんなにコイツはアタシのこと思ってたのかよ。
赤の他人なのによ。
「だが、アタシはやらねぇ」
「どうしてなん?」
「アタシはアイドルに向いてないんだよ」
オーディションの時にも言われた。
理由を聞いてもなにも説明されなかった。
結果は不合格。
アタシはそれ以来アイドルと言う存在に興味はなくなった。
そして、憧れも・・・・・。
「でも、彼女達は咲ちゃんとアイドルが・・・」
「いいんだよ、いいんだよ!アタシは・・・・・!!」
アタシは怒鳴っていた。
本当はアイドルをやりたい!
でも、過去を思い出すと踏み止まってしまう自分がいる。
そんなアタシの目からは涙が溢れ出てしまっていた。
「咲・・・ちゃん?」
不意に名前を呼ばれたことにビクッと両肩を強張らせて振り返る。
するとそこには一番会いたくないメンバーが居た。
「な、なんだよ・・・」
「アイドルやろうよ!!」
「だから、アタシは・・・・・」
「向いてないなんて言わせない!!」
急に高坂はアタシに抱きついてきた。
「咲ちゃんは咲ちゃんだよ!やりたい気持ちがあればチャレンジしたらいいんだよ!!」
「そうですよ、私達でもこうして活動出来てるんです!」
「天宮さんがプロのアイドルは一握りって言ってたけど、スクールアイドルは無限大だよ!」
今度は海未とことりが抱きついてくる。
「私も勇気を出して・・・頑張ったよ」
「貴女の音楽のセンスは私が認めてあげる」
「天宮さんも凛達とアイドルするにゃ~♪」
新たに加わった3人も微笑みながらエールを送る。
そして、穂乃果はガシッとアタシの両肩を掴んでこう叫んだ。
「だから、一緒にアイドルやろうよ!!」
アタシの止まっていた涙はまた流れ出した。
だが、アタシは泣きながらも笑顔を作り、頷いた。
穂乃果は嬉しさのあまり抱きつく力を強め、
海未はもらい泣きをし、
ことりはアタシの頭を撫でてくれ、
小泉と星空は互いにはしゃぐように抱き合い、
西木野は嬉しそうに笑っていた。
「希!!」
「んっ?」
「・・・ありがと」
「どう致しまして」
こうして、アタシは7人目のメンバーとしてμ'sの一員になった。
一度諦めた夢だが、こいつらとならやれそうな気がする。
アタシはそう感じている。