「PV撮影?」
「そうそう、みんなで自己紹介とかをビデオで撮影するんだにゃ~♪」
「めんどくせぇ」
「私も咲に賛成」
「え~!絶対に楽しいよ~」
放課後に希が生徒会で部活を紹介するのにビデオ撮影をしたいらしい。
私が参加を断われば、真姫も便乗するように参加を断わった。
ノリ気じゃない2人に凛はぴょんこぴょんこと周りを飛び跳ねている。
それと、彼女達は最近アタシに対してよそよそしい雰囲気はなくなった。
今ではメンバー内では名前で呼び合える仲にまでなった。
アタシは未だに名前で呼ぶのが苦手だけどな。
「先輩達も放課後に集まろうって・・・」
「PVとか取材って聞くと矢澤辺りが張り切ってそうだな」
「そうね」
「凛もそう思うにゃー!」
3人は腕を組んである人物を思い描くと頷き納得していた。
そんな3人を見ている花陽は引き攣った笑みだ。
「アタシは適当に理由付けて今日はサボるかな~」
「ええっ!?」
「咲ちゃん、練習はどうするの~?」
「うっ・・・めんどくせぇ」
「ホント、貴女って練習だけはサボろうとしないわね」
「まぁね♪」
授業にはまったくやる気を見せない咲なのだが、スクールアイドルの練習がある放課後になるとたちまち元気になるのはクラスメイトも驚いている。
そのやる気を勉学に向けて欲しいと先生に指摘されるも彼女は「めんどくせぇ」の一点張りである。
「う~ん・・・・・」
「もう諦めて一緒に行こうよ~!」
「まぁ、もううちが来たから逃げられへんけどなぁ~」
「出やがったな、妖怪牛乳!!」
咲の一言で一瞬場が静まり返ったが、呼ばれた本人の表情には怒りが見えていた。
そういつものように手をわしわしとさせながら。
冗談で言ったつもりの咲も生唾を飲むと何も言わずに逃げ出した。
「今回はもう許さへんでぇ~!!」
「絶対にイヤだっての!!」
残された3人は顔を見合わせると咲の背中に向かって合掌をすると先輩達の待つ中庭へと向かった。
それから少しして満身創痍の咲と肌艶の良くなった希がやって来たのは遅れて20分後の出来事であった。
そんな咲にカメラは向けられた。
「ほな、咲ちゃん行くでぇ~」
「もう勝手にしてくれ」
疲れ切った表情にカメラを合わせる。
だが、カメラが録画を開始した途端に咲の目の色が変わった。
「天宮咲、高校1年生です!まだ入り立てではありますが、スクールアイドルをやってます♪好きな食べ物は林檎かな?あのシャキシャキっとした新鮮な果物を食べるのがいいんです!趣味は・・・音楽かな?聴くのも奏でるのも大好きですよ♪皆さん、一生懸命頑張るのでよろしくお願いしまーす」
カメラの前に現れたのは常に笑顔を見せる咲の姿だった。
あまり咲は笑顔を見せない為にメンバーはポカンとした表情で突っ立っていた。
最後にお辞儀をして終わった咲ではあるが、顔を上げるといつものだるそうな表情に切り替わっていた。
咲は何事もなかったようにこの場から去ろうとしたが、それは穂乃果によって遮られた。
「咲ちゃん、凄いよ!アイドルみたいだったよ!!」
「アレでも簡単な自己紹介くらいなんだけど・・・」
「正直、咲を見くびっていました」
「私もちょっと驚いちゃった・・・」
「終わったんならレッスンしようぜ?体が疼くんだけど・・・」
「それやったらレッスン中もカメラに収めとくわ」
「ははっ、マジかよ」
レッスン中も咲は必死に笑顔を保ちつつ成し遂げたのは言うまでもない。
だが、それに触発されたメンバーも笑顔でレッスンをするも誰一人として成功は出来なかったと言う。
ただにこは開始直後に倒れていたのは触れないでおいてあげよう。
*****
「なんでカラオケなんだよ・・・・・」
「歌とダンスでリーダーの座を奪い合うのよ!!」
「にこ先輩がノリノリみたいで・・・」
「そんな事だろうと思ったわ」
ことりの話によると昨日の夜に穂乃果が希からリーダーが誰なのかと訪ねられた事からこの事件が始まった様子だ。
みんなもそんなことは気にしていなかったのか以外に話し合いが絶えなかったらしい。
ちなみにアタシは生徒会の仕事を少し手伝っていたのだ。人手が足りないのと今回の事もあってアタシが勝手にした事である。
「咲、次はアンタの番よ!!」
「はぁ・・・歌える歌とかないんだよな~・・・・・おっ、これなら歌えるかも~」
「そ、そそ、それは・・・A-RISEの曲じゃないですか!?」
「アンタ、唯一歌える曲がA-RISEの曲だけって凄いわね・・・」
「でも、最近聞いて覚えたくらいだから微妙なクオリティだけどな」
そう言っていた咲だったが、曲が流れたと同時に咲の表情がいつものようにキリッと変わると歌だけではなく踊りだしたのであった。
ノリノリの咲にポカンとしているメンバーも居るが、逆に合いの手などを入れて盛り上がっているメンバーも居た。
歌い終われば全員がスタンディングオべーションだった。
そして、点数は98点。全国ランキングで何故か1位に躍り出る快挙である。
「咲ちゃん、スゴイにゃー!!1位だよ、1位!!」
「・・・・・マジか」
「A-RISEの曲でこの点数なんて驚きです!?」
「まぐれだよ、ま・ぐ・れ!」
「全員歌い終わりましたが、咲の点数が一番のようですね」
「そ、そうみたいね・・・・・つ、次に行くわよ!!」
凛は嬉しそうに飛び跳ね、花陽は画面と咲の顔を交互に見て驚いていた。
全員が歌い終わったが、最後の咲の歌が一番だったみたいである。
にこはなにやら引き攣った笑みを浮かべているも次のステージへと全員を連れ出した。
「ははっ・・・歌の次はダンスって訳ね」
「そう!このダンスゲームのアポカリプスモードで点数を競い合うのよ!!」
「凛は運動は得意だけど、ダンスは苦手だからなぁ~・・・」
「こ、これってどうやるのかな?」
またもやにこの案により、今度はダンスゲームで競うつもりらしい。
未経験者やダンスが苦手だと言い出すメンバーも居る中でにこは隅の方でいやらしい笑みを浮かべている。
またなにか企んでいるみたいだ。
だが、その企みは覆される事となった。
「なんか出来ちゃったにゃー♪」
「・・・・・えっ」
ミスはあるものの全員クリアして行ったのであった。
これにはにこもガクッと膝を付いて落胆していた。
そして、残るはまた咲の出番となった。
だが、咲は始める前になにやら設定を弄っているみたいだ。
「咲、貴女なにしてたの?」
「あぁ、設定変えたんだぜ」
「どう変えたのですか?」
「2譜面で難易度を1段階上げてスピードも1段階上げた♪」
「アンタ、そんなの無理に決まってるでしょ!?」
「まぁまぁ、見てなって」
すると鞄からタオルを取り出した咲はタオルをバンダナのように頭に巻いた。
そして、2つの譜面の真ん中に立つとゲームスタートを押した。
音楽も鳴り、先程よりも数も多い矢印が早く降りてくる。
だが、咲はその矢印を踊っているかのように捌き始めたのだ。
それにはメンバーだけではなく、他のギャラリー達も足を止めてしまうぐらいのレベルだった。
見事にクリアした咲が振り返るとそこには大勢のギャラリーで賑わいを見せていた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「スッゴいよ!咲ちゃん、プロのダンサーみたいだったよ!!」
「うん♪ことりも驚いちゃった・・・」
「アイドルを・・・目指すのに・・・ひ、必要とおもっ・・・て・・・中学の時に・・・やって・・・たんだよ」
「ですが、無茶は良くないですよ?ほら」
「おっ、サンキュー♪」
スポーツドリンクを海未から受け取ると嬉しそうに一気にそれを飲み干した。
その姿にまた海未は説教を始めようとするが、咲は両手で耳を塞いでゲームセンターを出た。
するといつのまにかにこがチラシを持って待ち構えていた。
「なにやってんだ?」
「け、決着がつかないから最後はオーラで決めるのよ!!」
「それってなにか意味あるの?」
「歌も下手!ダンスも下手!だけど、なぜか人を引き寄せるアイドルがいる・・・それが、オーラなのよ!人を引きつけて止まないなにかを持っているのよ!!」
「わ、わかります!なぜか放っておけないです」
と言う理由決めでチラシ配りが始まった。
オーラがあると勝手になくなっていくモノらしい。
みんなも楽しそうだと言う理由で1時間と言う制限付きで始まった。
「か・な・り・・・めんどくせぇ」
「凛もそう思うにゃー」
「・・・・・そうね」
気だるそうにチラシを配る咲の近くで凛と真姫もチラシを配っていた。
だが、もう1人の1年生の花陽は一生懸命にチラシ配りをしているのが目に見えていた。
「かよちんはノリノリでチラシを配ってるにゃ~」
「にこは違う意味で必死にチラシ配ってるけどな」
「アレって無理矢理な気がするんだけど・・・」
その横で必死に通行人の腕を掴んでまでチラシを渡そうとしているにこに彼女達は哀れみの視線を向けていた。
だが、ふと真姫はある異変に気付くのであった。
「咲、貴女・・・チラシはどうしたのよ?」
「んっ?それならもう渡し終わったぜ」
「えええっ!?は、早過ぎるにゃ~」
「もしかして・・・脅したり、無理矢理渡したんじゃないでしょうね」
「んなことしないっての!ちょっとしたコツを掴んだらチラシを渡せるようになったんだよ」
「へぇ~・・・じゃあさ、凛にも教えてにゃ~♪」
「凛!そんなことしたら勝負の意味ないでしょ?」
そうこうしているとことりも同じくらいに渡し終えたのか咲とことりが1番と言う形になった。
にこはと言うと・・・まだ1人を捕まえてチラシを渡しているようなのでスルーすることにした。
*****
「・・・・・っで、なんでアタシがリーダーになるんだよ!?」
「総合的に見た結果です。咲はココに居るメンバーよりも能力が1つ飛び抜けていましたので・・・・・」
「いや、アタシは1年生だから低学年が仕切るってのも変だろ?こう言うのはやっぱり高学年の奴がやる方がいいだろ?」
「仕方ないわね~♪やっぱりこの矢澤にこが「にこ先輩は結構です!!」なぁんでそうなるのよ!!」
今日の成果での結果では、誰が見ても咲が総合的に優秀なのは明らかになった。
だが、当の本人はリーダーの役職は不向きだと辞退する結果となった。
頬を抓り合う咲とにこを尻目に穂乃果が口を開いた。
「じゃあ・・・リーダーがなくてもいいんじゃないかな?」
「「「えええええっ!?」」」
「そうそう、リーダーいなくても普通に今まで練習出来てるんだから大丈夫だって・・・・・」
「でも、センターはどうするのよ」
「それなんだけど、みんなで歌うってのはどうかな?」
「全員がセンター・・・っね、アタシは穂乃果の案に賛成♪」
咲がニィッと笑って賛同の意を見せれば、他のメンバーも次々に賛同してくれた。
と言う訳でリーダーと言う概念はないみんながセンターなグループの誕生である。
一件落着と決まった所で咲は立ち上がった。
「そうと決まれば練習、練習!!」
「うん!!」
咲と穂乃果は嬉しそうに屋上に向かって飛び出して行った。
残されたメンバーはポカンとした表情で部室に残っていた。
「本当に嵐のような2人ですね」
「でも、本当にリーダーを決めなくて良かったのかな?」
「いいえ、もう決まっていますよ」
「うんうん♪」
残された6人は顔を合わせて笑い合った。
そう、あの2人がリーダー。
どっちか1人じゃない・・・2人揃ってのリーダー。