いつものように音楽室に来たら先客がいた。
天音咲。
風に白銀の髪を揺らしながら彼女は真剣な表情でアコースティック・ギターを弄ってた。
私に気付くと彼女は歯を見せて無邪気な笑みを見せた。
彼女でも笑うんだ・・・・・。
「そのアコースティック・ギター・・・天音さんの?」
「いや、音楽室の準備室から拝借した」
「うえぇ!?」
我物顔で持ってるから彼女のモノだと思ってたのに。
でも、勝手に使っていいのかしら?私も使わせてもらってるから別に指摘はしないけど・・・・・。
私がピアノの準備をしていると彼女はポロンポロンと音のチューニングをしていたかと思えば、席に座った私を確認したら彼女はピアノの上に腰掛けた。
「昨日の曲・・・オリジナルだろ?聞いたことない曲だったからな」
「えぇ・・・良くわかったわね」
「勘だよ、カ・ン!!」
どや顔で言われてもイミワカンナイ。
そんな彼女を横目にピアノを弾き始めると彼女も最初は鼻歌を合わせてきた。
いつものようにピアノの演奏だけを慣らすように引く。
彼女は音楽に合わせて鼻歌をしたり、リズムに乗ってみたりと楽しげだった。
やっぱり音楽が好き。
一回目の演奏が終わった。
ふぅ~と息を漏らす私とは裏腹に彼女はぶつぶつと言ってる。
ちょっと・・・怖いわね。
「完璧に覚えた!!」
えっ?な、なにを?
「西木野~もっかい引いてみな」
「・・・・・わかったわ」
「サンキュー♪」
言われた通りにさっきと同じ曲を演奏し始めた。
だが、私はある異変に気付く。
演奏を開始した直後からピアノとは違う音が一緒に流れていることに。
そう・・・天音の持つアコースティック・ギターの音色が・・・・・。
嘘。
私が作った曲。
楽譜だって一度も見せてないのにちゃんと音が合ってる。
驚きの方が大きいけど、なんだか彼女の初めて見せた笑顔の理由がわかった気がするわ。
そう・・・彼女も私と一緒で音楽が好き。
演奏が終わって顔を上げるとそこには満面の笑みを浮かべた彼女が片手を挙げていた。
私も恐る恐る片手を挙げると彼女は思いっきりハイタッチをしてきた。
地味に痛い・・・。
「さいっこーだったな!!」
「・・・・・そうね」
「うん、うん♪スッゴく良かったよ!!」
私達はパッと目合わせば、もう1つの声の主に目を向けた。
そこにはいつの間に紛れ込んだのだろうか。
昨日の先輩がいた。
「なんでまたお前がココにいんだよ」
「いやぁ~・・・もっかいお願いしようと思って・・・」
「しつこいですね!」
「さっちゃんにも・・・ねっ♪」
さっちゃん?
チラッと天音さんの方に振り向くと彼女は拳を握り締めていた。
表情を見れば、先程とは一変して鬼のような形相に様変わりしていた。
絶対に呼ばないようにしなきゃ・・・。
「私はあぁ言う曲一切聞かないし・・・「へぇ~・・・どうして?」それに軽いからよ!」
アイドルなんてただ遊んでるようにしか見えない。
薄っぺらくて・・・私はイヤ。
「さっちゃんは?」
「朝も言っただろ?音楽は好きでもアイドルは別!あんなのアタシには似合わないんだよ!!」
天音さんも似てるの・・・かな?
「私だってなんかこうお祭りみたいにパァーッと盛り上がって楽しく歌っていればいいのかなぁ~・・・・・って思ってたんだ。でも、結構大変なんだぁ~」
先輩はそう言って私に一枚の紙を手渡してきた。
中身は、歌詞だった。
「一度読んで見てよ」
「だから、私は・・・・・」
「読むだけならいいでしょ?今度聞きに来るから!その時にダメって言われたらきっぱり諦める!!」
「それ・・・お前達が考えたのか?」
「うん!正確には海未ちゃんが!だけどね」
「答えが変わることはないと思いますけど・・・」
「だったら、それでもいい。そしたらまた歌を聴かせてよ!私、西木野さんの歌が大好きなんだ!あの歌とピアノを聴いて感動したから作曲お願いしたいなぁ~って思ったんだ!!」
感動?
私の・・・曲で?
私が衝撃を受けた顔で先輩を見ていると急に天音さんが肩を組んできた。
「そうだぜ?少なくともアタシはお前の歌もピアノも曲も大好きだぜ♪」
私は嬉しかった。
素直に心の中で喜んでいた。
けど、私は俯き隠すように指で前髪を弄る素振りを見せて誤魔化した。
「じゃあこの後あるから練習があるから良かったら遊びに来てよ!!」
そう言い残して音楽室を飛び出して行った。
残された2人はしばらく黙り込んでいたが、不意に天音さんはこう言った。
「やりたいことはやれば良いと思うぜ?」
天音さんはそう口にした後に「先に帰るわ!」と言って私を1人残して帰ってしまった。
やりたいこと・・・。
私の本当にやりたいことって・・・。