気持ちの良い夕暮れ。
静かな屋上。
アタシは新入生歓迎会をサボる為に屋上にいる。
今頃は体育館でなにかやってんじゃね?興味ないけど・・・。
あっ・・・そう言えばあいつらライブするとか言ってたよな。
アタシは今朝、園田から渡されたチラシを取り出した。
ライブ開始は新入生歓迎会の後みたいだ。
「ここでなにしてるん?」
「・・・・・っ!?お、驚かすなよ」
「サボってるさっちゃんが悪いんやで?」
「へぇ~・・・アタシの言うこと聞かないヤツは誰だ!!」
「んんっ・・・や~め~てぇ~!」
約束を破る希が悪い。
だから、アタシは満足するまで希の胸をわしわししてやった。
にしても・・・柔らかかったな。
解放された希の手にはさっきまでアタシが見ていたチラシがあった。
チラシに目を通した希はなにも言わずにいやらしく視線だけを向けて来た。
「な、なんだよ」
「やっぱりあの子達に興味あったんや~ん」
「はぁ?たまたま園田から渡されたのを持ってただけだよ」
「ふ~ん・・・捨てずに大事に持ってたんやね」
「・・・・・ぐっ」
言い返せない。
いつもなら興味がないと言い切れるが、A-RISEに出会ってからちょっと複雑である。
A-RISEと別れる際にこれまで出したCDやアルバム、LIVEのDVDなどを貰っていたのだ。
素直な感想をツバサにメールしたら大喜びされた。マジで。
「希は行かないのか?」
「うちはもう帰ろうかな~」
「薄情者め、あいつらが悲しむぞ?」
「じゃあ・・・咲ちゃんはどないするん?」
その問い掛けにアタシは悩んだ。
正直な話・・・合わせる顔がない。
あんなにアイドルを否定していた人物がLIVE会場に来たらどんな顔をするだろう。
あまり好ましくは思わないだろう。
だが、スクールアイドルと言うのには興味がある。
プロとしてのアイドルではなく、彼女達がやろうとしているアイドルが見てみたい。
下を見れば、下校する新入生達を勧誘する部活動などが目に入った。
希がココに居るんだから新入生歓迎会はもう終わっている。
LIVE開始まで・・・もう時間がない。
めんどくせぇ。
「希、行くぞ」
「んっ?何処にかな?」
「はぁ・・・LIVE会場しかねぇだろ」
「は~い♪」
アタシの出した答えを聞いた途端に希はにやにやとし始めた。
最初からわかってましたと言わんばかりに・・・・・。
コイツにすべてお見通しかよ・・・ったく。
*****
「おい!」
「うちはココでええよ。咲ちゃんはLIVE見たいんやろ?」
まさかの1人。
土壇場で裏切るなんて本当に薄情者だぜ。
あぁ・・・色んな意味で緊張してきた。
だが、もうここまで来た!
アタシは重い講堂の扉をゆっくりと押し開いた。
だが、
音楽も聞こえない。
歌声も聞こえない。
歓声も聞こえない。
話し声も聞こえない。
講堂の中は静寂に包まれていた。
LIVEはもう終わってしまったのだろうか?
そう思い、アタシはゆっくりと頭を上げた。
観客は0人。
そう、誰も講堂にいない。
LIVEをしようとしていた3人も呆然とステージ上に立っていた。
そりゃあ、人もいないのにLIVEは始まらない。
アタシはくしゃくしゃと頭を搔きながらど真ん中の席に座り前の座席に両足を組んで乗せた。
そんな彼女の登場に落ち込んでいた3人は気付いて頭を上げた。
「さっ・・・ちゃん」
「0からのスタートか~」
「・・・咲ちゃん」
「やっぱ、世の中は甘くないみたいだな~」
「・・・天宮さん」
「でも、そんなお前らに良いお知らせがある!
アタシにお前達のLIVEを見せてくれないか?」
素直に慰めたらいいのかもしれない。
だが、アタシにには似合わない。
ステージ上の3人は顔を見合わせると頷き、ステージ上の明かりが消えた。
そして・・・FirstLiveが始まった。
*****
LIVEが終わると共に拍手が講堂に響いた。
夢中になっていた間に他にも見に来ていた人がいたみたいだ。
小泉さんとか西木野さんとかね。
拍手が鳴り響く中で突然姿を現した人物に拍手は止んだ。
このタイミングですか・・・。
絵里ちゃん。
「どうするつもりなの」
「続けます!!」
容赦ない問い掛けにもすぐに返事は返って来た。
「なぜ?これ以上続けても意味はないと思うけど・・・」
「やりたいからです!!」
非情な問いにも彼女の思いは揺るがない。
「今、もっともっと歌いたい!もっともっと踊りたいって思ってます!!こんな気持ち初めてなんです!やって良かったって本気で思えたんです!!」
彼女達の感じた思いは熱く、真剣なモノだった。
「今はこの気持ちを信じたい。このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。応援なんて全然もらえないかもしれない。でも、一生懸命頑張って私達がとにかく頑張って届けたい!今、私達がココに居る思いを!!」
拭えない不安。
でも、本当に伝えたい気持ち。
「いつか、いつか私達必ず・・・ココを満員にして見せます!!」
そして、彼女達は思いを胸に宣言した。
火傷しそうなくらい熱いな。高校球児に劣らないだろうな。
さてと、お邪魔者はすたこらさっさと・・・・・。
「さっちゃん!!」
「あぁん?なんだよ」
「ありがとう!!」
アタシは講堂を飛び出した。
なぜだか彼女の満面の笑みを見ているのが辛かった。
はぁ・・・めんどk
「さすが咲ちゃんやねぇ~」
「なんだよ」
「おっ、顔が真っ赤やでぇ~どないしたんかな~?」
「テメェ・・・もういい、帰る!!」
「あぁん♪咲ちゃん一緒に帰ろうや~♪」
アタシ、決めた。
あいつらのこと応援するわ!