Fate/Shining Night   作:ペンギン3

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 相も変わらずの上下分離。
 文章を纏めるのが苦手な証拠ですね(白目)。
 あと戦闘描写も苦手という二重苦(遠い目)。


第7話 蒼き稲妻の煌めき 上

 剣を持て、槍を構えよ。

 しかる後に相対せよ。

 汝が敵は人にあらず。

 汝が敵は人の形持った化生なり。

 然らば迷うな、迷いは死への道筋となる。

 注視せよ、隙を見せてはならない。

 死は、すぐ目の前にあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗がりが支配する夜。

 結界が張り巡らされた森の近くで、影達が向かいあっている。

 二つの陣営、二体の英霊。

 テスラは士郎達を背後へ、ランサーは主の前へ。

 互いの姿勢を見せつつ、相対する。

 

 空気がひりつきつつあった。

 それは人成らざる者同士が発する闘気の渦。

 テスラとランサー。

 相手を呑まんとする戦意は、いやがおうにも場を、戦いの舞台へと染め上げていく。

 

 音もなく、声もなく。

 静かに、されども猛るように。

 相対するだけで、既に戦いは始まっていて。

 けれども、その静かなる闘いも、終わりを迎える。

 

 ――無言の静寂、それを打ち破ったのはランサーのサーヴァントであった。

 

「ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが臣、ディルムッド・オディナ」

 

 覇気に満ち、朗々述べる声。

 宣言せんと示す彼の声。

 戦の前の作法として、ランサーは誓う。

 

「今宵は主の名に掛けて、貴殿より勝利を掴み取る」

 

 どこまでも騎士らしく、そして鋭い闘気をテスラへと向ける。

 それに相対するテスラは、静かに――

 

「お前の輝きにかけて。

 我が勇壮なる《雷》が応えよう」

 

 ――静かに、告げて。

 

 開戦の鐘は鳴る。

 目の前の互いの敵が奏でるのだ。

 なれば、応えなければならない。

 

 己が武器を構え、舞踏を踊ろう。

 無骨で、粗野で、猛々しく。

 然れども、輝きを内包して。

 

「征くぞ」

 

「――来い」

 

 二対の槍が、引き抜かれた。

 屈んだ姿勢は、足元に力を溜め込んでいる証左。

 隙を見せた時は一瞬で、槍兵の一撃を穿たれるであろう。

 

 対するテスラも、奇妙な構えを取る。

 それは先の倉庫街の戦いで、バーサーカー相手に取った武術の構えだ。

 

 バリツ、東洋式近代格闘術。

 祖は極東武術と謳われていた武技。

 彼の探偵卿も、好んで使っていたと言われている。

 今では失伝し、僅かなシャーロキアン(熱狂的ホームズ支持者)の間でのみ、口伝されていると噂されている秘技。

 

 隙があるようで、誘い込まれているようにも感じられるそれ。

 穿つはずが、砕かれかねない気配を感じずにはいられない。

 感じた感覚を信じ、ランサーは目を凝らし、五感を高めていく。

 確実に、敵へと一撃を加える為に。

 

 場が、静まり返る。

 それは刹那に訪れた静寂だった。

 誰しもが緊張して、息を飲んで。 

 

 ――そして、遂に。

 

「ッフ」

 

 屈んだ姿勢からバネのように込められた力を、ランサーは解き放つ。

 それは暴力的なスピードだ。

 疾風の如き素早さを持って、肉薄を開始する。

 ランサーは砲弾となりて、テスラの……。

 

「何?」

 

 テスラの、横を駆け抜ける。

 そして、すぐ近くの電柱を蹴り飛ばし、急激な方向転換を遂げたのだ。

 一瞬のできごと、僅かなる空白。

 その時間を利用し、ランサーはテスラの背後へと回り込む。

 無手の相手なれども、打ち込める未来が見えずにいたから。

 それが故に、ランサーは背後からの襲撃を選択したのだ。

 

「悪いな、名も知らぬサーヴァントよ」

 

 そう、不敵に笑うランサー。

 彼は自らが風に成りて、テスラへと吹き荒れる。

 背後より、避けられぬはずの赫が迫り――

 

「悪くない戦術だ。

 だが……」

 

 テスラが言葉を紡ぐ間にも、ランサーは迫っている。

 疾風怒濤、穿つはずの槍は撃砕せんばかりの威力を宿して。

 必殺の意志を持って、テスラへと――

 

「風の速きは、雷の瞬きに及ぶまい」

 

 ランサーは目を見開く。

 テスラの周囲には、瞬時に紫電が帯電し始めていた。

 その標的となるのは、勿論……。

 

「発雷開始、これは痺れるぞ」

 

 テスラの言葉と共に、ランサーの槍よりも早くそれは発動する。

 放電された雷が幾つも、何の予備動作もなくテスラの足元より放たれていく。

 

 奇襲相手への奇襲。

 襲撃者から受身への転落。

 ランサーはテスラへと向けていた赫の槍で、雷を薙ぎ払っていく。

 何発も迫り来る光。

 雷の重い衝撃は、確かにランサーの足を止めて……。

 

「よくも防ぐ」

 

「ック」

 

 雷の作った間隙の合間に、テスラはランサーへの対峙を済ましていた。

 成ったと思われた奇襲は、テスラに即応によって頓挫したのだ。

 しかし、ランサーはその程度は気にも止めていなかった。

 むしろ、それでこその戦いと、セイバーの時と同じくして口元を釣り上げる。

 そしてランサーとは別に、反応を見せた人物もいた。

 

「早い」

 

 小さな困惑を彼、ケイネスは呟く。

 予備動作なく放たれた雷。

 何の呪文も唱えられず、放たれたそれ。

 ケイネスの魔術師的視点から見て、異質であったのだ。

 高速詠唱どころか、高速神言でさえない。

 よもや魔術刻印か。

 そうも考えたが、雷という現象を何度も起こすには準備が足りているようには見えない。

 

 ――まるで、体そのものが雷であるような。

 

 そんな馬鹿げた事さえ、ケイネスは考えてしまって。

 それが不快になり、彼は声を荒げる。

 

「ランサー、そやつを引き離せ!」

 

 ケイネスは考えたのだ。

 目の前のサーヴァントは、アサシンなどよりも何倍も手強いのは、僅かな攻防だけで察することができた。

 ならばどうするべきか?

 思考を少し巡らせれば、答えは簡単に出てくる。

 

 ――サーヴァントではなく、マスターを始末すれば良い。

 

 単純なことである。

 聖杯戦争のルールとしては、至ってまともな考えでもあった。

 だからアサシンと呼ばれるサーヴァントも存在しているのだ。

 

「お待ちください主!

 私が、サーヴァントを打ち取ります。

 なので、どうかご再考を!」

 

 思わず、ランサーは叫んでしまっていた。

 何故ならば、彼は騎士であったから。

 彼は己が技に誇りを持ち、そして宣言もしたのだ。

 見事、目の前の白き男を討ち取るのだと。

 そしてなにより、あの様な子供を、マスターの手に掛けさせたくないと感じているから。

 だから彼は、主に訴える。

 ……けれども、彼の思いは届かない。

 ケイネス・エルメロイは、完璧な魔術師であるが故に。

 

「主命である。

 従うのだ、ランサーッ!」

 

 ケイネスの一喝は、どうしようもなくらいに正しかった。

 こと、聖杯戦争の中においては。

 意志を曲げることはない。

 ケイネスの声音からそう判断できてしまったランサーは、僅かに目を閉ざして、御意、とのみ答えた。

 

 ランサーが想うは、恐らくはこれより屍を晒すことになる二名のこと。

 テスラの後方で自転車に跨り、事の成り行きを見守っている二人。

 片や真剣に目を凝らして、片や子供の如く目を煌めかせている者。

 どちらも、魔術的な才覚は感じられない。

 場違いにも、迷い込んだかの様でもある。

 であるなら、恐らくはランダムに選ばれたマスターであることは明確。

 戦場に情けは無用であるが、騎士である身としては無念を感じてしまうのだ。

 

 だが、そんな彼に、

 

「出来ると思うか、槍兵」

 

 立ち塞がる者がいる。

 白い男、雷を操りし戦士。

 

「……主命であるのならば」

 

 どこからか感じる痛みを堪えながら、ランサーは返答する。

 目の前の人物に、何故か安心感を齎されながら。

 

「ならば、やってみるがいい」

 

「その傲岸不遜は、何時まで持つかな?」

 

 テスラの傲慢な物言いに、ランサーは初めて好感を抱いた。

 気負うなと、彼は言っているのだから。

 敵ながらに、中々のお人好しである。

 

「貴殿の配慮、ありがたく貰い受ける」

 

「勝ってから言うのだな。

 尤も、負ける気など毛頭ないが」

 

 テスラの言葉、それは正に自信に満ちたものであった。

 自分が負けるはずなどないと、言葉だけでなく彼の目が語っている。

 盲信にも似ているが、彼には経験という確かな裏打ちがあるのであろう。

 テスラは大真面目に語っている。

 それ故に、ランサーは目の前の戦士に感謝していた。

 戦士として、騎士として。

 

「全霊で参る」

 

「良き闘志だ。

 ――来るがいい」

 

 テスラの言葉を合図に、再び戦闘は再開された。

 最初に動いたのは、やはりランサーだった。

 彼は黄色の槍、ゲイ・ボウを投げ捨てて、猛スピードで突撃を開始する。

 策などなく、ただ正面からのぶつかり合いを繰り広げようとしている。

 急造の策を弄しても、およそ目の前の人物の方が巧妙であると理解したから。

 

 ――ならば我が槍で活路を開く。

 

 それが戦士であるランサーが下した結論であった。

 彼も、テスラと同様に自らの自らの技には自信がある。

 これまでの経験や修練が、それを証明してくれている。

 ならば一撃で穿てなくても、何度も槍を突き出すまで。

 それこそが己に出来る唯一のこと。

 ランサーは自然と理解し、テスラに目掛けてただ疾駆する。

 小細工なしの、正面対決を望んだのだ。

 

「成程、今度は素直に来たか。

 なれば相応の対応をせねばなるまい」

 

 テスラは再び、紫電を帯電させ始める。

 先ほどの比ではない。

 10以上の雷が駆けていく。

 それが収束し、本来の雷と化す。

 目標はただ一人、ランサーのみを狙って。

 

 けれども、ランサーはその走りを止めることはない。

 いや、更に加速をしていく。

 そして雷に接触する寸前に……。

 

「もう見切っている。

 同じ手は何度も食わんぞ!」

 

 ランサーは赫の槍、ゲイジャルグを両手で握り締め、吶喊を開始する。

 先の雷は重く、それを受け止めるためにランサーは停滞を余儀なくされた。

 なればこそ、それを超える一撃で雷を突破しようとランサーは決意したのだ。

 

「ハァッ!」

 

 接敵、雷鳴、衝撃波。

 それらが辺りを包む。

 

 ランサーと雷は拮抗していた。

 収束した雷の重みは、大きな衝撃を伴うほどのもの。

 常人では耐えられない。

 並みの英霊でも、負傷を伴うであろう。

 

 ――だが、しかしだ。

 この場にいるのはフィオナ騎士団筆頭騎士。

 輝く貌のディルムッドその人なのだ。

 彼の技、そして彼の持つ槍は退魔の槍。

 それに触れてただで済む神秘など、この世のどこにも存在しない!

 

「ハアアアアアッ!」

 

 ――ランサーの槍が、雷の光を切り裂いてゆく。

 ――赫の槍が、道を切り開く。

 

 そして、彼は、ランサーは。

 減速することなく、テスラへの肉薄を成功させたのだ!

 

「――見事」

 

 雷を両断する。

 その偉業を前に、テスラは心よりの賛辞をランサーへと送った。

 感じたものは、驚嘆に近いものであっただろう。

 顔には出さなかったが、テスラは魅入っていたのだ。

 

「取るっ」

 

 けれども、賛辞を聞いたランサーは表情を変えることもなく。

 ただ、前に槍を突き出す。

 それのみが、いま自分がすべき事だと理解していたから。

 だから力を振り絞り、槍をテスラへと突き立てんとする。

 

 ――彼の槍は、正確にテスラの心臓へと迫り狂って。

 

 そうして、彼は、テスラは……。

 

「な、に?」

 

 テスラは、立っていた。

 やりは確かに、疾風の如くテスラに突き立てられる筈であったのに。

 なのに……。

 

「バリツがなければ、即死だった。

 見事な一撃だ」

 

 彼の胸元を前にして、赫の槍は停止していた。

 テスラに掴まれて、それは届くことがなかったのだ。

 

「何が――」

 

 何が起こっているのか。

 口に出してから、ランサーの理解が追いつく。

 そう、ランサーの槍は、テスラに掴まれた瞬間に威力を殺されたのだ。

 そこでようやく、ランサーは思い至ったのだ。

 何故、テスラを穿てるイメージが持てなかったのかを。

 

 何のことはない、テスラの構えが受け止めながらに受け流すモノであったからだ。

 正に複雑怪奇、曖昧模糊。

 失伝した理由が嫌でも分かるような複雑さ。

 それ程に巫山戯た武術であったのだ。

 

「フンッ」

 

 ランサーは、急いでテスラから離脱する。

 テスラも、掴んでいた槍を素直に離した。

 ランサーはゲイ・ボウが落ちていた地点まで後退し、黄色の槍を拾い上げる。

 また、最初からの仕切り直しであった。

 

「勢いを、殺しきれなかったか」

 

 呟いたのはテスラであった。

 彼は無傷であったけれども、手は、確かに痺れていて。

 ランサーの輝きに目を瞬かせてしまったのが原因であろう。

 更には、ランサーの気迫が、この痺れを齎したのだともいえよう。

 

「最高の一撃であったはずなのだがな」

 

 一方でランサーは、やや嬉しげにそう呟いた。

 これほどの戦士、ランサーがかつて見てきた中にも早々は居なかったからだ。

 故に、胸の高鳴りはランサーへと充足感を与えていく。

 

 そんなランサーへと、苛立たしげな声が投げつけられる。

 ランサーのマスター、ケイネスの声だった。

 

「ランサー、私は引き離せといったのだ。

 何も正面から打倒しろと言ったわけではない!」

 

 あくまで苛立たしげで、憤怒している訳ではなかった。

 事実として、ケイネスは状況が思うように運ばないことに苛立たしくは感じていても、ランサーの一撃は確実に入ると感じていたからだ。

 だからこそ、立っているテスラに失望を禁じえないのではあるが。

 

「申し訳ございません、我が主。

 ですが、下手に持久が出来る相手ではないのです。

 猛攻を加えて、釘付けにするしか方法は……」

 

「言い訳はいい。

 ならば言葉通りに、そやつめを私に介入させられない様にするのだっ!」

 

「……御意」

 

 ケイネスの言葉に、ランサーは熱が冷めたかのような感覚を味わう。

 主が悪いわけではない、むしろ正しい。

 それが分かっていても、どうしようもなくランサーはやるせなかったのだ。

 

「無粋な輩め」

 

「主への暴言は止めて頂こう」

 

 それでも、テスラの言葉にはキチンとした反応を示していた。

 そこは、ランサーとしても譲れぬ一線であるが為に。

 

「ふむ」

 

 そんなランサーを見ていて、テスラは些かの疑問を抱く。

 何に関することかといえば、それはランサーの態度について。

 何が、ランサーをそこまで駆り立てているのかという事をだ。

 

「お前は、何をそこまで拘っている」

 

 バリツの構えは解かず、隙は見せない。

 けれども、戦いの最中ではあるがテスラは尋ねる。

 ランサーの理由に、疑問を抱いたが為に。

 

「そこな野暮天なマスターが、お前の忠誠に値する人物なのか?」

 

 目を細めて訊ねると、ランサーは目を釣り上げる。

 不愉快そうに、顔を顰める。

 

「俺は、此度の戦いにおいては、曇りなき忠誠を捧げる為に召喚に応じたのだ。

 事実、俺を呼び出した主は非常に優秀な魔術師だった。

 それは十分な敬意に値すると感じ、主に忠誠を捧げることを誓った」

 

「ほう」

 

 ランサーの言葉に、テスラは形だけ答えた。

 彼の言葉の奥底にあるもの。

 それに気が付きつつあったから。

 

「ならば、その忠誠とやらを示すためには私の首が必要か」

 

「その通りだ。

 無論、お前も俺を打倒する必要があるのだろうが」

 

 テスラは、更に目を細めていた。

 この主従の歪さを、今ここに垣間見たのだから。

 このままでは、この主従は手遅れになる。

 本能的に、そして経験則として、テスラはそれを悟ったから。

 正すべきもの、それを見つけたら正さずにおけないのが性分であるから。

 だから、ここに一つの宣言をする。

 

「ディルムッド・オディナ。

 フィオナ騎士団随一の騎士よ」

 

 声は低く、然れ夜に良く響く声音で告げる。

 

「――お前に、輝きが何たるかを教えてやろう。

 ――教育の、時間だ」

 

 そう、彼が宣言した瞬間。

 

 

 

 ――彼の――

 

 

 ――姿が、変わって――

 

 

 ――黒い襟巻(マフラー)、たなびいて――

 

 

 ――紫電の奏と共に、閃光が迸る――

 

 

 ――雷鳴が轟く――

 

 

 

 まばゆい光が、迸る。

 それは蒼色の輝きであった。

 それは天を仰ぎ見た時の輝きであった。

 

 空を舞う雲が齎すもの。

 即ち、雷の輝き。

 

「輝きを持つ者よ。

 気高さを失わぬ、英雄よ」

 

 響くは明朗なる声。

 語るは清涼なる声。

 

「お前の声を聞いた。

 ならば、呼べ。私は来よう」

 

 今までの戦闘を感じさせない堂々さで、腕を組みながら彼は言う。

 何者にも邪魔させないと言わんばかりの、自信ある態度で。

 

 

 ――その腰部には機械の帯(マシンベルト)が。

 ――その両手には機械の籠手(マシンアーム)が。

 

 ――たなびく黒の襟巻(マフラー)は僅かに雷電を帯びて。

 ――白い詰襟服には、古い海の制服を思わせる意匠で。

 

 ――異国の軍服の様なものをまとい。

 ――空の果ての雷をまとい。

 ――刹那に、彼はその姿へと変わっていた。

 

 

 ――そして――

 

 

 ――彼の瞳、輝いて――

 

 

 ――周囲に、剣が浮かぶ――

 

 

 ――光り輝く雷電の剣、合計五つ――

 

 

「絶望の空に、我が名を呼ぶがいい。

 ――雷鳴と共に。私は、来よう」

 

 

 彼の宣言は、静かに、激しく――轟く。

 敵手たるランサーの心にも、しかと言葉は入り込む。

 それは宣誓であり、永久への誓いでもあったのだから。

 

「それが貴殿の真の姿か」

 

 誓いを聞いて、姿を見て、反射的に槍を強く握るランサー。

 然れど、その目には輝きが反射していて。

 しかと、雷電が目に焼け付きつつあった。

 

 尊い雷の輝き。

 それは、目に映る者たち全ての目を眩ませる。

 士郎も、龍之介も、ケイネスも例外ではない。

 この場の全ての人が、テスラを見ている。

 例外なく、目に入り込んでくる輝きを。

 

「確かに、貴殿は稀有なのだろう」

 

 その輝きに、ランサーは向き合う。

 意志を持って、自分を持って。

 複雑な感情を抱きつつも、言葉を紡ぎ出す。

 

「その輝きは本物で、その性根も尊いものだ。

 しかし……」

 

 何かを迷いながら、振り絞るようにして。

 彼は、言葉を吐いたのだ。

 

「貴殿に、俺を否定させん。

 俺の忠義は、一点の曇りもないのだから!」

 

 テスラに呑まれかけているランサーからの、気張るような宣誓。

 テスラにはテスラの考えがあるであろうが、ランサーにはランサーの矜持がある。

 それは決して交わる事のないであろう、誇りとプライド。

 けれども、英霊ならば誰でも持ちえしもの。

 

「あぁ、お前に取ってはそうであろう。

 その忠誠心も本物だろうよ。

 だが……」

 

 テスラは射抜くような目で、ランサーを睨みつけた。

 何よりも、大事な事を伝えるために。

 夜の暗闇の中でも、相手に届く声で。

 

「――独り善がりでは、話にならんと思わんか」

 

 静かに、息を飲んだ音が聞こえた。

 それを切っ掛けに、歯車はまた回りだす。

 

 ――今宵の戦いは、まだ続くのだ。




 テンプレ書いてる時が、一番楽しかったです。
 あと、ランサー主従は相互理解が必要(確信)。
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