Fate/Shining Night   作:ペンギン3

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よし、年越すまでには間に合いましたね!
……上? あれ? 何で上とか書かれてるんでしょうね?
ちょっと意味がわかりませんね(遠い目)。


第10話 悩みの中、感じれること 上

 先生のお説教から一時間して。

 お昼を食べた俺達は、する事もなくのんびりとテレビを見たり、ジッと空を眺めたりしていた。

 よく晴れた、陽気が降り注ぐ空。

 庭では罰としてテスラバイクの充電をするべく、気怠げで表情の抜けた雨生龍之介が必死にテスラバイクのペダルを漕いでいる、至って平和なひと時。

 そんな中で、先生は唐突に言ったのだ。

 

「士郎、出かけるぞ」

 

「先生?」

 

 急すぎて、どうしたのだろうと思ってしまう。

 けど、先生は至って真顔で、今も何を考えているのかが全く読めない。

 だけど、お出かけだけは必ずするという、もう決定しきった後の表情をしている。

 何を言っても、曲げることは出来ないのであろう。

 だから俺は、一つ頷いた後にいそいそと出かける為の準備を始めた。

 出かけるに必要なもの、それらをリュックの中に詰め込んでいく。

 そうして、大体のモノは詰め終えたかな、と俺が判断した時に、先生は言ったのだ。

 

「では、行くか」

 

 どこに?

 そんな俺の疑問も知らず、先生は俺を連れて靴を履き、玄関を出て行ってしまった。

 俺も慌てて、それについて行って。

 庭を一瞥した先生が雨生龍之介に言った、メーターが八十まで溜まったら休んでよし、という言葉に、ほんの少しだけ同情した。

 あいつは、暫く解放されることのないメーターとの戦いを繰り広げるのだから。

 

 軽い黙祷を捧げつつ、彼の背中を俺は追う。

 後ろからグエェ、何てカエルが潰されたような声が聞こえた気はするけど、気のせいに違いない、うん。

 

 

 

 

 

 ――そうして歩いて、気が付けば俺達は人通りの中に立っていた。

 

 人、人、人、まさに人海と称すしかない人の波。

 流石は、冬木一の都会と称えられるだけはある。

 先生の隣に立ちながら、そんな新都の人海を眺めて。

 

「どうした? 人混みは苦手か、士郎」

 

「ううん、そういうのじゃない。

 そういうのじゃないけど、ちょっと怯む」

 

 理由が分からずに、この中に埋没するのは怖いかな、と感じた。

 錯覚で気のせいなのは分かっているけれど、足を踏み入れるのには躊躇する。

 理屈じゃないのかなっていう、そういう感覚。

 

「ならば、こうすれば良い」

 

 そう言うと、先生は躊躇なく俺の右手を掴んで、そのまま手を繋いだまま歩き出した。

 気分的には兄……というよりも、お爺ちゃんに連れられている孫の気分。

 きっと言葉にすると、先生は不機嫌になるから言わないけど。

 

 なので無言で俺達は歩いていく。

 先生は迷いなく道を進んでいて、どこに行くかは既に決まっているようで。

 俺だって知らない道を、足を止めることなく進んでいく。

 

 いつの間に先生はこの街を調べていたのか、結局は何しにどこへ向かってるのか、色々と聞きたいことは山ほどある。

 だけども、俺は先生の歩幅について行くのが精一杯で。

 先生も歩くスピードは落としてくれているけど、それでも何とかついていける程度のモノだから。

 無言でせっせと足を動かして、転けないように気をつけながら先生と歩き続けて。

 

 ――俺達が最終的に辿りついた場所。

 ――それは大きな本屋であった。

 

「本屋?」

 

 我ながら間が抜けた声が出た。

 でもそれだけ、どうして先生がここに来たのかが分からないのだ。

 これが図書館なら、まだ分かりやすかったのかもしれない。

 けど先生が来たのは本屋で、どうしてもお金の掛かる所。

 言っちゃ悪いけど、先生がお金を持っているとは思えない。

 なのにここを選んだ、ならその理由は?

 考えて、ちょっと頭の中がごちゃごちゃになってしまいそうで。

 むぅ、と唸っていたら……俺は首根っこを引っ掴まれていた。

 頑張って後ろに振り向けば、予想通りに先生の仕業だった。

 

「先生?」

 

 不満を込めて、怒ってると匂わせながら俺が先生を呼ぶと、事も無げに先生は答えた。

 何時もの質問に、平然と返答するように。

 

「一々考え込まれても面倒だ。

 邪魔にもなる、中に入ってから考えろ」

 

 それだけ告げると、先生は強引に店内へと入店してしまった。

 そのお陰で、俺達は店の人達からの、沢山の視線をやっぱり集めて。

 傍から見れば、目立つ白服を着た先生と、猫の仔の様に扱われている俺は非常に目立つ。

 ……勿論、悪い意味でだ。

 

「せ、先生! 恥ずかしいって!!」

 

「なに、すぐ終わる」

 

「そういう問題じゃないっ!」

 

「そうか」

 

 返事だけはしたけど、俺の言うことなんて全く聞く気がない先生。

 一身に注目を集めていても、まるでそよ風の様に受け流して。

 まるで気にした風もなく、堂々と店の奥へと進んでいくのだった。

 ……こんなの、絶対におかしいよ。

 

 

 そんなこんなで、先生と俺の奇怪な歩みは奥の本棚の方でようやく停止した。

 ジロジロと向けられた視線も、こんな辺鄙な奥の棚までは追いかけてこない。

 既に十分恥ずかしい思いをしたから、全てにおいて手遅れだけど。

 

 恨みがましく先生を見上げるけど、先生はふむ、何て言って本棚を見ていて。

 一回たりとも、俺に視線を向けようとしない。

 なんて意地悪、正義の味方のする事かと思ってしまう。

 

「……子供を虐めるなんて、先生らしくない」

 

「虐めているわけではない、手間を省いただけだ」

 

 よくも言う、けども先生は嘘をつかないから、本当にそう思っているのだろう。

 納得できない上にムッとするけど、自分に落ち着けと言い聞かせる。

 こんな事で怒っていたら、きっと先生の神経よりも俺の心の方が参ったって言う、確実に。

 受け流せ士郎、雨生龍之介みたいにちゃらんぽらんに成らない程度に。

 俺はそう自分に言い聞かせて、先生はその間に本を物色して、互いに時間を潰していって。

 

「成程、ふむ」

 

 その間、先生はちょっと独り言が多かった。

 急に感心したような声を上げたと思ったら、変に唸ったり。

 普段はあまり表情を動かさないのに、本を読んでいる今は僅かにだが表情は変化している。

 気になって本の題名を見ると、そこには『世界の歩み 西暦の歴史』と題された本が。

 その後も、本を元の場所に戻したと思ったら、次の本を手に取る。

 『化学者達の闘争 その時歴史は動いた』や『各国偉人伝 歴史秘話ヒストリア』など、あえて統一性を見出すならば、歴史について先生は調べ事をしている、と分かること程度。

 大まかな歴史と、それに付属する細かな添え物としての登場人物。

 その好みのところを調べている様に、俺には見える。

 俺の歴史の教科書とか、そういうので好きな箇所だけペラペラと捲った事とかあるから分かる。

 先生は化学者? だからか、そう言うのに興味でもあるのだろうか。

 

「先生」

 

 自分で考えても良く分からない。

 それに時間を持て余してしまっていた。

 だから俺は、邪魔するのは憚られるけど、それでも聞かずにはいられなかったのだ。

 先生は、一体何をしにここに来たというのかを。

 

「先生はそれを読んでどうするの?

 何をしに、ここまで来たんだ?」

 

 先生のことは信じているけど、でも不満が僅かに吹き出ていたのかもしれない。

 単に退屈すぎて、我慢できなかったという側面も無論あるけれど。

 ただ、今の空間は居心地が悪かったから。

 

「調べものだ、単なる好奇心を潤すためのな。

 ここに来たのは手軽に読めるものが一箇所に集まっていて都合が良いからだ」

 

 本から顔を上げずに、先生は淀みなく答えた。

 あらかじめ決まったセリフを言うように、滑らかに。

 そのせいで相手にされてない様な気もするが、別に無視されている訳でもないのがむず痒い。

 だから俺なりに、何か言葉で訴えようとして頭の中身を引っ掻き回して、絞り出そうとしていた。

 

 ――そんな時の事だった。

 

「うん、なんだ? お前達も現世を楽しもうとする腹か?」

 

 燃えるような赤い髪が特徴の大男と、

 

「うえぇぇ!?

 何でこんな所に居んるだよお前!?」

 

 動揺を隠せない黒髪の高校生っぽい奴がこっちに向かってきていたのだ。

 流石の先生もこれには反応せざるを得なかったらしく、本を無言で棚に戻す。

 そうして、俺と一緒に彼らの方に向き直ったのだ。

 

 外国人の大男と白人の高校生。

 妙ちきりん極まる組み合わせではあるが、その二人には見覚えがある。

 あのサーヴァントが大量に出揃った倉庫街、その一角で一番大声を出していたから嫌でも覚える。

 しかもマスターとの漫才付き、サービス精神は豊富過ぎるくらいなコンビ。

 ……あと、マスターをヘットハンティングしようとしていたことも覚えてる。

 多分大男の方はお調子者で、高校生の方は気苦労が絶えないことだろう。

 確か名前は……、

 

「イスカンダル?」

 

「おぉ、この征服王の名、しかと覚えていたか小坊主」

 

 首を傾げながらそう尋ねると、大男は満面の笑みを浮かべながら体躯に見合わぬ素早い動きで俺に近づき、右手で俺の頭を固定。

 そのままわしゃわしゃと、勢い良く撫で上げられる。

 先生と違って遠慮がないから、正直に言ってかなり痛いことこの上ない。

 というか、それ以前にだ。

 

「せ、先生!?

 何かサーヴァントに捕まった!!

 助けてっ!!」

 

 もう、なんだか色々と酷い。

 どうして昨日の今日で、戦うことになってるサーヴァントに捕まってるんだろう?

 正直大ピンチとしか言い様がない。

 

「せんせーっ!!」

 

「大丈夫だ、そこな奴は誇りと矜持を持っている。

 精々玩具にされるだけで済む」

 

「ハハハッ、その通りだ小坊主。

 何ら心配する事など、一切合切存在せぬ」

 

 べしべし頭を叩かれる俺。

 あまりの待遇に解せないという気持ちがフツフツと湧き上がるが、先生が言うのなら大丈夫なのだろう。

 ただ、それが助けになるかは別だが。

 先生が絡まれている俺を助けてくれない以上、もう一つの綱に視線を移すのは当然のこと。

 だから俺は、即座に近くに居た白人系高校生を見上げたのだ。

 素直に、助けて、とメッセージを込めて。

 

 けど、その視線を送った先に俺が見たものは、何だかプルプルと震えている高校生の姿。

 まるで今にも噴火しそうな活火山のよう、地震によって揺れ動かされたかと錯覚するほどに。

 俺はただ、グリグリとされながらその震え具合をジーっと眺めているだけであった。

 ……触れて俺に爆発が飛んで来るのも、ちょっと面倒くさかったから。

 

 ――そして、案の定。

 

「らぁーいぃーだぁ!!

 お前、ナニ敵のマスター達と馴れ合ってるんだよ!!

 お前がキチンと戦火を上げるとか言ったから、街を彷徨いても良いって言ったんだぞ!!

 それなのにお前は!!!」

 

 小さく見える体からは想像が付きにくいほどの声量。

 よく通る声が、ここにいる皆の耳に響き渡る。

 ここが人気のない場所なことだけが幸いなんだと思う。

 ……だって、これ以上目立ちたくなんてないから。

 黒髪白人高校生、ライダーのマスターはその辺りに気が回らないほどにイラっとしているようだった。

 

「何を言う坊主、この程度で目くじらを立てるでないわ。

 背だけでなく、器も小さいと謗らるるぞ?」

 

「小さいのと大雑把なのは、まっったく別の問題だろうが!」

 

 そこから始まる説教劇。

 見てる方にも、うわぁ、という感覚を伝えてくれる。

 一方的に捲し立てるライダーのマスターに対して、ライダー自身は右から左に受け流す感じ。

 馬耳東風とはこの事かとある種の関心すら齎してくれる。

 そして最終的には、

 

「ひぎぃ!?」

 

 1メートル位、こっちの方にデコピンで吹き飛ばされたのだ。

 痛そう、デコ赤くなってるし。

 

「クソゥ、僕は何一つ間違ってなんかいないはずなのにぃ」

 

「正論ではない、今は坊主の器量を問うておるところであった」

 

 ふてぶてしいにも程があるぞ、と小さくライダーのマスターは呟いた。

 ……うん、その気持ちはわかる。

 ウチの先生にも、感じる感覚ではあるから。

 俺の場合、そこまで反抗的にはならないだけで。

 

「大変だな、元気出せよ」

 

「お前も、マスターなら他の相手に容赦なんてするなよな。

 ていうか、何で子供にまで同情されてんだ、僕は……」

 

 可哀想で、それから同調したので声をかけたら、複雑そうな顔をされた。

 戦うであろう相手に、こうして声を掛けられるのは辛いものがあるのか。

 まぁ、相手を殺すか殺されるの関係なのに、積極的に仲良くなんてなろうとも思えない。

 俺がライダーのマスターだとしても、ゲッソリすることだろう。

 

「難しいよな、こういうの」

 

 けど、相手を倒したいとか、そういうことはどうにも思えない。

 命が危なかったり、死にたくないなら死ぬ気で俺も抵抗はする。

 だけど積極的に相手を打倒しようとする決意は、中々に出来ないのだ。

 

「……分かるけど、やりづらくなること言うなよな」

 

 溜息を吐かんばかりに、顔に手を当てて天井を仰ぐライダーのマスター。

 それがあまりに親しみを持ちやすくて、本当に気持ちが通じてしまう。

 相手のことが少し分かる度に、戦えるのかと心の中で小さく囁いているから。

 辛い、難しい、嫌だ、と当然の如くに返ってくるのは至極当然のこと。

 趣味じゃない限り、誰だって傷つけ合いたいなんて思わないだろう。

 

「ごめん、でもそっちだってそうだろ?」

 

「何が」

 

「苦労してるって伝わってくるから、同情しちゃうさ。

 しかも面白そうな奴だもん」

 

 そう告げると、本気で頭を抱えるライダーのマスター。

 中々に分かりやすく難儀な性格をしている。

 きっと根が真面目なんだろう、どこぞの自転車漕いで充電している奴も見習えばいい。

 

「はぁ……あぁー、もぅ!

 何で子供が聖杯戦争に参加してるんだ!

 そもそもそこからが間違いじゃないか!!」

 

 だけど、考えすぎて爆発しちゃうのは本当に難儀だ。

 ご愁傷さまなのだろうが、あまりに考えすぎて将来的にハゲないか心配してしまう。

 

「何を言ってる坊主。

 小坊主は子供だが、汝もまた子供。

 そこに違いなどあるまい」

 

「あるわ大馬鹿!

 僕は自分の意志でこの戦いに参加したんだ。

 だがこいつ、どう見ても巻き込まれて参加したようなもんだろ!!」

 

 ライダーのマスターとライダー自身が俺を指差したりしながら、何か色々と会話をし始めた。

 内容は俺が子供で、ライダーのマスターには確固たる意思がある云々。

 ……何か言い返したけど、自分の意志でこの戦いに飛び込んだかどうかという事には首を振るしかない。

 だけど、ただ一つだけ譲れないし、否定させない事もある。

 ただ俺だけにしか出来ない、たった一つのこと。

 

「確かに俺は自分の意志でこの戦いに参加した訳じゃない」

 

 何かごちゃごちゃ言い合ってるライダー主従に、俺は口を開いて割って入った。

 揃って二人ともこっちを見たので、俺は続けて言葉を吐いていく。

 一つだけ、伝えたいことがあったから。

 

「でもさ、俺がいるだけで先生の役に立ててるんだ。

 俺にとっては、それだけでも十分に嬉しいし甲斐があるって思える」

 

 だって先生は、俺を助けてくれた人だから。

 あの輝きを、本当に格好いいと思えたから。

 魅せられて、付いて行きたいと思ったのは俺の意思なのだ。

 

「だからイヤイヤやってるってわけじゃない。

 戦うのは嫌だし、自分が何もできないのはすごく歯がゆいけど。

 でも、それでも最後まで先生について行くって決めたんだ」

 

 きっと、俺の中でそれが既定事項で。

 あとは走って駆け抜けるだけ。

 先生が付いていって、光の先に何があるのかを見届けたい。

 それが、今俺が戦っている理由の一つ。

 先生に助けられたからこそ、他に先生が誰かを助けるならばその助けになりたい。

 俺にもできることが、何時かは見当たるかもしれないから。

 

「――クク」

 

「……何が面白いんだよ、ライダー」

 

 俺がはっきり告げた後には、笑いを噛み殺しているライダーと、拗ねたような顔をしているそのマスターの姿。

 何か言いたげだけれど、どうしようもなくて俺を睨みつけてくるライダーのマスターがどうにも印象的だ。

 でも、それに怯んでも不快だと感じることはない。

 俺と戦いたくないから、そう思ってくれているんだって分かるから。

 

「あんた、律儀なんだな」

 

「可愛くないやつすぎる。

 あと、年下にあんた呼ばわりされる覚えはない」

 

 感心してこぼした言葉に、やっぱり律儀に返答をしてくれる。

 打てば響くタイプの人間で、付き合っていくにはとても楽しい人なのだろう。

 成程、これが人徳かと感心してしまう。

 

「ガハハハハハ、よく言った小坊主!

 覚悟はある様で結構、それでこそ男だぞ」

 

 そして更に嬉しそうに、またも俺の頭をボタンの様にベシベシと叩き始めるライダー。

 どう感じても拷問すぎる、頭が揺れて気持ち悪い。

 ぐわんぐわんする、揺れて揺れてメリーゴーランド。

 

「おいライダー、そいつ目を回してるぞ」

 

「うむ? 修行が足りぬな、小坊主」

 

「誰だってお前みたいな脳筋になれるわけじゃない」

 

 

 ライダーのマスターのお陰で、何とか解放された俺。

 フラフラの頭で先生の背後に隠れることにする。

 そのついでに、俺は先生に告げた。

 唐突だけれど、さっきの会話で感じたことを伝えたかったから。

 

「先生、信じてるから勝って」

 

 揺れて纏まらない頭でも、しっかりとこの言葉だけは吐きだせて。

 俺がこれだけ意志を持てているのは、先生が負けるなどと全く考えてないからだと気が付く。

 あれ、俺ってこんなに現金だったかな、と思わず苦笑しながら先生の言葉を待って。

 

「あぁ、勝とう。

 それがお前の望みでも、例えそうでなくともだ。

 ――私は、冬木市に住まう人々を助けると、そう宣言したのだからな」

 

 その力強い言葉に、何よりの安心を得れた。

 これでこそと思う俺と、聞けて安心した不安を抱えていた俺。

 どうにも情緒不安定かなと思わなくもないけど、それでも良いかと思えるのは先生が近くにいるからか。

 

「先生に、俺は付いてくだけだよ」

 

 それこそが俺の意思、今できる最大のこと。

 目の前にいる愉快な主従とは戦いたくなんてないけれど、先生ならそれすらどうにかしてくれると、今の言葉で何となく察することができた。

 なので、一方的に今はもたれておこう。

 そして何時かは、先生に貰った分だけ返せるような、立派な俺になっていたい。

 口にしてしまうと恥ずかしいから、今はそっと心の中に閉まっておくが、時間と共にしっかりと形にしよう。

 

 だから先生、それまで待っていて欲しいな。

 ふと、何故だか不安が過ぎったが、それが何なのか俺には分からなかった。

 でも、それもキチンと噛み締めておかなくちゃいけない気がして。

 忘れないように、自分の中に感じたものを順番に刻みつけていく。

 それこそが、先生の言うところの学ぶ、ということなのだろう。

 

「そうか、ならば私がいる限り、私はお前を守ろう」

 

 何度も聞かせてくれている先生の守るという言葉。

 だけれど、何度聞かされても嫌なものじゃないと感じる。

 安心して、何より落ち着けるから。

 

「それと、士郎」

 

 会話の内容が一段落着いたところで、先生は視線をじぃっと伸ばしていた。

 その先にいたのは、先程から口論を繰り広げているライダー主従。

 一向に終わる気配のないそれは、最早痴話喧嘩と称しても良いものなのかもしれない。

 

「この戦いに感じた違和感、忘れるな」

 

 それだけ言うと、呆れ気味に先生はライダー主従の間に割って入った。

 曰く、煩くて立ち読みの一つもできないとか。

 あいも変わらず自分のペースを乱す気配がない。

 流石というべきか、俺も先生に呆れるべきなのか。

 

 ――まぁ、一つ言えることはだけど。

 ――先生のそういうところも、別に嫌じゃないってことだけだ。

 

 だから今度は俺も会話に混じりに行く。

 このデコボコ主従のこと、どこか好きになってるんだなと自覚しながら。

 今だけ、そう、少なくとも今だけは。

 少しばかり楽しく会話しても、罰など当たらないと信じながら。




下の方は来年に投下します、済みません。
冬は寒くて、書く気力をもがれていくから仕方ないですね(遠い目)。
という訳で、みなさん良いお年をお過ごし下さい!





……ところで、FGOにバベッジさん降臨しましたね。
大体ガクトゥーンのshining nightで見たままで吹いたのはここだけの話。
霧纏うロンドンシナリオ、雰囲気的に楽しいです。
ただ、弟は常に意味不明そうにプレイしてました。
慣れてない人には、色々ときつい物があったのでしょうかね(適当)。
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