明るみに居た。
あの連れ込まれた家とは違う、開けた優しさがある空間。
慣れ親しんだ場所、見慣れた人達がいる場所。
――俺の家、だけど。
「それでは先生、息子をよろしくお願いします」
「うむ、任されよう」
先生が、平然とした顔で、お母さんとお父さんに頭を下げているのを見ていた。
何が起こってるのか、イマイチ理解できない。
全てがいきなり過ぎて、自分の頭が追いついていないのだ。
これの始まりは、今から少し前のことだった。
『士郎、お前の家に案内しろ』
いきなり、先生がそんなことを言った。
何だろうと思いつつも、俺は先生を連れて自分の家へと向かた。
先生が俺の家に来る! という期待が多く含まれていもしたから、それなりに楽しみに。
それで家に到着した時、先生は俺の両親に話を始めたのだ。
俺が武術……確かバリツ? を習いたい為に、弟子入りしてきたこと。
2週間ほど、修行のために先生が俺を預かりたいということ。
危険からは、必ず守るということ。
それらのことを、先生はお父さんとお母さんに告げた。
とても胡散臭かった。
俺でも、妙な目で見てしまいそうな怪しさだった。
これで頷くはずなんてない。
……そう、思っていたんだけど。
「先生、今晩からなのですか?」
「その通りだ。
今から準備をして欲しい」
何故か、両親は先生に全幅の信頼を置いていた。
だからこそ思うのだ。
意味が、分からない、と。
「先生、何したの?」
「ふむ、メスメル式は好かんが、しかし便利ではある」
俺が訊ねても、先生は独りごちるだけで言ってる意味が分からなかった。
これは俺に答えてくれているのか、それとも単なる独り言なのか。
……先生の考えてることは、良く分からない。
でも、決して無視はされてないと、そう思っている。
先生は言っていたから。
お前の声は届くって。
だからきっと聞こえてる。
「答えてよ、先生」
だから、先生を睨む。
聞こえてるのに答えないのは、いけないことだと思ったから。
「なに、小手先の技術を使っただけのことだ」
先生は簡潔に、それだけ答えた。
ただ、それ以上は答える気が内容で。
ふむ、などと言いながら、再び考え事を始めてしまっていた。
……結局、俺が分かったことは、先生が何かをしたことだけ。
それも、何をしたのかは分からなかったけど。
――まぁ、いいけど。
何だか釈然としない。
けど、先生が答えた以上、俺もこれ以上は聞けなかった。
だって、先生、難しいことをブツブツと呟いてるから。
さっきしたことも、その難しいものの中に入ってるって、そんな直感がしたから。
「士郎、しっかり先生のところで学んできなさい」
お父さんが、少し厳しい顔をしてそんなことを言って。
「将来は格闘家にでもなるのかしら」
お母さんが、トボけた調子で笑っていて。
何だかとっても不可思議で。
それでも、両親は何時も通りだとも思っていて。
何かに化かされてるんじゃないかと、変な考えが頭に過る。
「才能の善し悪しなど、どうということはない。
挑戦すること、それこそが輝きなのだから」
先生は、どこか分けしり顔で頷いて。
やっぱり、先生はタヌキなんじゃないか? と感じた俺がいた。
「先生、度重ねて申し上げますが、息子をよろしくお願いします」
「あなた、何度も言われなくても、先生も分かっていますよ」
ヘコヘコと、お父さんが頭を下げ続ける。
何時も頭の低い人だけれど。
今日は一段と低いようだった。
そしてマイペースなお母さんは笑っているだけ。
何時もの風景、何時もの日常。
でも、それとも暫くはお別れしなきゃいけない。
……それが、少し寂しかった。
「失礼、少々トイレを借りる」
「あ、どうぞ、左の方にあります」
先生が、急にそんなことを言う。
お父さんが指をさしながら、先生に案内をしている時に、先生が目配せをしてきた。
何だろう、と思っていると、先生の目は次に俺の両親に目を向けていて。
――それで、先生の言いたいことが分かった。
見透かされていて、恥ずかしいけど、それでもありがとうって思うのだ。
俺が頷くと、先生は微笑を浮かべてくれた。
「それでは、失礼する」
先生は、トイレのある方向へ、足を進めていった。
そして、ちょっとして扉の閉まる音。
……じゃあ、挨拶をしよう。
「ねぇ、俺、ちょっと家に戻らないけどさ」
口にしようとすると、照れくさくあるけれど。
「帰ってきたら、いっぱい話すから」
でも、きちんと口にしておきたかったから。
「二人とも、元気でいろよな」
少しの間の、お別れをする。
先生が、どうして現れたのか、それを語ると言っていた。
あの暗い部屋で、何かに憑かれた殺人鬼と一緒に。
恐らく、俺が家を離れなくてはいけないのは、そのせい。
何が起こるのかは分からないけど。
何かが起こっているのは、俺にも分かるから。
全部終わったら、また二人の顔が見れるから。
「士郎こそ、しっかり学んできなさい」
「怪我はするにも程ほどにね」
二人は、何も知らないふたりは、ニコニコ笑いながら俺を励ます。
これから、何がどうなるかなんて俺には分からないけど。
家族の励ましが、何より俺を頑張れるようにしてくれる。
「終わったようだな」
「……先生」
ひょっこりと、先生が戻ってきた。
何時の間にか、俺達の傍に立っていて。
俺の両親へと、顔を向けた。
「お前達の息子は、しかと私が守り抜こう。
そして、お前たちもまた、私が守ってみせよう」
先生は、超然としながら、そんな誓言を発した。
それには、俺も、お父さんも、お母さんも、キョトンとしていたけど。
それでも、その言葉に、どこか安心感を覚えていて。
「まぁ、頼もしいですわね」
お母さんが手を合わせながら、そう微笑んでいて。
「私達がお力になれることがあれば、何なりとお申し付けください」
お父さんは、やっぱり頭を下げていて。
何時も通りと、やっぱり思って。
「では、行くぞ、士郎」
「はい、先生」
俺の着替えとかが入ったリュックを背負って、そして二人に、俺は振り向く。
「じゃあ、行ってきます」
ごく自然に。
ごく普通に。
何時もの風景のように。
俺は、両親にそう告げれたのだ。
「先生、一体何があるの?」
俺の家からの帰り際、俺は尋ねずにはいられなかった。
だって、絶対に何かが起こっていて。
先生は、それが何なのかを知っていて。
そして、きっと、先生はその為に現れたのだから。
「焦るな、龍之介を交えて話をする」
「……先生が、そう言うなら」
あいつ、雨生龍之介。
薄暗い部屋に住んでる、生粋の殺人狂。
名前は、適当にあいつが名乗ったもの。
そのあいつに、俺は殺されかけた。
恐らくは面白半分で。
……だから、正直不満しかないけど、それでも先生が決めたことなら、それに従うしかない。
俺の分からないことを、先生は沢山知ってるだろうから。
俺の見えないものを、先生は沢山見えてるだろうから。
だから俺は委ねている。
あの時助けてくれた、命の恩人である先生に。
半ば諦めの境地で、俺は先生に従う。
すると、先生は俺の頭に手を置いて、グチャグチャと粗雑に撫でる。
乱暴だけど、安心できるような頼もしさがあった。
「不安なら、私の傍に居るが良い。
それに――」
どこか深い目をして、先生は俺を見る。
きっと、何かヒントをくれようとしていると思ったから、俺は必死に耳を傾けて。
「龍之介と、ひとつ話をしてみるが良い。
私は口を出さんから、存分にな」
「――――」
……俺、顔が引き攣っている自信がある。
あいつと話?
無意味に違いないと、そう思う。
価値観がズレてるって、感じたから。
だから、無駄だと、拒否を起こしそうになる。
「嫌なら、無理強いはせん。
だが、それで分かることもあるだろう。
無論、隣に私も居よう」
でも、先生が言うなら、きっと意味があると思う。
それならば、と湧き上がってくる嫌悪感を抑えて、俺は先生に言った。
「――分かった、頑張ってみる」
「せいはい、せんそう?」
「そうだ、私はそれを行う為に呼び出された」
「へー」
先生が、あの家に到着して、そして早々に説明を始めた。
いま街で起こっていること、戦争……戦いだ。
「でも、そんなことやってたらニュースになるんじゃないかな?」
「魔術師共も、抜かりはないのだろう。
隠匿された儀式、という訳だ」
何で魔法を使えるのに隠すんだろ、と気になったが、続きの話が気になったので、そのまま静かに聞き入る。
一方で殺人鬼、雨生龍之介が興味深そうに聞き耳を立てている。
それ、バラすの、合法なの? と聞きたげである。
……やっぱり反省なんて、ひと欠片もしてないと思う。
「全てで七騎、全てを倒せば願いが叶う……と、言われてはいるがな」
さてはて、と先生はどこか何も読み取らせない瞳で。
それでも、あまり信じていないのが伝わってくるように。
先生は胡乱げな雰囲気を醸し出していた。
「要するに、そいつらを殺して回れば勝ちってことでしょ」
ほうほう、と楽しげに雨生龍之介が呟く。
が、先生は釘を刺すように、雨生龍之介を睨んだ。
「言っておくが、召喚されるものは誰も彼もが一騎当千の猛者ばかりだ。
迂闊なことをしようものなら、早々にあの世行きだと心得るが良い」
「でもでも、それはそれで怪獣大バトルみたいな感じがして、すげぇ楽しそうじゃん?」
ははは、と愉快そうに、雨生龍之介が言う。
頭がお花畑なのか、ネジが足りてないのか。
……多分両方だと、そう思うけれど。
「さて、時の英雄達の演舞。
伊達では無いであろうがな。
ともすれば、私の首が断ち切られかねん」
「……先生が負けるところ、全然想像できないんだけど」
「あ、それ言えてる。
世紀末になっても、ケロっと正義の味方を気取っていそう」
ここで、始めて雨生龍之介と意見が一致した。
……別に、嬉しくともなんともないけど。
「私も本調子ではない。
接続が、イマイチでな。
――充電が足りていない状態だ」
「充電?」
「コンセントならそこっすよ」
意味が分からず首を傾げると、雨生龍之介が指を指す。
その先には、充電器とコンセント。
「鼻か尻にでも挿せば、充電できそう」
……雨生龍之介が言っていることを、想像してみる。
先生が鼻と尻に充電器を挿して、紫電を散らしている姿……。
――ない、絶対に。
というか、そんな姿の先生は嫌すぎる。
「馬鹿者、輝きは己が内から湧き出すものだ。
そのような下らん手段を取るまでもない」
「自家発電っすか」
つまらなさそうに、見たかったのに、と言っている雨生龍之介。
俺は絶対に嫌だったから、これで正解だけど。
でも、心の片隅では少し……。
「何を考えている、士郎」
「イエ、ナニモカンガエテマセン」
「そうか、ならば良し」
鋭い、流石は先生だ。
そして、雨生龍之介がこっちを見てニヤニヤしてんのが鬱陶しい。
「では、話に戻る。
聖杯戦争は原則として夜、一般人に見つからぬように行われる。
互いのマスター、サーヴァントと共に戦うことになる」
先生は何事もなかったかのように、普通に話に戻る。
俺も慌てて、背を正して真っ直ぐにする。
集中して、耳を傾ける。
「最後の一騎になるまで戦い、戦い抜いたものに、聖杯は現れると言われている」
「だから……聖杯戦争」
願いを叶える為の殺し合い。
そこまでして、叶えたい願いでもあるのか。
……何か、嫌だな、そういうの。
「理解したようだな。
では、これからの行動方針を伝える」
さっきと変わらぬように自然体で。
しかし耳を傾けさせられる不思議な声で。
先生は言う、これからの事を。
「拠点はこの家を使う。
構わんな、龍之介」
「良いっすよ、別に」
事もなしげに答える雨生龍之介に、何か反発したくなる感情が湧いてくる。
だって、この家は……。
「不満そうだが、決定事項だ」
即座に先生に見抜かれるが、それでも一言くらいは、何かが言いたかった。
自分でも生意気と思うが、それでも抑えられない。
「……ここって人の住める場所なのかよ」
床には血みどろ、鉄と腐った臭いが混じって、悪臭を漂わせている。
そして何より、死んでる人だ転がっている家でもある。
全然、住む場所として失格だと、そう思うのだ。
「酷いな、士郎君」
「確かに、ひどい有様ではあるが、片付ければ何とかならん事もない」
「っでも!」
あくまで、ここに居座るつもりの先生に、何か言おうとして。
でも、その前に先生が、こんなことを言って。
「それとも、お前の家に逗留して、そして家族を戦火に巻き込むか?」
――言われて、ハッとした。
下手に人がいる場所に居を構えると、周りの人を巻き込みかねない。
そんな、事実に。
「……分かった、ここでいいよ」
そうだ、それならここでいい。
掃除すれば、もしかしたら何とかなるかもしれないし。
それに、この家なら、潰れちゃっても良いかと思ったから。
「よろしい、では次だ」
サラリと、流すように先生は続ける。
だから俺は、ため息を小さく零す。
そうして、自分を納得させる為に。
「基本、戦いに赴く際、お前達は私の傍に居てもらうことになる。
それは良いか?」
戦い、聖杯戦争……殺し合い。
正直に言えば、怖い。
だって、死というものを見てしまったから。
雨生龍之介に、見せられてしまったから。
でも、それでも、それ以外にも、湧いてくる感情があって。
「分かった、先生」
俺は頷いた。
だって、先生はきっと俺を守ってくれるだろうから。
「イイネェ、盛り上げって来たぜっ」
一方、間近で戦いを見れると分かった雨生龍之介は喜びを露わにする。
でも、俺はそれに対して、口を噤んでしまう。
――だって、俺にも、そういう気持ちはあるのだから。
先生の活躍を見られる。
それを考えると、確かに気持ちが高ぶるのだ。
「遊びではないのだぞ、お前達」
「分かってる分かってるって」
馴れ馴れしく先生の方を叩く雨生龍之介。
だが、先生は鬱陶しそうにそれを見ているだけで、取り分けて拒否する様子は見せなかった。
「……戦いに赴くにあたって、少々の解説を入れねばならんようだな」
どこか溜息をつきたげに、先生は俺たちを一瞥する。
……雨生龍之介は兎も角、俺もなんだ。
ちょっとショックである。
「まず、一つ目に」
先生は、淡々とだが、俺達の目を見て話し始める。
俺は真剣に、雨生龍之介は興味深げに、先生を見返していた。
「敵サーヴァントに、アサシンと呼ばれる者がいる。
奴はその名の通り、暗殺に特化したサーヴァントだ。
故に、この家にお前達を置いておくと、場所が露見した時に危険である。
だから、私はお前達から離れる訳にはいかんのだ」
――暗殺、という言葉に、背中に冷たいものが走る。
だって、正々堂々とした戦いを想像していたから。
英雄達の決闘。
そうした中に暗殺者が混じっているのは、ひどく恐ろしく感じる。
戦いに見とれている間に、殺されそうな気がしたから。
「心配をするな」
どこか背筋が寒くなっている俺を、先生は見抜いたらしい。
そうして、どこか安心させる声音で、続ける。
「お前達を、私は害させなどしない」
そう言ってくれるだけで、ホッとするのだから不思議だ。
いや、先生の保証なのだから当然なのだろうか?
「っま、なるようになるさ」
一方で、雨生龍之介の楽天さは目を見張るものだある。
よくそこまで図太くなれる、感心するばかりだ。
「二つ目は……龍之介、お前に意味を教えるためだ」
「……成程、そういうことっすか」
次に先生が述べたのは、雨生龍之介のこと。
短く、互いに理解したように、すぐに会話を打ち切った二人。
生と死についての約束だと、話を聞いていたから、とりあえずは理解できた。
……こいつに、分かるとは思えないけど。
「ふむ、まあ、この二つ位だろうか。
細かいことは追々話す」
先生は考える素振りをしてから、そう呟いた。
あまり多くても、覚えきれないだろうから助かった気持ちを覚える。
でも、先生の次の言葉で、俺は凍りつくことになった。
「では、士郎。
語らいの時間だ。
存分に話し合え」
そう、そうだった。
俺は雨生龍之介と、話し合うんだった。
自分で、そう決めたのを思い出す。
「あ? なになに?」
「士郎と、お前の話し合いだ」
どこか不思議がっている奴に、先生は明瞭に答える。
嫌な汗が、タラリと流れるのを自覚する。
「へぇ、俺も勘違いされたままは嫌だし?
ちょっと話そうか、士郎くん」
妙に爽やかげに言う奴に、きっと俺はうへぇ、と嫌な顔をしてる。
でも、必要なことだから。
……だから、俺は雨生龍之介と向かい合う。
「話が聞きたい」
「良いよ、何でも」
軽く言うあいつに、背中に汗が流れていくのを感じるが、それでもしっかりとあいつの目を見る。
……どこか楽しげな、あいつの目を。
「どうして……殺しなんかしてたんだ」
「ゲイジュツってやつ?
みんなどうしてだか、分かってくれないけど」
……この時点で、心が折れそうになる。
あまりにもズレているから。
けれど、それを抑えて俺は続ける。
「俺は……先生が来なきゃ、殺されてたのか?」
「そうだねぇ、
今はそんな気は、ちょっとしかしないけどね」
――少しでもあるのか、そんな気持ちが!?
戦慄を隠せない。
危ないという心の警笛が、鳴り響き始める。
でも、そんな中でも一つ。
気になる気持ちが湧いてきた。
それは、こいつが求めている物で、とても重要なもの。
「お前は……自分が死んだ時のこととか、考えないのか?」
人を殺す……とても恐ろしいこと。
どうしてそんな感覚を得てしまったのか、俺には到底及びもつかない。
だけど、人の死と自分の死を一致させることが出来るのならば、それでこいつは答えを得れると、俺はそう思う。
俺の言葉に、雨生龍之介はどこか目を丸くして、そうして次には淡々として、こう言った。
「わからないなぁ」
やっぱり……と強く思ってしまう。
でも、こいつは言葉を続けて。
「だから、先生に教えてもらうんだよ。
今は俺は、先生の生徒だからさ。
色々と教えてもらうんだよ、これから」
どこか、遠い目をする彼。
果てにあるモノを見つめようとしているようにも思える。
……何を見ているのか、何を見つめようとしているのか。
「なら」
その様子が、少し……ほんの少しだけ、理解できた気がするから。
分からないものを探す、それにちょっとだけ共感したから。
「その間、お前はどうするんだ」
もう一度だけ、俺は尋ねる。
答えを探すお前は、その間にどういう風に行動するのかということを。
「そうだなぁ」
一つ頷いて、雨生龍之介は俺を見る。
そうして、こいつはどこか抜け落ちた表情で答えた。
「探してる間は、忙しいから芸術活動は休止するしかねえよなぁ。
それも知る内の一つに入ってるし」
――そうか、と分かった気がした。
多分、こいつは残忍だけど、嘘は言わないと思うから。
だから、油断はしないけど……信じることにした。
「目は離さないからな」
「ま、しょうがないかなぁ」
あ、そう、と言わんばかりに。
興味なさげに、雨生龍之介は答えた。
どうでも良いと、思ってるのがまるわかりだけれど。
腹は立つけど、俺が納得するためだったから。
――俺は、こいつを許容する、ことにした。
「終わったようだな」
ずっと隣に居た先生が、ようやく口を開く。
先生は、確かに隣にいてくれた。
一言も口を挟まなかったけど。
それでも、俺が最後まで話しを出来たのは、先生が居てくれたお陰だから。
「ありがとう、先生」
「お前は一人で話をした。
お前が立ち向かっただけの話だ」
ただただ事実を告げるように、何の感情も乗せることなく先生は言った。
それが、どこか誇らしく感じた。
だけれど、先生は感慨に浸る暇などなく、こんなことを呟いた。
「……ふむ、成程。
どうやら、剛の者が入るようだな。
誘っているのだろう」
「え?」
「どゆこと?」
訳が分からなかった俺達に、先生はどこか真剣な声音で、告げた――。
「出るぞ、戦争の始まりだ」
それは夜。
何時の間にか落ちた陽に、夜の始まりを教える星が瞬き始める時間。
魔術師達の、活動を始める時間であった。
ペンギン特有の、話が進まない何か。
次に、ようやく戦闘に入れそうです(汗)。