我が名はグリンデルバルド   作:トム叔父さんのカラス

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揃ったあなたは自分に関係のある人と、大きなトラブルを起こすでしょう。


2話 アンラッキーアイテムは杖とお団子

 鍋を用意し水をコップ4分杯程用意、フライパンと適当な量の油も配備。

 材料は固めに炊いたお米、卵二個、調味料は醤油、鰹ぶし、ついで本だし。

 鍋に水をいれ泡立つまで火にかけ、泡立ったら醤油を大さじ2杯入れる。鰹ぶしは少しで十分、本だしも同様。

 よく混ぜたら解きほぐした卵に少し混ぜ、熱したフライパンに油をひき温めてから卵を中火で固めに焼く、柔すぎると満足感が無くなる。

 残った煮汁は水を足し沸騰させる。沸騰したらお米を入れ8秒ほど煮てすぐに火を消す。

 少し置いたら食器に投下し完成、以上朝食用だし巻き卵とお雑炊レシピ。

 元いき遅れ系リーマンで現魔法少女系コックな俺は、リーマン時代に染み付いた生活力を遺憾なく発揮していた。

 ダンブルドアが原作で校長室暮らしな理由分かった、まさか料理スキルがマイナスにカンストしてるとは。

 ダンブルドアの家に連行され居候となり、数日間のインスタント食品生活にキレた俺はダンブルドア宅の料理担当をかって出た。

 結果俺はイギリス魔法界最強のジジイの、専属シェフと成り果てていたのだった。

 嗚呼なんて名誉なんでしょう、キレそう。

 

「おお、嗅ぎなれん匂いじゃ、何を作ってくれたのかのう」

「ん」

 

 出来る限りの不機嫌な声と顔で料理を顎でしゃくる。

 

「おぉ・・・! もしや、ジャパニーズ=カユとやらかの!?

 イタダキマス、じゃ」

「お雑炊とだし巻き卵な? いただきます」

 

 朝からテンションの高い耄碌ジジイ。とってもウザイ、手伝いなさいよ。

 ・・・おぅふ、しかもお雑炊少し濃すぎる、醤油も日本産じゃないもんな、そりゃ濃いわ。

 

「こりゃイケる、ホグワーツの厨房も顔負けじゃ。

 何よりこのダシ=ロール=エッグとやら、なんとも味わい深い。流石ニホンショクじゃ」

 

 イギリスは飯マズで世界一取れるような国だ、こういう和食を過剰に誉めるのも多分お国料理のせいだろう。

 オートミール? 前世で友達が食べる⚪⚪って言ってたよ。

 

「さて、よい朝食じゃった、ゴチソウ=サマじゃ。

 ヨーテリアや、今日はお主の杖を買いに行こうと思う」

「あっそ」

 

 数日置きにそこかしこに連れ回される。

 興味無いしダルい、うんざりする。

 

「杖と言えばオリバンダーの店、つまりダイアゴン横丁じゃ。

 お主も気に入るじゃろう、楽しいよ?」

 

 どうせ連行スタイルだろ白々しい。

 でもダイアゴン横丁か、原作で読んだな。

 確かハリーが箒に釘付けになったり、ヘドウィックを買って貰ったり・・・あと、なんだっけ?

 

「ほっほ、俄然興味が湧いてきたかの」

 

 見透かされたわ、何と気分の悪い。

 

「では片付けた後いざ参ろうぞ、きっと最高の杖が見つかる筈じゃ。

 それと、大事な話じゃ」

 

 そう言ってダンブルドアは真っ直ぐ俺を見つめる。

 

「その何と言うべきかの、少々粗暴な物言いは控えなさい」

 

 さして大事でも無ぇ、というか何でや。

 

「嫌そうな顔してもダメじゃ。

 仮にも英国淑女、少なくとも ″俺″ は勘弁して欲しいのう」

「善処してやるよ」

「大いにしてほしい、わし心配じゃし」

 

 元リーマン嘗めておるわ、染み付いた作法は例え砂漠のど真ん中でも消えませんよ。四六時中不愉快で塗り固められててもな。

 

「さて参ろうぞ、わしに掴まるのじゃ」

「そらよ」

 

 原作で読んだな、姿あらわしか。任せろ! 髭に掴まるんだな!?

 

「痛い痛い髭は、髭はやめるのじゃ!

 いかん、このままやってしまうと、まずい!」

 

 途中までやっていた姿あらわしは、髭を鷲掴みにしたまま実行される。

 原作で言ってた狭いパイプにねじ込まれる感覚が、朝食後の俺の胃を刺激する。吐きそう。

 ほんの数秒で周りの景色が、古ぼけた木造の店に切り替わる。

 手元には千切れた鳶色の髭が握られていた。汚いから捨てよう。

 

「おおぅ、髭が・・・わし気に入っておるのに」

 

 心無しか髭の量の減ったダンブルドアが呻く。

 

「オリバンダーさん、居るかの?」

 

 いつものおっとりペースで店主を呼ぶ。

 言い終わる前に梯子に掴まったナイスミドルがスライド移動してくる。

 

「私をお探しですかな? ダンブルドア」

 

 マジかよこいつオリバンダー翁かよ、若すぎないかこれ。今原作の何年前よ。

 

「この子の杖を探しておりますじゃ、何か凄いの無いかの?」

「ありますとも、普通の長いの太いの。博物館が作れる位揃えております」

 

 言うが早いかそこら中の箱から杖を取り出す。凄いな、何本あるんだろ。

 

「イチイの木、25センチ。芯はユニコーンの尾、使いやすく丈夫」

 

 手渡された杖を受け取る。以外と見た目より重いのね杖って。

 ではハリーの如く、ヒューン・ヒョイっと。

 

「おおおお!?」

 

 途端に天井に無数の穴が空き埃が舞い踊る。

 違うよ!? 俺悪くないよ!?

 

「よろしくないか、では次。

 暴れ柳、34、芯にヌンドゥの抜け毛。硬く強く何よりエグい」

「聞き間違いかの、芯に何と?」

「ヌンドゥの抜け毛、間違い無いですぞ」

「バッタもんじゃないかのそれ、本物ならヤバいよ? マジじゃよ?」

 

 ヌンドゥ、何だっけそれ?

 とりあえず暴れ柳を杖にしたキチガイは死ぬべき。

 今度は普通に一振りで、南無三。

 

「やっぱバッタもんじゃったの」

 

 綺麗な花が杖全体を覆う、馬鹿じゃねーの。

 

「もっとこう、頭おかしいの無いかの?」

「杖に何求めてんですかダンブルドア。

 少々嵩張るが、一つありますぞ」

 

 奥のデカイ箱を引っ張ってくる。ゴルフケースくらいあるな、杖じゃなくね?

 

「若気の至りで作った逸品。純銀、125センチ、芯はなんと吸血鬼の血管。

 相反させないのが大変でした、そんだけです」

 

 それは、杖というより最早、凶器だった。

 

「杖では無いのう、デカイし太すぎる。これアンティークの槍じゃないかのぅ」

「理論上吸血鬼を魔法無しで殺しきれますぞ」

「何があったんじゃお主。

 ヨーテリア、どう見ても杖じゃないサイズじゃが、どうかの? わしこれ無理だと思うんじゃが」

 

 いやおい、マジかよこれ、デカイ云々じゃない、素材はともかくこれ錫杖じゃん!?

 ヤバい、こういうの大好きだ。

 前世のオンラインゲームで、杖の人とか言われるくらいには好きな武器だったなぁ、懐かしや懐かしや。

 では早速装備、通信制で学んだ棒術に習って、全身を使って体幹を崩さず、振るべしっ。

 

「おお!?」

 

 すると先端が発光。綺麗な残光が宙に舞い、オーロラのように揺らめいて消えた。

 

「驚いた、この杖がこの子を選ぶとは! しかも何と従順な、凄いぞこれは!」

「嵩張るが、良いかね? ヨーテリアや」

 

 ダンブルドアが言葉とは裏腹に目をキラキラさせながら尋ねてくる。

 まあ、嵩張るけど、それが良いって言うか。

 

「これがいい」

 

 かっこいいだろ、これ。

 

「オリバンダー!? おいくらじゃ!?」

「お、おう。売り物にならんし、ただでも構わんよ」

 

 突然のダンブルドアご乱心に狼狽えるオリバンダー、どうやらこれはただらしい、やった。

 

「ありがとうオリバンダー、実はわし心配だったんじゃ杖。本当にありがとう」

「ありがとう、ございます」

 

 一応俺も礼を言っておく、店ちょっとダメにしちゃったしね。

 

「大事にしておくれよ。ミス・グリンデルバルド」

「します」

 

 一生の宝だわ本物の錫杖が握れるなんて。

 ああ、くそ、頬が緩んじまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わし、超ほっこりじゃわ。

 ヨーテリアの控えめな綻び顔、バッチリ脳ミソに永久記録じゃ」

 

 店を出てダイアゴン横丁を歩く内にも大変テンションの高いダンブルドア、ホント原作より酷いな、若いからか?

 

「ついでじゃ、服の採寸もしておこうぞ」

 

 服か、あのヒラヒラ嫌いなんだがね。まあ気分もいいし付き合おうかな。

 

「ここじゃ。はぐれんようにな、ヨーテリアや。

 この時期は採寸に来る客でごった返しておる」

 

 店に入ればまさにその通り、家族連れが店内狭しと右往左往、そんな所だわな。

 

「失礼麗しいマダム、採寸を頼めますかの?

 この子じゃ、ああ、ありがとう」

 

 あっさりと店員をキャプチャーするダンブルドア。

 二つ返事で了解した店員は、魔法の空飛ぶ巻き尺で採寸を始める。

 ご丁寧にサービスで鼻の穴まで計る始末、こいつ絶対オリバンダーのとこの巻き尺だろ。

 

「身長158センチ、11歳にしては高いですわね。

 体格は痩せ気味、ちょうど良いのが御座いますの。ちょっと調整するので待って下さいまし」

「ダンブルドア、外で待つぞ」

「構わんよ。良い子にしてるのじゃぞ」

「⚪ね耄碌ジジイ」

 

 ダンブルドアを罵倒してから店を出る、人混みは嫌いだ。今は小さいから流されるし。

 外のベンチにどっかりと座り込みぼんやりと空を眺める、これぞリーマン式休憩術。見てくれはアホっぽいがリラックス効果抜群だ。タバコかガム欲しいなぁ。

 

「おっ、新入生はっけ~ん」

 

 呆けていたら女二人組が近寄ってきた。

 一人はスポーツ刈りの目付きの悪い男女、もう一人がお団子ヘアーの委員長キャラだ。

 

「ローブ屋に私服のガキと来たら新一年生だ。しかもホグワーツ! そうだろ?」

「そうだけど」

 

 何だこの自信満々なお方、何故誇らしげなんだ。

 

「私らはホグワーツの二年生さ。

 私がレイブンクローのフーチ、こっちがグリフィンドールのミネルバだ。

 敬えよ? 先輩だかんな! ハッハ!」

 

 マジかよマクゴナガルにゃんこ先生とクィディッチオタク先生かよ、若いな。

 てかフーチ先生にゃんこ先生と同年代だったのね、あと意外と馬鹿っぽくて安心、怖くないわ。

 

「ミネルバ・マクゴナガルです。

 寮を選ぶ際は是非、獅子寮へどうぞ。歓迎しますよ」

「待てやレイブンクローだろ、譲らんよ?

 それより一年、名前は?」

「ヨーテリア・グリンデルバルド」

「グリン・・・ッ!?」

 

 二人が固まり、路地裏のホームレス共がこっちを見た。

 やべ、現行のお辞儀担当の名前なの忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フーチは心底後悔していた。

 ほわりとしてそうな一年生に声を掛けたつもりが、現在魔法界を脅かしている闇の魔法使いと、完璧に同姓という超ド級地雷を踏んでしまった。

 周囲もぎょっとして遠ざかる、これはヤバい。

 同じ趣味の友人に目で助けを求めるが、友人はとっくに杖に触れていた。

 

「冗談でも笑えませんよ、あなた」

 

 やめろこのバカ! フーチは心の内で叫んでいた。

 さっきとは明らかに別の人が集まってくる、いいから退散しよう、すぐしよう。

 フーチは友人を引っ張って逃げようとするが、ただでさえ冗談の嫌いな彼女は、一年生の言葉にカチンと来てテコでも動かない。

 

「一年生。グリンデルバルドとは、今魔法界で最も忌むべき名。軽々しく口にするのは恥ずべき事です」

「名乗ったのに恥じなくちゃならんのか」

「お黙りなさい」

 

 二人が言い合っている内に、嫌な空気を纏った連中に囲まれた。

 

「グリンデルバルドだと」

「悪魔の名か」

「似ている、アイツにそっくりだ」

「血縁だ、血縁だぞ」

 

 血走った目で呟く連中、間違いない、ゲラート・グリンデルバルドの被害者達だ。

 それも憎悪でおかしくなった類いの。

 

「ガキ、聞こえたぞ。お前はゲラート・グリンデルバルドの家族か?」

「俺を生ませた奴がどうした」

 

 やめい一年生!! ややこしくなる!!

 フーチは涙目になって身振りで訴える。

 案の定連中は興奮し、口々におぞましい事を口走る。

 

「娘だ、娘だぞ」

「奴の替えだ、復讐してやる」

「生皮を剥いで塩漬けにしてやろう」

「ありったけの呪いを浴びせてやろう」

「私達の苦しみをぶつけてやろう」

「耳を食いちぎってやる」

「悪魔の子め、殺してやるぞ」

 

 いかん、連中やる気だ、逃げよう。

 

「ミネルバ、行こうよ、ヤバいよ」

「いいえフーチ、まだ話は終わっていません。

 冗談が過ぎました、と謝りなさい一年生」

「ざけんな、嘘なんかついてない」

「おい小娘どけ、その悪魔を殺してやる」

 

 ついに一人の男がヨーテリアへ杖を向け始める。

 それが、不味かった。

 

「引っ込んでいなさい暴漢共!」

 

 マクゴナガルが男の股間を蹴り飛ばし、続け様に呪いをお見舞いする。

 結果男は急所を押さえた無様な状態のまま石のように固まってしまった。

 

「何しやがるガキがあああ!!」

「貴様も一緒に殺してやるぞおおお!!」

「悪魔を殺せ、皆殺せぇっ!」

 

 激昂した連中がマクゴナガルと、呆けているヨーテリアに襲い掛かる。

 マクゴナガルはえげつない呪いで迎撃し、ヨーテリアは我に帰ったと思えば。

 

「あ″あ″!? やってみろよォォア!!」

 

 逆上し大事そうに抱えていた銀の棒で一人を殴り倒し、滅多打ちにする。

 何だこの状況、フーチは呆然としていた。

 誰か収拾つけてくれ、そう思っていた時、連中の呪いがマクゴナガルを失神させ、ヨーテリアが簡単に組み伏せられてしまった。

 

「殺せぇ、殺せェッ!!」

 

 数人がナイフを振り上げ、二人を滅多刺しにせんとする。

 

「ヨーテリアッ!!」

 

 すんでの所で店前から背の高い老人が声を張り上げると、途端に騒ぎはぴたりと止み、老人に視線が集中する。

 

「ダンブルドア先生ェ!!」

 

 我らがホグワーツ教員、ダンブルドア大先生だ。

 助かった・・・フーチはそう思った。

 

「ダンブルドア!?」

「ヤバい、散るぞ」

「あと少しだったのに・・・ッ」

 

 さしもの狂人も最強の男には逆らえない、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

 ダンブルドアは萎縮したフーチと、うつ伏せに倒れた二人に駆け寄る。

 

「大丈夫かヨーテリア、立てるかね?

 ミス・フーチ、もう大丈夫じゃ。

 ミネルバ、何故お主まで、〈エネルベート 活きよ〉目を覚ますのじゃ」

 

 蘇生呪文を掛けられたミネルバは目を覚まし、ダンブルドアに気付き目を見開く。

 

「ダンブルドア先生!?これは、その」

「ツイてない、錫杖が無かったら即死だった」

「二度とこんな騒ぎを起こすでない。ミネルバ、特に君じゃぞ」

「はい・・・」

 

 

 

 

 

 酷い目にあった。

 やっぱり自分の名前を軽はずみに言うのは控えた方が良いよな? ビビって逆上して死ぬなんて勘弁だ。

 

「ヨーテリアや、完全に失念しておった。

 君のお父上は少々恨みを買われておる、名は良いが姓は極力隠すのじゃ」

 

 念押しされずとも分かるわ、やかましい。

 

「ヨーテリアさん、申し訳ありません。

 私が騒いだばっかりに、こんな大事に」

「いいよ、どっちにしろアイツら集まって来てたし。

 むしろ俺に杖を向けたの、怒ってくれてありがとう」

「・・・どう、致しまして、です」

 

 にゃんこ先生涙ぐむでない、実際あれ滅茶苦茶怖かったからね。今にもアバダケダブラ飛んできそうで。

 

「何にも出来なかった、情けない・・・」

「普通そうじゃてミス・フーチ。

 さて、マダムがお待ちじゃ。参ろうぞ」

 

 ダンブルドアに連れられ店に入る。

 しかし、名前隠しても組分けでバレるよな?

 ・・・ホグワーツ行きたくないなぁ。




錫杖
ファンタジーに置いては殴る杖、仏教においては先に輪っかと鈴のついた法具。
今作では前者を採用、イメージは銀製の如意棒。
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