我が名はグリンデルバルド   作:トム叔父さんのカラス

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 お待たせしましたと申し訳ありませんしか言葉が浮かばない。
 ハッスルするヨーテ嬢とカレーに全てを持っていかれて3万文字超えそうなので、キリの良い所で区切っての投稿です。
 数話ぶりのシリアス無しです。頭を空にしてお読みください。


30話 無謀すぎた悪戯

 

『兄ちゃん! 兄ちゃんの将来の夢って、なんだ?』

 

ーーなんだ、藪から棒に。

 

『宿題で作文書くんだけど、兄ちゃんは何かなって』

 

ーー俺のを書くつもりじゃねぇだろうな?

 

『ちがうって! なー! 教えてよー!』

 

ーー教えろつっても、特にねェよ夢なんて。

 

『兄ちゃん頭ワリィーから考えてなさそうとは思ってた』

 

ーーンだとこのクソガキ。じゃあお前はどうなんだよ、有るのか?

 

『有るよ! 作文とか実はヨユーだし!』

 

ーーほーほー。じゃあその夢っつーのは何よ、小学生。

 

『俺な! 大工になりたい!』

 

『大工になって、でっけー家立てて! 家族みんなで暮らすんだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンドン市内に、とある古い一軒家がある。

 ごく一般的な石造りの、住宅街から離れた場所にある物件だ。

 妙に静かで古く、近寄りがたい雰囲気を醸し出すこの家は、人々から大変気味悪がられ、噂話と怪談の種としてこの一帯では なかなかに有名なホラースポットである。

 人が住んでいる気配もないが、市民等の誰もが此処には何かが住み着き潜んでいると信じていて、いつも様々な噂が浮き沈みしていた。

 

 ある市民曰く、頭のおかしい老人が住む、とか。

 

 ある市民曰く、格別に気性の荒い悪魔が住む、とか。

 

 また、ある市民曰くーー

 

 

 

 

 

 

 ・・・魔女が潜んでいる、とか。

 

 

 

 

 

 

 そんなような形で、此処に関する不気味な噂話は絶えない。

 しかも最近はモノクルをつけた怪しい身なりの男が彷徨き、いつもその周辺だけが不自然に肌寒いとの事で、ソレ等も相まって一層 市民等はこの家を避け、忌避と好奇の眼差しで遠巻きに見つめるばかりだった。

 そこに人なんて、存在する筈もない。

 しかしその家に、締め切られたカーテンの裏のリビングに、ヨーテリア・グリンデルバルド という少女は居た。

 無機質な硝子玉のようなアメジスト色の瞳をした彼女は立ち込める噂話とは、明らかに遠い存在であった。

 まず彼女は老人ではなく うら若い乙女であったし、性格に多大な 難があったが悪魔でもない。

 ただ一つだけ、的を得ている噂が在った。

 

 彼女は、魔女だった。

 

 魔女、というのは、文字通りの魔女の事だ。

 杖を振るい超常的な現象を引き起こし、摩訶不思議な薬を調合し、毒入りの果物を持ち歩く。そういう者達を、纏めてそう呼ぶ。

 もっとも、今 彼女の腕に収まっているのは杖でも、訳のわからない輝く薬品の入った瓶でも、毒入りの果実で一杯の籠でもなく、ペットのカピバラであるのだが。

 

「・・・起きませんね」

「・・・起きませんな」

 

 ふてぶてしい顔をしたカピバラ(名前はピーちゃん)を膝の上に抱き、ソファーに深々と腰掛けている彼女を眺めていた少年と少女が、短くそう呟いた。

 少年の名はアーガス・フィルチ。少女の名はミネルバ・マクゴナガルという。

 この黒髪のハンサムな少年と、背の高い凛とした雰囲気を放つ美しい少女は、二人共ヨーテリアの友人である。

 フィルチは彼等の通う学校・・・それもただの学校ではなく、魔女や魔法使いの学舎、ホグワーツ魔法魔術学校にて、5年間共にヨーテリアと過ごした仲であり。

 マグゴナガルも、ヨーテリアがホグワーツに入学する前に知り合った、先輩のような存在だ。

 両者共にヨーテリアとは(・・)付き合いも長く、互いの信頼も厚い友人である。それこそ親友と言っても良いかもしれない。

 そう。ヨーテリアとは(・・)、そういう関係の人物である。

 

 ・・・であるのだ。

 

 しかしながら、ヨーテリアは今、眠っていた。

 リビングのソファーにて、盛大に昼寝していた。

 いびきをかくとか、寝言を言うとかそんな事はなく、ただただペットのカピバラを抱いて、それはもう安らかに眠っていたのだ。

 それも、彼女にあるまじぎ ゆるゆる に ふにゃけた 顔でだ。

 眉を緩やかに八の字にし、半開きにした口から涎が垂れるんではなかろうかという見事な阿呆面である。

 平時では粗暴で無愛想で凶暴で、かつ少女にあるまじき高身長を持つ彼女がそんな様を晒すものだから、まるで大型動物が愛らしさを見せたような癒しの空気を醸し出している。

 この様をホグワーツにて彼女を恐れる生徒達に見せれば、きっと唖然とするだろう。

 ついでに数人陥落するかもしれない。

 さてしかし。彼女が気持ちよく安眠しつつ癒し空間を提供しているのは良いのだが、フィルチとマグゴナガルからすればソレは少々不都合な事柄である。

 

 それは、何故か?

 実に単純な話だ。

 

 フィルチがホグワーツに存在する四寮の内、所属していた寮はスリザリン。

 対してマクゴナガルの所属寮は、スリザリンと犬猿の仲として知られるグリフィンドールだ。しかも一学年上である。

 ただでさえ敵対する二寮の生徒であり、学年すら違う。

 その上フィルチは、ホグワーツをほんの一月前に中退したばかりだ。

 そんな二人は、この家に訪れてまだ二週間程しか共に過ごしていない。

 

 つまりは、ロクに会話が出来ないのである。

 

 となれば二人の間にあるのは沈黙のみ。

 親しくもない異性と、並んで黙って座っているのみだ。

 ・・・酷く、気まずい事だろう。

 今まではヨーテリアが間に入っていたためそんな事は無かったのだが、彼女という橋渡し役が居なければ文字通りお話にならない。

 一体全体何処に接点を見出だせというのだ。

 

「・・・あー、その。マクゴナガル先輩」

「ミネルバで構いませんよ、アーガス」

「あ、はい」

 

 沈黙に耐えかねたフィルチが切り込み、マクゴナガルが応じた。

 

「ヨーテとは、どうやって知り合ったんです?」

「どうやって・・・とは?」

 

 質問の意味を分かりかねたのか、マクゴナガルが首を傾げてフィルチを見る。

 彼は「ああ、いや」と言いつつ頭を掻いてから、ヨーテリアをチラと見て、

 

「ヨーテがグリフィンドール生の、しかも先輩と仲が良かったなんて知らなくって。

 グリフィンドールとは特に小競り合いしてたから、どう知り合ったのか気になってですねえ」

 

 単純に興味があったから聞いた、とでも表すべき声色でそう続けた。

 スリザリン出身・・・というより、ヨーテリアの友人を長らく勤めた、気配りの上手いフィルチらしい一手である。

 知りもしない両者の話題など挙げるだけ気まずくなるだけだが、共通の友人との出会い話なら多少は話せるだろう。

 それに、フィルチ自身ヨーテリアとマグゴナガルの出会いには実際興味があった。

 そりゃそうだろう。フィルチが先程言ったように、ヨーテリアとグリフィンドール生は特に争いが絶えなかったのだ。

 上級生と取っ組み合うのも当たり前。対集団での呪いの撃ち合いなんて日常茶飯事だった。

 ホグワーツを中退した今もよく覚えている。その度にヨーテリアがグリフィンドール生へ飛ばした罵声の数々を。

 

ーー今 私へ呪い撃った猿の惑星からの移住者様はどちら様ですかァ!? 国籍持ってんのかゴラァ!!

ーー何人やれば懲りるんだこのクソガキャァ!!

ーーこのダボが何が決闘だよ、お辞儀しろオラァァァ!!

 

 ・・・少し思い出すだけでも酷すぎる罵声が山のように掘り起こされる。

 そんなヨーテリアが、よりにもよってグリフィンドール生の先輩と親しくしているだなんて!

 実際に彼女達が親しげにしているのを見るまでは、友人だなんて到底信じられなかった位である。

 

「ああ、成る程」

 

 合点がいったようで、マグゴナガルは僅かに微笑んだ。

 

「彼女とは4年前にダイアゴン横丁で知り合ったんですよ。

 新入生かと思って、一言かけておこうと話し掛けたんです」

「ありがちですね」

「それで名前を聞いた時にですね。・・・その・・・ね?」

「グリンデルバルドと?」

 

 言い淀んだ彼女へフィルチが助け船を出すと、マクゴナガルは言いづらそうに言葉を続けた。

 

「・・・私も質の悪い冗談だと思ってしまいまして、頭にきて大騒ぎしてしまって・・・。

 気が付いたら浮浪者に囲まれて、しかも彼女の父に恨みがある人達だったみたいで」

「大丈夫だったんですかソレ」

「いいえ。ダンブルドア先生がいらっしゃらなかったら、どうなっていたか・・・」

 

 額を押さえながら、マクゴナガルは唸る。

 思い出すと、アレは大変な失態だった。

 当時の自身は、不正や悪い冗談を断固として許さない頑固者であった。

 そしてそんな己は、ヨーテリアの名乗りを冗談と決めつけ、訂正しろと騒ぎを起こした挙げ句 危ない連中まで呼び寄せた。

 自分やヨーテリアだけではない。下手をすれば一緒にいたフーチまで危ない目に遭っていたかもしれない。

 冷静になりそれを知覚した時、マクゴナガルは大変反省し、自己嫌悪にすら陥ったものだ。

 

「それで申し訳なくてあの子に謝ったんですけれど、あの子ったら「自分に杖を向けられたのを怒ってくれてありがとう」なんて言い出して・・・なんだかもう泣きそうでした」

「意外とそういうトコありますもんね、ヨーテ」

「そう・・・。そんな形で知り合って、後はダンブルドア先生の繋がりで顔を合わせていたら、親しくなっていましたね。

 魔法薬学の勉強も教えた事があるんですよ? 厳しくしすぎて泣かれましたけど」

 

 ここでフィルチはなるほど、と二つ合点した。

 確か三年次だっただろうか、一度だけヨーテリアが魔法薬学で大成功を納めたあの試験の日。

 あれはマクゴナガルの尽力あっての成果だったらしい。

 次の日、成績三位の景品として得た幸運薬を服用したヨーテリアの浮かれっぷりと喜びっぷりはフィルチからしても嬉しいものだった。

 自分の知らぬ所で、我が親友を支えてくれていた彼女には感謝の意を送るばかりである。

 それとこの二週間、ヨーテリアがマクゴナガル対してやけに従順だったのが何故か よく分かった。泣くまでしごかれれば逆らえなくもなろうな。

 

「ところでアーガス、貴方は?」

「俺ですか?」

「ええ。どう知り合ったのです?」

「・・・いや、その。色々と」

 

 マクゴナガルの問いに対し、フィルチはあからさまに目線を逸らした。

 

「なんですか勿体ぶって」

「色々ありまして・・・ウン」

「色々って一体ーー」

 

 マクゴナガルが詳しく追求しようとしたその時。

 不意に、薪もくべていない暖炉が激しく燃え上がった。

 しかもその炎は、不自然なエメラルド色をしているではないか。

 

「煙突飛行?」

 

 マクゴナガルがポツリと呟き終えた、その瞬間。

 

〈 ソ ノ ー ラ ス ! 〉

 

 炎の中から、高らかな声が響き渡る。

 家中に響き渡るその大声量の後、炎から一人の老人が現れた。

 鳶色の髭と、過去に何度も折れ曲がったかのような鉤鼻を持つその老人は。

 素晴らしくイイ笑顔で、左手に持ったロケット花火に点火した。

 

た だ い ま ! わ し が 帰 っ た よ ! !

 

 アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア

 英国最高の魔法使いにして、ホグワーツ魔法魔術学校 変身術教授。ヨーテリア・グリンデルバルドの養父。

 そしてたった今、やらかしやがったボケ老人の名前である。

 

「うわぁぁぁ危ねぇッ!?」

「ダンブルドア先生ついにイカれたんですか!?」

 

 彼が放ったロケット花火は、イカれていた。

 赤 青 黄 緑 紫etc.,etc、雨上がりの虹も真っ青になる程にこの世の色という色を敷き詰めて火薬にしてぶちまけたかのような火花。

 そして部屋中を跳弾して飛び回り、時折爆発するロケット。

 部屋は火花とロケットが飛び回る甲高い音に埋め尽くされ、この狭い一室は一瞬にして、1/1スケールの花火大会会場と成り果てる!

 フィルチは悲鳴をあげて逃げ惑い、マクゴナガルは分厚い本を盾にしながらテーブル下へと逃げ込んだ。

 二人共、必死の形相である。

 そりゃぁビビる。誰だってビビる。

 だが一番ビビっているのは二人ではない。

 ダンブルドアの轟く声により無言で飛び起きたヨーテリアである。

 

「なんーー」

 

 更に不幸な事に。

 顔をひきつらせ、裏返った声をあげようとした彼女へと。

 ロケット花火が、真っ直ぐに飛来していく。

 

What the fu(なんだこい)...!?」

 

 ヨーテリアが言い終わるより先に、ロケット花火が彼女の顔面に直撃し。

 散々暴れまわっていたロケット花火の外装が破れ。

 散った火花が、中身の火薬へと引火。

 そして起こるのはーー

 

 

 

 

 

 

ーー爆発。

 

 

 

 

 

 

あ"ぁ"ぁ"ッッッヅ ァ"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ーーーッッッ!!??

 

 古い一軒屋の周辺に、ヨーテリアの絶叫が響き渡った。

 

「ヨッ、ヨーテェェェーー!?」

「嗚呼なんて事を!!」

「あ、あア、熱い!! 顔が熱い!! すごく熱い!! 熱いィィィーーーッッ!!」

 

ーー・・・やらかした。

 

 部屋はまさしく、阿鼻叫喚地獄と成り果てた。

 顔を抑えながら床をのたうち回るヨーテリア。右往左往するフィルチとマクゴナガル。

 ロケット花火が爆散する寸前に飼い主を見捨ててテーブル下へ滑り込んだピーちゃん。

 流石にここまでやらかすつもりはなかったダンブルドアは呆然とするばかりである。

 

「せっ、先生! 何してるんですか早く手当てを!」

「あ、ああそうじゃ」

 

 マクゴナガルの悲鳴染みた声で我に返ったダンブルドアが、目にも止まらぬ速度で治癒呪文を唱えた。

 どんなに中身が困ったちゃんでもダンブルドアは英国最高の魔法使い。ヨーテリアの顔面は一瞬にして元通りとなった。

 

「ヨーテリアや、ホントすまない、大丈夫かね?」

 

 そのまま、ダンブルドアは顔面蒼白の様を晒しながら、顔を覆ったまま仰向けに倒れるヨーテリアを助け起こそうとした。

 ・・・が。

 

アァァァァァルバァァァァァス!!

 

 ヨーテリアが突如、仰向けの姿勢で両足を宙へ掲げ、一気に振り下ろす勢いで跳ね起きた。

 

「こォンのーー」

 

 そのまま、飛び掛かるような動きでダンブルドアの真正面に立ち。

 腰を低く落とし、正面に背を向ける程に身体を捻り、右腕を渾身の力を込めて振りかぶり。

 状況を理解したダンブルドアがひきつった顔で身を引くのも許さず、そのまま右足で床を踏み抜かん勢いで踏み込みーー

 

ボォケがァァッッ!!

 

 全力のビンタを、ダンブルドアの頬へと叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 良い夢 見てたら叩き起こされた挙げ句 顔面を爆破されました、元リーマン現魔法少女ヨーテリアさんです。

 あまりにもムカついたので実行犯たるダンブルドアへ鉄拳(パー)による制裁を加えた後、キッチンで晩飯の準備をしています。

 先程張り倒した我が養父殿は、まだ目を覚ましません。

 フィルチおじさんとマクゴナガル先生がなんとか蘇生しようとさらにビンタを食らわせてますが、俺は知りません。

 自業自得とか因果応報って奴だ。

 そんなワケで、俺は白目剥いて失神してるダンブルドアを無視して晩飯を作るのである。

 

 養父に対してあんまりじゃね?

 

 なんてヨーテリアさんの内なる良心が囁いてきたりはしたのだが考えてもみて欲しい。

 寝起きドッキリにアイスバケツチャレンジを敢行されて怒らない寛容な御仁は・・・まあ居るとしよう。

 だが昼寝から叩き起こされた挙げ句顔面を爆破されて怒らない現人神などこの世には存在しない。

 ソイツをビンタ一発で済ませたヨーテリアさんは間違いなく有情であり限りなくブッダに等しい存在なのである。

 

 わかった?

 

「・・・おはようみんな」

「ダンブルドア先生!」

 

 と、どうやらダンブルドアが目を覚ましたらしい。

 にゃんこ先生に助け起こされているらしいが、俺はシカトする。

 

「・・・先生、ヨーテめっちゃ怒ってますよ」

「・・・うむ」

「早く謝った方が」

「・・・じゃな」

 

 フィルチおじさんと何やら話しているが、尚もシカトする。

 申し訳ないがヨーテリアさんは怒っているのだ。

 これが他人だったら間違いなくグーで行くし、某狂戦士の某狂信者みたいな顔になるまで殴り続ける自信がある。

 それこそ最初の気持ちを思い出して夜が明けるまで殴り続けるかもしれない。

 

 あ、殺しはしないです。

 

 俺が黙々と3本のニンジンを洗っていると、キッチンとリビングの中間辺りまでダンブルドアが歩いてくるのが聞こえてきた。

 だが気まずいのか、キッチンには足を踏み入れなかった。

 

「・・・ヨーテリアや」

 

 この時点で申し訳ないですと幻聴が聞こえてきそうな声色で、ダンブルドアが呼び掛けてきた。

 

「・・・そのぅ、ヨーテリアや」

「なんだ」

 

 振り返らずに返事だけしておく。

 自分でも思ったよりキレていたのか、いつもより数トーン低い声が出たのはちょっと自分でも驚いたな。

 ダンブルドアも驚いたのか、黙ってしまった。

 ・・・いや、黙らすつもりは無かったんだが。

 しばらく気まずい沈黙が続いた後、ようやっとダンブルドアは再び口を開いた。

 

「・・・すまぬ、本当にすまなかった」

 

 短いが、間違いなく反省の意が伝わってくる言葉が聞こえてきた。

 振り返らなかったから見えはしなかったが、多分頭まで下げてるんじゃあないかな。

 にゃんこ先生がモロに狼狽えてる声あげたし。

 

「止せよアルバス」

 

 流石のヨーテリアさんでも冷静になった今、そこまでさせる気はまったくないのでやめさせる。

 

「さっき私も張り手をかましただろう、アンタも反省してんならソレでチャラだ」

「・・・ううむ、しかし」

「良いって言ってるだろ。・・・もう気にしてないよ」

 

 反省してんならソレ以上言うことはない。

 というかダンブルドアの態度で冷静になったらさ・・・俺の対応もちょっとどうよ?

 失神する威力のビンタて。仮にも養父にスナップ効かせた全力ビンタて。

 まぁそこは顔面爆破されてるからチャラにしてほしいけど、じゃあビンタかましたんだからもう良くね?

 火傷も一瞬で完治さしてもらったんだしさ。

 

「・・・うむ」

 

 とりあえず、ダンブルドアは聞き入れたらしい。

 それを確認した後、俺は洗ったニンジンの両端を切り落とし、ヘタ側の太い方から乱切りにしていく。

 皮剥かんの? って思うかもしれないが、今から作る料理ではニンジンの皮を剥く必要はない。

 つーか、本来ニンジンって丸ごと食えるし。

 

「・・・あー、今夜の夕食は何にするのかね?」

「まだ居たのか」

 

 キッチンの入口から動いてなかったんかい。

 

「今日はカレーにする」

「カレーかね」

「ああ」

 

 ダンブルドアの問いに簡潔に答えた後、乱切りにしたニンジンを水の沸騰した鍋に投入する。

 そう。今ヨーテリアさんは、カレーを作っているのだ。

 なんか分からんが無性にカレーが食いたくなった、理由はそれだけだ。

 作り方は前世の記憶頼み・・・なんだが、一応調理本は側に置いてある。

 なんたって、ルーのブロックが無いのだ。

 どうにも英国じゃあカレーはカレー粉を使って作るらしい。

 しかもカレー粉そのものにはトロみが無く、薄力粉とかを混ぜてトロみを足すんだとか。

 流石の俺でも適当な分量でカレー粉と薄力粉を叩き込む度胸は無いので、そこだけしっかり確認するつもりだ。

 オートミールとかマーマイトとか不味いモン食いたくないから料理してんのに適当にやって不味くなっちゃ本末転倒だし。

 一応、自分の料理に自信とプライドもあるしね。

 

 ・・・と、次はジャガイモだ。

 

 ニンジンよりも丁寧に洗ったジャガイモ5個の皮を、包丁を使ってスルスルと剥いていく。

 包丁で皮を剥くのにも慣れたものだ。前世じゃピーラー頼みだったからピーラーらしき物がない現在、コイツを覚えるのには苦労したね。

 指は切るし、身はごっそり削るし。

 最初の内は M(ミディアム)サイズ が HS(ほぼスモール) サイズと成り果てる醜態を晒していたなァ。

 まっ、慣れた今となっちゃ楽なモンだが。

 

「て、手伝おうか?」

「子供かお前は」

 

 なんかもう媚びた声まで出し始めたので苦笑いしつつ振り返ると、そこには見事な愛想笑いをかましているダンブルドアが。

 いやいやいや、確かに塩対応した俺も悪いけどプライドは無いんですかダンブルドア大先生。

 何を叱られた後に不機嫌な母親の機嫌取ろうとする子供みたいな事をしとるんですか。

 年齢的に逆だろ俺 身体は15、16のガキだぞ? アンタそんなガキのご機嫌取るような器じゃないでしょうに。

 

「もう止せって。ホントに気にしてないから、大丈夫だから」

「いや、座って待ってるというのもどうかなっての?」

「普段から手を出すなって言ってるじゃないか。この家のキッチンは私だけが使うんだ」

 

 そう、この家のキッチンは俺の領土なのだ。

 ダンブルドア専属シェフ紛いの事をして、すっかり使い慣れてしまった我がキッチン。

 あまりに馴染みすぎて俺の魂の場所と化しつつあるこの場所に。

 フィルチおじさん や にゃんこ先生のようなお客様や、養ってくれてるダンブルドアを踏み入らせる訳にはいかんのだよ。

 

「しかしのう・・・」

「いいってば。座って待っていろ、邪魔だ」

 

 大体、あーた料理出来ないでしょ?

 自分でもちょっと驚くくらいに穏やかな声色で、俺はダンブルドアにリビングに戻るよう促した。

 ダンブルドアは少し寂しそうに目を細めたが、すぐに微笑みを浮かべ「任せたよ」とだけ言って、リビングに戻ろうとする。

 

「アルバス」

 

 が、ここでちょっと呼び止める。

 立ち止まって振り返ったダンブルドアと、俺はしっかりと目を合わせた。

 ちょっと一つ、謝らなきゃならない。

 

「・・・ごめん、私もやりすぎたよ。

 とびっきり旨いの作るから、それで勘弁してくれ」

 

 やりすぎたってのは勿論、さっきの全力ビンタの事だ。

 いくらなんだって、失神する威力はやりすぎだ。

 別にダンブルドアだって悪気があったワケでもなし、あんな制裁を加える必要はなかったハズだ。

 普通に申し訳ないやん。

 ちょっとフランクにすぎるかもだが、俺は二言くらいでさっきの仕打ちを謝った。

 するとダンブルドアは、少しの間きょとんとした顔をしていたが、

 

「期待して待っておるよ」

 

 すぐに満面の笑みを浮かべて、リビングに戻って行った。

 そのあまりにも御機嫌そうな足取りに、思わずこっちまで笑いそうになってしまう。

 茶目っ気がありすぎやしないだろうか。

 いい歳こいて四方八方に悪戯しまくっても全然 (カド) が立たないのは、やっぱし ああいう憎めない所があるからなのか?

 ヨーテリアさんも見習うべきかねぇ。

 

 ・・・いかん、モタモタしてるとニンジンが煮えすぎてしまう。

 今やってる作り方だと、ニンジンが半煮え位の時にジャガイモを茹で始めるのが丁度良いのよね。

 手早くジャガイモの皮を剥き、包丁の持ち手の辺りで芽をくりぬいてから4等分に切り、念のためもう一度洗ってから鍋に放り込む。

 即座に包丁を水洗いし、玉葱二つの茎と頭を落とす。

 ベリベリっと皮を剥がして手頃な大きさに切って鍋に投下。

 さらに解凍済みの豚肉を適量叩き込み、ついでにシナモンスティックを2本入れる。

 あとは、ジャガイモが溶けるぐらいまで煮込む。

 煮崩れを気にする主婦の皆さんは多いだろうが、カレーはジャガイモを溶かすくらいが美味いと思うのよね。

 

 さて、煮込んでる間にルーの製作だ。

 ここからは未知の世界なので、がっつり調理本に頼らねば。

 調理本によると、どうやら一皿につきカレー粉が大さじ2杯半らしい。

 今回は明日も食うことを見越して10皿分を考えているので、大さじ25杯ってワケだ。

 で、薄力粉はカレー粉と1/1で入れるらしいから同じく大さじ25杯だ。

 

 ・・・薄力粉、多くないッスか?

 

 ともかく、まずこの薄力粉を油をひいたフライパンの上で、弱火で炒める・・・らしい。

 油にはオリーブオイルを推奨してたがそんな事ァ知らんのでサラダ油を熱したフライパンの上にしく。

 油が良い感じで温まった所で弱火にし、薄力粉25杯を容赦なくフライパンに投下する。

 木ベラで粉がダマにならないように慣らしつつ、炒める事10分。

 おお、薄力粉がなんともいい感じの色になっているではないか。

 次は火を消して・・・カレー粉とフライパンの上でよく混ぜるらしい。

 調理本の通り、フライパンにカレー粉を投下し木ベラで薄力粉と混ぜていく。

 ついでに、ここでチリペッパーを大さじ3杯追加。

 俺は辛いの大ッ嫌いだけど、カレーは辛口のが旨いって感じがするし、やっぱこういうのは必須でしょ。

 その後、しばらく混ぜると物凄く本格的っぽいカレールー的な物が出来上がった。

 この時点でスゲェ良い匂いすんなぁ。

 

 えーと次は・・・このルーに鍋の煮汁を入れて解きほぐす、と。ホワイトソースとか作る時みたいなアレか?

 ここで俺はフライパンを弱火で暖めつつ、鍋の煮汁をちょっとずつ入れてルーをほぐしていく。

 しばらくほぐしていると・・・なるほど、薄力粉があんだけ必要だった理由が分かった。

 あんだけ叩き込んだが、思ったよりトロトロにならないんだな。自己判断で減らさなくて大正解。

 さーて良い感じに溶かしたルーが出来たぞー。

 野菜が柔らかくなっているのを確認してから、出来上がったルーを鍋に投下し、木ベラでかき混ぜて溶かす。

 さて、ここで隠し味だ。

 ヨーテリアさんの隠し味はズバリ、醤油とソースである。

 カレーに醤油とかソースって合うじゃろ? んじゃ煮込む時に入れとけばええねん。

 醤油とソースを割りと多めに・・・量的にはそうだな、俺は個人的に醤油とか垂らしながら鍋の真ん中辺りを一周するのを醤油一巻きって呼んでるんだが、両方二巻き入れておく。

 後はかき混ぜながら50分位弱火で煮込んでおしまい。ハイ完成。

 所要時間1時間半。以上具材を炒めないカレーレシピ。

 鍋を覗いてみれば狙い通り、トロトロで良い色をしたカレーが仕上がっていた。

 少量だけスプーンで掬ってちろりと舐めてみると・・・。

 

「・・・んふふ」

 

 ハハハーッ! グレートですよ、コイツはァ!

 スプーンで掬った分をパクッといってから、入れといたシナモンスティックを救出しつつ、俺はこの素晴らしいカレーの入った鍋を悠然と見下ろした。

 カレー粉を使ったカレーなんぞ初めて作ったが、結構うまく出来るものだな。やっぱ俺ちゃん天才ですわ。

 ただ個人的に酸味が足りないから、トマト缶入れても良かったかなぁ。

 まぁ今でも醤油とかソースとか、卵みたいな付加物に合いそうな味だし、これでいいかねぇ。

 後は、三人の口に合うかだな。

 

「・・・んふふ、ふっふっふ」

 

 三皿目にライスとカレーを盛り付けた辺りで、俺は一旦手を止めた。

 残り一皿はダンブルドアの分だ。

 だがすぐにカレーをよそう事はせず、俺は振り返ってリビングを横目で見る。

 リビングでは上機嫌になったダンブルドアが、にゃんこ先生やフィルチおじさんとテーブルを囲んで談笑していらっしゃるようだ。

 フヘヘ、ボケ老人め・・・これからどんな目に遭うのかも知らずになァ。可哀想だなァ。

 正面を向いてニマニマと笑いつつ、俺はダンブルドアへ鉄槌を下す秘密兵器を手に取った。

 

  レ ッ ド ・ ホ ッ ト ・ チ リ ・ ペ ッ パ ー !

 

 ・・・まぁ、さっき使ったチリペッパーなんだが。

 

 さぁてさて、この俺様がこれから何をするかってェ?

 決まっておろーよ! コイツをダンブルドアのカレーに仕込むのさ、それも贅沢に徳用二袋まるごとなァ!

 クックック・・・ダンブルドア。なぁダンブルドアさんよう。このヨーテリアさんはな、確かにアンタの事を許したぜ。

 この俺様にも非が有った事は認めよう、過剰な制裁だって加えたんだ、寛容な俺様は顔面爆破程度ならば許してくれようぞ。

 ・・・だけど。

 

 

 

 

 

 俺 か ら 悪 戯 し な い と は 、 言 っ て な い 。

 

 

 

 

 

 

 この白く輝くライスにイイイイイッッ!!

 チリペッパー・・・じゃねぇ、レッド・ホット・チリ・ペッパーを叩き込みイイイイイッッ!!

 その上からカレールーをォォォ、バレぬようにかけるゥゥゥゥッッ!!

 さあて出来上がったぜ、ダンブルドア!

 テメーのその唇を、市場のとれたて新鮮なタラコのようにきれーに真っ赤に腫れ上がらせてくれるぜ!!

 

「待たせたな」

 

 そして俺はカレー四皿をお盆に乗せ、既に大爆笑している内心を完璧に隠した澄まし顔でリビングに降り立つのである。

 

「いつも悪いね、ヨーテ」

「すいませんね・・・」

「気にするなよ。お前達は客なんだからな」

 

 既にテーブルの椅子に座っていた にゃんこ先生やフィルチおじさんの声に返事をしつつ、三人へカレーとスプーンを配って俺も着席する。

 勿論、激辛カレーをダンブルドア以外に渡すようなヘマはしない。

 間違えて自分で食っちゃうってのがベタな展開だが、生憎とダンブルドアのカレーは少し多くしておるのだ。間違えよう筈もない。

 

「見事なカレーじゃな」

 

 ダンブルドアがカレーを見ながら感心したような声をあげた。

 

「・・・因果な物じゃのう。懐かしい」

 

 ・・・なんか、ものの数秒後に意味深な事言い出したんだが。

 物凄いカレー凝視してるんだが。めっちゃ目ェ細めてるんだが。

 ・・・まさか、バレた?

 

「どうしたアルバス、難しい顔をして」

「・・・昔、ある友人と評判の店を食べ歩いていたのを思い出してのう」

 

 内心 冷や汗ダックダクで白々しく訝しんだような素振りをしてみたが、ダンブルドアは目を閉じて感慨深そうな顔をし始めた。

 ・・・バレてないか? コレ本当に懐かしんでるだけか?

 ・・・大丈夫ダヨネ?

 

「おお、いかんいかん、歳をとるとすぐに過去を思い浮かべてしまう。

 ささ、皆。せっかくのカレーが冷めてしまう前に、頂くとしよう」

「よっしゃ」

「ヨーテリア。頂きますね」

 

 ダンブルドアの一声の後に、フィルチおじさんが真っ先にカレーをスプーンで掬い取った。

 ダンブルドアも特に訝しむ様子もなくスプーンを手に取る。

 バレてない。バレてねーなコレ。ハハハ。

 バカがー、バカがー! バカめがー! マジで気付いてねーぞオイ!

 ホラホラさっさと食うんだよダンブルドア! てめーの口が真っ赤に腫れ上がるまでのカウントダウン開始だァ!

 そのアホ面をオカズに俺ァ、カレーを食わせて頂くからよォー! カーッカッカッカッ!

 とまあ、ヨーテリアさんが内心大爆笑している事も知らずに、ダンブルドアはゆっくりと自身の口へと、カレーを運んでいく。

 

 

さあ・・・食え・・・!

 

 

 そして、白々しくも感想を期待しているような素振りでダンブルドアを見つめる俺の前で、今・・・!

 

 

食え・・・ッ、食え食え・・・ッ!!

 

 

 ダンブルドアが、そのカレーを、自らの口へと・・・!

 口へ・・・、口へと・・・!

 入れ・・・入れ・・・!

 

 

・・・食えッッ!!

 

 

 

 

 

 

「はむっ」

 

 

 

 

 

 

 入れた・・・ッッ!

 

 

 

 

 

 

 ヒャハハッ!

 ヨッシャァァァァッッ!! 食った!! 食ったァ!!

 ダンブルドアが、俺の作ったバカ辛カレーを口に入れたァッッ!

 よーしよしやった! 英国魔法界最強の男に、この俺様が一杯食わしてやったァ!

 私はやったんだァーッッ!!

 さあさあダンブルドア大先生! 英国最高のリアクションをお願い致しますよ、ウハハハハーッ!

 

「・・・おぉ! これは美味じゃ!」

 

 ・・・へ?

 

「具材が柔らかく、口の中でよう蕩ける。なんとも味わい深い。

 ただ煮崩れしているのとは全く違う・・・新しい、惹かれるのう」

「本当です、お店のカレーと全然違う・・・」

「ヨーテ、卒業したら三本の箒来ない?」

 

 ・・・ア、アレェ?

 

「流石じゃ、ヨーテリアや。やはりお主の料理は、ホグワーツのソレにも劣らぬな」

「・・・あ、はい。ありがとうごさいます」

 

 ダンブルドアが何も狼狽える事もなく素晴らしい笑顔で誉めてきたので、動揺のあまり矢鱈と丁寧な返事をしてしまう俺。

 なんだ・・・? 何が、どうなって、やがる・・・。

 間違いなく、俺はダンブルドアへとバカ辛カレーを食わせたハズだ。

 あのチリペッパーは、到底常人が口にして平然としていられる量では無かったハズだ。

 「実はわしは辛党なんじゃよ、テヘッ☆」とか ふざけた事を言える辛さじゃあない。

 なのにダンブルドアは冷や汗一つかかずに良い笑顔を浮かべている。

 有り得ない・・・、有り得ない・・・ッッ!

 目線でバレる事も省みずに、俺はダンブルドアのカレーを注視した。

 あのバカ辛カレーなら、食った辺りから真っ赤なチリペッパーが覗くハズだ!

 

 

 

 

 

 

 ・・・無いッッ!?

 チリペッパーが・・・ッ、無い・・・ッッ!?

 

 

 

 

 

 

「おや、どうしたね? ヨーテリアや?」

 

 ダンブルドアがニコニコと笑いながら声をかけてきた。

 

「量が多かったと思うておるならば、心配しなくて良いよ。

 愛娘の手料理じゃ、意地でも平らげてみせよう」

「・・・ああ、いや、うん。大丈夫、何でもーー」

「あ、それとも辛すぎたとかかね?」

「ぐッ」

 

 テメェ・・・ッッ!

 ピンポイントじゃねぇか! 気付いてやがったのかよクソジジイ!!

 俺の仕掛けに気付かないような素振りをして、キッチリ対処してから引っ掛かったフリをしやがって・・・!

 このジジイ狼狽える俺の反応を見て、腹の中で大爆笑する気だったに違いねぇ!

 てめぇ、やりやがったな!

 卑怯者が! 生きてて恥ずかしくないのかよ!

 クソッ! クソッ! クソッ! クソッ!

 

「しかしヨーテリアや、お主は食べないのかね」

 

 ダンブルドアが何食わぬ顔でーー笑いを堪えてるのをワザと見せつけてきやがる。クソッ!ーー俺がカレーに一切手を付けていないのを指摘してきた。

 ンの野郎・・・ふざけやがって。

 溜め息をつきながら、俺は自分のスプーンを手に取った。

 絶対に上手くいくと思ったのに・・・なんでだ、開心術でも使われたってのか? それともチラっとチリペッパー見えてたのか?

 まったく本当にこのジジイ、一体全体どうやって気付きやがったんだ・・・。

 納得のいかないまま、俺は自分のカレーをスプーンで掬い取ろうとしーー

 

 

 

 

 

 

 ・・・待てよ?

 

 

 

 

 

 

 仕掛けた悪戯は見事にバレた。

 俺が仕込んだチリペッパーは、ダンブルドアのカレーから綺麗さっぱり無くなってしまった。

 じゃあ、消えたチリペッパーは何処へ?

 こういう展開で、仕込まれたブツは大体何処へ行く?

 

「ヨーテリアや」

 

 カレーにスプーンを突っ込んだままフリーズする俺へ、ダンブルドアが声をかけてきた。

 最早笑いを堪えるのも止めたのか、ニマニマと正しく悪戯ッ子の笑みを浮かべながら俺を見ている。

 そんな腹立つ顔で俺と目を合わせ続けたダンブルドアは、しばらくしてようやっと言葉を続けた。

 

()()() って、大事じゃと思わんかね?」

 

 ・・・ほぼ、死刑宣告みたいな言葉を、俺にぶつけてきた。

 




 この話を読んだ後に29話を読むと、当作品のゲラートお父さんに親しみを持てるかも?
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