我が名はグリンデルバルド   作:トム叔父さんのカラス

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5話 授業開始

「アネさん、おはようございます」

 

 どうしてこうなった。

 談話室に入るなり入り口横に控えてたフィルチボーイが頭を下げている。俺なんかしたか?

 いやしたけどさ、大した事ないよ? フィルチさんくらい荒んだら一回のお節介じゃ無理だよ、マジな話。

 ほら、他のもアホ面してないで何とか言ってよ、頼むよ。

 

「もう手下を増やしてるのか!?」

 

  違 う そ う じ ゃ な い 。

 

「・・・フィルチ」

「アーガスでお願いします」

 

 ダメだ落ちてやがる。

 

「関わってくれるのは助かるけど、敬語と、アネさんはやめて。普通に好きなように呼んでくれ」

「・・・分かった。ヨーテって、呼んでいいか?」

 

 縮めて来たねぇ、アーガスくん。まあ、いいけどさ。

 

「好きに呼びなよ」

 

 今日から授業だ、面倒はごめんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう来たのスリザリン諸君! 楽しい変身術の時間じゃよっ」

 

 いきなりダンブルドアかよ。

 

「さてさて、皆周知かと思うがの、わしはアルバス・ダンブルドアじゃ。

 今年君らの変身術を任された、皆よろしく頼むよ?

 君らは自らの身やその他の物の姿を変える術を学ばなくてはならん。

 マッチを変身させるのすら、ふぅふぅ言いながらやるのが普通じゃ。

 よって君達の授業は、常にふぅふぅ言いながら進めるとしよう!

 嫌かね? なら変身の時だけで構わんよ」

 

 もうちょっと威厳をだなアンタは、一年連中も笑ってる場合じゃないだろ。

 

「さてさて、今日は面倒な書き取りだけじゃ。

 まあふぅふぅ言うよりはマシじゃろうて、教科書12ページから始めようぞ。

 わしの戯言染みた解説も、出来れば聞いて欲しいのぅ」

 

 さて、教科書12ページと、書き取りって嫌いなんだよなぁ、学生時代サボりまくってた覚えがあるよ。

 寝よ、後でアーガスに見せて貰おう。

 

「グゴゴ・・・ブフゥー」

 

 寝るのはえーよイビキうるさいよ、お前多分スクイブじゃないよ、確実にただの勉強不足だよ。

 ・・・まあいいや、アーガス枕にしよ。

 

「ちなみに寝た者はイタチに変えちゃうゾ」

「へぅぉっ!?」

「フガッ!?」

 

 冗談じゃ無いわこっち見んな! やりますよやりゃいいんでしょ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 疲れた。

 あのジジイ満面の笑みで監視しやがって、アーガスが手伝ってくれなかったらヤバかった。

 やだなぁあと三教科もあるよぉ。

 

「ヨーテ、次は闇の魔術に対する防衛術だ。

 得意だろ? 良かったな」

「冗談、何もわかる気がしない」

 

 アーガスくんよぅ、君は俺の癒しだ。

 まともに喋ってくれるのは君だけだホント。

 

「次の教師はガラテア・メリィソートだ。

 ダンブルドア程じゃないが優秀な人らしい」

「詳しいなアーガス」

「実技がどうにもならないから、記憶力だけは鍛えてる」

 

 頑張り屋だねぇ、さっきも授業内容暗記してたし、もしかして筆記だけならトップ行けんじゃね?

 さて、闇の魔術に対する防衛術か、確かグリフィンドールと合同だっけか。馬鹿が多いらしいしやだなぁ。

 教室に入ると、ちらほらと生徒が座っていた。

 こちらを見るなりどいつもこいつもまあ、険悪な視線を向けてくれやがる。

 ・・・え、アーガス前に立つの?

 何とこの男俺の前に立って、教室全域にガン飛ばし始めた。

 やだ、イケメンすぎるフィルチおじさん。

 でもね、君と俺頭一つ分俺がデカイからあんまり意味ないんだよね、言った方がいいかな。

 

「グリンデルバルド、どうしたの? 道を塞がないで欲しいよ、皆が通れない」

 

 後ろを見ると、出たなリドル坊や。迷惑そうに俺を見上げている。

 

「ごめん、今退く。アーガス睨んでやるな」

「分かった」

 

 マジ睨みしてたアーガスを戒めてから自分の席に座る。隣はアーガスと・・・?

 

「今回は隣だね、よろしく」

 

 また君かリドル坊や。軽く会釈はするがあまり関わりたくない。

 数少ない俺とマトモに触れあう人物だがいかんせん気に入らない。

 まず目、善人を気取っておいて人を馬鹿にしてるその目だ。

 社会をうまく渡れるタイプだが、俺は実力派なんだよ、嘗めんな。

 

「皆静粛に、これより授業を始める。

 私はガラテア・メリィソート、闇の魔術に対する防衛術を受け持っている。

 君達の受ける授業はだ、ハッキリ言っておく、断じて不真面目に受けていい物では無い。

 これより君達は悪意から身を守る術を学ぶ。

 君達を襲う呪い、罠、怪物達の事だ」

「そこの闇の魔法使いのようなですか?」

 

 グリフィンドール生が俺を指差して言う。

 けらけらと周囲が笑うが、一切目が笑ってない、ははは。

 アーガス君落ち着け、拳震えてるぞ。

 はて、何で俺の手元の机砕けてんだ?

 

「この教室に闇の魔法使いなどいない」

 

 メリィソート先生は静かにそう断言した。

 

「彼女は血縁ではあるだろう。しかし本人では無く、思想も違う。

 そして君達は闇の魔術を嘗めているね。仮に彼女がそうなら君達は今頃こうなっている」

 

 先生が壁紙をバンと叩いた。

 壁紙には悪趣味な絵が飾られている。

 

「この苦しむ男は、禁じられた呪文の一つを受けた者。

 この虚ろな女性は、魔法生物により魂を抜かれ、生きた死体となった者。

 そしてハンバーグの種に見えるこれ。残念ながらこれは元人だよ、いいかね?」

 

 あまりにショッキングな内容に教室のあちこちから悲鳴があがる。

 俺も吐きそうだわ、アーガス背をさすっておくれ・・・つかリドル坊や、何故嬉しそうな顔をする。

 

「闇の魔術とは強力で無慈悲で邪悪、君達では想像だにしない化け物だ。

 仮にその場にあれば君達など、一口でペロリ、だ。

 分かったら二度とだ、二度とそんな冗談はやめておくれ。

 教科書32ページ、始めよう」

 

 いかんなあホグワーツの先生方イケメンすぎ。

 メリィソート先生に会釈してみると何とウインクで返してくれた、神様かな?

 

「痺れる演説だ、そうだよね?」

「吐き気がするが気分がいい」

「ヨーテそれどっちだ」

「それにしても皆変だな、どうしてグリンデルバルドの事を闇の魔法使いって言うんだい?」

 

 リドルが不思議そうな顔で訪ねてくる。はっは、目が嘲笑ってんぞクソガキが。

 

「俺を捨てた親が闇の魔法使いだった。

 一応数日前まで孤児院暮らしだった」

「えっ? グリンデルバルドもなの?」

 

 素できょとんとしているリドル。

 これは予想外らしい、可愛い顔出来んじゃん。

 

「驚いたなぁ。

 あんまり言う事じゃないけど、実は僕も孤児院育ちなんだ。似た境遇だなんてびっくりしたよ」

 

 そう言いながらもリドルの目には欲しい物を見つけた子供に悪意を付け足したような、酷くねちっこい嫌な輝きが映る。

 

「ねね、入学当時から思ってたんだけど、僕と君って似ている気がするんだ。

 これから一緒に勉強頑張らない? きっと良い親友になれるよ」

 

 口先だけは立派だが、こんな目ギラギラしてちゃ意味無いわ。

 今の顔には割と自信あるけど、手込めにでもする気かねリドル坊や? 元童貞現バージンだから凄い不快感。

 

「やかましいぞリドル。俺と絡むならそのドブ底みたいな嫌な本性をどうにかしろ」

 

 横目で睨み付けて軽く罵倒しておく。

 途端にリドル君凄まじい怒りの様相を晒し、フィルチおじさんは隣でにやにやしている。

 

「何だと、僕の本性が何だと言うんだ」

「ドブ底に溜まった腐ったヘドロの塊みたいだ。

 第一、常に人を小馬鹿にしてて今更何を」

「ミス・グリンデルバルド! 魔法生物に関する法律について何でも良い、一つ説明をお願いします」

「ほぁっ!?」

 

 え、何、指名制で授業してたん?

 魔法生物に関する法律?いや、知らんよ、リーマンで魔法生物取り扱った奴なんていないよ。

 

「あわ、はわっ、あわわ」

 

 控え目に変な声出るがこれ仕方無いだろ。

 えっと、問題起こしたら処分? いや当たり前か、てかこういうのは法律名まで言うもんだし、ヤバい、超混乱してきた、変な汗ヤバい。

 

「ヨーテ、狼人間の行動綱領でいこう。最近出来たし名前通りだからなんとかなる」

 

 小声サンキューフィルチおじさん!

 

「おっ、狼人間の行動綱領、狼人間?の、行動について、述べられています」

「その通り、これは最近出来た物だ。よく覚えていたね、スリザリンに1点」

 

 あはは、目が笑ってないッスよ先生。

 スンマセン、真面目に受けますんで、スンマセン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヨーテリア・グリンデルバルドは不思議な奴、トム・リドルは今回の授業でそう思った。

 まず粗暴、外見に似合わず悪漢の如し。

 自分も人の事は言えないから目を瞑るが、博識なような振る舞いの割には抜けていて、急にオタオタし始める事もある。

 また高圧的で周囲を見下している割に、スクイブのアーガス・フィルチとつるんでいる。

 

「変な奴・・・」

 

 リドルは一言呟いた。

 自分の誘いを断ったのは腹が立つが、孤高スタイルな彼女は一筋縄ではいくまい。

 目の前を背を張って堂々と歩く彼女を見て、リドルはほくそ笑んだ。

 彼女を在学中に味方につければかなりの影響力が持てる筈。

 周囲の痴呆共を黙らせてもらえば自分もかなり自由に動ける、ムカつくが気長に接しよう。リドルはそう思った。

 

「あ″ーっ!?」

 

 突然特有のハスキーな声を張り上げる彼女。

 

「どうしようアーガス、教科書忘れた」

「俺の見るか? ヨーテ」

 

 やはりこの女は抜けている。

 苦笑いしながらリドルはヨーテリアの肩を叩く。自分と頭二つ分はでかいため酷く頭にくる。

 

「何?」

「良かったら貸してあげるよグリンデルバルド。

 次の授業の予習、もう済んじゃったんだ」

「結構。アーガスと見る」

 

ーー僕よりスクイブなんぞを優先だと!?

 

 こめかみが引くつくが無理に笑顔を作るリドル。

 

「遠慮しなくていいよ。次の薬草学は個別に教科書があった方がいい。

 やってみて結構難しかったし、それに次マンドレイクだよ? 予め見といた方がいいよ」

「いらん、根性で何とかする。

 恩売りたいなら破産するまで貢げクソガキ」

 

 このアマ・・・っ! リドルは歯ぎしりした。

 どこまでも人をコケにしやがる、黙って利用されていれば良いものを。

 そう思い残念そうにしつつ、引き下がった直後。

 

「・・・んふ」

 

 ヨーテリアは満足げに小さく笑った。

 

ーーコイツ楽しんでやがる!?

 

 あまりの怒りにわなわなと震えるリドル。

 このっ、常にカピバラ頭に乗せてる癖にっ。そう思いながら薬草学を行うビニールテントに入る。

 割り込もうとしたグリフィンドール生を睨むと見事に腰を抜かしてしまう、愚か者めが。

 テント内には多数の植木鉢があり、もぞもぞと動く植物が植えられていた。

 間違いない、マンドレイクだ。

 成熟した物はその悲鳴で人を殺し得る魔草、しかし幾多の魔法薬の素材となるそれはまだ未熟な ″子供″ 。死人が出ることは無いだろう。

 

「美しいだろう?

 どうも一年生諸君、薬草学の担当である、ヘルベルト・ビーリーだ。

 今日は寮に伝達した通り、この美しい植物を別の鉢に植え替えてもらう、今の鉢じゃ狭くて育たんからね。

 作業はこの耳栓をしてもらう。絶対に、外さんようにな。外しても死にはせんがね」

 

 言われた通り耳栓をつける生徒達。

 全員が植物の上の辺りを掴む、不快な顔をしながらリドルもだ。

 先生が合図をし、一気に植物を引っこ抜く。

 

「オ″キ″ャ″ァ″ァ″ァ″ァ″ァ″!」

 

 おぞましい姿をした植物の赤ん坊が現れた。これぞマンドレイクの根っこ、その幼体である。

 素早く植木鉢を入れ替え砂に埋めるリドル、我ながら完璧、そう思いながら渾身のどや顔で周囲を見渡す。

 

「ヒギィ」

 

 ヨーテリアが気絶している。

 何でだ、何故気絶してるんだお前は。お前のカピバラは余裕で意識あるんだぞ。

 

「ミス・グリンデルバルド? ダメだ気絶してる。耳栓は?」

「着けてました」

「あっれー、ってガバガバじゃないかこれ、何で着けた時に気付かなかったのかね。

 ミスター・フィルチ、申し訳無いんだが医務室に運んでやっておくれ」

「ウッス」

 

 フィルチがヨーテリアを背負う、が。

 

「ぐぬぬ・・・」

 

 同年代でも最大クラスのヨーテリアは、並みの彼には重かった様子。だが周りはヨーテリアを恐れて近寄りもしない。

 

「フィルチ、手伝うよ」

 

 仕方無しに手伝う事にするリドル。

 少々嫌な顔をされたが片脇を持つよう促され、二人で両脇を担ぎ上げ医務室に向かう。

 

「グリンデルバルドって、いつもこうなの?」

「そんな事は無い、筈だ。

 ぶっちゃけ初めて話したの昨日だし」

「なのにこんな仲いいの? 話したときなんかあったの?」

「男には隠しておきたい事が一つはある」

「何だよそれ」

 

 やっぱり、二人まとめて変な奴らだ。

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