Dies irae ~とある超越の刹那物語~   作:ディーン・グローリー

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気楽に書いている作品なので設定が甘かったりします。

禁書世界の色んなところに正田作品のキャラを散りばめてはいますが、まだ一話なのでほぼ藤井蓮意外登場しない上、主人公は蓮なので、他は脇役?程度でございます。

では、よろしければ暇つぶしに読んで頂ければ幸いでございますm(_ _)m


第一章【始まり】

 学園都市――世界における科学の総本山。あらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、学生が人口の8割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されている科学の街。

 東京の三分の一を支配し、全部で23学区にも区分けできる広大な一つの国と思ってもらっても構わない。

 一言で言うと、科学が無駄に進歩した学生のための街である。

 

 しかし、この学園都市では一つ更なる特質した点が存在する。

 

 それは――超能力開発。

 

『頭の開発』を平然と時間割りに組み込んでいる場所。

 学園都市に住んでいる都合230万もの学生が、それを受け超常的な力が使える。しかしその六割弱がスプーンを気合で曲げれる程度で、ランク的にはほとんどがレベル0だ。

 レベル――超能力の威力や効果などで図られる、全部で6段階に分けられる概念だ。ちなみにレベルのランクが上がるごとに反比例して人数は少なくなっていく。

 無能力者(レベル0)――最低ランクのレベル。非常に微力な力で、学園都市の全学生のうち6割弱を占めている。

 低能力者(レベル1)――無能力者よりも一つランクは上だが、正直な話、レベル0に毛が生えた程度。

 異能力者(レベル2)――レベル1よりやや上のの能力。園都市の全学生の内ほとんどはこのレベル以下だそうだ。

 強能力者(レベル3)――日常生活において便利だと感じられる程度の能力。

 大能力者(レベル4)――軍隊で戦術的価値を得られる程度の大きな能力。このレベル以上は極端に人数が減少する。

 超能力者(レベル5)――能力のランク分けにおける最高位。学園都市の全学生約180万人の内7人しかいない稀少な存在。曰く、単独で軍隊と渡り合えるほどの力を有している。

 

 と、これが学園都市における能力の概要になる。

 

 そんなアニメの世界なような街で、これより先、ドタバタな物語が幕を開ける。

 

《1》

 7月20日――夏休み初日。

 とある学生寮の七階の一室で、どこぞの誰かのせいで電化製品の八割が死滅している現状に頭を抱える少年が一人いた。

 この夏、電化製品の全滅は死を意味する。

 エアコンが壊れたせいで部屋は夏の熱気が支配し、冷たいものを飲もうにも冷蔵庫は故障したため中の物は激臭を放ち、ついでとばかりに担任の先生から『藤井ちゃーん、サボりんだから補修ですー♪』との律儀なご報告。

 夏休みの初日からの不幸な出来事に、少年は面倒くさそうにため息をついた。

 本日不幸に見舞われている学園都市レベル0の高校生――藤井蓮はどんよりのした目つきで、行動に出る。

「とりあえず生き残ったカップ麺でも食うか」

 買い貯めしておいたカップ麺を手に、なぜか都合よく生き残った電気ポットからお湯を注ぐ。

 そして麺がほぐれるまでの三分間の間に、せっかくの良い天気なので布団を干そうと思い至った。

「……あいつ、大丈夫かな? 俺と同じで不幸に襲われてなきゃいいけど」

 何て隣人の友人の安否をしながら、布団を手に、ベランダへの戸を開けた。

「あれ、何か干されている」

 既に白い何かが干されていた。

「?」

 何かが風に流されてきたのかなと思ったが、その考えは簡単に打ち消された。

 

 干してあったのは、白い服を着た少女だった。

 

「…………」

 色々と突っ込みたいところだが、ここは冷静に状況の把握に務める。

 目の前にグダ~とだらしない格好で、しかもこんな危ないところで行き倒れているこの意味不明な少女。体を折り曲げている形なので、危険ながらもバランスがとても良好である。

 歳は十四か、十五か。蓮より年下なのは間違いないだろう。しかも肌は純白で、恐らく外国人だろう。銀髪がとても綺麗だ。

「つか、こいつシスターってやつか? それっぽい成りだし」

 着ている服は、めったにお目にかかれない白く長いシスター服だ。頭には一枚布のフードを被っている。

「ォ、――」

 瞬間、少女の小さな唇が動いた。

 蓮は外国語で話されたらどうしようかと、少し困惑するも――

 

「おなかへった」

 

「…………」

 バリバリの日本語で、言葉を吐いた。

「おなかへった」

「…………」

「おなかへった」

「…………」

「おなかへったって、言ってるんだよ?」

「そうか。で、まさかこんなところで行き倒れとか言わないよな。どっちかって言うと、不法侵入者の部類だよな絶対」

 語気を強くしてきたので、蓮はとりあえず言葉を贈ってあげた。

「行き倒れでも侵入者でもないよ。倒れ死にだから」

 何て、目の前の少女は屁理屈をこねた。

 流石の連も暑さにやられそうな頭では、対処に困る。

「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」

 笑を込めて少女は言った。

「……カップ麺ならあるけど、食うか?」

 ここで断るのも気が引けたので、蓮は絶賛作成中のカップ麺を引き渡すことにした。

 

   (∴)

 

 その頃、隣の部屋では――。

 前日の夜中に何やら雷的な何かが発生したらしく、同じくの電化製品の類が死滅していた。

 夏ということもあり、部屋の中は暑さに支配されており、冷蔵庫の中のものは見るも無残なことになっているのは必然の理。

 しかもその学生は不運な人生を送る星の下に生まれたのか、カップ麺でも食うかと思いきや麺を流し台にダイブ、買い物に行くか思いきやキャッシュカードを踏み砕き、せっかくの夏休みなのに担任から『上条ちゃーん、バカだから補修ですー♪』とのラブコール。

 これ程までの不運を内包する学園都市レベル0の高校生――上条当麻は頭を抱えていた。

「とりあえず死滅した冷蔵庫の中のものを処分するか」

 冷蔵庫を開けると、強烈な刺激臭。

 鼻が腐りそうになったが、勢いで焼きそばパンあたりに手を伸ばしてみると、吐き気を催す激烈臭がしたので、思わず放り投げた。

「くっ、駄目だ。冷蔵庫の中のものは後で処理しよう。コンビニあたりで消臭スプレーでも買うか」

 冷蔵庫は保留。こちらの対応は、十分な装備がいると判断された。

「そ、そうだ。気分を入れ替えるために、布団でも干すか。うん、それがいい」

 上条は七階の寮に住んでいるので、とても爽快的な、この鬱も吹っ飛ばしてくれそうな青空が、ベランダに出れば広がっていると思うだろう。しかし二メートル先には隣のビル壁が差し迫っているので、特にそんな気分にもならない。

「…………」

 とりあえず行動に出る。

 布団を持ち、ベランダへの戸を開け放った。

「つか、いきなり夕立とか降ったりしないよな。まぁ、もうこれ以上どんな不幸が起きても自然に流せちまえそうだ」

 何て諦めムードで、いざ布団を舗装とした刹那――

 

 代わりにベランダに、金髪の女の子が干されてあった。

 

「はぁ!?」

 思わず布団を落としてします。

 そこには白い布一枚をドレスのように纏った金髪の美しい少女が、鉄棒にぐったりするような形で干されていたのだ。

 顔立ちと髪の色などから察するに外国人だろう。一流女優も真っ青レベルの美しい顔立ちをしている。ミロのヴィーナスを具現化したように感じるほどだ。

「外国人だよな。つか、何でこんなところに……?」

 明らか動揺を隠せない上条は、どうにか平静を保とうと頑張る。

「ぉ――」

 瞬間、女の子の口がちょっと動いた。

 上条は少し驚き、先ほど放り投げた焼きそばパンが背後にあったらしく、後ずさるついでにぐにゃっと踏んでしまった。

 

「おなか、すいた」

 

「…………」

 呆然とする上条。

 いや、もし英語で話されたら理解できずに終わるだろうと踏んでいたが、予想外にも日本語を使った。

 しかも最初の一言が、何とも間の抜けた感じである。

「おなかすいた」

「…………」

「おなかがすきました」

「…………」

「あの、おなかがすきました」

 いつまでも石のように固まっている上条に対し、金髪少女は少しだけ声を大きくして言った。

 上条はそれにより正気に戻り、重たくなった口を開く。

「あの、えっと? なに、ひょっとしてこんなところで行き倒れですとか、おっしゃりやがるつもりですか?」

「はい……行き倒れています」

「…………」

 凄く日本語ペラペラだ。

 見た目は同い年くらいなので、単純に凄いとも思ってしまった。

「おなかいっぱい、ご飯を食べさせてもらえると嬉しいです」

 とりあえずコミュニケーションには困らないだろう。

 お腹が空いているようだが、生憎と冷蔵庫の中身は全滅。そこで、なぜか足でペシャンコに踏んでしまった、すっぱい焼きそばパンを差し出そうと思った。

「こんなのなら、どうぞ」

 グダ~と、ベランダに干されている焼きそばパンを、少女の口元まで持っていく。一応、ここは最低限の礼儀としてラップは取っておいた。

(まぁ腐ったであろう焼きそばパンを与えてようとしている俺に、礼儀も糞もないよな。この子には遠いどこかで幸せになってもらおう)

 そもそも、こんなもの嗅いだら逃げるだろうと、思いきや――

「ありがとう。そして、いただきます」

 ガブリと、上条の腕ごと食われてしまった。

「ギャァァァアアアアアアアアアアアア!!!」

 こうして、今日も上条当麻の不幸ライフが悲鳴と共に始まる。

 

 

《2》

『ギャァァァアアアアアアアアアアアア!!!』

「うぉ、何だ今の悲鳴? 上条のやつか?」

 その頃、藤井蓮は謎のシスターを家に招き入れ、作っていたというより待っていたカップ麺を差し出した。

 目の前のシスターはとてもお行儀がよろしくないというか、お腹が空いていたのか、凄まじい勢いで麺を啜っていく。熱さを感じていないのだろうか。

「プハァ、美味しかった」

 と、シスターはスープまで飲みきり、満足気な表情をする。

 蓮は自分のラーメンを食べられドンヨリだ。

「こんな美味しいの初めてだよ。ありがとうね。えっと……」

「藤井蓮だ」

「うん、ありがとうねレン! ちなみに私の名前はね、インデックスって言うんだよ」

「また変わった名前だな。まぁ、今はそんなことよりもっと聞きたいことがあるんで、いくつか質問していいか?」

「うん、全然いいよ。このインデックス先生がなんでも答えてあげるんだよ!」

 と、無い胸を張る。

「そんな大した質問はしないよ。まぁ当たり前のことを聞くだけだからな。簡単に答えてくれ。まずは――」

 とりあえず軽く自己紹介をしたので、いくつか質問の問答タイムが始まった。

 Q,何者だお前は? A,教会の者。バチカンじゃなくてイギリス清教とかってところの所属らしい。魔法名も言われた。

 Q,何でうちのベランダで行き倒れていたんだ? A,落ちてきたらしい。本当は屋上から屋上に飛び移るため。

 Q,何でそんな危険なことを? A,魔術結社に追われてたから。

 Q,魔術? 何だよそれ、お伽噺に出てくる魔法ってやつか? A,イエス。ちなみにインデックスは魔術がないため魔法が使えないらしい。

 Q,そんなおのがあると仮定して、なぜ追われてる? A,自分が持ってる十万三千冊の魔道書が目的らしい。

 Q,どこに持ってるんだ? A,頭の中。

 と、そんなやり取りが終わり――一言、ある単語が結果として導き出される。

「電波。……じゃないよな。ここでは超能力は当たり前だけど、魔術ってやつはあまり信じれないんだよ。超能力ってやつは、あくまで科学の力だからな」

「超能力は信じるのに魔術は信じないのは変だよ」

「けど、魔力とかないんだろ?」

「だけど魔術はあるんだよ!」

「…………」

 まぁ、魔術を信じるのは結構難しい話だが、蓮にも不思議な力が宿っているのは確かだ。

「俺はレベル0だけど、こう見えてちょっと不思議な力が宿ってんだ。危険で救いとかそんなもの全然ない、一種の呪いだ」

「へぇ、なにそれ?」

「一言で言うと、基本的には何でも切れる力ってところか」

 そこでキラーンと、インデックスの目が光り、立ち上がった。

「ふっふーん、じゃあそれが本当なら、私のこの服を引き裂いてみてよ。できるものならね」

「はぁ? 何言ってるんだよお前」

「聞いて驚いてよ! これは『歩く教会』と言って、極上の防御結界なんだよ! トリノ聖骸布を正確にコピーしたものだから、強度は法王級なんだよ? 君たちで言う核シェルターって感じで、あらゆる物理・魔術を問わず全ての攻撃を受け流し吸収しちゃうんだから」

「……じゃあ、試してみるか? ちなみに一応言っておくが、何があっても怒るなよ」

「君の力が本当だったら、何も怒らないよ」

「そうか」

 蓮は立ち上がり、インデックスに手のひらを見せるように向ける。

「行くぜ、本当に何があっても文句言うなよ」

「言わないよ」

「それじゃあ――活動」

 インデックスのシスター服もとい『歩く教会』のみを引き裂くように、力を調節し――不可視の切断現象を発生させた。

 

 瞬間――シュパパっと、インデックスを纏っているシスター服が綺麗に引き裂かれた。

 

「……あぁ、まぁこうなるよな」

 そしてインデックスも現状に気づく。

 ふっふーんと、と言う感じでいる凍りつく少女。

 つまり、完全無欠の素っ裸になっているのだった。

 

   (∴)

 

 その後は言うまでもなく、藤井蓮はインデックスに頭部を思いっきり噛み付かれた。

 怒りも文句も言わないと言われたのに、予想通り両方された。約束は何処へやら。

「……大丈夫かな、アイツ」

 通学路を制服姿で歩く蓮。

 あのあと、一悶着あり、インデックスはどこかへ行ってしまった。

 インデックス曰く、自分といると危険だから。だから教会に保護してもらうのが一番らしい。そして、そのまま出て行った。ちなみに綺麗に何分割かに引き裂かれたシスター服は、数十本もの安全ピンで強引に引っ付けた。

 そして出て行く時に、なぜかフードを忘れていったのだが、面倒だし、後で取りに来るだろうとおもってそのままである。

「一体、何だったんだろうな」

「さっきからどうしたんだ蓮」

 と、隣を同じ制服で歩く少年――上条当麻が一人言を言う蓮に声をかけた。

「いや、何でもないよ。それよりお前、朝のあの絶叫は何だったんだ?」

「え、まぁちょっと痛い目に合ったというか、何ていうか」

 と、笑って誤魔化す。

(はぁ、まさか言えないよな。朝ベランダに出たら金髪の超美少女が干されてて、今家で居候してるなんて)

 そう、奇しくも上条当麻も朝、蓮と同じ境遇にあっていた。

 上条が出会った少女の名前はマリィというらしい。

 あのあと、色々と話したがどうやら単純に迷子になり、優しそうなシスターさんに声をかけたら、事件に巻き込まれたなんとか。

「そうだ、やっぱお前の部屋も電化製品は死んでたか?」

「まぁな。何か落雷があったらしくて全滅してた。これから色々と修理依頼かけないと思うと、不幸だ」

 上条が思い出し、欝になってしまった。

「……実はあれ、じゃっかん俺のせいでもある」

「は? 何でだよ? ……まさか、お前またあのビリビリ中学生にか?」

「正解だ。よく当てたな」

「お前らよく争ってるから」

 有名な話になってきた。

「事の経緯は察してくれ」

 

 と、そんな他愛もないトークをしながら二人は学校へと向かった。

 

   (∴)

 

「はーい、それじゃあ補修の授業を始めますー。先生、気合を入れて小テスト作ってきたので、罰ゲームにすけすけ見る見るです」

 学校に到着した蓮と上条は、補習授業を受けるためクラスへとやって来た。

 そして担当する先生は、ランドセルが似合いそうな小学生的容姿をした、学園七不思議にも数えられる小萌先生。

「すけすけ見る見るって、目隠しでポーカーするやつだったかにゃ?」

「10回連続で勝つまで逃げられない、おいたな企画やったな」

「あんなもん、透視能力使えないと絶対攻略不可だし。朝までコースじゃん」

 と、同じ補習を受けるダメ人間が言う。

 上から土御門元春。青髪ピアス。大杉栄光。

「エイコーちゃんは、幼馴染の学園No,1の四四八に勉強教えてもらえば良かったと思うで」

「ゼッテェ嫌。あのスパルタに付いていくのはマジMじゃないと無理だから」

 青ピーと栄光が会話を繰り広げる中――

「はいー、そこ黙りやがりませんとコロンブスの卵ですよー? ちなみに上条ちゃんと藤井ちゃんは単位足りてないので、どの道すけすけ見る見るですけど」

 注意するついでに、上条と蓮は嫌な顔になった。

「本当は司狼ちゃんも補修だったんですけど、やっぱり来なかったですね。先生は悲しいです」

「司狼のやつは絶対に来ないですよ。拘束でもしない限り」

 蓮が机に肘をつきながら、面倒くさそうに言った。

 遊佐司狼……単位の取得は上条や蓮よりも壊滅的な超問題生徒。凄まじい自由人である。

「まぁ単位をくれるって言うんでしたら、ふん縛ってでも連れてきますよ」

「先生を買収するつもりですかー? けどその案に乗ってしまいそうです」

「にゃー! そんなん卑怯だにゃ! だったらオレもやるで!」

「あ、なら俺も! 四四八に手伝ってもらえば、アイツを捕まえれるかもしれねぇからな!」

「何いうてますの。小萌先生の補修は最高のご褒美やん。みんなどうかしてるわ」

「いや、どうかしてるのはお前だから」

「カミヤん、何で分からんの。あの小さな体に詰め込まれた希望の光を、あの無垢な瞳を。はぁはぁものやで」

「ロリコンめ」

「ロリが好きなんとちゃんでーッ! ロリも好きなんやでーっ!!」

 何てやりとり及び、もちろん上条と蓮は夕方まで特別補習を受けたのだった。

 

   (∴)

 

「夏休みの朝から、結局夕方まで補修コースか。本当に、朝から不幸続きだな。上条のが伝染ったか?」

 夕焼けの空、くたくたになった蓮は重い足取りで街中を歩く。蓮と同じ補修コースの生徒や、部活帰りの生徒たちが歩き回っている

 歩く蓮の横を、ドラム缶型の警備ロボットが追い抜いていった。

 ちなみに帰り道、上条はキャッシュカードが何やらで解散している。

「あっ、いたいた。この野郎! ちょっと待ちなさ……ちょっと、アンタよアンタ! 止まりなさいってば!」

 と、自分の背後から煩い声が響いてくる。

 蓮は頭を掻きながら、足取りはゆるめず後ろを振り返る。

「……あー、何だよ御坂か。どうした、昨日のことでも謝りに来たのか?」

「はぁ? 何で私があんたに謝らなくちゃいけないのよ? 昨日のことってのは合ってるわ。よくも手を抜いてくれたわね!?」

「そこかよ」

 目の前にいる少女――御坂美琴は名門中学に在籍しており、何と七人しか存在しないレベル5の一人なのだ。

「手を抜いたってより、お前の方からスタミナ切れで倒れたんだろ。お前の責任だ。つうか、お前のせいで俺の電解製品が壊れてしまったんだが、そこはどう責任とってくれるんだ?」

「話をそらさないで。それに昨日の戦いはお互い、指一本も触れてないんだから引き分けよ! だからちゃんと決着を――」

「はぁ、ならお前の勝ちでいいよ。これで満足か? じゃあ、俺は帰るからな」

「ちょっ! ちゃんとマジメにやりなさいよ!?」

「…………」

 蓮は簡単に昨日のことを振り返り、後悔する。

 

 ――昨日の夜。

 何となくコンビニに寄っての帰り道、一人の女の子が何人かの不良に河川敷で絡まれていたので、助けてみた。

 不変な日常を愛し、面倒事を嫌う蓮だが、流石にここを無視しては目覚めが悪いと感じたのだ。

 という訳で“蓮は不良たちを助けようと試みたが、一歩遅かった”、

 少女が身体中から電撃を放ち、一瞬で不良たちは麻痺し、そのまま倒れてしまったからだ。

「……また会ったわね。ホント、つくづくアンタとは縁がありそうね」

「嫌な縁だけどな。じゃあ、この縁を断ち切るために俺はこれで帰る」

「ホント、人を舐めくさりやがって……!」

 少女――御坂美琴は電気を纏いながら、視線を帰ろうとする藤井蓮に向ける。

 学園都市レベル5――『超電磁砲(レールガン)』と言う超能力の持ち主である。

「レールガンって知ってるよね。別名、超電磁砲。電磁石を使って砲弾を打ち出す兵器らしいんだけど」

 ポッケから一枚のコインを取り出し、ピンと真上へ弾き飛ばす。

「――こういうのを言うらしいのよね」

 瞬間、音はなく、いきなりオレンジ色のレーザー光線が、蓮の真横を通り過ぎた。

 まるで雷のように、遅れて轟いた轟音。

「こんなコインでも音速の三倍で飛ばせば、随分な威力が出るのよね。まぁ摩擦のせいでコインが直ぐに溶けちゃうから、飛距離はあんまりないんだけど」

 うだうだと何か言っているが、蓮からすれば鬱陶しい以外の何者でもない。

「で、どうすんの? 次、真面目に応対しないと、本当に当たるわよ」

 再び、コインを取り出す。

「レベル0の俺の随分な攻撃だよな。殺す気か、この暴力女」

 蓮は一旦帰るのを諦め、対峙する形で美琴を睨む。

 平穏に生きるのが好きな蓮にとって、美琴はメンドイキャラの位置づけにある。司郎あたりと同じだ。

「じゃあ、何で――」

 ピンと、真上に上げたコインを再びレーザー光線のように放つ。

 超電磁砲――一般的には目視不可の電磁砲。凄まじい熱を有し、万象貫く威力を持っている。

 それを蓮は右手を差し出しただけで……切断し、別のニ方角へと解った。

「レベル0のアンタが私のレールガンを、こんな簡単に引き裂けるわけ? 普通に考えて有り得ないのよ」

「そうだな。レベル0の俺が、何でこんな不思議な力を持ってるんだろうな。正直いらないから、お前に譲りたいよ」

「……ったく、ホントに人をバカにしたように言うのね」

 と、怒りで身体が震えている。

 その度にバチバチと、生理的に受け付けない音を響かせていた。

「いや、別にそういうつもりで言った訳じゃないよ。本当に面倒な女だな」

「何だってー! この野郎!!」

 瞬間、文字通り雷が落ちた。

 同時に蓮たちの暮らす寮の電化製品が死んだのは、言うまでもなかった。

 

 とまぁ、そんなことがあり現在に至る。

 妙な因縁を付けられたものだ。

「俺は単純に、何の代わり映えもしない日常を愛している。だから、もしお前がいつまでも俺を付け狙うのなら――マジメにやる。この意味、分かるよな」

 蓮の強い口調に、強烈な圧迫感が孕み一瞬圧された美琴。

 しかし強がりと言うか、プライドが許さない美琴は負けじと言葉を吐く。

「はん! アンタなんかに負ける美琴様じゃないわよ! 本気でやれば、絶対に私が勝つんだから!」

「…………」

 恐らく何を言っても無駄だと判断し、蓮は頭を掻き毟る。

「分かったよ。そこまで本気なら、条件付きで付き合わなくもない」

「え、本当!」

「ああ。ただし条件ってのは、俺に負けたら飯を奢ってもらう。家の食材が誰かさんのせいで全部ダメになったからな。生活費が苦しいんだよ」

「OK! それなら余裕よ! まぁ私は負けないけどね」

「強気だな。流石はレベル5のビリビリ中学生か」

「なっ! 何よその言い方!?」

「上条のやつが、そんな感じで言ってたから」

「上条?」

「あの黒髪のツンツン頭だよ。ほら、俺の同じレベル0でお前のレ-ルガンを簡単に消し飛ばした」

「あ、あいつね! よくもそんな変なあだ名を。覚えておきなさいって伝えといて! 絶対消し炭にしてやるんだから」

「分かった伝えておくよ」

 上条まで被害が及んだが、まぁ事実だし仕方ないだろう。

「それじゃあな、日取りが決まったら伝えるよ」

「ええ、じゃあ……」

 こうして蓮と美琴は別れた。

 

 変わらないな日常。

 美琴は美琴で争いを仕掛けてくるが、あれはあれで日常の範囲内だろう。朝起きて、学校に行って、バカやって、帰って寝る。そんな詰まらなくも、かけがえのない日常が蓮は大好きだ。

 

 だからこそ、これから起きる展開がそれを打ち破るような非日常の展開となる。

 魔術……出会ってしまった最悪の非日常が、これから先の蓮の日常を奪うようにやって来るのだった。




※感想なども受け付けておりますが、作者はガラスのハートです。
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