魔法少女リリカルなのは~FORTUNE LINKAGE~   作:桐谷立夏

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温泉?回です、ここから更に物語が加速していきます。


第三話~過去と現在、そして未来へ~

「海鳴温泉か」

「立夏くん温泉初めて?」

「一回だけ来たことあるよ」

 今は車の中、隣にはなのはが座っている。家から車で数十分ゆらり揺られ景色は段々緑が多くなっていく。

 前々から話していた高町家と月村家、それとアリサと一緒に山間部にある温泉に向かっていた。

 もう少しで目的地に到着らしい。

(クラウ)

(ジュエルシードの反応があります)

 温泉に近付くにつれて反応が出てきた、なのははまだ気付いていないのか隣で笑顔が絶えない。

(なあ、ジュエルシードで治るのかな)

(それは分かりません、願望を叶える物ですが傷などのものは不可能かと。亡くなった人が蘇らないように)

 クラウの言う事は分かる、だが数個集まれば願いは叶うんじゃないか。そんな願いを思い続けてジュエルシードを探し続けてきた。

 今更諦めきれない。

「広いな~」

「そうだろう? 海鳴市の名所だからな」

 温泉に着いた立夏達は早めに浴場に向かった、中は広くて石造りの床は冷たい。

 恭也と士郎と更衣室で着替えていると。

(立夏、助けて~!)

(無理、頑張ってアリサ達から逃げ出せ)

 ちなみにユーノはなのはに連れられ女性側の浴場にいる、一応男の彼には耐えがたい辛さだろう。

 まあ助けれる訳もないので、男湯で身体を洗いをユーノの通信をスルーして立夏はのんびりお湯に浸かる、身体の奥から癒されるような感覚に浸っていると。

「気持いい……」

(温泉どう?)

 いきなりなのはが念話で話しかけてきた、少し焦って声が裏返る。

(きっ気持いいよ、なのはといると良いことばかりだ)

(えへへ、ありがとう。私も立夏くんと一緒にいれて楽しいし)

(どういたしまして)

 少し前まで喧嘩していたのが嘘のようだ、こんな会話がしばらく続いた。

 先に浴場から出てなのは達を待つ、お土産を買ったり宿の中をを探険するらしい。

「立夏~」

「……」

「立夏くん?」

 アリサたちが話しかけても立夏は上の空だった、なのはが肩を叩いて話しかけるとようやく気がつく。

 少し湯あたりしたのか頭がぼーっとする。

「あ、ごめん。ボーッとし てた」

「時々ボーッとするよね、立夏くんって」

「面目ない」

 学校にでも家でも時々ぼーっとしはじめる。少し抜けているところが立夏には多い。

 が、今日は目に見えてそれが多かった。

「それじゃ行くわよ」

「うん」

 四人は廊下を歩き始めた。

 お土産を買いに行くか、卓球をするかと考えていると前からオレンジの髪を揺らしてくる女性が歩いてくる。

「はーい、おちびちゃんたち」

 近付いてなのはの前で立ち止まり、まるで品定めしているかのような目でなのはを見た。

「君かね、うちの子をあれしてくれちゃってるのは」

「え、ええ?」

 あれしてくれちゃってる、と言ってもなのはには身に覚えはない。アリサが前に出て女性に反論し始める。

 しばらく会話を交して、女性は人違いだと言って大笑いしながらユーノを撫で。

(今のところは挨拶だけね、忠告しとくよ。子どもはいい子にして遊んでなさい)

(っ!)

(お痛がすぎるとがぶっと行くからね)

 急に念話で脅しをかける女性、彼女も魔導師のようだ。やや怯えを見せるなのは。

(いい加減にしろ)

(!)

 低い声で、かつ魔力で圧力を掛ける。友達を脅されて守らないではいられなかった。

(はっ、君も気を付けるんだね)

(そっちもな、なのはに何かあったら……俺が相手をする)

(やれるもんならやってみな)

 女性はそのまま去って行く、多分あの少女の仲間だろうか。二人は居ると思っていたが本当に居るとなると対策を練らなければならない。

「なんなのよまったく!」

「アリサちゃん、落ち着いて」

(立夏くん、ありがとう)

(当たり前のことをしただけだ)

 四人は再び歩き始めた、とりあえずは何処に行こうかと言う話に戻して。

(あー、こちらアルフ。フェイト聞こえる?)

(聞こえるよ)

 女性の浴場では先程の女性、アルフが念話で外に待機している主であるフェイトに話しかけていた。

(あの白い娘、見てきたよ。そうでもなさそうだね)

(そっか)

(でも黒い子は相当できる、あの魔力は伊達じゃないね)

 掛けられた魔力の圧力の残滓がまだ残っているような感覚がある。

 フェイト達からしてみればなのは達はただの邪魔者、向かってくるなら排除するだけだ。私とジュエルシードには関わらないで、と忠告はした。

(ジュエルシードの大体の位置は掴んだよ、夜には捕獲できる)

(了解、それじゃまた後でね)

(うん)

 アルフとの念話が途切れてフェイトは空を見上げる、なぜあの二人はあんなに話しかけてきたのだろう。赤の他人なのに、どうしてあんなに必死だったのだろう。

 フェイトはそれだけが理解できなかった。

「マスター、今更ですが」

「なに?」

 旅館近くにある小さな湖の畔を歩いていると不意にクラウが話しかけてくる、アリサ達は今卓球をしていて立夏は疲れて抜け出して散歩をしていた。

「私の現武装は彼女の物です、マスター用にしなくていいんですか?」

「そうだな、でもデバイスマスターの資格持った技師に頼まないとなぁ」

 そう簡単にクラウの武器形状を変更することはできない、ミッドチルダに居る技術者にあれこれ頼まないといけないのだ。

「まぁ考えとくよ、それに元々武装の一つは俺が扱えるように調整してあるし」

「早めにお願いします」

「立夏く~ん」

 小走りで来るなのは、下駄を履いているためかすごく不安定に見える。

 なんだか嫌な予感がする。

「あうっ」

「うおっ」

 目の前まで来た所でこけた、立夏を押し倒す形で。

 二人の顔が非常に近くなる。

「あ///////」

「お……」

 少し動けば顔の何処かがぶつかる位置だ、みるみるなのはの顔が赤くなっていく。

「えと、なのは?」

「あ、ごめんね。いま退くから」

 ゆっくり立ち上がろうとする、足を退かして横にずれようとした時だった。

「ふむっ……」

「んむっ!?」

 なのはの下駄が立夏の浴衣の裾を踏んで滑った結果、数秒唇が触れ合った。

 それになのはが動転し。

「きゅ~」

「なっ、なのは?」

 顔が横にずれて動かなくなるなのは、そっと身体を横に退かして顔をみると気絶していた。

「……」

「部屋に運んでは?」

「え、あ、うん。そうだな」

 気は動転していたがクラウの一言で意識は保てた。首と膝の裏をヒョイッと持ち上げ、お姫様だっこの要領で部屋へと連れて行く。

 それを誰かに見られているとも知らずに。

 幸い誰も部屋には居らず、なのはを布団の上にそっと降ろす。

「まさかキ」

「なにも言うな! いいな」

「分かりました」

 クラウがツッコミを言い切る前に口止めをする。

 忘れたいと言うわけでは無いが恥ずかしい、不慮の事故とはいえなのはに悪いことをした。

「はぁ~」

 戦闘時の覇気は何処にいったのやら、と思うくらいの溜め息だ。

 立夏は窓際の椅子に座ってなのはが起きるまで外を眺め続けることにした。

「あれ、ここは?」

 私が目を覚ますと部屋にいた、誰も居なくて窓際の椅子には立夏くんが座ってた。目を閉じてて寝てるみたい。

「立夏くん?」

「すぅ……すぅ……」

 本当に寝ちゃってるね、起こさないように反対側の椅子に座る。顔を見ると段々熱くなっていくのがわかる、キスなんてしちゃったからかなあ、う~。

「なのは」

「アリサちゃん、どうしたの?」

 気が付くとアリサちゃんが帰って来てた、なにかあったのかな?

「さっき湖の所、居たわよね?」

「えっ、うん。居たよ」

「じゃあ立夏とキスしたんだ」

 え、見られちゃったんだ。どうしよう……。

「あ、あれは私が足を滑らせて……」

 私はあの時のことを説明しようとすると、アリサちゃんはぐっと顔を近づけてきた。

「私が立夏を好きなのは知ってるわよね」

「え、うん」

「なのははどうなの?」

 私? 立夏くんは優しいし困ってる時は助けてくれる、初めてアリサちゃんが立夏くんを好きって言った時は胸の中がモヤモヤした。

 ……そうか、そうだったんだ。

「私も……立夏くんが好き」

「そう、なら勝負よ! どっちが先に立夏の心を奪えるか!」

「負けないよ!」

 宣戦布告、かな。頑張らないと。

 本当に今更だがこの二人の会話は本人の目の前でされていた、運よく立夏がちゃんと寝ていたからよかったが。

(マスターも幸せものですね)

 相棒がきっちり聞いていたのは余談である。

「ん……寝てたか」

 なのはが中々起きずうとうとしていたがまさか本当に寝るとは自分自身思わなかったが。

 外を見るともう夜の帳が降りてきているらしくぼんやりと暗い。

「あ、おはよう。立夏くん」

「え、おはよう」

 目を覚ましていたなのはが意外と普通に話してきたことに驚く、キスのことは気にしていないらしい。というのも気にしない方が不可能だ。

 表面上はかなり普通に装っているが、実際なのはの心臓の鼓動はかなり速くなっている。

 これは自分の気持ちに気付いたからでもある。

「二人とも、ご飯よ」

「は~い、なのは行こう」

「うんっ」

(んなっ)

 桃子に呼ばれ、椅子から立ち上がるとなのはが春紀の手を引いて行く、こんな積極的な性格だっただろうかと思うくらいだ。

(む~)

 なぜか複雑な気持ちのユーノだった。

 食事を終えて全員で部屋に戻る、かなり美味しかったな

「食べた食べた」

「いっぱい食べてたね」

「食欲ありすぎよ」

 なにせ出た料理が海鮮盛りやらしゃぶしゃぶやらで、残すのは勿体ないとみんなが食べない分も全部食べたしな。

「旅行とか立夏は初めて?」

「はい、こんな大人数で楽しいです」

「よかった~」

 すずかの専属メイドであるファリンが胸を撫で下ろす、彼女とは今日が初対面で身の周りの事をやって一回ミスしたのを心配していたらしい。

 ―――俺は気にしてなかったんだけど。

「ファリンさんも仕事ご苦労様です」

「ありがとう、立夏くん」

 それから時間は進んで九時頃、なのは達子供が寝る部屋では。

「よし、改めて聞くわ。みんなどこで寝る?」

「だから俺は端でいいって」

「「ダメっ!!」」

「うふふふ」

 この会話が五、六回続いていた。俺は男だし外側の方が動きやすいため端っ側がいいのだが、なのはとアリサがそれを許さなかった。

 二人的には隣がいいが端の場合、なのはかアリサ一人しか隣で寝られないのが不服らしい。真ん中を推薦しているのだが俺は端っこがいいと抵抗をしている。

「あのな、俺男なんだけど」

「いいから真ん中で寝なさい!」

「そうだよ!」

 あのですね、ただでさえ女の子と一緒の部屋って時点で寝づらいのに、さらになのはとアリサの間とか余計に寝れないんですけど。

「立夏くん、私が端に行くから」

「すずか、ちゃっかり酷い……」

 こうして俺は真ん中で寝ることになった。

 もうわけが分からないよ。

「…………」

 ―――あー、寝れない。マジで。

 もうアリサはもう眠りについている、右隣に陣取っているなのははまだ分からない、先程ユーノと話して以降起きている気配は今のところない。

 この約三十分ジュエルシードの反応を探っていて、ようやく大体の場所が掴めた。

(よし場所は大体掴めた、行くか)

(行くのは構いませんが、今の状態から抜け出したいだけでは?)

(うるさいやい)

 クラウに本音を言われて少し焦りながらも布団からそっと出て窓を開ける。

 なのはは規則正しい寝息をたてていた。

 バリアジャケットを装備して窓から飛び降り、音を出さないように着地して森の中を歩き始めた。

「っ!」

 立夏が出て数分後、ジュエルシードの発動を感じてなのはが目を覚ます。

「あれ?」

「立夏居ないね」

 隣で寝ているはずの立夏が居ないのに気付く、なにか嫌な予感がして急いでユーノを連れて外へ出た。

「この辺りなんだけどな」

 裏の森を歩いて探し続けて数分、反応が希薄になり見つけられていない。

 それとなのはに何も言わないで出てきた事を少し後悔していた。

「今は罪悪感を感じてる場合じゃないか」

 川の方へ向かうと光が空へ貫いていた、そこへ向かおうとすると。

「私に関わらないでって言ったのに」

「そんなこと言われてもな、俺には俺の目的もあるし」

 近くにある大樹の枝にこの前の少女が立っていた。

 いきなり魔力刃で生成した大鎌を彼女が構えるのも見て、一応立夏もクラウを剣にして構える。

 できれば戦闘は避けたいという気持ちが立夏の中でかなり大きい、ナルシストを気取るつもりはないが女の子と戦うというのが苦手だった。

「それよりなんでジュエルシードなんて探してるんだ? 君に必要なものとは思えないんだけど」

「君には関係ないっ」

 彼女が跳んで間合いを詰めて一閃、すぐに剣で防ぎ鍔競りになる。

「だから、戦いたくないって言ってるだろ!」

「なら邪魔しないで!」

「このっ、分からず屋!」

 力を入れて空中へと弾き飛ばす、そのまま飛び上がり斬撃同士がぶつかり合う。

 距離を取って円状の魔法陣、ミッド式を展開すると周囲には数個の青白い球体が現れる。

「プラズマバレット」

「ファイア!」

「雷の魔力変換資質……っ」

 迫る雷弾、彼女はそれを見続けて大鎌を振る、一つ、二つと斬って立夏へ近付く。

 立夏は射ち終わると同じく彼女に近付いていった、そして後数秒たらずでぶつかり合おうとした瞬間だった。

 黒のマントの一部が一瞬にして切り裂かれ、危険と判断して再び距離を取る。

「なに……いまの」

「ったく、戦いたくないって言ってるのに」

 御神流奥技之三『射抜』、ハンドガードまでが刃になっている片刃の剣を出し、二刀で使う技をはじめてクラウで使った為かかなり狙いが危うかった。

 だが少しでも動けば当たるような刺突だったのだが、彼女が一歩も動かなかったにの驚いた。それもそうだろう、何せ動きだけは見えていたのだから。

 しかし見えていても避けれない、向かっていく速度を殺せず止まるので精一杯だった。

 空中で二人は動かない。

「俺たちは人同士だ、話し合えるし分かりあえる。君のことを教えてくれないか? 」

「…………」

「もしかしたら君のことを手伝えるかもしれない」

 なにかを言おうとしながらも、話そうかと悩んでいるような表情をする彼女。

 そして口を開こうとした瞬間、茂みから立夏へ向けてオレンジ色の魔力弾が殺到した。

「魔力弾っ」

 突然の襲撃に少し焦りを感じつつも剣を振り全て斬り落とす、次の瞬間茂みからオレンジ色の獣が立夏へ跳びかかって来る。

「プロテクション」

 片刃の剣を腰に出した皮性のホルダーに挿し、左手を前にかざすと同時にクラウが防御魔法を展開し、獣の爪撃を防ぐ。

「ちっ、そう簡単にはいかないか」

「使い魔か」

 魔導師が身の回りの世話をさせたり、またはこの少女のように一緒に戦ってくれる相棒を作る技術がある。

 それが使い魔だ、しかしかなり高度な技術な上にこの年で成功させるとなると、この少女は余程腕が立つらしい。

「まったく、この娘を惑わせないでほしいね。こっちにはこっちの事情があるんだよ」

「別に惑わせてるつもりはない、ただ話し合えば」

「御託はいい!」

 使い魔が距離を取る、どうやら向こうは完全にやる気らしい。

 少女も迷いが無くなったらしく、デバイスを構えて戦闘態勢に入っていた。

(さて、二対一でどう戦うかな……)

 状況は圧倒的不利、しかしここで逃げるわけにもいかない。立夏は再び腰のホルダーから剣を引き抜く。

「剣を二本にしたところで何がかわるんだい?」

「少しは変わるさ、それと」

 足元に魔法陣を展開させ意識を集中すると、使い魔は何かを感じ取ったのか地面を蹴り、立夏へ爪を振るう。

 しかし、

「少しは本気でいかしてもらう」

 爪撃は空を切り、背後へと回り込まれていた。

 すぐに少女の元へ下がり距離を取る。

「あれは……」

「はじめてだよ、あんな魔法見るのは」

 立夏の姿を改めて見ると、身体に青白い雷を纏っていた。二人はこんな術式を見るのは初めてで困惑する。

 武器に雷などを纏わせたりはするが身体に纏たせたりするのは見たことが無い。

「っ!」

「フェイト!」

 少女が空へ舞い上がり、落下の勢いをそのままに大鎌を振る。しかし使い魔同様その斬撃は立夏には届かずまたその姿を見失う。

 だがそのまま身体を捻り半回転し、遠心力を使い大鎌を振ると確かな手ごたえを感じた。ちょうど強襲しようとした立夏が双剣で魔力刃を防いでいたのだ。

「速いな」

「そっちも」

「オォオオオオオ!!」

 使い魔が吠えると周囲にスフィアを展開させ立夏へ向けて放つ、その数十数個。

 少女、フェイトはそれを見て大鎌に力を入れて双剣を上に弾きそのまま離れると魔力弾が殺到し、辺りが爆炎に包まれるのを見て地面へ降りる。

 完全に今の連携は確実に決まっただろうと思ったが、煙が晴れるとそこには立夏の姿はなかった。

「せあっ」

「きゃ……っ!」

「なっ」

 いきなり真横に居たフェイトが吹き飛ばされる、何事かと駆け寄ろうとするがその道を黒い影が塞ぐ。

「邪魔を、するなぁ!!」

 再び大量のスフィアを展開し、立夏へ放つが雷光だけを残してその姿が消える。

 その場に居るのはまずいと直感的に思い、すぐに空中へ跳び上がると今まで立っていたところに斬撃が殺到した。

「避けられ……ちっ」

「はぁあ!」

 態勢を立て直したフェイトが斬撃を放つ、すぐに移動し距離を取った瞬間次は使い魔が立夏を襲う。それをまた避けると次は大鎌が迫り双剣で受け止める。圧倒的に不利な状況に持ち込まれたらしい、段々二人の連携精度が上がっているのもあり回避も難しくなってきた。

 今は連携を崩す方が優先することにしようと一度剣に魔力を込め雷撃を纏わせる。

「紫電、一閃!」

「ぐっ」

 片方の剣を振り上げ大鎌へぶつけ吹き飛ばし使い魔の方へ向かおうとすると。

「立夏くん!」

「なのは!?」

 予想外の乱入者に立夏の動きが止まった。

 それを見たフェイトが一瞬でなのはの元へ移動し、首元に大鎌を突き付ける。

「っ!」

「ジュエルシードを渡して」

「ちっ」

 すぐになのはの元へ向かおうとすると使い魔が道を塞ぐ、うかつに動けば彼女を傷つけかねない。

 どう行動しようかと考えているとレイジングハートがジュエルシードを周囲にはき出す。

「レイジングハート、なにをっ」

「主人思いの、優しいこなんだ」

 フェイトがジュエルシードを回収しその場を去ろうとするが。

「逃がすかっ、ジュエルシードは!!」

 立ち去ろうとする彼女たちに跳びかかるがそこに魔力弾が数発放たれ、直撃してそのまま地面に叩き付けられる。

「ぐはっ……」

「…………」

「行くよフェイト」

 去る間に一瞬、フェイトが立夏を見て何かを言ったように見えた。またごめんねと、そう言ったような気がした。

「立夏っ」

「大丈夫!?」

「平気」

 なのはがそっと抱え起こしてくれる、ユーノが軽く治癒魔法を掛けてくれ少しは楽になった。

 しばらくして多少ダメージが回復したところで立ちあがり、三人は旅館へ帰ることにした。

(なのは、先に戻ってるね)

(ありがとう)

 小さい体を走らせてユーノは先に帰っていった、なにか気を利かせてくれたらしい。

 月光の照らす中、薄暗い道を二人で歩く。しばらく沈黙が続いきなのはがなにを話そうかと話題を探していると。

「あの……えと」

「そうだな、なのはには全部話とかないと。俺がなんで海鳴市に来たとか、どうしてジュエルシードを探しているかとか」

「えっ、うん」

 話しをどう切り出せばいいか悩んでいたなのはに立夏が口を開く。確かに最初にあった時からジュエルシードにかなり執着している様子が少しあった。

「俺の父さんは管理局員だったんだ、母さんはこの海鳴市の人だった。任務先で偶然出会ってからあれこれ有りながら付き合い始めたんだってさ」

「ロマンチックだね」

「俺にはお姉ちゃんが居るんだ、月島冬花って俺の一歳年上の。それで俺が産まれたころから一緒に遊んできた幼馴染も居たんだ。ユイ・ゲーディアって女の子が」

(冬花とユイってこの前言ってた……)

 なのはの部屋で呟いた名前だった、でも何故立夏が地球に居るのかが分からない。家族はどうしたのだろうかと気になった。

「ユイには無駄に世話やかれてたなぁ、それでいて優しくて。少しなのはに似てるかもな」

「そうなんだ、ってそんな優しくないよ」

「優しいって、まぁ一年前くらいか。俺たちが住んでた町が襲われたんだ」

 ミッドチルダの事件としてはかなり有名だ、生存者は極めて少ない。犯人は数名と言われ町は焼き払われ無惨に人は殺された。

 局員が現場へ着いた時には既に犯人はいなかったらしい。

「ユイと冬姉は犯人に向かっていって、返り討ちにあってそれから……ユイは死んだ。冬姉は本局の病院に入院してるらしい。なんでかはしらないけど居場所は教えられないって局員に言われた」

「そう、だったんだ」

「それにしてもユイはバカだよなぁ、絶対リッカだけは守るよって、自分が死んじゃ意味無いのに」

 あの時自分は動けなかった、戦える力はあるのに倒壊した壁の下敷きになって。そして目の前で二人が必死に戦っていたのに、それをただ見ているだけの自分が何より憎く悔しかった。

 しかし、なのははそれを聞いて少しだけユイの気持ちが少しわかる気がする。

「そんなことないよ、ユイさんは立夏くんのことが好きだったんだ」

 立夏だけは絶対守ると言うのは中々言えない言葉だ、ましてや自分が死の危険にさらされているのに。普通なら家族と一緒に逃げることを優先してもいい筈。

 それをしないで彼を守ったと言うことは、自分の命に代えても立夏を守りたかったのだろう。

「……でも、ジュエルシードがあれば全部元通りになる。願いを叶えてくれるロストロギアならみんな生きかえ」

「そんなの駄目だよ! 死んじゃった人はもう生き返らないよ? たとえ魔法でも」

 立夏の言葉を遮り、なのはが言いきる。

 確かにいくら願望を叶えてくれるというロストロギアでも人を生き返らせたというのは聞いたことが無い、しかし立夏はまたみんなに会いたかったのだ。

 またあの楽しい日々を過ごしたいと願って戦ってきた。だがなのはの一言で少し目が覚めた。

「そう、だよな。死んだ人は蘇らない……か」

 チェーンのブレスレットの先に付いている白い石から二つのジュエルシードが出てくる。それはレイジングハートに吸収されていった。

「ジュエルシードはなのはに任せるよ、冬姉のことは自力で居場所を探してなんとかしてみる」

「うん」

 まだ色々整理はつかないが、これからはなのはの為に戦っていこう。

 そう心に決めてなのはに向き直る。

「ま、今はなのはを全力で守るよ。それが俺に出来ることだ」

「あはは、ありがとう」

 二人は旅館に着くとそっと部屋に入って眠りについた。

 

 

「…………」

「なのはってば!」

「えっ、なに?」

「さっきからボーッとしてるよ、のぼせちゃった?」

 翌朝、アリサとすずかと三人で温泉に入っていたがなのははその間ボーッとしていた、のぼせた訳では無いが昨夜のフェイトや立夏のことが気になっていたからだ。

 あまりにも反応しないアリサがやや不機嫌ながらも隣でお湯をかける。

「熱いよ~アリサちゃん」

「ふんっ」

「そういえば立夏君、朝居なかったね」

 二人が朝起きた時にはすでに立夏の姿がなくて心配していた、さすがになにかあった訳ではないだろうがどこに行ったのだろう。

「散歩行くって言ってたよ」

「そうなんだ」

「まったく、よくふらふらするわね」

 三人は少し立夏のことを話しながらお湯につかる。温泉から出る気配はまだなさそうだ。

「ユーノ、みんあは?」

「お風呂だよ」

 散歩から戻ると部屋には誰もいなかった、隣の部屋に入るとユーノがぐでっとしているのを見つける。どうやらアリサにまた捕まっていたらしい。

「立夏、昨日の大丈夫だった?」

「大丈夫だ、怪我もなんとか」

「そっか、よかった。って怪我?」

 昨夜使い魔との戦闘時に少し腕を爪で切られたことをうっかり漏らす。

「あ、なのはには内緒な」

「うん、わかった」

 ユーノに口止めをして窓際の椅子に座る、まだ疲れが残っているらしく、休もうとそのまま立夏は目を閉じて眠りにつくことにした。

「あれ、立夏寝てるの?」

「そう、みたいだね」

 温泉から帰って来ると寝ている立夏を見付けたアリサとなのは、すずかは姉の忍とお土産などの買い物をしに行ったため先に帰ってきた。

「立夏!」

「はいっ!」

 呼ばれて返事をしながら飛び起きる、何事かと周りを見ると軽く二人に笑われた。余程呆けた顔をしていたらしい。

「…………」

「ん?」

「ほら、そんなとこで寝てないでこっち居なさいよ」

 なぜか元気が無いように見えたなのはが気になった。

 がそんな立夏の心境も知らずアリサに無理矢理隣へ座らされられる。

「トランプやるわよ!」

「はいはい」

「なにやろうか」

 三人はトランプでの遊びをはじめた、それからすずかや恭也たちが帰ってきてトランプでの賭けが始まったのは余談である。

 そして夜になり、またなのはとアリサの間に挟まれて立夏は布団に入っていた。

(やっぱり寝れない、なんでかなぁ……)

 さすがに一日もすれば慣れるだろうと思っていたがやっぱりそう簡単に慣れることは無理と悟った、なにせ口にしては言えないが美少女二人に挟まれているのだからそれは気分も高まる。

(立夏くん、起きてる?)

(起きてけどる、どうかした?)

 どう寝ようかと悶々として約五分くらいしてなのはが念話で話を掛けてきた。

(立夏くんはユイさんのことどう思ってるのかなって)

(幼馴染みだけど、なんで?)

(ううん、なんとなく。それと私に隠し事してるよね)

 隠し事と言うと怪我のことくらいだ、ユーノが口を滑らしたらしいがまあ仕方がない。

(んまあ、怪我してる)

(あまり隠し事しないで、心配しちゃうから)

(わかった、ごめん)

 やや怒ってるようにも思えて、なのは側に寄って手を握る。

(もう心配させない、隠し事も……まあなるべくしない)

(うん、大切なことは言ってね)

 なのはも手を握り返す、そのまま背中合わせだったのが向かい合わせになり、悩み気味の顔が少し晴れてき笑顔になった。

(なのはは笑ってるほうがいいな、その方が可愛い)

(ふえっ!? あ、あ、ありがとう//////)

 顔を少し赤くしながらなのはは目を閉じる、立夏も目を閉じると今日はすぐに眠りにつけた。

 




昔に書いたものなので地の文が少ないですね……ところどころ修正はしていますが、おかしなところがあれば感想などで指摘をしてもらえると嬉しいです。

さて立夏はここから未来に向けて歩いていきます。

そしてフェイトとも関係が深くなる第四話になると思います。
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