【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第十三話 実際幽霊って突然現れたら恐いよね。

 

 

 

 

 

 久遠を助けて意識を失い、目が覚めると病院のベッドの上にいた。

 体には久遠の放った雷を受けて所々火傷を負っていたはずだけど、そんな跡は残っておらず痛みもなかった。

 気を使うようになったせいか、傷の治りが普通の人より早いがこんなにすぐ直るはずは無い。

 たぶん那美姉さんがヒーリングをかけてくれたんだろう。

 

 病室はどうやら個室のようで俺以外誰もいなかった。

 時刻は昼過ぎで、とりあえずナースコールを押して起きた事を伝えることにする。

 あの後どうなったんだろう?

 

 

 

 ナースコールを押してすぐ、見覚えのある銀髪の先生がやってきた。

 那美姉さんを紹介してくれたフィリス先生だ。

 

「あ、お久しぶりです。」

 

「お久しぶりじゃないですよ。

 那美さんに聞きました。

 危ない事して怪我をしたそうじゃないですか。」

 

 フィリス先生に聞くと今は事件が起こった日の昼で、まだ半日くらいしか経っていなかった。

 

「フィリス先生は事情を知ってるんですか?」

 

「那美さん達のお仕事については知っています。

 ご両親には連絡をして那美さん達が事情を説明した後、拓海君が大事無いとわかったので一度帰られました。

 那美さん達は事件の後片付けだそうです。

 拓海くんが起きたらご両親と那美さん達に連絡を入れるように言われてますので、既に連絡を入れておきました。

 もうすぐ来ると思うのでおとなしく待っててください。」

 

「あー、はい。

 やっぱり怒られますよね。」

 

「今後こんなことが無いようにしっかり怒られてください。

 特殊な力を持っていてもあなたは子供なんですからね。」

 

「・・・・・・はい。」

 

 フィリス先生も事情は知っているようで、当事者のように俺のことを怒っている。

 そう何度もあったことのない子供でもしっかり考えてくれるいい先生だと思う。

 ただやっぱり説教されると思うといい気はしない。

 この後夜中に家を飛びたしたから両親にも怒られるのだと思うと気分が沈む。

 子供が早く大人になりたいって思う気持ちが改めて理解できたよ・・・

 

 

 

 

 

 その後両親が先に到着して事情は説明されてたからか、問い詰められたりすることがない分短めに済んだがきっちりと怒られました。

 事情を理解してもらってる分、怒られる理由がはっきりしていて反論する余裕もなかったから、黙って説教を聞いて最後に心配かけてごめんなさいと謝って終わった。

 この日はとりあえずは様子を見るために病院に泊まることになったので、両親は説教が終わったら先に家に帰りました。

 

 夕方になり外が赤く染まった頃に那美姉さんと薫さんが後片付けを終えて見舞いにやってきた。

 そして那美姉さんの後ろには耳と尻尾は無いが女の子の姿の久遠がくっついていた。

 

「えーと、那美姉さん、久遠、薫さん。

 いらっしゃい。でいいのかな?」

 

「気を使わないでいいよ。

 拓海君を怪我させちゃったのは私達のせいなんだから。」

 

「その通りだ。

 うちがもっとしっかりしていれば君に怪我を負わせることも無かった。

 本当にすまなかった。」

 

 薫さんがだいぶ責任を感じているのか深々と頭を下げた。

 

「いいんですよ、勝手に首を突っ込んで怪我をしたのは俺なんですから。

 俺はただ久遠を助けたいって思って、ただそれだけを考えて行動してたんです。」

 

 そう言って久遠を見ると、目が合った久遠はなぜか那美姉さんの後ろに隠れてしまった。

 

「? 久遠?」

 

「久遠は拓海君を怪我させちゃった事を気にしてるの。

 ほら久遠、拓海君に謝るんじゃなかったの?」

 

「・・・・・・(パクパク)」

 

 那美姉さんに言われて久遠は俺の前に出てきて、口をパクパクさせている。

 俺はそんな様子を見て、黙って久遠が何をするのかを見守った。

 

「・・・た・・・くみ・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・。」

 

「久遠・・・・・・。」

 

 久遠が喋るのを聞いたのは昨日の夜が初めてで、これまで人の姿でもまともに喋ったところを聞いたことは無かった。

 実際の会話はこれが初めてになるが、久遠はうまく喋れない様子でたどたどしい喋り方だった。

 だが、久遠の様子は始めてあった頃の怯えが見えて恐がっているのがわかった。

 だから俺はいつものようにゴットハンドを発動。

 人の姿で撫でるのも初めてだけど、いつものように頭を気を込めた手で優しく撫でてやった。

 

「久遠、俺は気にしてないぞ。

 お前のほうこそ大丈夫だったか?」

 

「ク・・・・・・クゥン(コクン)」

 

 やはりまだろくに喋れないらしく、人の姿なのにいつもの鳴き声で応えながら頷く。

 

「そっか、よかったな久遠。」

 

「クッ!! クォン!!!」

 

 嬉しくなったのか久遠はベットの上に飛び乗って抱きついてくる。

 人の姿で抱き疲れるのは少し恥ずかしいが、今回くらいはまあいいだろうと諦めて抱きとめながら頭を撫で続けてやった。

 

 

 

 空気を読んで何も言わずにいてくれた薫さんがそろそろいいかと質問してきた。

 

「久遠についてはうちからも改めて御礼を言わせてくれ、ありがとう。

 だが久遠から祟りを追い払って、その上一撃で消し去ったあれは何だ?

 斬魔剣弐の太刀と言っていたが、何処かの流派の技なのか?」

 

 まあ、本業の人からすれば気になりますよね、斬魔剣弐の太刀。

 この世界にはネギまの漫画が無いから、名前自体ないし、使えるとも普通は思えない技だよな。

 今思うとよく使えたなあんな状況で。

 結構集中がいるから失敗する可能性のほうが高いはずだ。

 もう二度とこんなこと無いと思いたいけど、もしもの時の為にしっかりと練習しておこう。

 

「俺は流派どころか剣術なんて習ってませんよ。

 全部自分で考えた技を練習して習得しただけです。」

 

「まさか、そんなばかな話が・・・。

 祟りを追い払った一撃は間違いなく久遠自身にも当たっていたのに無傷だった。

 あんな技、うちは聞いたこともないし出来るとも思えない!!

 そんな技を我流で編み出したって言うのか!?」

 

 編み出しちゃったんです。

 元ネタは別にあるけど、自分で手探りでどうやったら出来るのか考えて使えるようになりました。

 そろそろ『努力すれば割とどうにかなる程度の能力』がハンパなくなってきた。

 ちゃんと努力してるから普通に成長してるようにしか感じないからなぁ。

 本当はもっと努力を重ねなきゃ出来ないことだってのは知ってるんだけど・・・

 

「えっと、実際に俺が考えて編み出したんです。

 それに技は使えますけど、剣術なんてほんとにやったことないから素人ですよ。

 気が使えるからその分普通の人よりは強いですけど。」

 

「そ、そうなのか?」

 

「あはは・・・・・・拓海くんは不思議な子だもんね。

 他にも魔力とか霊力も使えて、術なんか自力で開発しちゃってるし。

 霊力は私が教えたけど二週間で使えるようになったのよ。

 拓海君ががんばっているのは知ってるけど、才能がうらやましいな。」

 

「非常識な・・・・・・。」

 

 そこまで言うかなぁ・・・・・。

 確かにこの年で気、魔力、霊力と三種類も不思議な力を使えるのは普通はいない。

 

 ああ、うん。

 確かに現実的に考えて十分非常識だ。

 いろいろ使えるようになってだいぶ価値観がずれてきてたみたいだ。

 今後は自重するようにしよう。

 

「確かに自分でも普通の子供とは違いすぎてきた気がしました。

 けど、祟りを消した技はともかく、斬魔剣弐の太刀はちゃんと練習すれば誰でも出来る可能性はあると思いますよ。

 何なら教えましょうか?」

 

 直死の魔眼については黙っている事にしておく。

 危険な能力だし、誰かに無意味に教えて変に勘繰られたら嫌だし。

 まあ今回みたいな事は早々ないはずだから、今後使うことも殆ど無いだろう。

 

 自分から厄介ごとに突っ込まなければ、現実的に騒動には巻き込まれることは早々ないはずだ。

 そうだよな、神様!!

 

「な!? 剣技と言うものは伝統をもって正統に受け継がれなければいけないものだ!!

 そんなホイホイと教えるな度々言うものではない!!」

 

「いや、俺が一人で考えた技なんで、教えるかどうかなんて俺の自由でしょ?

 伝統とかなんて当然ないし、流派なんてものじゃないんですから・・・。」

 

「しかし・・・・・・」

 

 剣、あるいは流派に誇りを持っているのか、簡単に教えるという俺にどうにも納得のいかない様子の薫さん。

 確か那美姉さんが使う剣術は神咲一灯流って名前だったな。

 薫さんもたぶん同じ剣術を使うんだろう。

 

「薫ちゃんはね、こう見えて神咲一灯流の正当伝承者なの。

 だからそういう伝統をとても大事にしているから我慢できないんだよね。

 薫ちゃんは、拓海君の技をどう思ってるの?」

 

「む、それは・・・・・・正直興味深いし学べるものなら学んでみたい。

 人を切らずして霊を祓うことが出来うる剣ならば、憑かれた人を容易に祓う退魔師としては最高の技だろう。」

 

 そりゃ退魔行を生業とする神鳴流の奥義らしいからね。

 もともとその為の技だと思うし。

 

「んー、でしたら教えを受けろとまで偉そうな事言いませんが、少し出来るか試してもらえませんか?

 自分の考えた技が他の人から見たらどういうものなのか感想を聞きたいです。」

 

「・・・・・・分かった、斬魔剣弐の太刀是非とも教えてくれないか?」

 

「分かりました、じゃあまた今度空いた時にでも。」

 

「よろしくお願いする。

 しかしタダで教えてもらうわけにもいくまい。

 今回の件も含めて何か礼をさせてほしい。」

 

「でしたら、頼みたいことがあるんです。」

 

「何でも言ってくれ、出来うる限りの事はしよう。」

 

 

 頼んだのは神咲さんが手に入れられる異能の術の情報。

 ブっちゃげ自力で作った魔法陣、今の俺じゃこれ以上の発展をさせられそうにありません。

 現実的に考えて、碌な知識も無しに一人でやるのはもう無理。

 発動しただけで十分な成果と考えていいだろう。

 

 後はミッド式なりベルカ式なり何か手本になるような術式がないと手の加えようがない。

 そう思っていたが、この世界にも一般的ではないが異能は存在する。

 なら日本の異能で有名な式神とか存在しないだろうかと考えた。

 

 式神はさまざまなフィクションに存在していて、日本式の使い魔と呼べるものだ。

 作品ごとに違うが専用の式神から簡易の式神まで存在していた。

 使い魔のほしい俺には、式神の術式も十分ほしい情報だ。

 

「そういう本なら確かに実家にあったと思う。

 門外不出のものは渡せないが、それ以外でもいくつかあったと思う。

 今回の件の報告で実家に戻ったら取ってこよう。」

 

「ありがとうございます!!」

 

 うれしくて少しばかり声を張り上げてしまう。

 式神は何処まで生き物を再現できるかな?

 大きな動物に跨って移動するのって実際どんな気持ちなんだろう?

 俺は想像していた式神の姿に少しばかり興奮していた。

 

「薫ちゃん、剣技を教えてもらうんなら彼女を紹介しないと。

 大事な相棒なんでしょ。」

 

「ん、そうだったな。

 拓海君、紹介しておきたい人物がいる。」

 

「はい? なんですか?」

 

 妄想していて少しばかり現実から遠のいていた。

 最近の俺、ちょっと羽目が外れすぎてるな。

 本気で自重することを意識しておかないと。

 

「この剣だ、十六夜。」

 

-シャキン--パアァ-

 

 薫さんが持っていた真剣を少し抜くと刀身が輝いて傍に仄かな光が集まりだす。

 そこまではよかった。 が・・・・・・

 

「!?!?!?」

 

 仄かな光は人を形作り始め、ぼんやりと現れたのは白い袴のような服装にに金髪の目に光を感じられない異国の女性。

 

「始めまして、拓海様。

 わたしくし、霊剣十六夜と申します。

 ・・・・・・?」

 

「? どうした拓海君。」

 

「拓海君?」

 

「・・・・・・(ポテッ)」

 

「え!? 拓海君!?

 ・・・・・・・・・(ヒラヒラ)

 ・・・・・・薫ちゃん、拓海君、気絶ちゃってる。」

 

「は?」「え?」「くー?」

 

 

 

 

 

 仕方ないだろ!!予備動作はあったとはいえ、いきなり目の前に幽霊が現れたんだから!!

 あの後すぐ気が付いた俺は、落ち込んでいる十六夜さんを慰めることになった。

 だってこの人目が見えないから光が瞳にない上、日本人じゃないから見慣れていない分余計にホラーな感じがして恐かったんだよ!!

 皆も想像してみなよ、美人でも金髪の女性がうっすらと現れてくるところを。

 

 で、俺に恐がられたことでショックを受けていた十六夜さんを慰めるという、インパクトある自己紹介はこれで終わり、また後日話をすることで今日はお開きになった。

 

 久遠の一件に飛び込んだとき、終わってみれば何やってるんだろう俺って思った。

 運命的に騒動に巻き込まれたわけじゃないから、神様は約束を守ってくれているはずだ。

 恐らくこれは海鳴市で起こるであろう特殊な事件だったんだろう。

 久遠自体とらハのキャラだったんだから、関わっていれば厄介ごとに巻き込まれることに気づいたはずだ。

 それに気づかなかったのは俺が悪いし、久遠が大切なのと自分の力を過信して騒動に飛び込んだのも俺が悪い。

 

 だから今回の騒動に巻き込まれたことには何も不満に感じていない。

 そのおかげでこれからも久遠や那美姉さんと楽しく過ごせるだから。

 

 

 

 ふと考えた。

 俺がこの事件に関わらなければどうなったんだろうかと。

 とらハならちゃんとハッピーエンドが用意されているはずだから、結果は変わらず久遠は助かったんだろう。

 だけどここはリリなの世界だし、そもそも現実なんだ。

 何もかもうまくハッピーエンドが用意されてるわけじゃない。

 久遠は俺が助けなくても助かったんだろうか?

 

 

 

 この答えの出ない問いに対する納得のいく答えが出るのは当分先だった。

 

 

 

 

 


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