【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第十五話 式神と奥義

 

 

 

 

 

 薫さんからもらった式神の本は、とりあえず基礎的な簡単なところだけは理解することが出来た。

 式神には主に二種類あって妖怪などの対象と契約を結ぶタイプと、ゼロから作り出す人形みたいな無生物を生み出して操る二種類がある。

 契約を結ぶほうは相手が存在しないのでとりあえずはスルー。

 久遠は那美姉さんの飼い狐だからダメだろう。

 

 そういう訳で最初に作るのは、ゼロから生み出す無生物タイプの式神を作ってみることにした。

 まずは式神の術式を書き込む呪符となる和紙が必要みたいだけど、和紙じゃないといけないとかは書かれてなかったから、たぶん昔の人は今みたいにきれいな紙がないから基本和紙だったんだろ。

 それで和紙なんだと思うけど、術式が書き込めればとりあえず何でもいいのかもしれない。

 術式を書くには墨を使って霊力を込めながら書くらしい。

 これで術式となる霊力の回路が形作られるみたいで、使う時に霊力を込めれば発動するんだとさ。

 

 材料の和紙が高かったり墨を用意するのがメンどかったので、普通の画用紙を和紙代わりに、鉛筆を筆と墨代わりにして霊力を込めながら式神符を作ってみた。

 ホントは魔力で出来ないかと思ったけど、本に書かれてたのは霊力だったので魔力でやるのはまた後でにした。

 

 早速作った式神符をその場で使ってみると、一応は発動したけど碌に動くこともなくすぐに消えてしまった。

 容姿はとりあえず猫をイメージしてみたら、猫っぽくはなったけどなんか歪だった。

 何が悪かったのか分からなかったので、数を作って何度も試してみた。

 途中魔力や気を使ってもやってみたら一応発動した。

 霊力がやはり一番発動しやすかったような気もするけど、まだ式神自体の操作を碌に行えないから効果の違いがまだ比べられなかった。

 

 とりあえずこれまで通りうまくいくまで何度も作り、努力して割とどうにかなるまで続けた。

 延々と書き続ける作業だったので、これまでとは違って精神的に来た。

 何体も式神を作ってはすぐに消えてしまい使い物にならなくなった符の山。

 本命を作るなら絶対消耗品じゃないやつにしようと心に決めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 そして即席の使い捨てとはいえ、形も安定し操作出来るようになった。 

 

「そういうわけで見せに来たよ!!」

 

 いつもの神社に量産した式神符をもって、那美姉さんと久遠に見せに神社に来ました。

 最近こういう披露の場があるから新しい技もがんばれる。

 これまで自分ひとりだったのでいろいろ出来るようになるのは楽しかったけど、それだけで終わりだったから頑張り甲斐が足りなかった。

 今は披露できる那美姉さんと久遠がいるので以前よりとても楽しい。

 

「相変わらず出来るようになるのが早いわね、拓海君。」

 

「クォン・・・・・・拓海、楽しそう。」

 

 久遠も最近しゃべるのがうまくなってきた。

 狐姿でも喋れるけど人前では喋らないようにして久遠のことを知っている人の前でしか喋らない。

 久遠はちょっと子供っぽいと思ってたけど、結構頭がいいのかもしれない。

 

「ちゃんと形にして操作を覚えるのにだいぶ苦労したよ。

 形だけ作ってもその体の動かし方が形によって違うから操るのが難しかったよ。」

 

 式神は使用すると使用者との繋がりが出来て、そこから意思を伝えて式神を操るんだ。

 その繋がりを強くすればより意思の伝わりが良くなって手足のように扱えるようになる。

 代わりに繋がりが強くなった分反動も大きくて、式神の受けたダメージとかが使用者にも伝わる。

 話に出てくる式神の設定でよくある反動だね。

 俺が作ったのはレベルの低い即席のやつなので、繋がりも薄く反動はない。

 

「じゃ、早速出してみるね。」

 

 

-ポンッ!!-

 

 

「クゥッ!?」

 

「あら♪」

 

 早速使ってみた式神符はちゃんと発動し、二人の前に俺の式神が現れる。

 俺が作った式神は・・・・・・。

 

『クォン。』

 

 久遠を真似てみました。

 いやだって、身近な生き物で一番近くにいて触れ合っていたからイメージしやすかったし。

 御蔭で姿形は同じに鳴き声まで出せるようになりました。

 

「即席の式神だから俺の命令がないと動かないけど、見た目も重さもちゃんと再現されてるよ。

 ほらおいで。」

 

『クォン。』

 

 式神は久遠と同じ様に鳴いて飛び上がると俺の腕にすっぽりと収まる。

 おいでとは言ったが実際には式神に意思は無く、俺が繋がりを通じて指示を送ってをして飛び込んでこさせたのだ。

 ちゃんと手足の動きもイメージしないと転ぶので最初は操るのに苦労した。

 毛並みなどの抱き心地はしっかり覚えてたから最初から再現出来てたけどね。

 

「本当に生きてるわけじゃないから自分で動いてくれない分ちょっと寂しいけど、抱き心地は殆ど再現出来ているから久遠のヌイグルミみたいなんだ。」

 

「ほんとに久遠そっくりね。

 声までちゃんと出るだなんて・・・。」

 

 那美姉さんに式神の久遠を抱きかかえながら見せる。

 そのままいつも久遠にやってるように式神の頭をつい撫でていると・・・。

 

「クゥーーーー!!」

 

 

-ボンッ!!-

 

 

 突然久遠が人型に化けて俺が抱いていた式神の久遠を奪い取ると放り捨てた。

 放り捨てられた式神は地面に落ちるとそのショックでもとの札に戻ってしまった。

 

「ちょ!! 久遠!?」

 

「どうしたの久遠!?」

 

「拓海ダメ!!」

 

 

-ポンッ-

 

 

 再び久遠は子狐の姿に戻って俺の懐に飛び掛って服にしがみ付いた。

 俺は久遠を抱きとめるが、久遠はそのまま服に顔を擦り付けて放そうとしない。

 

「? ああ・・・・・・なるほどね。

 久遠は拓海君の式神に嫉妬しちゃったのね。」

 

「ん、そうなのか久遠?」

 

「拓海・・・もう久遠の式神作らないで・・・」

 

 どうやら本当に嫉妬してたらしい。

 式神をいつも久遠にしてやってるように撫でていたからだろうか?

 とりあえず久遠にもいつも通りゴッドハンドで撫でてやる。

 

「クゥ~~♪」

 

 するとすぐご機嫌になって顔を服に擦り付けるのをやめて喜んでいた。

 もしかしてマーキングでもしてたのかな・・・・・・。

 

「ん~・・・・・・やっぱり式神より本物の久遠の方が可愛いな。」

 

「クォン♪」

 

「うふふ。」

 

 今後久遠の式神を作ることはなさそうだ。

 那美姉さんは久遠の様子にうれしそうに微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 久遠の式神事件から少し経って、薫さんが再びやってきた。

 仕事先でも斬魔剣弐の太刀を練習してただろうけど、出来るようになったのだろうか?

 

「お久しぶりです薫さん。」

 

「久しぶり、薫ちゃん。」

 

「薫・・・・・・久しぶり。」

 

「ああ、久遠もだいぶ話せるようになったんだな。」

 

 封印騒動の時は薫さんは久遠を殺そうとしていたけど、もともとは仲が良かったらしい。

 騒動の後は薫さんは久遠に謝って、その後は蟠(わだかま)りも無いらしい。

 

「うん。」

 

「薫さんはどうですか?

 弐の太刀は出来るようになりました?」

 

「ああ・・・・・・一応霊気に意思を込めるという事が認識出来るようになったくらいだ。

 弐の太刀はまだ出来る様子はないが、霊気に意思を込めることを意識したら神咲一灯流の技の切れが増した。

 霊気がこんな性質を持ってるとは思ってもいなかったよ。」

 

「俺もこの技考えて気づいた性質ですから。

 前回の約束通り、斬魔剣参の太刀改め終の太刀、完成させておきましたよ。」

 

「ほ、ほんとに完成させたのかい?」

 

 俺の考えた斬魔剣終の太刀は弐の太刀の発展系。

 集中力が必要な弐の太刀よりも更に集中が必要な技だ。

 なので前提となる弐の太刀は自在に使いこなせないといけないので、練習して連続で放つことも出来るようになった。

 

「使えるようにはなってると思うんですけど、この技は完全に物理的な効果を現さないので成功してるかどうかわかんないんですよ。

 だから薫さんには実際に効果があるか受けてみてほしいんです。」

 

「なに? いったいどういう技なんだ?」

 

「相手の意識に自分の意思を気などを通してぶつける技です。

 だから技の対象に意思がないと効果が確認出来ないんですよ。」

 

「拓海君たら、技の完成は薫ちゃんに最初に見せるから私じゃダメって言うんだよ。」

 

 那美姉さんが文句言ってるがこの技は薫さんに最初に試してみたいと思ってたから。

 別に善意じゃ無くて悪戯的な意味なんだけど。

 

「意思をぶつける技か。

 どういう意図があるのか分からないが、拓海君が考えた技なら意味があるんだろう。

 そこまで言うなら受けてみよう。」

 

「すいません、ちゃんと傷つけないようにしますので。」

 

 そして俺はいつもの愛木刀海林を構えて気と意思をしっかりと込めていく。

 込める意思は当然傷つけない意思と技で薫さんに伝える意思。

 何故意思を伝える事が技になるのかは後で説明するが、どういう内容を伝えるかは事前に考えておいた。

 ちょっと以前から聞いてみたかったことでもある。

 

「ではいきますよ。

 斬魔剣、終の太刀!!」

 

 

-ブワンッ!!-

 

 

 放つ気は薫さんを傷つけるつもりが無いから殆ど込めてないが意思は全力で込めてある。

 放たれた気は物理的な影響を起こすことなく薫さんに当たった。

 俺の予想が正しければこれで薫さんに気に込めた意思が伝わったはずだ。

 

「んな!?」

 

「あ、その様子だったら成功したみたいですね。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!

 ど、どういうことだ!?」

 

 気を受けた薫さんは伝わった意思に狼狽してかなり慌てている。

 伝えた意思の内容でこうなることはなんとなく予想はついていたので技の成功を確信した。

 

「薫ちゃん、いったい何があったの?」

 

「い、いやそれはな・・・・・・」

 

「出来れば技で伝えた事の返答をお願いします。」

 

「断じて違うと言わせてもらう!!」

 

 予想範囲内の返答だけど、実際はどうなのか怪しいものだ。

 

 薫さんは那美姉さんがさざなみ寮に入寮する以前に在住していたらしく、とらハシリーズの主人公だろう男の管理人さんとも縁があったはずだ。

 つまり薫さんもヒロインの一人だったんだろう。

 前にさざなみ寮に行ったときに結婚している管理人さんを気にしてるっぽい人が何人かいた。

 だから薫さんにはこんな内容を気に込めて伝えてみた。

 

『さざなみ寮の管理人さんに横恋慕狙ってたりします?』

 

 薫さんの性格ならかなり慌てそうな質問だ。

 傍から見てる分にはギャルゲの主人公の恋愛模様って面白いかもしれない。

 

「この技はいったい何が目的なんだ!?

 確かに拓海君の意思は気に乗ってうちには伝わったが目的が分からない!!

 あと、子供がそんなことユナチヨ!!」

 

 薩摩弁になってますよ。

 随分な慌てぶりに割りと怪しいかもしれない・・・。

 まあ、それはともかく、

 

「この技は本当に意思を伝えることを目的にした技ですよ。

 今のは伝えるだけに加減しましたけど、全力でやれば強い意思をぶつけて相手の意思自体にダメージを与えて気絶させられると思うんですよ。」

 

「なるほど、そういう目的なのか。」

 

「ええ、傷つける目的じゃなくても相手に呼びかける方法にもなると思うんです。

 那美姉さんの除霊方法って出来るだけ話し合いで成仏させるんでしょ。

 けど、幽霊の中には意思が漠然となってて話自体出来ない場合が多いって前に聞いたから、この技なら直接意思や感情を直接相手に伝えられるから話し合いの除霊も出来るんじゃないかな?」

 

「そ、そっか!!

 それが出来たらきっと意思のはっきりしない霊も鎮める事が出来るかも。

 拓海君、私にもその技教えて!!」

 

 那美姉さんはよく退魔師の仕事で霊を無理やり祓わなきゃいけない事が絶えないを愚痴っていたから、この技がもしかしたら那美姉さんの為になるかもしれないとも思って考えた。

 自分で考えた終の太刀も結果的に退魔の技に相応しくなっちゃったのがびっくりだ。

 このままじゃ俺、退魔師になっちゃうんじゃないか?

 

「構わないけど那美姉さんは剣術自体がへっぽこだからその辺りをがんばらないとね。」

 

「うぅ、わかりましたぁ・・・」

 

「那美・・・・・・お前は・・・。

 拓海君、君の技は間違いなく退魔の剣に向いている。

 霊力も使えるようだし、いっその事退魔師になる道を選んでみてはどうだ?

 我流で編み出した技も更に磨き、剣その物の腕も上げれば一流派として興せると思う。」

 

 あー、薫さんもそう思いますか・・・・・・。

 戦いに明け暮れるような厳しい世界とか、俺望んでないんだよなぁ。

 というか自分で考えたとはいえ、元ネタ神鳴流を自分の流派にしていいのだろうか?

 まあ技の仕組みは俺の独自解釈だからどこまであってるか分からんし、技名くらいしか同じだとしか言えないしな。

 

「んー、流派を興すのはともかく、退魔師になると霊とかと戦ったりすることが多くなりますよね。

 俺、技を考えたり磨いたりするのは好きですけど、将来戦いを専門にするような職はちょっと・・・。

 まあせっかくある特技を生かせる職には就いてみたいと思うんですけどね。」

 

「そうか、まあ君はまだ子供なんだからすぐに決めることはない。

 君の言ったように戦いを専門にする以上辛い事もあるから無理に進めたりはしない。

 さざなみ寮の住人も自分の特技を生かしたいとそういう職に就くために出て行ったものもいるからな。」

 

「あそこって不思議な力を持ってたり変な特技を持ってたりする人が妙に多かったりしません?」

 

「・・・・・・うちも住んでいた者として否定できないな。」

 

 そんなに大きな寮じゃなかったから住人は少ないけど、半数以上はそっち関係で全員久遠の事も割りと平然と受け入れてた。

 その理由が初めからケモノ耳少女が住んでた事だから驚きだ。

 いくら話の舞台の一つだからって設定盛り込みすぎじゃないかって思った。

 

 

 

 正直俺の将来ってどうなるんだろ?

 リリなの世界に来て魔法に関わると思ったら、何故か退魔師のルートが出来上がってるし。

 だってまだ、原作始まってないんだぜ?

 いろんなことが出来るようになるようにこの『能力』を考えたけど、職業的に困らな過ぎる。

 

 この世界は異能の存在が認知されてるから、それを通常の職に活かしてもいいかもしれない。

 薫さんの話でしょう言う人がさざなみ寮にも多いみたいだし。

 将来職に悩んだら参考にさせてもらおう。

 

 

 

 

 

●式神が作れるようになった。

●弐の太刀を自在に使えるようになった。

●斬魔剣終の太刀を開発した。


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