【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます 作:ルルイ
先日の巨大樹事件は謎の超常現象としてニュースで報じられた。
あんな大きな事件、アニメじゃ碌に語られなかったが当分話題として残る大事件だろう。
那美姉さんの御蔭で俺と久遠の事は噂程度で済んで、日常生活に支障をきたす様な事にはならなかったが、両親には那美姉さんから説明されてしまったのでまた怒られてしまった。
どちらかというと、【またか】といった感じで呆れられたみたいだったが…
数日後、式神がなのはちゃんをマークしていたら月村家に遊びに来ていた。
どうやらフェイトがなのはちゃんの前に初めて現れる日らしい。
それも気になったが、何より発動したジュエルシードの暴走体が気になった。
発動させるのは月村家の子猫でジュエルシードの力で巨大化するのだ。
可愛らしい子猫が巨大化するなどどんだけシュールなのだろうと非常に気になった。
フェイト? まあ彼女の事情に関しては問題なく終わるだろう。
家庭事情は非常に深刻だと思うがジュエルシードが起こす被害に俺は精一杯だ。
俺が気にしてどうにかなるもんじゃないし、アリシアを生き返らせて問題解決出来るほど俺の能力は非常識じゃない。
せいぜい原作通りになるのが彼女にとってベストな結果だろう。
式神を通じて俺と久遠は月村家の庭の様子を観察していた。
久遠も見ることが出来ているのは。陰陽術の本に載ってた術で感覚を伝達してるからだ。
式神のみの観察なのは月村家のセキュリティが非常に危険だからだ。
塀を飛び越えて入ろうものなら、直ぐにセンサーに引っかかってしまう。
円で塀の前から確認する限り鎮圧用と思える物々しい火器やトラップがゴロゴロしていた。
全部ゴム弾とかだよな…。
そういうわけで今回のジュエルシードはなのはちゃん任せになる。
式神にはそれほど戦闘能力がないので任せられないしな~。
そうしていると外からもジュエルシードが発動するのを感じた。
直ぐに結界が張られるが霊力で作った式神との繋がりが切れることはなかった。
結界で繋がりが遮られる事を気にしていたけど大丈夫らしい。
そして式神の目に巨大化した子猫の姿が目に入った。
(すっげーシュールだ…
だけど大きくなっても子猫可愛い。
あの肉球になら押し潰されていいかも。)
(クゥン……)
久遠がまた少し嫉妬してるみたいだが、大きくなっても可愛い物は可愛いんだ。
あの猫特有の柔らかな毛の上に乗っかってみたいし、つぶらな瞳を間近から眺めてみたい。
普通抱きかかえる筈の子猫に両前足の肉球で掴まれたらどんな気分になるだろう。
実際あのサイズなら間違いなく潰されるが、想像するだけなら和やかな気分になる。
妄想が暴走していた時に黄色い魔力光が巨大な子猫に当たった。
攻撃を受けて横倒しになる子猫。
魔力の色から攻撃したのはフェイト・テスタロッサ。
わかっていたとはいえ何するんだ!!
あんな可愛い子猫に無遠慮に攻撃するなんて!!
見ているのが式神でなかったら暴走して文句言いに行ってたかもしれない。
後は知っていた通りの展開でなのはちゃんが負けでジュエルシードはフェイトが回収していった。
今のところなのはちゃんにもフェイトにも手を貸していないが、フェイトには手を貸す事はないだろう。
フェイトに手を貸してジュエルシードが原作よりも多くプレシアの手に渡れば、次元震による被害が地球に出る可能性がある。
そうならないためにもフェイトがジュエルシードを手に入れるのをそれとなく妨害する必要があるかもしれない。
なのはちゃんはこの後フェイトと友達になりたがるが、俺はあくまで町の被害を抑えるのが最優先だ。
「ねえねえたっくん、最近忙しいみたいだけど何かあったの?」
「んーまあね。 美由希とは遊んでる時間ないから。」
最近ジュエルシードを探して回っていたので美由希とは久々にあった。
前までは数日に一回は必ず会って稽古か技の教え合いをしていたので、美由希からすれば暇が出来てしまったんだろう。
「ひどい!! 私のことは遊びだったのね!!」
「何を言ってるんだ、当たり前だろ。
俺の本命は久遠に決まっている。」
「久遠に負けた!?」
「むしろ久遠と比べるな、失礼な。」
久遠と美由希なんて比べるまでもないだろ?
この前までは美由希の相手が多かったけど、愛らしさの面で久遠の圧倒的勝利だ。
久遠が構って~と甘えたら美由希なんて直ぐほっぽり出して相手してやるぞ。
これまでは久遠も俺の為にと遠慮してたんだ。
ホントいい子なんだから。
「相変わらず辛辣で意地悪なんだから。
まあそれはおいて、今度家族で温泉旅行行くことになってね。
良かったらたっくんも行かない?」
「いかない、何で他所の家の家族と旅行に行くのさ。」
ああ、フェイトと二戦目の時の温泉旅行のやつか。
ユーノが淫獣と呼ばれる決定的な事件を起こすアレ。
現実的に考えて俺なら絶対逃げ出すんだがな…
「大丈夫、妹のなのはの友達も一緒だから問題ないよ。
たっくんと同じくらいだから前々から紹介したいと思ってたの。
ねえ、一緒に行こうよ。」
「お断りだ。」
「お願い!! 一緒に来て!!
連れてこないと恭ちゃんが恐いの~!!」
「それが本音か!! とっとと帰れ!!」
どうやら高町恭也はまだ俺のことを諦めてないらしい。
何時までも逃げられないと思うが、今は事件の関係で高町家の面々に会う気はしない。
なのはちゃんと接触して魔力があることに気づかれたら、強制的にジュエルシード探しに同行する事になるかも知れないからな。
そもそもあの旅行って男女の比率が可笑しかっただろう。
男湯に高町恭也と父士郎と三人なんて袋のネズミじゃないか。
恐ろしくて想像もしたくない。
温泉旅行のほうも式神をつける形で様子を確認しておいた。
式神を使って女湯を覗きなんてしてないぞ、ユーノじゃあるまいし。
夜中に発動したジュエルシードをフェイトが封印し、なのはちゃんと戦ってフェイトが勝利。
フェイトが合計二つのジュエルシードを手に入れて、今日の戦いは終わった。
なのはちゃんとフェイトの戦いを見た感想だが……むっちゃこえぇよ。
ビュンビュン飛び回るし、砲撃魔法はぶっ放すわ。
周りへの被害を考えて、少しは遠慮しろって言いたい。
次の戦いは更に苛烈を極めるはずだ。
戦闘の末デバイスがお互いに破損してジュエルシードが再発動して次元震を引き起こす。
フェイトが無理に封印して怪我してしまうのもあるが、発生する次元震が町にどのような影響を及ぼすのか想像もつかない。
最悪俺が直接目の前に現れなきゃいけなくなるかもしれない。
そうならないようにいろいろ準備しておかなきゃ…
更に数日後の夜遅く、なのはちゃんは街中でジュエルードの探索を続けていた。
式神でなのはちゃんをマークしながら、俺と久遠もジュエルシードの発動に対応できるように町中で警戒していた。
そして町中に突然大きな魔力が広がって、その直後ジュエルシードが発動して同時に町に結界が張られた。
魔力を認識していた俺も結界に取り込まれて、抱えていた久遠も一緒だ。
町に広がってジュエルシードを発動させた魔力はフェイトの使い魔のアルフで、結界を張ったのはユーノだろう。
ジュエルシードを強制発動させたフェイト側は何を考えてるんだ。
ユーノが結界を張らなかったら、新たな騒動になってたかも知れないんだぞ。
さすがに一言言ってやらなきゃいけないか。
俺は久遠と共に二組に見つからない位置から様子を窺っていた。
強制発動させらジュエルシードは既に封印されて、なのはちゃんとフェイトの空中戦は始まっていた。
結界張られてるからってホントに遠慮無しにぶっ放すなよ!!
道路や建物がぶっ壊れて何も思わんのか!?
「(あの戦いを見てどう思う久遠。)」
「(クゥ、二人ともすごい。)」
「(ああ、張られた結界で外には影響が出ないみたいだけど、よくもまあ無遠慮に周囲を考えずに戦闘が出来るな。
俺もこの結界ほしい。)」
周囲への無遠慮な攻撃はどうかと思うが、大技の練習をする場所がない俺には非常にほしい物だ。
この結界があったら砲撃系の技とか、試しにぶっ放せるんだけどな…
そして戦いに終止符が打たれる。
放置されてたジュエルシードにお互いのデバイスが交差してぶつかり合う。
その衝撃でジュエルシードは再び発動した。
-ギュオォォォォン!!-
ジュエルシードから魔力の光の柱が再び立ち昇り、デバイスを交差させていた二人が吹き飛ばされた。
発動した時、広がった魔力で空間自体がまるで地震が響いたように一瞬揺れた。
霊感自体はそれほど働かなかったから、今のはそれほど危険なものではなく外への影響もないだろう。
吹き飛ばされたフェイトが破損したバルディッシュを戻してジュエルシードに近づく。
素手で封印しようとするが物言いの為にここで出る。
姿を表すのは式神だが、ただの式神じゃない。
この日の為に考えて練習して作り出した特別演出用威圧型式神!!
登場はこの第一声から始まる!!
「すぅ…『ぶるあああぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!』(斬魔剣弐の太刀!!!)」
-ヒュンッ!! バシュウゥゥゥゥ!!!-
声帯模写をして発した雄叫びと共に、斬魔剣弐の太刀を遠距離から放ってジュエルシードを止める。
すかさず今回は霊力ではなく気で式神を作って、ジュエルシードを掴もうとしていたフェイトの前に着地させる。
ーズドンッ!!ー
作り出した式神は二メートルを超える筋肉隆々な体格な為、かなりの重量を表現して着地をすればこのような大きな音が出るようにした。
「!?」
「なんだいこいつは!?」
「なにがおこったんだ?」
「い、今の声って…」
フェイト・アルフ・ユーノは混乱しているが、なのはちゃんだけは何かに気づいたようにうろたえた。
特別演出用式神は着ている服は普通の紺のスーツだが、筋肉隆々の巨体にはち切れそうなほど張っていただ。
更に赤いマントを背に翻して、頭には某赤い彗星のマスクで目元を隠して口元からは大きな鼻とたらこ唇がはっきり見える。
『わぁが名は破壊大帝……ではなくぅ…
わぁれはこの海鳴の地をまもぉるぅ、やぁみの守護者ぁ。
ガーディアン・アナァゴだぁ!!』
「ガーディアン…」
「アナァゴ。」
「いったい何者なんだ?」
「(若本なの!? 間違いなく若本なの!?)」
俺の声帯模写は若本の特有の声すら再現してみせた。
田村ゆかりボイスなどが出来るようになった時とは別に笑いが止まらなかった。
だがインパクトだけは間違いなくあり、忠告をしっかり受け止めるだろう。
面白そうって理由もあったがな。
ちなみにこの世界にはサ○エさんは存在します。
『少女達よぉ…なぁにゆえこの海鳴の町に災いをもたらすかぁ?
わぁれはこの地を守る者としてぇ、これ以上町に被害を与える事をぉ、許すわけにはいかなぁい!!』
「!! ごめんなさい…でも私にはジュエルシードが必要なんです。」
『……』
「……」
『……よかろぉう。』
式神アナァゴで発動の止まったジュエルシードを拾ってフェイトに投げ渡す。
本来なら渡したくないが今回は放っておいてもフェイトの手に渡っただろうから仕方がない。
改めて言うがこの式神は演出用で戦闘力はほとんどない。
戦闘になったら一撃で消えるよ。
「え?」
『わぁれはこの町を守る者ぉ。
そのような石自体に興味はなぁい。
回収するのであぁれば、町に被害を及ぼさぬようにしろぉい。』
「わかりました。」
『分かればよぉい。
だぁがぁ、この町に被害を及ぼそうとするならばぁ、わぁれを含む四天王、イソォノ、ナカァジマ、そしてわが盟友、フゥグタ君がお前に制裁を下すだろぅ。
そぉれを良く覚えておくがいぃ。』
予定通り相手が理解してないのをいい事にちょっとふざけ過ぎた。
反省はしているけど後悔はしていない…。
「はい、いくよアルフ。」
「わ、わかったよフェイト。」
フェイトとアルフはジュエルシードを持って飛び去っていった。
「あ、まて!!」
「待ってフェイトちゃん!!」
『まぁつのはお前等だぁ!!』
「「!?」」
こっちには忠告は出来たので、次はなのはちゃん達の方だ。
これまでジュエルシードで起きた被害、一言申しておきたい。
「あの…なんですか?」
「(生の若本ボイス、すごい迫力なの!!)」
『わぁれらはこれまでお前達の行動を監視していたぁ。
ジュエルスィードとやらがどういう物かは粗方把握しているぅ。
それによって町の被害、どう思っているのだぁ?』
「えっと、その…」
「ごめんなさい、僕の責任なんです。
僕がジュエルシードをこの町にばら撒いてしまったから。」
「ユーノ君それは…」
なのはちゃんがユーノを庇おうとするのを式神アナァゴが掌を向けて遮る。
『よぉい、お前の事情もすぅべて聞かせてもらっているぅ。』
「誰かに見られてたような事はなかったはずなのに。」
霊力を使った式神はどうやら魔法では認識できないらしい。
いつも鳥の姿等で監視してたからな。
『わぁれらにジュエルスィードを封印の術はないが止める術はあったぁ。
故に先日の巨大樹の件はわぁれらが止めさせてもらったぁ。』
「あれはあなた達が?
この世界に魔法文明はないんじゃ。」
『なぁい訳ではない。
使い手の少なさ故に、表舞台に存在しないだけだぁ。
そしてこのような理解出来ない超常現象に対応する者達が存在するぅ。』
嘘は言ってない筈だぞ。
霊力の使い手が一応公式に存在してるなら魔法があっても可笑しくない。
超常現象に対応するのは那美姉さんや薫さん達の仕事でもあるし。
『こぉれはお前達に渡しておくぅ。
巨大樹とわぁれらが見つけた物だぁ。』
「ジュエルシード!?
それも三つ!?」
三個のジュエルシードは言った通り、巨大な木の件と俺が見つけた物だ。
『わぁれらは封印の仕方を知らんのでそのままだぁ。
直ぐに封印しておけぇ。
そしてぇ、今後これ以上被害を出す事はゆるさぁん。
それをよぉく覚えておくがいぃ。』
「わかりました。」
『そして桃色光線の少女よぉ。』
「も、桃色光線!?」
間違ってないよな、魔力光桃色だし。
こうゆう言い方するとものすごく痛く感じない?
『そうだぁ、お前は何を考えてその力を振るうぅ。』
「えっと、ユーノ君の役に立てればと思って。」
『なるほどぉ。
だぁがお前はその力がどぉいうものか理解していなぁい。
見よ、周りの建物をぉ。』
「!?」
周りの建物は先ほどのジュエルシードの発動だけでなく、フェイトとの戦闘でさまざまな箇所が壊れていた。
『その力は容易に周囲を傷つけるぅ。
結界の御蔭で実際の町に被害はないとはいえ、お前はそれを理解しているのかぁ?』
「えっと、その、わたし……」
「なのは。」
なのはちゃんは周囲の被害を自分が行ったものと認識して戸惑っている。
アニメじゃSTSでも遠慮無しにぶっ放しまくっていたけど、危険性をちゃんと認識してたのかわからない。
少なくとも使い方を誤れば危ないものだとしっかり認識してほしかった。
これが後にどういう影響を及ぼすかわからない。
一応フォローも入れておかないと。
『桃色光線の少女よぉ。
お前の力は使い方を誤れば人を傷つけてしまうぅ。
だぁが、所詮力は力に過ぎぬぅ。
お前が力とは何かを考え、その力の正しい使い方を見出せば、それは人を救う力にもなろう。』
「その…わかりました。
考えてみます。」
直ぐに答えは出ないだろうけど、これで無茶や危ない事を控えるようになってくれるといいな。
数年後の無茶の祟った大怪我を防ぐ布石になってくれるとありがたい。
『うむぅ、最後にひとぉつ言っておきたい。』
「なんですか?」
『……シュークリーム美味かったと、お母上に伝えてくれぇい。』
「にゃあぁぁぁ、お客さんだったの!?」
今の伝言に特に意味は無い。
ただ面白そうだったから置き土産。
『ではさらばだぁ。 桃色光線の少女と喋るイタチよぉ。』
「高町なのはです!!」
「フェレットだ!!」
だが答えは聞いてない。
『ぶるあああぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!!!』
-ドオオオォォォンン!!!-
「きゃぁ!!」「うわぁ!!」
式神アナァゴを叫ばせると、体を作っていた気を炎気に変え圧縮して爆発させた。
こうする事で爆発に紛れていなくなった様に見せかけて、式神符を焼いて証拠を残さないようにした。
追いかけてこられたり、式神符に戻るところを見られても困るしな。
「ば、爆発しちゃったの。」
「転移したんだと思うけど魔力反応がなかった。
何なんだあの人は。」
「若本なの。」
「は?」
言いたい事言って同時に悪戯も出来たので満足した。
目的と手段が逆転してた気がしないでもないが、これで何か良い方向に変わってくれるとありがたい。
あの後直ぐ結界は解けて普通の町並みに戻った。
「久遠、あの式神どうだった?
見ててちょっと面白かっただろう。」
「クォン、なんだかすごかった。
今度あの声で歌って。」
「え”?」
若本って何か曲歌ってたかな~
……ベリーメロン?