【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第三十二話 闇の書編 緊急終了のお知らせ

 

 

 

 

 

 グレアムさんとの会談が終わってから、それぞれ出来うる限りの準備をした。

 はやてちゃんは前々から教えられてた全員分の騎士甲冑を考えた。

 見た感じ守護騎士達の服装はアニメの物と違いが出なかった。

 ただ現実視点で見るとどうにもコスプレっぽかったのは仕方ない。

 

 俺は闇の書を見てもらった那美姉さんに話が着いた事を知らせた。

 近いうちに闇の書の浄化を試すと伝えると、那美姉さんもそれに同行してくれるといった。

 闇の書の負の念が見えるのが俺しかいないし、物品の浄化は俺も試すのが初めてなので正直助かる

 けど戦闘能力以前になんかトロくて回避能力の低い那美姉さんを闇の書を試す場に連れて行っていいか少し不安だ。

 そういうと久遠を抱えて、久遠が守ってくれるから大丈夫といった。

 久遠が頼りになるのはこの前のジュエルシードの時に良くわかった。

 まあ、相談に乗ってもらったから、今更関わらないでとも言えないので当日は一緒に行くことになった。

 

 グレアムさんのほうはさすがに仕事があるとの事で早めに終わらせて時間を空けるそうだ。

 開いた日に闇の書の浄化を試して問題ないかの確認に同伴するらしい。

 その日までに浄化を試す場所を探しておいてくれるそうだ。

 安全の為に場所は無人世界を選んでそこで行う予定だ。

 闇の書が暴走を起こして、万一直死の魔眼でも破壊出来なかったら次元船を呼んでアルカンシェルで破壊するらしい。

 魔力を蒐集してない状態での暴走なら、規模も小さい筈なので無人世界内の被害で終わるはずという考えた。

 

 まあ俺次第ではあるが、正直失敗の事など考えていない。

 そんな事考える余裕がないという理由もあるが、失敗の心配するほど俺の技量にあまり関係しないからだ。

 直死の魔眼は触りさえすれば一撃必殺。

 浄化に関しても霊力の出力とかはともかく、何をどうしろとか言うほど繊細な扱いをする必要もない。

 浄化に対する闇の書が反応するかどうかが成功の分かれ目だ。

 主以外の干渉は受け付けないらしいが闇の書は一応魔導と科学の産物。

 魔力でない霊力による力なら認識出来ないのではないかと考えてる。

 結論から言えばなるようになるという事だ。

 

 

 

 

 

 グレアムさんからの連絡が来たそうで、先に無人世界で待機してるそうな。

 俺は那美姉さんと久遠を連れて集合場所の八神家に向かっていた。

 こちらは特に準備らしい物もなく、いつもの海鈴に使えるとも思えない式神や陰陽術の札。

 那美姉さんはいつもの巫女服姿で完全装備なのでなんか準備した気がしない。

 

 八神家に着くと庭ではやてちゃんと守護騎士達、そして猫姿のアリアが待っていた。

 

「拓海君、待っとったでー」

 

「おせーぞー」

 

「時間通りにきたはずなんだけど?」

 

「ヴィータは待つの苦手みたいやからな

 大丈夫、時間通りやで」

 

 ヴィータの文句に少し遅れたかと思ったが、はやてちゃんが言うにとり合えず時間通りみたいだ。

 そこへ猫姿のアリアが俺の胸に向かって飛び込んできた。

 こういう風に飛び込んでくるのは久遠でも慣れていたので優しく受け止める。

 そういて片腕に抱えるともう片方の手で撫でてやる。

 

「うにゃぁ~…やっぱり拓海に撫でて貰うのは気持ちいいわ~」

 

「アリアもだいぶ吹っ切れたな」

 

「だってあんなに撫で回されたんだもの

 責任とってね」

 

「こんな風に?」

 

「にゃ~ん、そこはもっと強めに~」

 

 アリアを抱えて喉の辺りを撫でてやっていると。

 

「ク、クー!!」

 

 久遠が我慢できなくなって俺の所に来て頭に飛びついた。

 頭に乗っかった久遠が前足で催促するかのようにペチペチと叩いた。

 

「あー、ごめんごめん

 久遠のことは忘れてないよ」

 

「え、え、え?」

 

「ク~♪」

 

 アリアを下に降ろすと頭に乗ってた久遠を代わりに抱いて撫でてやる。

 さすがに抱えて撫でてやれるのは一匹だけなのだ。

 

「ちょっとー、私はどうなるのよー」

 

「クゥン、ここ久遠の場所」

 

「な!! そこ退きなさいよ!!」

 

「や」

 

 久遠にしては珍しく厳しい口調で断り、アリアがそれを言い返す。

 ニャーニャークークーと鳴きあう二匹の姿は喧嘩でも和む光景だった。

 そんな光景を見ていたらヴィータに肩を叩かれて呼ばれた。

 

「どうかしたヴィータ」

 

「あのさ、それ見てるのもいいんだけど、あれどうするんだ」

 

「あれ?」

 

 ヴィータが指差すほうを見るとシャマルさんと那美姉さんが話していた。

 二人が話しているのは分かるが、良く見てみると…

 

「いつも拓海君がお世話になってます」

 

「いえいえ、私達も拓海君はお世話になって…」

 

「いえいえいえ、拓海君があなた達のお力になれればと…」

 

「いえいえいえいえ、はやてちゃんも私達もほんとに感謝していて、神咲さんにも…」

 

「いえいえいえいえいえ、私は何もしていなくて相談にのっただけで…」

 

「いえいえいえいえいえいえ、はやてちゃんから話を聞いて神咲さんにも世話になったと…」

 

 那美姉さんとシャマルさんはお互い世話をしながら、挨拶のお辞儀を交互に延々と繰り返している。

 しかも終わる様子がなく止めなければどんどんエスカレートするばかり。

 どうにも性格が似てるせいか謙遜しやすいというか…

 

「……ヴィータはシャマルさんを止めてあげて。

 俺は那美姉さんを止めるから」

 

「わかった」

 

 俺たち二人が介入する事で二人のお辞儀のしあいは止まった。

 

「何やってんのさ、那美姉さん

 シャマルさんも…」

 

「ごめんなさい、なんだかつい話が弾んじゃって」

 

「私もなんだか神咲さんとはとても気が合いそうな感じがして」

 

「那美で結構ですよ、シャマルさん

 私も名前で呼ばせて頂いているので」

 

「ありがとうございます、那美さん」

 

「いえいえ、こちらこそシャマルさんと話すのはなんだか楽しくて」

 

「いえいえいえ、こちらこそ気の合う人が出来てとても嬉しいです」

 

「いえいえいえいえ、私もなんだか他人の気がしなくて「ストップ」

 

「那美姉さん、シャマルさん、またループしてますよ。」

 

「「あら?」」

 

 那美姉さんとシャマルさんが面白いように気が合うのは良くわかった。

 その様子を見てたはやてちゃんは腹を抱えて笑いを堪えるのに必死だったし。

 とりあえず久遠と言い争ってるアリアも止めてそろそろ行くか。

 

「アリア、そろそろ行こうと思うんだけど」

 

「フニャー!!

 あ…そ、そうね

 じゃあ私が次元転送で父さまが待ってる世界まで行くわよ

 一箇所にかたまって頂戴」

 

 久遠との喧嘩をやめてアリアがそういうと、全員一箇所に集まった。

 そしてアリアがミッド式魔法陣を展開して準備に入った。

 

「わぁ、これが魔法ですか?」

 

「那美さんは初めてみるんですね」

 

「ええ、私は話に聞いていただけだったので

 シャマルさんも魔法を使えるんですよね」

 

「ええ、このミッド式とは違うベルカ式というものですが」

 

 初めて魔法を見る那美姉さんに説明するシャマルさん。

 再び世話話がなぜか始まってしまうが、もう放っておく事にした。

 転送はアリア任せなので手を出す必要はない。

 

 

 

 

 

 そして転移魔法によって気が付けば周囲は何もない地平線の見える荒野。

 近くにはグレアムさんと片割れの使い魔リーゼロッテがいた。

 

「お待たせしました、父さま」

 

「ああ、待ってたよアリア

 はやて君たちも」

 

「グレアムおじさん、今日はよろしくお願いします」

 

「ああ、何事もなければいいんだがね」

 

 グレアムさんはこの日のために出来うる限りの準備はしておいたそうだ。

 闇の書の事は伝えてないが、別の任務でこの近くの世界にアルカンシェル搭載の次元船を送っているらしい。

 もし闇の書が暴走して俺が破壊出来ないようなら直ぐ駆けつけることの出来るようにという最終手段

だ。

 

 各々何が起こっても対処出来るように準備を始める。

 守護騎士達はデバイスを起動して騎士甲冑を装着し、リーゼ姉妹もカード型のデバイスを装備する。

 那美姉さんは戦闘能力がないので特ににすることはないけど、久遠が大人の姿に変身して守る様にそばに立った。

 

「久遠変身出来たんか!?」

 

「君の使い魔かね?」

 

「いえ、自然に出来るようになったみたいだから、地球の魔法生物にあたるんじゃないかなと。」

 

「クゥ?」

 

 そういえば久遠は妖狐だから力は妖気という分類になるんだろうか?

 雷は自然に出せてるけど、気に分類されてるのか魔力に分類されてるのかあるいはそのどちらでもないか。

 気が向いた今度久遠に頼んで検証してみるか。

 

「やけど大人姿の久遠ってスタイルええなー」

 

「久遠、大人姿ではやてちゃんには近づかないでね」

 

「クゥ? わかった」

 

 この前のシグナムさんの一件を警戒して言っておいた。

 久遠にあんなことするのは、たとえはやてちゃんでも許せん。

 

「拓海君、私を何だと思っとるんや」

 

「ん? ふむ…」

 

 そう聞かれたらはやてちゃんを見てふと思った。

 はやてちゃんと久遠を交互に見比べて、まず久遠の方に手を差し出して…

 

「可愛い子狐と…」

 

 続いてはやてちゃんのほうに手を向けて…

 

「小粋な子狸」

 

「そうそう小粋な子狸…って、誰が子狸やー!!」

 

 と言うが、はやてちゃんはなんか納得がいかないと反論する。

 いやだってはやてちゃんの印象動物は子狸っていうし。

 

「そういうわけだから久遠

 はやてちゃんはきっと久遠の天敵だ

 気をつけてね」

 

「クォン(コクン)」

 

「なんでやねん」

 

 

 

 はやてちゃんか俺のせいで少々空気が削がれた気がしないでもないが準備は出来た。

 全員が見守る中、俺が闇の書を手に持って霊力を使い浄化を試す事になる。

 何度もやり方を那美姉さんに見てもらって浄化法に間違いはない。

 

 同時に霊視して負の念を見定めて、暴走時の対処のために直死の魔眼のスイッチも入れる。

 闇の書に死線と死点がはっきりと映り、もし暴走が始まるなら何時でも死点を突ける準備が出来た。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

「拓海君、頼んだで」

 

 はやてちゃんが代表して応えて、他の皆は何も言わず闇の書に集中していた。

 俺は両手に浄化の霊力を集中して闇の書に翳した。

 

 

-パアァァァ!!-

 

 

 浄化の光が発生して闇の書の負の念を僅かだが消し散らし始めた。

 俺から見たところ浄化を行っても闇の書に変化はない。

 まず那美姉さんに浄化が正しく行われてるか聞いてみる。

 

「那美姉さん、これで問題ないよね」

 

「大丈夫、私から見ても負の念の浄化は進んでる

 だけどやっぱり強い念だからごく僅かずつしか浄化出来てない」

 

「それでも出来てるなら問題ないよ

 魔導師側から見て闇の書に変化は?」

 

「こちらから見ても、闇の書にも我々にも変化はない」

 

「こっちもサーチャーを使って緻密に魔力の動きを確認してるけど何の変化も確認出来ないわ

 その霊力って言う浄化って作業自体認識されない

 光ってるのは解るのにどうして認識されないのかしら?」

 

 魔導師側の意見はシグナムさんとアリアが答えてくれた。

 どうやら闇の書は浄化には反応しないらしく、アリアの魔法による認識にすらはっきりと現れないらしい。

 霊力は魔力では認識しきれない特殊な力らしい。

 

「私達には認識し切れないが闇の書の対処は成功しているという事かね」

 

「はい、浄化は間違いなく成功しています

 時間は掛かりますがいつかは完全に浄化出来ると思います」

 

「問題はその負の念とやらと暴走が関係しているかどうかか…」

 

 那美姉さんに質問したグレアムさんが言ったが、実際のところ負の念と暴走が関係している事も確証はない。

 浄化が成功しても防衛プログラムが異常を起こしたままになるかもしれない。

 そうなったらもう直死の魔眼による破壊しかなくなる。

 そうならない事を祈るしかない。

 

 

 

 ん?

 ふとスイッチを入れていた直死の魔眼に、闇の書から漏れ出して少しずつ浄化されている負の念に死線が見えた。

 それ自体が見えるのは可笑しくないが闇の書本体と繋がっていないのが気になった。

 

 直死の魔眼で見える死線と死点には繋がりがある。

 死線は対象にランダムに線が入っているように見えるが、死点は対象に映る死線が集まる交点の部分が死点となる。

 負の念は闇の書と一体化してるから、負の念に見える死点と闇の書自体に映る死点と繋がってなきゃおかしい。

 

 良く眼を凝らして漏れ出した負の念に映る死線を見続けると、映る死線と死点が移り変わり始めた。

 これまで闇の書に映ってた死線や死点がぼんやりと見えなくなっていって、漏れ出した負の念に映っていた死線の先が逆に薄っすらと見え出した。

 負の念の死線が他にも見え出してきて、その線の続く先が闇の書の中に続いていった。

 直死の魔眼に透視能力はないはずなのに闇の書の中に死線が映りだして驚くが、線の先はまだ続くので意識をそこに集中し続ける。

 

 やがて闇の書の中心部辺りで負の念の死線達が交差して死点になった。

 これが闇の書に篭った負の念の根源の死だと直感的にわかった。

 これまで死線や死点は何に映っても同じだと思ってたけど、意識を集中しているとどれが何の死かなんとなく解る。

 もしかしてこの死点を突けば負の念のみを全部殺せる?

 

 俺は半分無意識に闇の書の中の負の念の死点に向けて指先を近づけていく。

 闇の書の中を透視して死点が見えてるので物体である指は突く事は出来ない。

 そのまま触れて闇の書の表紙にぶつかって指は止まったのに、感覚だけは突き抜けて負の念の死点を突いた感覚を確かに感じた。

 

 

-バシュゥゥゥ-

 

 

 その直後、負の念が死線に沿って千切れて闇の書の中から塵になるかのように消し飛んでいった。

 

「え!? 拓海君!!」

 

「な、那美姉さん…」

 

「何や、どうかしたんか?」

 

 負の念の見える那美姉さんだけが声を上げて、俺も少々どうしていいか分からず名を呼ぶ。

 その戸惑った様子を疑問に思ったはやてちゃんが声を掛けてきて、他の皆も何か起こったのかと警戒を始める。

 

「えーと、その…

 拓海君が闇の書に指で触れたら負の念が急に全部消えちゃって…」

 

『は?』

 

 那美姉さんが状況を皆に説明してくれるが、それでも皆は突然の事態に何がなんだか分からない様子。

 

「で、ですから、もう闇の書からは負の念が出ていないんです。」

 

「ど、どういうことなのかね?」

 

 皆が疑問に思ってることをグレアムさんが言ってくれるが俺もだいぶ戸惑っている。

 誤って闇の書の負の念だけ直死しちゃったから、もしかしてこれで終わり?

 そういやさっきも言ったけど、負の念と闇の書の暴走ってどうなったんだ?

 負の念が消えたなら全ての問題がなくなって、はやてちゃんの足も原因がなくなってるはず。

 

「はやてちゃん、足の具合はどう?」

 

「どうって、いつも通り動かんけど…ん?」

 

 はやてちゃんは何か疑問に思って、屈んで太ももから足の指先にかけて手で触って確認する。

 確認が終わるとはやてちゃんは少し呆けた表情で言った。

 

「……足の感覚がある。

 腿から指先まできっちりと。」

 

「本当ですか!?」

 

「わ、私調べます!!」

 

 シグナムさんが驚きの声を上げて、シャマルさんがすかさずはやてちゃんに駆け寄り魔法ではやてちゃんの体を調べる。

 その様子を皆がじっと見つめて結果を待った。

 

「……足への闇の書の影響が無くなってます」

 

「じゃ、じゃあ、私の足治ったんか!?

 感覚は在るけど動かないんやけど!!」

 

「た、たぶん…

 動かないのはずっと動かしてなかったからだと思います

 リハビリすれば歩けるようになるかと」

 

「な、何が起こったのかね、拓海君!?」

 

 グレアムさんが理由の説明を求めるが俺も漸く戸惑いが収まって説明出来そう。

 直死の魔眼の気づいてなかった機能で負の念の死だけを見れるようになるとは思わなかった。

 そして…

 

「す、すいません

 どうやら俺のレアスキルで闇の書の負の念だけを破壊しちゃったみたいで…」

 

「負の念だけを…

 つまり暴走原因のみを破壊してしまったという事かね?」

 

「負の念と暴走原因が一緒とは確信が無かったんですけど、はやてちゃんの足の様子から一緒だったみたいですね。」

 

「で、では…」

 

 グレアムさんは突然の事態に言葉をなくして呆然とする。

 

「ん?…………そか、わかったわ

 拓海君、書を貸してー」

 

「はやてちゃん?」

 

 突然はやてちゃんが闇の書を渡して欲しいと言ってきた。

 良くは判らないが俺ははやてちゃんのところまで行って持っていた闇の書を手渡す。

 

「はやてちゃん、闇の書が何かあった?」

 

「拓海君、この子はもう闇の書やあらへん

 もう夜天の書に戻ったって言っとる」

 

「主はやて、管制人格の声が聞こえたのですか?」

 

「たぶんそうや

 そんでもって私はこの子の名前を付けたらなあかん

 拓海君の話でもそうやったららしいからちゃんと考えといたんや」

 

 はやてちゃんには管制人格の存在は教えたけど、どう言う名前を付けたのかは教えなかった。

 そういうのは自分で考えるから意味があるし、それにきっと大丈夫だろうから。

 

「闇の書から夜天の書に戻って、私が主として最初にやることや

 夜天の主の名において汝に新たな名を贈る

 強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール、リインフォース」

 

 

-キイィィィィンン!!!-

 

 

≪おはようございます、ご主人様≫

 

 

 はやてちゃんが夜天の書を掲げて名前を送る。

 すると夜天の書が輝いて機械音声がベルカ語で流れ、宙に浮かびベルカ式魔法陣が展開される。

 そしてそこに魔力が集まって人の形を形成しだす。

 光が収まってくるとそこにはシグナムさんと同じ位の年の銀髪の女性が立っていた。

 

「新名称リインフォース、認識しました

 始めまして、我が主はやて」 

 

「始めまして

 それからいらっしゃい、私の新しい家族」

 

「っ……ありがとうございます」

 

 現れた完成プログラム、リインフォースさんをはやてちゃんが笑顔で出迎える。

 リインフォースさんは少し驚いた様子を見せて、はやてちゃんに跪く様にして御礼を告げた。

 それが済むとリインフォースさんは立ち上がって俺の方を向いた。

 

「山本拓海、ありがとう

 君のおかげで我が主は救われ、私も破壊の運命から逃れられた」

 

「あー正直、さっきのは偶然というか運がよかったというか…

 結果うまくいったなら良かったんだけど

 リインフォースさんはもう何も問題は無いの?」

 

「ああ、君が書に触れた直後に突然防衛プログラムが正常に機能し始めた

 長い間、私にはどうする事も出来なかった暴走の原因である防衛プログラムが

 君の事は主や騎士達を通して聞いていた

 それが偶然であるはずも無く、私には認識出来なかった君のレアスキルのおかげと考えるのが自然だ

 だからありがとう」

 

「まあ、問題が無くなったならいいんだ

 どういたしまして」

 

 偶然上手くいってしまったから何かをやり遂げた実感が無くて、お礼を言われてもなんだか痒い。

 しかもホントに嬉しそうにリインフォースさんが微笑みながら言うもんだからすごく気恥ずかしい。

 

「リインフォース君…だったね」

 

「はい、なんでしょう」

 

 先ほどまで呆然としていたグレアムさんがリインフォースさんに声をかける。

 だがまだ事態の変化に戸惑ってる様子が見える。

 

「問題が無くなったとは…もう闇の書の暴走は起きないということかね」

 

「はい、暴走原因である防衛プログラムが正常化したことで主に害を為す事も、魔力の蒐集も行う必要はありません

 暴走してしまう事ももう無いでしょう」

 

「…全て…終わったんだね」

 

「終わりました、いろいろご迷惑をおかけしました」

 

 リインフォースさんが深々と頭を下げて謝罪する。

 俺の事を知っていたのなら、グレアムさんの事情の話も聞いていただろう。

 かつての闇の書の暴走の被害者と判って謝罪するのは、リインフォースさんも罪悪感を持っていたということだろう。

 その答えを聞いてグレアムさんは空を仰ぎ見るが、なんだか目の焦点が定まっていない気がする。

 

「そうか……終わったのか…」

 

 

-フラッ-

 

 

「「父さま」」「グレアムおじさん!?」「グレアムさん!!」

 

 グレアムさんがふっと足がふらついて両膝を突くと、直ぐにリーゼ姉妹が駆け寄って体を支える。

 一体どうしたのかと皆も直ぐに駆け寄ってきた。

 

 

 

 どうやら体調を崩したわけでなく、緊張の糸が切れてふら付いてしまっただけだったようだった。

 少し時間が経てば意識もはっきりしてきたし、何も問題は無かったようだ。

 

 グレアムさんは前回の闇の書の暴走からいろいろ溜め込んできてたものがあった。

 それはクライドさんの死だったりその家族だったり、計画のはやてちゃんへの罪悪感などもあっただろう。

 計画を諦めて俺たちに協力してくれたけど、これからだと思ったら突然終わってしまって調子が狂ってしまった。

 俺だって相応の覚悟で挑んだつもりだったのに、突然全て終わってしまって肩透かしを食らい戸惑った。

 

 グレアムさんの覚悟と決意は俺以上のものだろう。

 当然その反動も大きくて、一気に気が抜けすぎてしまったらしい。

 結構な御歳だというのもあるだろうけど。

 原因は言わずもながら俺なんだけどな…

 

 

 

 とはいえ俺の役目はこれで全て無くなってしまったが、はやてちゃん達やグレアムさん達は管理局に夜天の書を認めさせるべくいろいろしなければならないだろう。

 その為にはやてちゃん自身が本局やミッドチルダに行かなきゃならなくもなるだろうし、グレアムさんに至っては今回の事の報告を含めた後始末が大変だろう。

 正直それはグレアムさん以外に出来ない事だからお願いするしかない。

 

 だがこれでホントに厄介な事件は終わった。

 ジュエルシードの回収が終わってから、そう時を置かない内に守護騎士が目覚める事になった。

 余裕が無いせいであまりゆっくり出来た気もしないし、新しい技や訓練も出来なかった。

 これからは十分時間があるからやりたかったこと全部試せそうだ。

 魔法関係の縁も出来たからいろいろ教えてもらいたいし。

 

 不思議な力で平凡な楽しみを追い求める日常がまた始まる。

 

 

 

 

 

●直死の魔眼の扱いが向上


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