【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第三十四話 八神家の日々1

 

 

 

 

 

 数日の休みを空けて、再びやってきた八神家での事。

 俺がやってくると直ぐに猫姿のアリアが飛びついてくるのはいつもの事。

 俺の頭に久遠が乗っているけど、前回の一件で喧嘩するのはやめたらしくお互い黙ったままだった。

 

「拓海君が来るとアリアの様子が面白いように変わるわぁ

 いつもは私らから距離置いてご飯も別で食べとるんや

 一緒に食べたいんやけどな」

 

「私はあなた達と馴れ合う気はないの

 父さまの指示じゃなかったら拓海の所にでも転がり込んでるわ」

 

 うちは一応ペット禁止って事はないから問題なんだけど、喋れる猫が来たって言ったら母さん達どう思うだろうか。

 驚くか呆れられるかのどっちかだろうな。

 

「流石に行き成り俺の家に来られると困るんだけど」

 

「物の例えよ

 もういっその事、外で生活しようかしら」

 

「外じゃおいしいモン食べられんで」

 

「保健所の人とか注意しないとな」

 

「…おとなしくここに居るわ」

 

 それが賢明だ。

 

 

 

 

 

 俺は今シャマルさんと話をしている。

 以前考えていた魔法についての事を教えてもらっていた。

 とはいえ俺は基本的な何も知らないから、ホントに基本的なことから教わってる。

 

「大体こんな感じですね」

 

「んーどっか見覚えのある様な無いような感じだな」

 

「拓海君とシャマル、二人で何しとるん?」

 

「これ」

 

 俺はシャマルさんに書いてもらった紙を見せる。

 

「えーとなんや、この文字っぽいの」

 

「ベルカ語らしい

 ベルカ式の魔法を学んでみたかったから、まずはベルカ語を教えてもらおうと思って

 それでまず文字だけを並べて書いてもらった」

 

「ふーん…拓海君、シャマルに魔法教わるんか?」

 

「本来でしたらデバイスがあれば簡単な魔法なら直ぐに使えるんですけど、私達は余分に持ってたりしないので

 少しくらいなら貸してあげても構わないんですけど」

 

「デバイスって魔導師にとって重要な物なんだからいいって断った

 それに術式そのものをしっかり理解したいから言語から教えて貰う事にした」

 

 能力のおかげで覚えたりするのが早いし、文字だけなら直ぐ覚えられる。

 言語を覚えるのはもっとかかるだろうけど、無駄にはならないだろう。

 

「そうなんか、なんか大変そうやな」

 

「はやてちゃんもその内他人事じゃなくなるんじゃないか?」

 

「へ?」

 

 その内、グレアムさんの紹介で聖王協会に行って、夜天の書の所有者として名前を連ねる事になるだろう。

 まだ子供なんだから名前だけでも問題ないだろうけど、いずれ何かしらの役職に付く事になるかもしれない。

 だからベルカの最低限の知識を持っておかないといけなくなるかも知れない。

 

「じゃあ、私もベルカ語覚えたほうがええんかな?」

 

「どうだろ?

 今の内は話が来るまで特にする必要は無いと思うよ

 慌ててなきゃいけないわけじゃないだろうから」

 

「はやてちゃんはリインがいれば魔法も使えますので大丈夫ですよ」

 

 今ははやてちゃんがやるべき事は足を早く治す事だろうし。

 

「んー……やっぱり私も教えてもらうわ

 勉強が嫌いなわけやないし、皆の主として皆の言葉くらい知っときたいしな」

 

「じゃあ、聞いてみる?

 シャマルさん」

 

「?」

 

「判りました、じゃあ…

 ~~~~~~~~~~~」

 

「シャ、シャマルがなんだか良くわからない言葉を!?」

 

 翻訳魔法切って話し始めただけだ。

 そうでなきゃ初めから日本語で話が出来るはずがない。

 

「シャマル達って今更やけど、外人さんやったんやな」

 

「それどころか異世界人だろ」

 

 むしろ人ではなく魔法プログラムだという話。

 見た目よりも言語の差がお互いの違いをハッキリと感じさせた。

 言葉の壁は思った以上に厚いのだと再認識、翻訳魔法が便利すぎるのだとわかった。

 今後はやてちゃんもベルカ語を学ぶ事を決意する。

 

「拓海君より先にバイリンガルになったるからな」

 

 能力がある分負ける気がしないが、あっても負けたら居た堪れないので俺も本気で頑張ることにしよう。

 ああ、あとアリアにその内ミッド語を教えてとも言っておいた。

 二つ同時に覚える自信はないが、早めに頼んでおいても問題ないだろう。

 

 

 

 

 

「なあなあ、拓海君

 式神って最近ヴィータがよう遊んどるけど、私にも使えるんか?」

 

「ん、知らなかったっけ?

 魔力でも気でも霊力でもいいから、使える人には式神符は使えるよ」

 

 最近俺の式神符はヴィータの遊び道具になってる。

 動きは俺ほど洗礼されてないけど、人形扱いで歩かせたりのったりして遊んでいる。

 ただイメージを浮かべて式神を形作るのが苦手らしくて、サイズは違えど呪いウサギしか作り出せていないんだがな。

 

「そやけど私、まだ魔法すら一度も使ったことないで

 念話ってやつくらいやったら出来るんやけどなー」

 

「そういや日常生活には必要ないもんなー」

 

 俺も技とか考えても日常生活で役立つようなのは殆どない。

 物の持ち運びとかは身体強化でどうにかなるし、怪我しなけりゃ治癒魔法も必要ない。

 

「けど、空とか飛んでみたくないか?」

 

「あ、それはやってみたいわ」

 

「俺も以前は空飛んでみたくて我武者羅に頑張ったことがあるし」

 

 それほど昔じゃないような気がするけど、一年以上は頑張ってたんだよな。

 発想の転換であっさり出来るようになったけど、見つかってちょっと焦ったのもいい思い出だ。

 

「リインさんってユニゾンしてはやてちゃんの補佐をする能力があるんでしょ

 それではやてちゃんを飛ばしたり、魔力の使い方を教えて上げられない?」

 

「可能です」

 

「じゃあリイン、お願いしてええか?」

 

「かしこまりました

 では…ユニゾンイン」

 

 リインさんが魔力の光になってはやてちゃんの中に入っていく。

 するとユニゾンした証としてはやてちゃんの髪と瞳の色が変化した。

 はやてちゃんはパタパタと自分の体に触れて変化を確認している。

 

「リインと一緒になった感じはしたんやけど、なんか変わったんやろうか?」

 

「髪と瞳の色が変わってるよ」

 

「え、ほんま!?」

 

「はやてちゃん、鏡です」

 

 気を利かせて準備したシャマルさんがはやてちゃんに鏡を渡す。

 

「おーほんまに髪と瞳の色が変わっとる

 拓海君、私が不良になった感じせえへん?」

 

「しないしない」

 

 髪を染めるとかは俺も以前は良い印象なかったけど、最近は茶髪くらいなら普通に染めてる人多いしな。

 俺は染めたりはせずに自然な黒髪派だよ。

 自分が染めたりするのが好きじゃないだけだから、他の人は別にどうでも良い。

 というか、はやてちゃんはもともと茶髪だし。

 

「じゃあ早速飛行魔法でも使ってみたら

 家の中だから勢いが付かないように、リインさんがその辺りの調整出来る?」

 

『大丈夫、それくらいの調整は容易だ

 主はやて、飛行魔法はこのようにお願いします』

 

「えっと、こうやな

 『スレイプニール、羽ばたいて』」

 

 はやてちゃんが短いながらも詠唱を行うと、その背中に黒い三対の羽が現れた。

 

「おお、羽が生えよった」

 

『実物ではなく魔法による物です

 これで我が主の意思で自由に飛べます』

 

「そなんか?

 ん…おー、ホントに浮んだわ」

 

 車椅子から浮かび上がってふわふわと空中を遊泳している。

 部屋の中を楽しそうに飛んでいるのと、狭い部屋だからかだんだん危なっかしくなってきた。

 

「主はやて、少々落ち着いてください

 あまり速く動かれると怪我をしてしまいますよ」

 

「ええやないの別に」

 

「魔法を初めて使ったばかりで無茶しないでください

 いくらリインが制御してくれていると言っても我等が心配します」

 

「しゃあないなー

 足は動かんでも自由に動き回れるのが楽しうてな

 やけどもうちょっとこのままでええか、リイン」

 

『はい、大丈夫です

 融合状態も安定していますので』

 

 まあはやてちゃんにとっては車椅子の生活が当たり前だったから、自由に飛べるならその便利さが良く感じられるんだろう。

 俺のときとは違った感動のしかただな。

 

 

 

「浮んでたら忘れとった

 拓海君の式神を使ってみたかったんや」

 

「そういやそうだった

 魔力の出し方はわかった?」

 

「なんとなくやけどな

 出したい物はイメージするだけでええんやったね」

 

 式神符を一枚はやてちゃんに渡すと、両手で持ちながら眼を瞑ってしっかりとイメージをしている。

 札に魔力が篭って書かれた術式が魔力光で輝くと音を鳴らして式神が現れた。

 

「おお、成功やな」

 

「何を出すかと思ったらはやてちゃん自身か」

 

 現れたのはまるで同じ姿のはやてちゃん自身。

 ただし式神の方はちゃんと両足で立っている。

 

「私自身が立てへんのに作りモンの私の方が立てるってのはなんか納得いかんなー」

 

「自分で作っておいてそう言うか?」

 

「そうなんやけど実際見てみると複雑や

 立てるようになった自分と思えば感慨深くも感じられそうやけどな

 ところでこの私って何が出来るんやろう?」

 

「≪何でも出来るでー≫」

 

「うお、喋りよった!!」

 

 はやてちゃんが質問に答えた式神はやてが喋った事で驚く。

 様子を見ていた皆も、さすがに喋った事には驚いていた。

 

「質がだいぶ上がったから作り出した式神のイメージ対象次第で喋る事も出来るよ

 まあ命令しなければ基本何もしないけど、一度命令すればある程度自動で判断してやってくれる。」

 

「そうなんか

 じゃあもう一人の私、お昼ご飯食べた後のお皿洗いと夕飯のしたくやれる?」

 

「≪お安い御用や≫」

 

 命令を受け取った式神はやてが台所に行って、独りでに食器洗いを始める。

 知識は作った術者基準で物事を判断するから、術者に出来ない事は出来ないけど手が足りない時はとても役立つ。

 

「おー、ほんまにちゃんと洗ってくれとる」

 

「はやてちゃんが自分をイメージして作った式神だから、能力や判断もはやてちゃん基準で行動出来るよ」

 

「便利なモンやな

 もう一人の自分がいてくれるなんて、まるで分身の術や」

 

「そうだな……ん?」

 

 分身の術と言われてふと思った。

 俺ってこれまでいろんな式神を出した事があったけど、自分自身の姿をした式神は美由希との手合わせで変わり身の術でしか出した事なかった。

 大して強度がないし自分自身を相手に手合わせとか、防御の練習に攻撃させても大した威力を持ってなかったからだ。

 使えないと思ってたけど最近は性能が上がってそこそこ使えるようになった。

 もしかしたら…

 

「はやてちゃん、ちょっと庭借りるよ」

 

「え、どうしたん?」

 

 ちゃんとした返事も聞かずに窓から庭に出ると、持ってた式神符に気で自分自身の式神を作った。

 一体作ってはちょっと考え込んで、再び自分自身の式神を気を札に込めて作る。

 二回だけでなく何度も式神が気に力を消費して作られるのを感覚で感じ取る。

 その様子をはやてちゃん達も窓の前から見ていた。

 

「一体どうしたの言うのだ?

 突然庭に出たと思えば、自分と同じ式神ばかり作り出して」

 

「はやてちゃんの言葉がちょっとヒントになってね

 気ってのは術式とかにはあまり向いてなくて、感覚で技を作ったり操作したりするのが向いてるみたいなんだ

 だから俺は気を使った技を感覚でいろいろ編み出してるんだけど、前々から使ってみたい技があった

 ただどうしたらいいかわかんなかったんだけど、式神を気で作ることでなんとなくわかった

 これなら…」

 

 シグナムさんの問いに答えると、今度は気は式神符に込めるのではなく両手を合わせて、そこに気を溜めていく。

 そして何度も気で自分自身の式神を作り出した感覚を込めながら両手の気を前に放つ。

 

 

-ボンッ!!-

 

 

 すると放たれた気が式神が現れる時に出る音と同じ音を出して煙を生み出す。

 直ぐに煙が晴れるとそこには俺自身の分身が出来ていた。

 

「おし、分身の術成功!!」

 

「え、式神とちゃうの?」

 

「札は使ってなかっただろ?

 まあ同じ理論で作ったから大した違いはないんだろうけど

 これは札を使わずに気だけで形作ったから分身でいいと思う」

 

 

 

 その後何度も分身を作ってみたり動かしてみたら、式神で作るより強度があることがわかった。

 式神は札を基点にしてるけど分身はそういうのがないから、込めた気の量次第で持続時間も強さも自在に変わる。

 代わりに視覚共有とかは出来なくなっていて、偵察とかには使えなさそうだ。

 

 それに札を使わずに他の姿の分身を作れないかと思ったけど、なんだか良く判らない物が出来たので無理だとわかった。

 自分自身の生み出した気を使ってるから、自分の姿にしか出来ないらしい。

 式神なら自由な姿を作れるから、変化の術にならないかとも思ったけど、そこまでうまくはいかなかった。

 だけど久しぶりの真新しい技の開発が出来た。

 次は何をやってみるかなー。

 

 

 

 

 

●ベルカ語習得中

●分身の術習得


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