【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第三十八話 八神家の日々5

 

 

 

 

 

 本日もシャマルさんのベルカ語勉強会。

 はやてちゃんの魔法の実践はリインさんが担当してるけど、言語のほうは俺と一緒に学んでいる。

 そうしていると今日はなのはちゃんも八神家にやってきた。

 

「いらっしゃい、なのはちゃん」

 

「お邪魔します、はやてちゃん

 たっくんも来てたんだ」

 

「まあね

 これは時々シャマルさんに魔法の勉強をしてもらってるから」

 

「え、魔法のお勉強♪」

 

 なのはちゃんがなにやら魔法の勉強と聞いて反応する。

 

「私もレイジングハートに見てもらいながら一人で勉強してたの

 よかったらご一緒してもいいかな?」

 

「かまわへんよ、ねえたっくん」

 

「まあ今日ははやてちゃんと一緒の座学だし、一人くらい増えても問題ないよ。」

 

 あれ、でもやってるのはベルカ語だよな。

 なのはちゃんはミッド式だからミッド語になるんじゃないか?

 

「ほんならこれが勉強内容や

 私も大体覚えたから使ってええよ」

 

「ありがとう、はやてちゃん

 ……え?」

 

 はやてちゃんに手渡された紙を見て固まるなのはちゃん。

 じっくり紙を見直した後にはやてちゃんの方を向く。

 

「…………は、はやてちゃん、これ何?」

 

「ベルカ語の文字表や」

 

「べ、ベルカ語?

 私、ベルカ式じゃなくてミッド式の魔法使うんだけど…」

 

「あ、そやったな」

 

「それならこっちの方をを使うか?」

 

 今度は俺がなのはちゃんに紙を渡す。

 言語を学ぶのはベルカ語の後だが、ミッド語の文字表をアリアから貰っていた。

 

「……英語?」

 

「ミッド語、似てるけどちょっと違う

 魔法の術式を学ぶなら読めるようにしておかないと思ってね

 はやてちゃんはベルカ語を学んでるけど、俺は両方覚えるつもりで学んでる」

 

「ベルカ語……ミッド語……」

 

 両方の文字表を交互に見比べ続けるなのはちゃん。

 首を左右に振って見比べるのが速くなっていき、遂にはふらついて…

 

「はぅ~…」

 

「ああ!! なのはちゃんの目がグルングルンに!?」

 

「なのはちゃん、文系ダメなのか」

 

 小学三年生にして既にAAAランクの魔導師である高町なのは。

 その資質は砲撃に特化しており、感覚でSランク魔法を構築してしまうほどの天才型。

 その為理系に向いており、文系はちょっと苦手。

 

 なのはちゃんにとって魔法と出会ってからの最大の天敵がここに現れた。

 その後、当分自分の出したミッド式魔法陣を見ると文系を意識してしまい、魔法の集中を乱してしまうなのはちゃんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気ままに散歩している日のことだった。

 ふと入ったコンビニでシャマルさんとヴィータがいた。

 

「シャマルさん、こんにちわ」

 

「あら拓海君、こんにちわ

 拓海君もお買い物?」

 

「いえ、ちょっと立ち寄っただけです

 ヴィータは…」

 

 ヴィータはコンビニのアイスコーナーの前でじっとアイスを眺めていた。

 

「ヴィータちゃんがはやてちゃんにお小遣いを貰ってアイスを買いに来たの

 私はその付き添いよ」

 

「なるほど、そういえばヴィータはアイス好きだったな

 何買うか迷ってるってところか?」

 

「ええ、はやてちゃんに貰ったお小遣いでどれが一番多く食べられるか悩んでるみたい

 もう10分以上もここに噛り付いたままなのよ」

 

「なるほど…」

 

 それはまた付き合わされる方も困ったもんだ。

 まあ俺もアイスを買う時は悩むことはある。

 種類が多いし、美味しい物は高いけど量が少なかったりするからなー

 

 ふと、そこで前々から気になってたことを試してみたくなった。

 俺はそれを試してみるべくヴィータに尋ねる。

 

「ヴィータ、ちょっといいか?」

 

「ん、何だ拓海か

 今アイス選んでんだ

 邪魔するなよ」

 

「ちょっと試してみたい事があってね

 ヴィータ達の使う結界って魔導師だけ取り込んで、他の生き物は取り込まないだろ

 それで建物とかの物は壊しても結界の外には影響を出さない

 そうだよな?」

 

「そうだけど、それがどうしたんだよ」

 

「じゃあ、結界内の食べ物とかって食べられるのか?」

 

「!! じゃあ結界内のアイスは食べ放題!?

 お前、天才か!!

 よっしゃ、直ぐ結界を!!」

 

「落ち着けヴィータ!!

 ここでやるのは不味い!!」

 

「そうよヴィータちゃん!!

 人がいるんだから!!」

 

 興奮して我慢出来なくなったヴィータがすぐに結界を張ろうとして、慌てて取り押さえる俺とシャマルさん。

 果たして店員や他の客の眼にはどのように映ったのだろうか。

 

 

 

 一度店を出て人気のないところで結界を展開。

 店を結界内に取り込んで準備完了。

 準備が出来たところでヴィータが店の方に突撃して行ってしまい、自動ドアのガラスを割って店内に侵入。

 

 結界内は電気が通ってないから中に入るなら壊さなきゃいけないけど、まるでコンビニ強盗だな…

 とっととヴィータはアイスコーナーでアイスの袋を手にとって食べに掛かる。

 

「いただきます!!

 …………」

 

「どうだ、ヴィータ

 食べられたか?」

 

「……食感はあるけど味がしねえし、冷たくねえ」

 

「やっぱり結界内の物だから擬似的な物で食べられないのよ

 結界を消したら消える物だからお腹も膨れないし」

 

「うぅ~~、畜生!!」

 

 ヴィータは心底悔しそうに結界内の食べかけのアイスを投げ捨てた。

 その後は結界を解いた後に結界内で口にしたアイスを買って帰った。

 味が解らないままじゃ気になるとのことらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて八神家に来ていた。

 といっても何時も魔法の勉強とは限らず、今日は遊ぶ事になった。

 今回はヴィータの発言から始まった。

 

「なあなあ、拓海

 トトロって出せないか?」

 

「トトロ?」

 

 トトロってジブリアニメのトトロだよな。

 何でまた突然?

 

「ほら、前にたっくんがモロを出してくれたやろ

 それでみんなでジブリアニメを見てみたんよ

 そしたらヴィータが気に入ってもうてな」

 

「ああ、確かにトトロは子供に人気がありそうだ」

 

「い、いいじゃねえか別に!!

 大体はやてもたくみも子供だろ!!」

 

 まあそりゃそうなんだけど、強がるヴィータがなんだか微笑ましくって。

 はやてちゃん達もなんだかヴィータを見る眼が優しいし。

 

「まあ、出せると思うよ

 イメージもし易いし

 庭のほうでいいね」

 

「おう、頼むぜ」

 

「私もちょっと楽しみやわ」

 

 庭のほうに移動すると霊力で描いた式神の術式を発動する。

 最近式神を出すときはいつもこっちのほうを使ってる。

 紙に書いたやつは質の限界があるから長持ちしない。

 だけど、紙に書いたやつじゃないと俺以外の人が使えないんだよな。

 まあ大抵ヴィータが遊んでるか美由希が時々何かに使ってるくらいだけど。

 

 

-ボフンッ-

 

 

 いつもの様に術式が発動すると煙を出して、その中から3mくらいの丸っこい毛むくじゃらの物が現れた。

 ポテンとした感じで愛嬌の顔をしたトトロである。

 

「おおぉぉぉ!!」

 

「ホンマにイメージ通りのトトロや

 さすがたっくんやな」

 

「こういう空想の生物もだいぶイメージするのに慣れたよ

 操作もこんな感じに簡単に出来るようになったしね」

 

「およ?」

 

 俺は作り出した式神トトロに指示を出す。

 すると式神トトロは長いツメではやてちゃんを優しく掴むと、そのまま背中から寝転がってお腹の上に乗せた。

 

「おー、フカフカや

 こんならメイも眠ってまうわな」

 

「はやて、アタシも!!」

 

「ほら、おいで」

 

 ヴィータが寝転がったトトロの毛に捕まってはやてちゃんの所までよじ登って行く。

 後ははやてちゃんと一緒にトトロのお腹の上でまったりしている。

 

「ホンマにたっくんの式神はすごいなあ

 私も使えたらええのに」

 

「式神の術式は基本霊力で編まないと作れないみたいだから、魔導師の魔力で編めるかどうかわかんない

 まあ、似たような魔法も探したらあるんじゃないかな?」

 

 変身魔法の応用で対象を変身させるとかそういうのがあっても不思議じゃない。

 そういえばジュエルシードの効果も魔法で再現可能なんじゃないかな?

 STSのフリートリヒの巨大化も似たようなもんだろう。

 場所さえあれば巨大化ってのも興味あるな。

 

 そんな時八神家のチャイムが鳴り、玄関のほうにシャマルさんが窺いに行った。

 直ぐに戻ってくると、後ろにはなのはちゃんと美由希が来ていた。

 一緒に来るってのは初めてだな。

 

「なのはちゃん、美由希さんいらっしゃーい」

 

「お邪魔するよ、はやてちゃん

 あれ、これって…」

 

「はやてちゃん、こ、これって!?

 あ!! お姉ちゃん、これはその!!」

 

 はやてちゃんがトトロの上から出迎えると、美由希がそこにいるものが何か気づき、なのはちゃんはそれを見て焦った様子で美由希を気にする。

 あれ、そういえばなのはちゃんて美由希が俺の式神を知ってることを知ってたっけ?

 

 というか前回美由希はシグナムさんがガチンコして、結果的に八神家の魔法の存在を知ることになってるし。

 どれくらい美由希となのはちゃんのお互いの認識内容を確認してるんだ?

 少なくとも式神のことはなのはちゃんの様子から魔法と一緒と考えてるみたいだし。

 

「これってトトロ?

 またたっくんが出したの?」

 

「え、お姉ちゃん?」

 

「まあな、出して欲しいってヴィータにせがまれて」

 

「え? え? え?」

 

「たっくんははやてちゃん達に甘いんだから

 私にも優しくしてほしいなー」

 

「どういうこと、なの?」

 

 なのはちゃんは美由希が式神のトトロを見て平然としてる事に混乱している。

 美由希となのはちゃんが俺の式神を知ってはいるが、それについては話し合ってはいないらしい。

 まあなのはちゃんに俺が平然と見せてるから、美由希はなのはちゃんも知ってると思ってたみたいだけど。

 

「俺は十分やさしいと思うぞ

 それでなのはちゃん、どうした?

 そんなにオロオロして」

 

「どうしたの、なのは」

 

「だって、あのトトロ…

 お姉ちゃん、魔法、知ってる?」

 

「ん? たっくんの式神でしょ

 結構前から知ってるけど…

 あれ、だけど式神と違って魔法の事は秘密って、この前言ってなかったっけ?

 何でなのはも知ってるの?」

 

「へ、あ…あの、それはそのー!?」

 

 なのはちゃんと美由希のお互いの認識がはっきりしなくてややこしい事になってる。

 ちょっとそこでお互いの認識を確認し合いなさい。

 

 

 

 なのはちゃんが少々パニックになりながらも美由希とお話。

 なのはちゃんは魔法=式神と思ってたけど、式神の技術は認識の薄いこの世界の技術とは知らず魔法と同じだと思っていた。

 美由希は魔法≠式神の認識で、式神の技術は退魔師などの使う物だから見せびらかす物じゃないけど知ってても問題なくて、魔法は他所の世界の技術で秘密にしなきゃダメだとはこの前教えたばかりだったのでちゃんと覚えていた。

 

 美由希がどういう経緯ではやてちゃん達の魔法を知ったのか話すと、今度はなのはちゃんがどういう経緯ではやてちゃん達の魔法を知ったのか尋ねられて、なのはちゃんが観念してレイジングハートとジュエルシード事件のことを話す羽目になる。

 結論から言うと自分も魔法少女になりましたということだ。

 

「なのはも魔法をねー

 この前出かけてたのはそういうことだったんだ」

 

「隠しててごめんなさい」

 

「秘密にしないといけないことだったんならしょうがないよ

 お父さん達にはどうする?」

 

「今は話せないけど、いつか話そうと思ってるの」

 

「じゃあそれまで私もお父さん達には秘密にしておくね」

 

「ありがとう、お姉ちゃん」

 

「いいのいいの

 だけどユーノもお喋り出来たんだ

 お話したかったなー」

 

 いまだにユーノに未練があるか、美由希。

 まあどうでもいいが、なのはちゃん。

 今の話にユーノが人間である事を告げてないぞ。

 あえてそれは言わないんだけどな!!

 

「じゃあ、これでお話は終わりなの

 はやてちゃんヴィータちゃん、私もトトロに乗ってみたいの」

 

「かまわへんけど、もう一人乗るにはちょっと狭いわ

 たっくん、トトロもう一匹出せへんか?」

 

「出せないことはないけど、トトロが二匹ってのも違和感あるな

 ならこっちを出してみるか」

 

 式神の術式を描くと先ほどよりも小さめな煙が起こる。

 現れたのは1mにも満たない中トトロ。

 

「乗れないけど、こいつで遊んだらいい」

 

「わぁ~、可愛い」

 

 なのはちゃんが抱っこしようとすると、手の触れるところでピューと中トトロは走り出して逃れた。

 距離を置いてから振り返ると、そこで立ち止まってなのはちゃんのほうを見る。

 逃げ出した中トトロにポケッとした様子のなのはちゃんは、駆け寄って触れようとしたところをまた逃げられる

 中トトロもまた距離をとってからなのはちゃんの様子を伺う。

 

 どういうことなのかとこちらを見たなのはちゃんに、俺はにっこりと笑いながら頷いてやる。

 その応答に一瞬なのはちゃんはなんだか分からない様子だったが、直ぐに察しが着いて中トトロを嬉しそうに追いかけ始める。

 

「待って~♪」

 

 なのはちゃんが追っかけ始めると中トトロは逃げて追いかけっこが始まる。

 中トトロって初登場時はメイから逃げ回ってただろ。

 そんなイメージで追いかけたら逃げるという感じで出してみた。

 

「おもしろそう!!

 はやて、あたしも行ってくる!!」

 

「いってらっしゃい、頑張りやー」

 

 追い掛けてたなのはちゃんにヴィータが加わり、一緒の楽しそうに遊びだす。

 回り込んで挟み撃ちにするなんて無粋な真似をせずに、ただ自分の足で後ろから追いかけている。

 魔法を使えば簡単に捕まえられるけど、追いかけるのが面白いからこそそういうことはしない。

 

 二人ともそれが分かっていたから自分の足だけで追いかけてた。

 運動神経がそれほど良くないなのはちゃんは時々転んだりしたが、ヴィータが手を貸して起き上がると直ぐにまた追いかけ始める。

 中トトロも二人から捕まりそうで捕まらない距離をずっと維持している。

 俺からも指示を出してるけど、だいたいが式神の自己判断だ。

 直接霊力で術式を組んだ式神の性能がかなり上がっている証拠だ。

 御蔭で小さい体の中トトロは小さな足でもかなりの速さで二人から十分逃げ回れている。

 

 だけどそれも一般人レベルの運動能力を超える程度。

 空気の読めなかった美由希が素早い動きで、サッと中トトロを捕まえてしまった。

 あの素早い動きは気も使ってたな。

 なのはちゃんのために捕まえたんだろうけど、今は逆にヴィータと一緒に怒られてる。

 

「お姉ちゃん、何で捕まえちゃうの!!」

 

「えっと、なのはが抱っこしたかったんじゃないかと思って…」

 

「追いかけるのが楽しいんじゃねえか

 トトロ見たことあんのか、美由希!!」

 

「ごめーん!!」

 

 二人に責められてた美由希だが、それが終わると中トトロをとり合えず抱っこしあったり、ヴィータが大トトロから降りて空いたところになのはちゃんが登って遊んだりしていた。

 どうせなら小トトロも出して一緒に駆け回らせることになり、今日はトトロの日としてなって遊びつくした。

 

 最後にヴィータがどうせなら猫バス出せないかと聞かれたけど、流石にサイズがでか過ぎて今の俺には出せそうになかった。

 まあいつか出せるようになりたいと思っている。

 ああいう移動手段があったらちょっと素敵だ。

 街中じゃとても使えない乗り物だけどな。

 

 

 

 

 

 


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