【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第三十九話 管理局へ

 

 

 

 

 

 グレアムさんからアリアを通して連絡が来た。

 闇の書及び夜天の書の資料が集まり、管理局への報告や聖王教会からの協力を得る事が出来たそうだ。

 管理局への主な報告内容は次の通り。

 

 

 

 グレアムさんが独自の調査で闇の書を発見し、下手に手を出して封印しても十一年前の二の舞になると判断して極秘として監視に留めていた。

 その間に何とか闇の書を攻略する方法は無いかと様々な案を考えるが、闇の書の暴走する力は計り知れず確証の低い方法を練り出すのが限界であった。

 

 そして遂に守護騎士達も覚醒して暴走の予兆と成ろうとした時に、偶然破壊に特化したレアスキルの保有者を闇の書の主の近辺で発見した。

 物理的な力でも魔力的な破壊でもなく対象の強度に関わらず破壊する事が出来る為、闇の書の破壊に有効ではないかと判断。

 また、今回の闇の書の主は闇の書の特性である魔力の蒐集を望まない人間であり、レアスキル保有者とも顔見知りであった為、最悪の場合における闇の書の破壊を依頼する事に成功。

 

 事前検証でレアスキル保有者に闇の書を破壊出来るか見てもらった際に、偶発的に闇の書の暴走原因であるバグのみを破壊してしまうという想定外の事態が発生。

 直後、闇の書のバグが原因である主の足の麻痺が回復。

 更に闇の書の管制人格が起動して暴走の恐れがなくなったと宣言。

 闇の書は夜天の書に戻り危険は無いと判断し、管理局及び聖王教会へ報告を行った。

 

 

 

 以上がグレアムさんが管理局と聖王教会に送った報告らしい。

 闇の書を極秘に対処した事とかは叩かれそうだが、それ以上に長年大きな被害を出してきた闇の書を止めたという事で功績として扱われるらしい。

 また、負の念とかも次元世界では説明が難しくロストロギア、また霊力はレアスキル扱いされそうなので、前に俺が言っておいた通りバグとして処理してくれたらしい。

 

 しかしグレアムさんが偶然見つけて、偶然闇の書の主が蒐集を行わない人間で、偶然闇の書を破壊出来そうなレアスキル保有者が近くにいて、偶然闇の書のバグだけを破壊する事が出来て夜天の書に戻った。

 俺から見ても都合が良過ぎると思うけど、実際ホントに偶然ばかりなんだよな。

 原作の方と比べてどっちのほうが偶然が多いんだろう…

 

 聖王教会の方には報告の他に無限書庫でユーノが集めてくれた闇の書と夜天の書の古代ベルカの遺産である証明と一緒に、はやてちゃんの夜天の書の所有権と支援協力を要請したらしい。

 その内容には守護騎士達の事も当然書かれていて、それを見た聖王教会は喜んで協力してくれるとのことだ。

 古代ベルカから夜天の書と共に生きてきたのなら、守護騎士達は歴史の生き証人のようなものだ。

 本人達はどれほど記憶しているかは知らないけど、古代ベルカ式の使い手というだけでも十分価値を示せる人物だろう。

 

 

 

 そういうわけで俺は八神家一同と共に、アリアに連れられて管理局のほうへ行く事になった。

 今日は流石に仕事という事で人型を保ってるが、こちらを時々見て少しうずうずしている。

 

 俺が行く理由は闇の書のバグを破壊したレアスキルの証明の為。

 管理局にどういう反応をされるかわからないけど、触れられなきゃ効果がないと認識してくれればそれほど問題にならないだろう。

 直死の魔眼はどうやら概念的なものも破壊出来るみたいだから、認識さえすれば際限なく様々な物を破壊出来る。

 使いこなせばたぶん想像以上の事も出来るような気がする。

 そこまで出来るようになって知られたら大変そうなので、やっぱり直死の魔眼はあまり使わないようにしよう。

 レアスキルとしての証明も下手な事しなければ大事になったりしないだろう。

 ……大丈夫だよね。

 

 そしてはやてちゃん達こそが管理局への用事の本命だ。

 俺とは別行動に成りそうだからそんなに聞いてないけど、まずは夜天の書の安全証明に時間を食うことに成りそうなんだとか。

 その後は夜天の書の調査と、はやてちゃん達の魔力検査諸々。

 それが管理局で終わったら、次は聖王教会に行っての調査や質問、さらには騎士としての表彰授与まであるんだとか。

 だから当然日帰りになりそうではなく、はやてちゃん達は泊まりの荷物を持ってきている。

 俺は日帰りで済みそうだけど、まあ頑張れ。

 

 で、いきなり管理局に転移で行くというわけではなく、とある場所で少々待つことになってる。

 とある場所とは、以前なのはちゃんとフェイトが戦っていた臨海公園で、たぶんお別れをしたであろう場所。

 ここってなんか特別な場所なんだろうか?

 

 そんな事を考えながら待っているとミッド式魔法陣が現れて、誰かが転移してきた。

 黒っぽい服に黒い髪の黒い杖、でもって肩のトゲが特徴的な見覚えのある人物。

 

「管理局執務官クロノ・ハラオウンだ

 グレアム提督から君達を迎えを頼まれた

 八神はやてと夜天の書の守護騎士達、そして山本拓海で間違いないな」

 

「は、はい!!

 よろしくお願いしますぅ!!」

 

 クロノの硬い喋り方にはやてちゃんが少し緊張気味で応える。

 そこへアリアが前に出て、クロノの頭に手を乗せて撫でる。

 

「クロノ、ちょっと硬すぎよ

 守護騎士達はともかく二人は普通の子なんだから、もうすこし大らかに話しなよ」

 

「アリア、今は仕事中だからやめてくれ

 まあ、善処しよう

 君もそんなに形式に拘らなくていいから」

 

「あ、うん、わかったわ

 よろしくな、クロノくん」

 

「ああ、よろしく

 ……この世界の子は皆こんな感じなのか?(ボソッ)」

 

 形式に拘らなくていいと言われたはやてちゃんは、緊張を解いて普通に笑って挨拶した。

 クロノは普通に受け答えしたが、後の方はこっちに聞こえないようにボソッと何かを言った。

 

「クロノも年頃なのね

 女の子に挨拶されたくらいで照れちゃって」

 

「て、照れてない!!」

 

 アリアが言うにはどうやら照れてるらしいが、反応からして間違いではなさそうだ。

 御蔭で完全に緊張が溶けたのか、はやてちゃんは面白そうにニコニコ笑っている。

 逆に守護騎士達からは少しだけ警戒心を感じさせた。

 

「んっん…失礼した

 早速君達を本局へ案内したいが少し待ってくれ

 別件でもう一人連れて行きたい者がいる

 直ぐ来るはずなんだが…」

 

 別件でもう一人。

 この町でクロノが連れて行きたい者というと一人しかいないだろう。

 そうしていると駆け足でこちらに走ってくるなのはちゃんが見えた。

 

「はぁ、はぁ…クロノくん、久しぶり…

 フェイトちゃんに…会えるってホント?

 あ、あれ…はやてちゃん達もいる…」

 

「なのはちゃん、落ち着きぃ

 ほら、深呼吸して」

 

「すー、はー、すー、はー…」

 

 よっぽど急いできたのか随分息切れしている。

 フェイトに会えるとの事だが、俺達のついでに一緒になのはちゃんも管理局に行くってことか。

 

「なんだ、知り合いだったのか?」

 

「ついこの間、魔法使ってたらなのはちゃんが釣れたんだ

 まだ何度か会ったくらいだけどはやてちゃんと仲良くなってる」

 

「なるほど

 随分近所のようだから気づいてもおかしくはないか」

 

 俺は知ってたんだけど、迂闊だったよな。

 まあ、近くに住んでればいずれ会っただろうし。

 

「なのは、息が整ったら直ぐに行きたいんだがいいか?」

 

「う、うん、大丈夫…

 けど、はやてちゃん達は何の用事なの?」

 

「本来こっちに来たのは彼女達の迎えだ

 事件に関わる事だから僕からは何も言えない

 用が済んでから彼女達に聞いてくれ

 フェイトに会わないかとなのはに声をかけたのはそのついでだ」

 

「そっか、クロノ君ありがと」

 

「……礼はいい、さっさと行くぞ」

 

 なのはちゃんにお礼を言われた後にさっと背を向けて杖を掲げるクロノ。

 

「クロノったら、また照れてるね」 

 

「照れてない!!」

 

『(照れてるな)』(全員)

 

 どうやら初心という奴らしい。

 年頃の男とはこういうものなんだろうか。

 一回人生やり直してるからか、あの年頃の感性はいまいち思い出せない。

 

 あれ、そういえばクロノって背は低いけど15歳じゃなかったか?

 15歳なら高校生くらいで、なのはちゃん位の年の子を子供扱いしても可笑しくない年頃。

 どうやら身長だけでなく精神年齢も思ったより低いのかもしれない。

 

「ん、なんだ?」

 

「いや、なんでも」

 

 俺がクロノを見ていたことに気づいて振り返る。

 やはり自分の気にしてることを考えられると察知しやすいらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転送はまずアースラを経由してから本局へ行くことになった。

 アースラでなのはちゃんはクロノがエイミィと呼んだ人に連れられていった。

 フェイトはどうやらアースラで預かっているらしい。

 はやてちゃんも前になのはちゃんから話を聞いていたのでフェイトに会いたがったが、自身の用事があるのと一応裁判前の容疑者なので無関係な人との接触は断っておきたいとクロノが言った。

 確かに正論だなと納得しつつ、俺たちはクロノに連れられて再び転送魔法で本局に飛んだ。

 

 本局に着いてからははやてちゃんとは直ぐに別行動になった。

 はやてちゃんは夜天の書の主として色々あるのでクロノがグレアムさんのところまで案内する事になり、俺はアリアに連れられて直死の魔眼=レアスキルの調査を受けることになった。

 

 

 

 事前に準備がされてたらしく、ちょっと大きな部屋で直ぐに実験を行うこととなった。

 まず最初に行ったのは硬い装甲を破壊するというもの。

 目の前にある分厚い鉄板は次元船の装甲でもあるらしくかなり丈夫らしい。

 

 これをレアスキルで破壊してみろとの事だが容易だった。

 直死の魔眼をONにすればどんな物質にも死線と死点が浮かび上がる。

 装甲の死点の適当な物を突けば、そこから死線に沿って裂け目が走ってバラバラに砕けた。

 調査に付き添ってた人たちも何の脈略も無く頑丈な装甲がバラバラになったので、唖然としててちょっと面白かった。

 

 

 

 調査は一回では終わらず、次は大出力の防御魔法障壁を用意された。

 最上位の魔導師が張れる防御魔法に匹敵するらしいが、アリアの防御魔法と見た目的には大きな違いを感じられなかったので死点を一突きで破壊した。

 続いて先ほどよりは弱くても複数の魔法障壁を重ねる事で強力な防御となる的を用意された。

 こればっかりは一枚一枚死点を突かないといけないかと思ったが、魔力の供給源は同じと考えたらその大元の死点が見えて、それを突く事で纏めて全ての障壁が消え去った。

 どうやら大本の魔力の供給源を殺したことで、供給元の機械自体が壊れたらしい。

 

 

 

 少し時間を置いて、別の魔力の動力を直ぐに用意したらしく調査を再開された。

 次に出されたのはなんでも次元船の魔法障壁として扱われるディストーションシールドだそうだ。

 次元船の装備に採用されるだけあってその防御力はかなり高いらしい。

 その名の通り空間を歪めて行う障壁らしく、俺の目の前の魔法障壁の向こうが歪んで見える。

 流石にこれは指で突くのは憚られたので、適当に用意してもらった棒で空間の歪みに見えた死点を突いてディストーションシールドを破壊した。

 これで物越しでもレアスキルを使えるって認識されたかな?

 

 

 

 最後に用意されたのはデバイスの杖

 管理局員の量産支給のストレージらしく、この中には態とバグを混ぜたデータが入っているらしい。

 これを闇の書に見立ててバグのみを破壊してみろとのことだ。

 闇の書の時は実際にはバグを破壊したのではなく篭っていた負の念を殺したから、実際にデータで判断して殺すというのは無理だ。

 

 データというのは目に見えないけど、概念で理解すれば殺すことは出来ると思う。

 だけどバグと正常なデータを見比べるのは碌に魔法を知らない今の俺には無理。

 データをしっかり理解して区別出来るようになれば出来るかもしれないけど、データのバグなんて実際動かしてみないと判らなかったり気づかないものが大抵だ。

 つまり、このデバイスのバグだけを破壊しろというのは俺には荷が重過ぎる。

 

 だけど闇の書はそういう形で正常化されたってことになってるから試さないといけないよな。

 まあ偶然成功したって事になってたし、やれるだけやってみよう。

 魔眼でデバイスを見てデータを殺すとイメージする。

 するとデバイスの内側に新たな死点が浮かび上がるのが判る。

 それがデータなのは判るけど、バグのみというのはやはりイメージ出来なくてそこから分けるのは無理だった。

 なのでデータの死点のみを突いて終わりとなった。

 

 そのデバイスを調べてもらうと、俺の予想通りデータのみが真っ白に消え去っていた。

 どうしてバグのみを破壊出来なかったのかと聞かれると、闇の書の時は殆ど偶然か幸運だったんだろうと答えた。

 俺が自覚してやれるのはデータのみの破壊までだと言っておいた。

 嘘じゃないし自分でも全力でやったからね。

 それを追求されても困る。

 

 

 

 レアスキルの調査の方は以上で終わったが、アリアの勧めで魔力量と魔導師登録を行わないかといわれた。

 デバイスを持ってないから暫定的な魔導師としての登録になるが、魔力量についてはちょっと気になるところだ。

 そこでOKを出したらちゃちゃっとした検査で直ぐ終わってしまい拍子抜けした。

 

 検査結果は魔力量AAの総合ランクB+らしい。

 デバイスも持ってない上術式も未確定だし、特に実績もある訳でないから細かい資質も不明なので魔力量はそこそこあっても総合=暫定Bランクと言ったところらしい。

 +がついたのはレアスキルを加味しての事だとか。

 まあ、自分の魔力量がどんなもんかわかっただけでもいいか。

 日頃の成果が出てたのかどうかはわかんないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず俺の検査は終わったので、グレアムさんの執務室で待たされることになった。

 連れてきてくれたアリアも用事が入ったようなのでいなくなってしまった。

 今後の訓練法やネタ技を考えながら待っていると、グレアムさんが戻ってきた。

 携帯の時計を見たら執務室で待ってて一時間が経っていた。

 考える事にだいぶ没頭していたらしい。

 

「すまないね拓海君、待たせてしまって」

 

「構いません、事件の後始末は全部グレアムさんに任せてしまいましたし

 色々大変だったんじゃないですか?」

 

「上との話には少々骨は折れたがたいした事は無い

 日頃の仕事よりも少々手間取ったくらいだよ」

 

 そうは言うがグレアムさんの顔を見る限り、以前会った時と比べて疲れがはっきりと見える。

 事件の後始末の情報整理やら根回しやらで相当苦労したらしい。

 

 この事件は少々強引だがグレアムさんが解決した事件となる。

 俺やはやてちゃんは自分の資質などで今の日常を壊すことを望んでいない。

 だから事件解決の噂が広まって俺達の日常に被害が出ないように、極力自分達だけで情報整理をして根回しやらをしてたらしい。

 

 この事件の事を知っていたのはグレアムさんとロッテとアリア、そして少数の協力者達らしい。

 それでも事件の全容を知っていたのは自分と使い魔の二人だけだったので、八神家に居たアリアを除けば二人で後始末をした事になる。

 どれほどの仕事量か知らないけど、通常勤務と一緒にやっていたらかなり大変だろう。

 

「…だいぶ疲れてるように見えますよ

 やっぱり大変だったと思うんですけど」

 

「ははは…そうかね…

 まあ、ホントにこれくらいの事はなんともないよ

 私は事件が終わるのを見守る事しか出来なかった

 これくらいのことはさせてくれ…」

 

「まあ、そう言うんでしたら…」

 

 少々疲れすぎてハイになってるようにも見える。

 直ぐに休んだほうがいいんじゃないかな…

 

「少し話をしようか

 君に言われた通り、なるべくはやて君の生活が保障されるように手配した

 はやて君は数日はこっちで色々忙しいことになるだろうが、終われば時々こちらに来る事になるだろうが元の生活を保障出来る

 君の持ってる次元世界に無い技能もあまり詮索されないようにしたよ

 まあ広い次元世界、我々の知らない魔法技術は日々見つかっている

 よほどの物でない限り気にすることではないがね」

 

 直死の魔眼は諦めてたけど、気や霊力とかは大丈夫だろうかと思ってグレアムさんに詮索されないように頼んでおいたけど、要らない要求だったみたいだ。

 有名なのはミッド式とベルカ式だけど、他にもさまざまな魔法体系が次元世界には存在しているらしい。

 

 その殆どはミッド式とベルカ式で補えるような物ばかりだから大して気にされないらしい。

 同じくレアスキルも管理世界内外に把握しきれないほどあるから、直死の魔眼と一緒に気や霊力も普通のレアスキルと思われてるらしい。

 複数のレアスキルを持つ人間も居ないわけじゃないらしいから。

 

「色々要望を聞いてくださってありがとうございます

 俺は魔法とかには興味はありますけど、騒動とかはちょっと遠慮したいんで

 少し前に俺の町で起こった魔法関係の事件、知ってますか?」

 

「ああ、はやて君の状況確認で直ぐに気が付いたよ

 だが極秘で行動してる私が動くわけにもいかなかったので、せめて少しでも早く局員を派遣する様に手を回すしかなかった

 それでもだいぶ時間が掛かって、町の人にも迷惑を掛けてしまったようだ

 知人の報告で次元世界の存在を知った特異能力を持つ市民に苦情を言われたらしい

 君達の住む町には他にもレアスキルを持った者達がいるのかね?」

 

「え!? ええ、まあ…

 俺はそんなに知らないんですけど…」

 

 苦情を言った市民って、式神アナァゴを通して言った俺だよな…

 単なるジョークのつもりの容姿だったけど、もしかして記録に残されてたりする………よな。

 流石に管理局の前に出るときはまともな姿にすればよかったと、ちょっと後悔した。

 

 だけど実際俺が知る限り、海鳴は特殊な人間が割と多いよな。

 もしかして前世の知識とか関係無しに特殊な人間がもっと居るんじゃないか?

 クラスメイトに二・三人位、特殊能力を持った人間が居たりとか。

 将来なのはちゃんのクラスはそうなるんだよな…

 

 あれ…フェイトって海鳴市に住むことになるのかな?

 闇の書事件が切欠で住む事になったから、事件が起こらないとどうなるんだろう。

 まあ、まだ裁判も始まってない頃だろうし、なのはちゃんとの交流が途切れるってこともないだろう。

 今日も楽しそうに会いに行ったみたいだし。

 

「そうかね

 だが結果的に我々は君に迷惑を掛けっぱなしだったね

 魔法に興味があると言っていたが、もしよかったらこれを貰ってくれないか」

 

「これは?」

 

 グレアムさんが差し出したのはカードサイズの金属板。

 真ん中に水晶っぽいのが付いてるからたぶんデバイスだと思うんだけど…

 

「君も知っていただろう

 『氷結の杖 デュランダル』だよ」

 

「ああ、これがぁ……って、これ貰ってもいいんですか!?」

 

「使用目的を無くしてしまった物だが、一応普通のデバイスとしても使えないことはない

 私が持っていても、もう役には立たない物だ

 処分と言ってもいいがよければ受け取ってくれないか

 望むのであれば他のデバイスを用意しても構わない

 私に出来る礼はそれくらいしかないのでな」

 

「えっと…じゃあ遠慮なく貰います」

 

 そうして待機状態のデュランダルを受け取る。

 これって原作ではクロノの手に渡ったんだよな。

 性能の方はどうか知らないけど、名高い闇の書を封印しようって言うんだからかなり高性能のはず。

 クロノの持ってたデバイス:S2Uよりも性能はいいんだろうな。

 

 史実を知る俺としては少しクロノに悪い事をした気がする。

 アナァゴの時も結構散々な事してるし、ある意味俺のせいでなのはちゃんにディバインバスターで吹っ飛ばされたし…

 なんかホントにごめん、クロノ。

 機会があれば何か埋め合わせするから。

 

「使い方はアリアにでも聞いてくれ

 当分ははやて君の家に居る事になりそうなのでな」

 

「わかりました」

 

 

 

 そこから先はグレアムさんの思い出話というか、自分の行いに対する謝罪のような物になった。

 俺自身も知識では知っている事ばかりだったが、グレアムさんの話を黙って聞いた。

 

 全ての始まりである11年前の闇の書事件に始まり、その時の後悔と無念。

 独自の調査での闇の書とはやてちゃんの発見に、闇の書の封印方法の立案による罪悪感と良心の葛藤。

 闇の書をはやてちゃんごと封印すると決意しながらも常に悩み続けてきたと、そんな思いが語られた

 

「だが、漸くそれも終わりを迎えた

 誰の犠牲も出すことなく最高の形で終わった

 何も出来なかったことが心残りではあるが、それでも長年の重荷を降ろす事が出来た

 それで十分満足している

 本当にありがとう」

 

 グレアムさんは改めて俺に深々と頭を下げて礼を言った。

 

 俺自身が予想外の結果で闇の書を終わらせちゃったから、こんなに感謝される事に少々戸惑っている。

 だけどグレアムさんから本当に感謝しているのだという思いが伝わってきて、謙遜の言葉も言い返すことが出来ない。

 ただグレアムさんが頭を上げるまで黙って待っていた。

 

「……はやて君のことが完全に落ち着いたら、私は管理局を引退しようと思っている」

 

「引退ですか?」

 

 そういえば原作でもグレアムさんは辞職と言う形で管理局を辞めている。

 計画がクロノに露見した事で、辞職と言う形で罪を償うという結果だった。

 グレアムさんにとって闇の書事件自体が最後の仕事と考えていたからか、結局管理局を辞めるということだろうか?

 あるいは世界の修正力でも働いたか?

 

「ああ、君達のおかげで私は罪を犯さずに済んだが、未遂でも罪は罪

 法を守る立場である管理局員としては許されない事だ

 ならば出来うる限りの償いをしてから、管理局員としての立場から身を引くつもりだ

 それが私なりのケジメのつけ方だと思っている」

 

「そうですか…」

 

「無論、それは私がやるべき事を終えてからだ

 名前だけだったとはいえ、はやて君の後見人を私はやっている

 彼女が独立するまでは援助をするつもりだよ」

 

 確かにはやてちゃんにはそういう人が必要だ。

 一応守護騎士達が一緒に居るとはいえ、地球では明確な立場を持った人間ではない。

 まあ、今回の一件ではやてちゃん達はこっちの世界に立場を持つことにはなる。

 だけど当分は地球で暮らすなら後見人は必要だ。

 

「もし君が管理局に将来就職するなら、私が良い職場につけるように口添えをしても構わない

 これでも局内では重職についているのでね」

 

「管理局に就職ですか?」

 

 以前は管理局の魔導師は大抵戦闘職というイメージが大きかったから就職する気はなかった。

 だけど最近はそればっかりとは限らないと思っている。

 もしかしたら気にいるような仕事もあるかもしれない。

 将来地球で就職するか次元世界に移り住むかは今は決めてないけど、自分の力を有効に使えるような職に就きたいと思っている。

 選択肢としては管理局も入れているつもりだ。

 

「…管理局に就職している魔導師って戦闘ばかりな気がするんですが…

 俺はそういう危険の多そうな仕事には就く気はないんです

 魔導師だとしたらそれ以外の役職には就きにくいですか?」

 

「ああ、確かに魔導師であれば前線に就く事が多い

 だが戦闘を得意とする魔導師ばかりではないから、それ以外の仕事もちゃんとある

 私もすぐ辞めるわけではないから、今度で良ければ紹介しよう」

 

「いや、地球じゃこっちと違って俺の年代は学生ですから

 就職するとしてもまだ先のつもりですよ」

 

「む、そうだったな」

 

 管理局じゃなのはちゃんの年頃でも実力さえあれば普通に働けるからな。

 そう遠くない内になのはちゃんも原作通りに局の仕事を始めるんだろうか…

 文化の違いがあるから、俺はこの年頃の子供が就職するというのは納得がいかないけど、ミッドチルダでは別になんて事ない事情なんだろうな。

 

 幼い内から就職というのは日本の価値観からすれば悪い事にしか感じないけど、向こうからすれば色々と利点がたくさんあるんだろう。

 納得は出来ないがそういう文化なんだと理解出来ない事はない。

 

 まあ俺は地球の価値観から漏れず、学生の内に働くよりは色々学びたいと思ってる。

 というか、次元世界の魔法や不思議について学びたい。

 異世界旅行とかして、地球じゃ見れない物も見てみたいな。

 

 

 

「私の話はこんなところだ

 長々と話をして済まなかったね

 何か聞きたい事が無いなら元の世界に送ろう」

 

「聞きたい事…………」

 

「何かあるかね?」

 

 そういえば話すべきかと思ったことがあった。

 ちょっと管理局の内部とかにも興味がいってて、グレアムさんと話をする頃にはすっかり忘れてた。

 

 だけど話してもいいんだろうか。

 グレアムさんはこの一件が終わったら局をやめるって言ってるし、そういうことなら知らないほうがいいのかもしれない。

 闇の書事件みたいに直死の魔眼だけでどうにか出来るような事でもないしな~。

 

 ………やっぱり話しておくか。

 迷惑掛けるかもしれないけど、管理局に所属しないなら上位の人間と話せる最後のチャンスかもしれないし。

 

「少し話し辛いですけど、聞いてもらえませんか?」

 

「何か重要そうな事だが、私に出来ることなら何でもしよう」

 

「いえ、頼み事ではなくて、話しておきたい事が…

 ところで、この部屋って会話が聞かれたり記録に残ったりしますか?」

 

「いや、個人の執務室だから重要な話もすることがある

 通信などを拒否していれば誰にも聞かれることはない

 ……何か事情のある内容かね?」

 

「ええまあ、出来るなら誰にも聞かれたくはありません」

 

「……ちょっと待ってくれ」

 

 グレアムさんが宙にモニターを出して、それを少し弄るとすぐ消した。

 

「これで通信を受けることもないし記録にも残らない

 話してくれて構わないよ」

 

「ありがとうございます

 正直、この内容は非常に厄介ですから、俺には内容を使えることしか出来ません

 言っておきたい事とは、予知の続きです」

 

「予知の続き!?

 まさか闇の書事件はまだ終わってないというのかね!!」

 

「いえ、闇の書事件はもう終わっています

 後はグレアムさんの事故処理だけで俺が知る限りは十分だと思います

 俺が言いたいのは、後に起こるだろう大きな事件です

 管理局が大きく関わる事件なんで、職を辞するならグレアムさんは聞かない方がいいかもしれません

 どうしますか?」

 

「……聞かせてもらおう

 私も管理局に就いて長いが、いずれは歳で職を辞すことは決まっている

 だが、まだ私は管理局員だ

 事件に関わる事なら聞く義務がある」

 

「……判りました

 では…」

 

 

 

 語りだすのは10年後に起こるであろうSTSの事件内容。

 すなわちジェイル・スカリエッティが起こすだろう事件と、それに関わる事件。

 数年後に起こるだろうゼスト隊の全滅も含めて話す事になった。

 

 もっとも最初の事件はガジェットと呼ばれる無人兵器の出現。

 ロストロギアを探索する無人兵器は次元世界各地で出現する事になる。

 そして陸のゼスト隊が関わる戦闘機人の事件。

 これもまたジェイル・スカリエッティが関わってる事件だ。

 

 他にもさまざまな事件に関わっているだろうが、大きく動くのは10年後の聖王のゆりかごの起動。

 これの出現と同時に管理局地上本部は壊滅状態に陥り、その後ミッドチルダ全域と本局自体も危険にさらす事になった。

 その事件になのはちゃん、はやてちゃん、フェイトが大きく関わるけど、今はそこを話す必要はない。

 確かにあの子達は優秀な魔導師なんだろうけど、事件解決にはあの子達に限定する必要はないだろう。

 管理局全体から見れば、あの子達は魔導師の上位であっても最上位って訳じゃないんだろうし。

 

 大まかな事件の流れを説明すると、グレアムさんはじっくりと考え込んでいた。

 事件が発生するのは俺の予知で十年も先の話。

 原作ではグレアムさんはまったく関わっていなかったから、気にすることはないはず。

 だけど重要なのはジェイル・スカリエッティじゃないんだよな。

 

「なるほど、十年後とは随分先の話だが警戒するべきか

 ジェイル・スカリエッティの名前だけなら私も知っている

 現在の奴の所在はわからないかね」

 

「残念ながらそれは判りません

 次元世界の地理なんて俺は全然判りませんから

 ですが起こる事件自体は正しく対処すれば解決出来るので問題じゃないんです

 俺が問題視してるのはそいつの黒幕です」

 

「黒幕?

 スカリエッティが事件の首謀者ではないのかね」

 

「確かに十年後の事件の首謀者はスカリエッティですけど、奴の研究等に出資している存在が居るんです

 いえ、それどころかスカリエッティという科学者を作った存在がいるんです

 いわば事件の元凶とも言える者達です」

 

「確かに研究と言う物は資金が必要だからな

 何者かが出資してていても不思議はない

 その者を逮捕出来れば十年後の事件も防ぐ事が出来るな」

 

「いえ、たぶん逮捕は出来ません」

 

「なぜかね?」

 

「管理局には一番上に最高評議会というのがあるんですよね

 そいつらがスカリエッティという存在を生み出したんです」

 

「なんだと!?」

 

 管理局の知られてはいけない部分であり、暗部といえる所。

 最高評議会は管理局の地位を確保し続けるために、効率の良い違法研究によって技術力を還元する科学者を求めた。

 そこで最高評議会はアルハザードの遺児と呼ばれる、スカリエッティという人造生命体を作り出した。

 その頭脳にはアルハザードの技術が残っているのだとか。

 

 それ以来さまざまな違法といえる研究をスカリエッティにやらせてきた。

 俺が主に知っているのは人造魔導師と戦闘機人という、管理局の人手不足を解消するのを目的とした研究だが、他にも色々やらせているはずだ。

 目的は管理局の為にということらしいが、既に手段を選ばなくなっている。

 スカリエッティ以外にもいろいろと良くない事をしていると俺は思っている。

 

 その事をグレアムさんに伝えると、先ほどとはかなり真剣になって悩んでいた。

 まあ、自身の組織の一番上が犯罪行為を行っているなんて言われたら困るだろう。

 いつの間にか片棒担がされてたりなんて事にもなりかねない。

 ましてや法を守らねばいけない管理局なのにな。

 

「…俄かには信じられん

 だが君の予知が夜天の書において間違っていなかったのは事実だ

 絶対に有り得ないとも言い切れん」

 

「グレアムさんは最高評議会の人間と会ったことはありますか?」

 

「……いや、無い

 最高評議会は大きな方針を決めるだけで局の運営そのものに関わらないという役職らしい

 接触することはあっても代理人を通したものか、通信でしか話をすることは無い」

 

「まったく姿を見せない存在に不思議に思ったことはなかったんですか?」

 

「存在を知った時に気になったことはあるが、局内は問題なく運営されていたから直ぐに気にはならなくなった

 殆どの局員も関わることが無いから、存在すら知らないものも多いだろう」

 

 なるほど、気にするものが殆どいないから見つかることも無いという事か。

 問題ってのは問題が起こらなければ発覚はしない。

 管理局がしっかり運営をされていれば最高評議会の存在は明るみにならず、問題が起こっても表立って運営してる世間に知られた最上位の役職までに責任を取らせることで問題を沈静化するってことか。

 

 良く出来た隠れ蓑といったところか。

 組織ってのは何かしら裏があってもおかしくないって感じはするけど、どういう裏があるのか分かってる組織になんて就職したくないよな。

 暗い部分に関わる事なんて殆ど無いんだろうけど、どうしても気になっちゃうからな。

 管理局への就職とかは当分見送るよ。

 

「管理局が設立されたのってどれくらい前です?」

 

「局として明確に設立されたのは新暦となった60年以上も前

 前身となる組織が存在したのは100年以上前らしいが…」

 

「最高評議会はその前身となる時代から生きているらしいですよ」

 

「まさか、普通の人間がいまなお生きているというのか!?」

 

「既に脳だけの状態でカプセルの中で生きているみたいです

 本当にそんな状態になってまで生き続けたいとは、俺は思いませんけど」

 

「…なんという」

 

 語った内容にグレアムさんは先ほどにも増して、疲れと思い雰囲気を感じる。

 俺の話が本当だと仮定して考えれば、グレアムさんのショックもわかる。

 長年勤めてきた組織の裏側なんて知らずに、やはり退職させてあげたほうが良かったかもしれない。

 俺じゃ手の出しようの無い事だし、グレアムさん位の高い役職でもなきゃ調査出来ない内容だろう。

 

「この事を調べて対処するかどうかはグレアムさんが決めてください

 最高評議会は10年後の事件でスカリエッティの裏切りで殺される事になります

 予知通りにスカリエッティに対処するのもありかもしれません」

 

「放っておくというのかね」

 

「組織の問題なんて部外者の俺がどうにか出来るようなことじゃないです

 精々地位があって信用出来る管理局の人間に、予知の内容を話すことくらいしか出来ません」

 

「なるほど、局の問題を解決すべきは局の人間だ

 完全に部外者の君に頼るべきことではないな」

 

 それもあるけど、俺に何か出来るとは到底思えないんだよな。

 原作の10年後ははやてちゃんもそこそこな役職についてたけど、この事実をどうにか出来る程とは思えない。

 つまりはやてちゃん並に俺が頑張って管理局の役職に就いたとしても、10年じゃどうにか出来るほどの役職には就けない。

 

 そもそも管理局を良くしたいなんていう思いは無いし義理もない。

 根っからの地球の人間…あ、前世も地球に入るのかな?

 まあ、次元世界に対しては今回の事件で知り合った人物にしか関わりは無い。

 STSで六課には入る気なんて100%ありません。

 興味で関わる事はあってもゆりかご突入とかは絶対無いね。

 

 

「俺が話しておきたいことは以上です

 この話をどうするかはグレアムさんにお任せします

 この事はもう誰にも話す気はないので」

 

「そうだな

 もし事実なら君の身が危ない 

 この事は私の方で調べてみよう」

 

「…すいません、辞めるつもりの人にこんな事話してしまって

 こんな話があるなら放置する事も出来ないでしょう」

 

 実際ほんとに申し訳ない。

 俺だけで抱えておくのも無理だったし

 将来的にもしかしたら高官の知り合いが出来るかもしれないから、それを待てばよかったかもしれない。

 

「なるほど、いい辛い理由はそちらのほうか

 気にしなくても構わない

 私は辞めるつもりであっても管理局員としての誇りを捨てるつもりは無い

 護るべきものを護り、間違っていると思うものを正す

 人それぞれ誇りは違うかもしれないが、私は正しいと思う事をしたい

 その為には惜しむ事など何も無いよ」

 

「そうですか…」

 

「君のおかげで過ちを犯さずに済んだ身だ

 これからは…いや、これからも私は管理局員として正しいと思う事をしよう

 引退はするべき時にすればいいさ」

 

 結局俺の話でグレアムさんは引退を撤回する気らしい。

 新たな仕事を任せてしまったようなものだが、先ほどと違って顔に疲れは見えても逆に生き生きしてきたように見える。

 根っからの仕事人なんだろうか?

 

 管理局に入ったら仕事に夢中になっちゃうとか?

 原作のなのは達もそんな感じだったし。

 まさかどっかのアンチ小説みたいに暗示とか洗脳とかじゃないよな。

 暗示とかは前世にあっても不思議じゃなかったから、魔法のある世界じゃ確実にありえそう。

 

 流石に一般局員までそういうことは無いと楽観視したい。

 アンチ的展開なんて実際に見たら痛ましすぎる。

 

 

 

 

 

●デバイス、氷結の杖デュランダルを取得

●デバイス取得に伴い、ミッド式魔法使用可能


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