【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

47 / 51
第四十三話 拓海の一日

 

 

 

 闇の書事件の事故処理も終わって、平和な毎日が戻ってきた。

 事件前までの不思議な力の探求と技術の向上を続ける日々に戻ったが、事件の間に魔法関係者と知り合えたおかげで探求内容にも幅が広がった。

 なので一度俺の一日の鍛錬内容を振り返ってみようと思う。

 休みの日は技の練習をしてるか遊んでるかだから、平日の日常生活に溶け込みながら行っている力の訓練を見直してみよう。

 

 

 

 

 

 朝、俺は普段から7時頃起床する。

 小学校に行く子供なら大抵それくらいの時間に起きるものだろう。

 何時もは目覚ましで起きるものだが、最近ちょっと変化が起きてる。

 

 

-ペチッ、ペチッ-

 

 

『ご主人、起きてください

 朝になりましたよー』

 

「んぁ……んー……おはよう、海鈴」

 

 猫姿の海鈴が目覚まし代わりになって起こしてくれるようになった。

 ベットで寝ている俺の顔に控えめに猫パンチを受けて起こされるのは、気持ち的にとてもに目が冴える。

 頬に当たる柔らかい肉球がなんだか嬉しい気持ちになるのだ。

 何で動物の肉球って癒しを感じてしまうのだろう?

 

 まあそんなことはどうでもいいと思うほど優しい目覚ましなのだが、目覚めが悪いとそのまま海鈴を掴んで布団に抱き込んでしまったりした事があった。

 そうなると主人である俺に逆らえない海鈴は大した抵抗も出来ずにされるがままになる。

 普通の猫だったら引っ掻いてでも逃げ出そうとするだろうが、それが出来ないので一緒に二度寝することになってしまい、なかなか起きて来ない俺に母さんが起こしに来ることになった。

 まだ10歳でも前世持ちである俺には少々恥ずかしい事になってしまった。

 

 今回はちゃんと起きれたので背伸びをしたり首を回して固くなった体をほぐす。

 ベットから起き上がると勉強机の上に置いてあったデュランダルを手に取る。

 

「…デュランダル、起動」

 

【スタートアップ】

 

 少々意識がぼんやりしながらも起動させると、杖状になったでデュランダルと掴む。

 別に寝惚けて起動させた訳じゃなくて、ちょっとした朝錬をするためだ。

 続いて結界魔法をデュランダルで発動させる。

 

「…封時結界」

 

【封時結界展開】

 

 俺達を中心に封時結界が広がるが、範囲は俺の家周辺に留めている。

 特に広くする必要はないからだ。

 

 まだ寝起きでノソノソと動いて部屋の窓から外に出て、家の屋根に上がる。

 ちなみに俺の部屋は二階で、その上の屋根に当たる。

 最近はあまり意識せずに気を使えるようになっているので、ぼんやりしてても屋根に飛び上がるくらいのことは余裕で出来る。

 

 周囲の風景が色褪せており結界がしっかり張られている事を確認してから、体の中の魔力を何の操作もせずに全力放出する。

 

 

-ブオォォォ!!!-

 

 

 何の操作もしない放出された魔力が俺を中心に突風のような風が巻き起こる。

 これは俺が魔法を手に入れる以前からやっている魔力の訓練だ。

 

 魔導師の資質で重要なのは魔力だが、魔力と言ってもその強さを測る方法は色々ある。

 魔力変換資質や使用魔法適正は以前語ったが、更に根底には魔力量、魔力出力、魔力制御力等と基礎的なものが当然ある。

 魔法の使い方がわからずに魔力を自覚した以上、やれる事は魔力を出す事と後で気づいた魔力回復である魔力素の吸収くらいだ。

 

 そこで俺はただ魔力を放出して、魔力素を吸収して魔力を回復する事を繰り返すことで自身の魔力を強化しようと考えた。

 魔力は使わなければ満タンの状態からの余剰回復分が体から溢れ出るだけだ。

 それなら将来魔法を使えるようになることを考えて、魔力を使いまくってた方がいいだろうと無駄な放出を毎日行うことにした。

 

 その成果は一日二日じゃ全然判らないが、初期の頃に比べれば放出による風の起こり方が強くなってるし、魔力を放出し切るまでの時間も少し延びてきている。

 放出力の増加を考えれば魔力量もたぶん増えてるはずだ。

 

 原作の事件が起こる間は魔法関係者がうろつくから控えてたけど、今は結界が使えるから気にせずに魔力放出を行える。

 既に魔法は使えるようになったけど、常に使い切るようにしておけば魔力量は上がり易いと言うのは鉄則だろう。

 後で魔力素吸収による回復を意識的に行うから、学校後の魔法の練習を行う頃にはだいぶ回復している。

 

 

 

 10分ほどで体の中の魔力をあらかた放出しきって朝の鍛錬は終了。

 ラジオ体操すらしていないのに鍛錬といえるかわからないけど、朝早く起きて体を鍛えるほど健康的過ぎるスポーツマンみたいな真似はしない。

 必要な事さえ出来ればいいんだから、必要以上の事はしないんだ。

 そういうのは美由希んとこがやってるしね。

 

 魔力放出が終わる頃には既に目もしっかり覚めた。

 屋根から下りて部屋に戻ってから結界を解いて家族と朝食を取る。

 結界を覚える以前は家族には朝の空気を吸って来ると言って、近くの空き地に出向いて魔力放出を終わらせていたが、その必要が無くなって楽になった。

 

 朝食を済ましたら学校に行く準備をしてから玄関に向かう。

 玄関では海鈴が待っており、靴を履いてから向き合う。

 

「じゃあ行こうか、海鈴」

 

『はい』

 

 

-ボフンッ-

 

 

 海鈴は答えると煙を立てて姿を変えて、依代でもある木刀の姿になる。

 と言っても以前言った通り、今の海鈴は伸縮自在で30cm程度の小刀サイズだ。

 このサイズなら鞄の隅に入れられるので、最近は学校にも一緒に連れていっている。

 霊力による念話モドキも出来るので、誰にも聞かれずに話すことが出来る。

 まあデュランダルもカード型だから持ち運びやすいので持っているが…

 

 

 

 学校への登校は徒歩だが家からは普通に歩けば一時間は掛かる距離だ。

 入学当時はバスに乗って通っていたけど、気が上達したおかげで身体能力が高くなったから走って登校している。

 本気で走ればとんでもない事になるので常識レベルに加減はしているが、学校まではノンストップで走りぬく。

 

 走る事自体も訓練になりえそうなものだが、加減をしている時点で訓練にはなりえない。

 なので走りながら普段から何時でも出来そうな力の訓練をしている。

 

 まずは起きて行った魔力放出の逆、魔力素吸収から。

 その名の通り、大気中の魔力素を意識的に全力で吸収するだけだ。

 ただしそれだけで魔力は全快になることはなく、恐らくリンカーコアが魔力素を自身の魔力に変換しきる事で回復した事になる。

 だけどその変換効率は自発的な魔力の吸収速度に劣るので、一定量以上魔力素を吸収すると変換が追いつかなくなって胸の辺りに痛みが走るようになる。

 痛みという警告でそれ以上は不味いだろうと考えているので、そこで吸収をストップして後は自然回復に任せる。

 

 これで魔力の回復速度を上げられないかと思い、いつも続けている。

 魔力の自然な回復では、普通に考えて魔力素を吸収するより魔力素を変換の方が早いだろう。

 変換し切って空いた部分に新たな魔力素が流れ込んで再び変換が行われるはずだ。

 

 だけど意識的な魔力素の吸収を行なえば、変換が追いつかなくなって胸に痛みが走る。

 なので変換待ちの魔力素を大量に吸収しておけば、リンカーコアは変換をより多く行なわないといけなくなるはずなので変換効率の向上に繋がるはずだ。

 

 無茶な理論ではあるけど効果がありそうならやっておいて損はないだろう。

 まあ腹一杯食べ続ければ食べ物の消化効率がどんどん上がるというような物だ。

 自分で考えててかなり無茶だと思ったが、意識的な変換は流石に出来なかったので自然な変換効率の向上を望むしかない。

 学校が終わったら俺の魔力訓練内容、アリアに相談してみるか。

 

 

 

 魔力素吸収はものの数分で終わったので、これからが登校時の訓練の本番だ。

 やる事は気の操作に尽きる。

 以前からやっていた円や堅の維持などの発展だ。

 

 円も堅も範囲の拡大や持続時間を延ばすこと自体はもう余裕で出来ている。

 ならば今度はその両方を同時に出来るようにならないかと考えた。

 

 日頃の美由希やシグナムさんとの手合わせで堅で防御、円で回避に向いているのがはっきりしている。

 ならその両方を同時に行えばより実践的と言えるが、力を分割して同時に維持するのはこれまで以上に骨が折れる。

 両手にそれぞれ気を貯めるのは出来るが、片手で気を収束して片手で円を展開するのはやりにくい。

 なのに気を薄く広げる円と気を体の周囲に固める堅は、体に纏いながらも拡散と収束の真逆の行動を行うという物だ。

 いきなり成功させるのはとても無理だ。

 

 なのでまずは円をしながら纏をするという訓練を始める事にした。

 堅は纏をしながら錬を行う技術なので、纏を維持出来なくなれば錬で膨れ上がった気が暴発して危険なので、その前段階の纏と円を同時に出来るようにする。

 纏に出している気の90%、円に残りの10%を使い自分の周囲のみを察知するセンサーにすると言った感じにだ。

 近接戦闘なら半径10mも円を展開出来れば十分なので10%の気でも足りる。

 

 これがしっかり出来るようになれば、次は堅と円の同時使用にステップアップする。

 目標は美由希との手合わせに使用出来るようになるくらいといったところか。

 

 

 

 学校についてからは普通に授業を受けるが、授業を受けながらも今後の訓練内容や技の考案に魔法陣の構成を思い返すなどの反復を行なっている。

 授業については前世の知識があることから特に学ぶ必要はそれほど無いんだが疎かにしてるわけじゃない。

 レイジングハートから貰った術式の中にマルチタスクの術式が入ってたんだ。

 

 前々から意識の平行作業の出来るマルチタスクは欲しいと思ってたが、レイジングハートからもらえるとは思わなかった。

 思考分割による作業効率の向上はもちろんだが、これを分身に利用してNARUTOの影分身みたいに経験値のフィードバックみたいなチートが出来ないかと考えたんだ。

 これが出来れば技の習得速度の向上や分身を使った新しい技の開発が出来るかもしれないと。

 

 

 真っ先に試してみたけど、早々うまくはいかなかった。

 確かに式神を応用した分身にマルチタスクで分割した思考を割り当てる事で一人なのに二人以上という状態を作り出すことは出来たけど、現段階で分割出来る思考は自身を含めて二つだけ。

 なので経験を得ることの出来る分身も一体だけなので、多重影分身みたいに無数に出す事など出来ないんだ。

 

 そもそも影分身の経験は術を解いた時に本体に戻ってくる物だから。マルチタスクだと単にリアルタイムで分身の行動を体感してるだけなんだよな。

 俺の分身もちゃんと実体を持って思考する事が出来るからその経験を本体に回収させられればいんだけど、そんな都合良くはいかないか。

 

 まだ二つしか出来ないけど、マルチタスクを使い続けて慣れていけばもっと分割出来る思考が増えるだろう。

 そうすれば加速度的に体感出来る分身……影分身ととりあえず呼ぶけど、それをもっと使えるようになれば同時に学習なり作業なりすることが出来るようになるだろう。

 普通の分身は式神の術式をベースに気か魔力で作り出すので、それぞれ10体は同時に出せる。

 分割思考の数はいくらでも欲しいくらいだ。

 

 まあ元々思考を分身が持っているから経験を回収出来なくても、ちゃんと指示すれば手が足りない時にはとても役に立つ。

 危ない技の練習の代役などにもなってくれるから便利だ。

 使い捨てられる分身の特性を利用して自爆特攻技でも考えてみるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お昼には屋上でお弁当を食べながらも纏と円の同時使用の維持。

 これを行なう前にもまた結界を使ってから魔力の全放出をしておいた。

 昼頃になると魔力変換もほとんど回復し切ってる感じだったし。

 

 クラスメイトや先生は当然気を認識出来ないので授業中にも訓練出来そうなものだが、万が一制御を誤ると暴発したりして大変なので流石に控えた。

 元ネタのハンター×ハンターでも念能力者のオーラが纏から漏れると使えない者にはすごい威圧感に感じる。

 授業中に纏を誤って失敗してクラスメイトを威圧することになったら、どう対処すればいいのやら。

 俺は付き合いの良いクラスメイトとは言えないが、クラスの空気を悪くするような気まずい立場にはなりたくないからな。

 

 そういうわけで授業中はマルチタスクで考えることに集中している。

 なのはちゃんのレイジングハートだと、マルチタスクによって分割した思考に仮想空間を投射してシュミレーションまで出来るんだとか。

 コレもストレージとインテリジェントの差で、魔法を使うにはデュランダルで十分だけど、俺も少しインテリジェントデバイスが欲しくなってしまった。

 

 

 

 午後の授業もマルチタスクで技の考察。

 そもそも分割数を増やしたいから、マルチタスクを多用している。

 ユーノが無限書庫で使ってたように、これは情報処理に向いてるはずだから、今後はこれでミッド語とベルカ語の勉強を同時に受けようかな。

 視覚と聴覚に限定すれば、マルチタスクと分身を使って同時に学習を受けられるだろう。

 

 午後の授業が終われば部活などには当然入ってないからそのまま帰宅だ。

 今日は久遠を連れて八神家に行く予定。

 早速マルチタスクと分身でシャマルさんとアリアに同時に教わってみるか。

 

「たっくん!! たっくーん!!」

 

 と、校舎を少し出たところで最近良く言われる愛称で呼ばれた。

 学校じゃあこの呼び方で俺を呼ぶのはなのはちゃんしかいないけど。

 振り返って校舎の方を見てみると、なのはちゃんが後ろに二人の女の子を連れてこっちに向かってきてた。

 なのはちゃんと学校で一緒にいる二人の女の子となると、アリサ・バニングスと月村すずかだろう。

 

 まだ魔法関係でなのはちゃんと知り合ってない時にも学校で一緒にいるのを見かけた。

 アリサちゃんはブロンドの髪の白人の血が流れてるだけあって肌が他の子より白くて、すずかちゃんは原作では紫っぽい髪だったけど実際に見てみれば艶のある黒髪だ。

 光を透かしたら青に近い紫のように見えるかもしれない。

 

「後姿からたっくんかなと思ったけど当たってた

 初めて学校で会えたね」

 

「ん、そういえば学校では会ったことなかったっけ」

 

「そうだよ、違うクラスだから会わないし、何処のクラスか知らないんだもん

 知ってたらお弁当一緒に食べようと思って誘いに行ったのに」

 

「いや、それは遠慮しとく」

 

「えー、なんで?」

 

 いあ、普通に考えて女の子に誘われて弁当を一緒に食べるというのは恥ずかしいだろう。

 なのはちゃんくらいの子なら異性としては気にしないんだが、周りの目を気にしたらやはり恥ずかしくはないか?

 なのはちゃんのことだから、当然後ろの二人も一緒だろうし。

 男女比が2対2ならともかく3対1は余計人の目が気になるだろう。

 それともこれは俺の自意識過剰か?

 

「ねえ、あんたがなのはの新しい友達?

 なのはが男友達を紹介した言った時は少しびっくりしたけど………まあ普通ね」

 

 アリサちゃんが俺を頭から爪先までざっと見渡してからそう評価した。

 普通でいいだろう?

 変にイケメンとか目がオッドアイとか目立つようなのは、目立ちたがりがしてればいいんだ。

 俺は普通に平凡な容姿を通しますよ。

 

「アリサちゃん、初対面なのにそれは失礼だよ

 こんにちわ月村すずかです」

 

「アリサ・バニングスよ

 あんた何処のクラス?

 見覚えがないんだけど」

 

「山本拓海だ

 見覚えがないのは、そりゃまあ俺は四年生だから学年が違うし」

 

 三年生のなのはちゃん達とは学年が違えば教室も当然離れるので会うことなど早々ない。

 すれ違う事位はあったが、流石にそれだけじゃ記憶に残る事もないだろう。

 

「って上級生だったの!?」

 

「なのはちゃんが親しげな呼び方してるから同級生だとばかり思ってた……じゃなくて思ってました」

 

「えっと、その………あんたとか言っちゃってすみません」

 

 一つ上だと解ると二人が話し方に敬語を含めるようになる。

 目上をちゃんと気配るのは立派だと思うけど、ホントにそこまで気にされることじゃないので気遣われた俺のほうが気まずい。

 特にアリサちゃんは態度の変化が激しすぎて違和感バリバリだ。

 

「なのはちゃんと同じ様に呼べとは言わないけど、特に上級生だとかは気にしなくていいから

 というかなのはちゃんと同じ呼び方は勘弁して」

 

 これ以上のたっくんとか言う呼ばれ方は正直は恥ずい。

 初対面の相手にまでそういう呼ばれ方は流石にされたくない。

 そう思ってたから元凶の美由希をボコりたくなってきた。

 明日は手合わせをしてやることにしよう。

 

「わかったわ

 敬語付け直すのもなんだか妙な感じだし、一年しか違わないんだから」

 

「私もそうします……じゃなくて、そうするね」

 

 そういえばこの二人は闇の書事件の終盤でなのはちゃんの魔法関係を知ることになるんだっけ。

 もうこの町じゃ魔法関係の事件は起こらないだろうから、この子達が知る日はくるのだろうか?

 教えるかどうかはなのはちゃん次第だろうな。

 

「ねえたっくん、この後どうするの?

 確かはやてちゃんが帰ってきてるんだよね」

 

「ああ、だから今日ははやてちゃんの家に行くつもりだ」

 

「私も行こうと思ってるんだけど、一緒にアリサちゃんとすずかちゃんを連れてってもいいかな?

 はやてちゃんに紹介したいなと思ってるの」

 

「俺は別に構わないんだけど…」

 

 魔法関係とは関係無しにはやてちゃんと会わせるのは構わないだろう。

 はやてちゃんの方にも先に念話で連絡を入れておけば、魔法関係の秘匿は出来るだろう。

 

「あ、ごめんなのは

 私達、今日はお稽古が入ってるの」

 

「はやてちゃんって前になのはちゃんが話してた子だよね

 今日は用事があるから無理だけど、また今度誘ってね」

 

「あ、そうなんだ…

 じゃあ、また今度紹介するね」

 

 そういって俺にも別れの挨拶を言ってから、二人は校門で待っていたそれぞれの迎えの車に乗って帰っていった。

 何度か見かけたことはあるけど、リムジンの迎えなんて実際に見たら異様に目立つよな。

 高級さが目立つもんだから気とは違った威圧感を感じてしまう。

 

「まあ、次の機会に紹介すればいいさ

 あっち関連の事もあるから、事前にはやてちゃんに説明しておかないと」

 

「うん、そうする…」

 

「それでなのはちゃんははやてちゃんの家に行くのか?」

 

「うん、帰ってきたのならお帰りって言ってあげたいし

 アリサちゃん達とは一緒に行けなかったけど、たっくんと一緒に行くよ」

 

「途中で久遠を探していくから寄り道するけど?」

 

「クーちゃんを?

 神社の方かな?」

 

「さあ、どうだろう?

 久遠は結構街中をうろうろしてるから、神社には見に行くけど道中で会うことも多いし

 はやてちゃんの家に行くなら先に行っておけば」

 

「うん、じゃあ先に行ってるね」

 

 なのはちゃんとも帰りの道中で別れてから、俺も帰宅する。

 ちなみに帰りの道中もなのはちゃんとも話しながら纏と円の同時使用の維持を練習していた。

 ここ一週間ほどやってきたけどそろそろ堅と円を試してみるかな。

 だいぶ同時使用も慣れてきたことだし。

 

 

 

 帰り着くと家の前の塀の上に久遠がいた。

 俺が家に帰ってくる時間を覚えて待っていたらしい。

 これまでもたまにそういうことがあったので、両親も久遠と顔見知りだ。

 喋れる事も知っていたから海鈴を住まわせる事も簡単に受け入れてくれたんだろう。

 

「ただいま、久遠」

 

「お帰り、拓海」

 

「この後はやてちゃんの家に行くから海鈴とちょっと待っててくれ」

 

 鞄から木刀状態の海鈴を取り出すと霊力を送って猫型に変化させる。

 海鈴を塀の上の久遠の隣の置いておく。

 

「海鈴、荷物を置いて着替えてくるから久遠と一緒に待っててくれ」

 

『わかりました、ご主人

 久遠、こんにちわです』

 

「クォン、こんにちわ」

 

 塀の上でハイタッチするように片前足を合わせて海鈴と久遠が挨拶する。

 海鈴と会わせたときは少々戸惑ってたけど、今はだいぶ気が合っているみたいだ。

 一緒にも遊ぶ事があって、ゴロゴロとじゃれあう姿を見れたときはだいぶ癒された物だ。

 アリアは精神が一応大人だからか子供っぽいしぐさがないからそういうのは見れないし。

 

 鞄を置いて着替えてから二人(匹)を抱えて八神家に向かった。

 道中でなのはちゃんとも合流した。

 その間も纏と円の同時使用の維持を続けた。

 こういう訓練は大抵出歩く時はやっている。

 

 

 

 

 

「拓海、あなたバカじゃないの?」

 

 八神家でアリアに俺なりの魔力訓練の事を伝えたらそう言われた。

 やはり魔力ってのは使ってるか年齢を重ねて成長によってリンカーコアも成長するらしい。

 そして老いによって魔力の衰退もあるが、魔力の全放出はともかく魔力素吸収による変換効率の向上などやる人は普通はいないらしい。

 

「魔力の大本であるリンカーコアは本来人間には有っても無くても生きるには必要のない器官なの

 一部の世界には魔力が有ってこそ生活出来るところもあって、リンカーコアが当たり前のように存在する生物がいるわ

 けど人間にリンカーコアが有ったり無かったりするのは生物学的に必要が無いからで、本来魔力は人間にとっては異物と成りえるのよ

 そんな魔力の元である魔力素を変換し切れないほど吸収するのは体の害にしかならないわ」

 

「けど、これをやり続けてもう一年以上経ってたりするんだが

 それに始めたの頃よりも魔力の量も回復速度も上がってるし」

 

 始めた頃は朝に魔力を全部放出すれば回復し切るのはたぶん翌朝になってたけど、今じゃお昼ごろには殆ど回復してる気がする。

 魔力放出時に起こる風も扇風機の弱から強になったって感じだから、確かに上がってるはずなんだけどな。

 

「そっか…ミッドの常識的に考えればそういうことは絶対しないものなんだけど、こっちではそんな知識は無いのよね」

 

「そもそもこの方法は魔法知識の無い俺が魔法が使えない代わりの魔力訓練だったんだぞ

 魔力素の吸収しすぎは悪いのは感覚でわかってたけど」

 

「ともかく今後は魔力素の意図的な吸収なんてやめたほうがいいわ」

 

「まあ、そういうなら今後は控えるよ

 魔力の全放出自体は問題ないんだろ」

 

「問題無いけど普通に魔法の練習に使ったほうがいいわよ」

 

 平日に魔法の練習をするのは放課後だから、朝に全放出しても練習する頃にほぼ回復してるんだよな。

 授業の無い休日なら午前中から練習できるけど…

 

 

 

 アリアにはそれからデュランダルについて色々聞くことにした。

 レイジングハートから色々魔法は貰えたけどなのはちゃん向けの遠距離と補助魔法ばかりでそれ以外の魔法は入っていなかった。

 それでアリアに本来のデュランダルへの魔法のインストール方法などを聞くことにした。

 

 とりあえず俺が望めばアリアが知ってる魔法は直ぐにでも入れてくれるそうだ。

 それにデュランダルにはデバイスフォーム以外のモードが未登録で、他にどういう物がいいか考えておいて欲しいといわれた。

 一般的にはあと二つくらいモードが作れるらしい。

 入れて欲しい魔法の種類と一緒に考えておこう。

 

「マルチタスクは一人前の魔導師なら大抵使いこなしてる魔法だけど、拓海の分身と合わせたら思考も体も二人分なるのね

 その体も分身を通してマルチタスクで話してるんでしょ」

 

「ああ、一度で二倍以上の訓練が出来るようになるのは便利だな

 これのおかげで同時にミッド式とベルカ式を学ぶ事も出来るし

 今は本体が体を動かす訓練でこっちが魔法の訓練をするつもりだけど」

 

「便利な物ね

 私も仕事が忙しかった時は体が二つ欲しいなんて思ったりもするのに

 何とか魔法に出来ないからしら?」

 

「基本が霊力を使った式神の術だからな

 もっと理解を含めれば魔術式で置き換えられるようになるかもしれないけど…」

 

「そうはうまくいかないんでしょうね

 まあレアスキルだと思って諦めるわ」

 

 アリアは簡単に言ってるようでやはり何処となく残念そうだ。

 一人で二人分以上の働きが出来るようになるなんて絶対覚えたい魔法だもんな。

 思考分割の量を増やせればもっと効率が上がるし。

 

「ところで思考分割の数はやっぱりマルチタスクの熟練次第なのか?」

 

「そうね、慣れれば大抵の魔導師は三つ以上の分割が出来るし、一流と呼ばれる魔導師は五つは確実ね

 私も七つまでは思考分割出来るけど、ロッテに聞いた話だと夜天の書を無限書庫で調べたユーノって子は十以上の思考分割をして情報整理をしてたって話よ

 最近会う子供はどの子も才能がずば抜けてるわ」

 

 まあ主人公グループだもんな。

 原作ではA'sまではキャラの能力は拮抗してたけど、STSのフォアードメンバーの下位の能力が出てからはそれまでのメンバーの能力が以上に高い上に集まりすぎてるみたいだったし。

 

 A'sではなのはちゃんとヴィータ、フェイトとシグナムさんがぶつかる形で互角に描写されてたけど、実際の戦闘経験を考えれば明らかになのはちゃんとフェイトが負けているだろう。

 カートリッジと自分達の長所を生かした上でシグナムさん達が殺してしまわないように加減していたから渡り合えたんだと思う。

 本当に形振り構ってなければなのはちゃんとフェイトは初戦で終わっていただろう。

 まさにストーリー上のご都合主義だな。

 

「やっぱり管理局全体から見てもここにいる全員能力が高いのか」

 

「高すぎるわね

 経験は少ないけど拓海となのはとはやてはそれを補えるほどの資質があるし、守護騎士達の経験は十分な上に全員高ランク魔導師

 管理局の一部隊を上回る戦力を持っているわ」

 

「えっと、それって凄いんですか?」

 

 久遠と海鈴の遊び相手、或いは二人が遊び相手をしていたなのはちゃんが話が聞こえたのか尋ねてくる。

 STSではしっかり部隊を結成していたけど、全体の能力が高すぎて制限をかけられるほどだったらしいからな。

 まさに無駄に凄いんだろう。

 

「ええ、なのは達の魔導師としての資質は管理局の一般魔導師の平均を大きく上回ってるわ

 管理外世界の住人じゃなかったら人手不足の局は確実にスカウトしてたでしょうね

 ところでなのはは管理局の仕事に興味はある?」

 

「え、管理局のお仕事ですか?

 んーと……ちょっとよくわかんないです

 フェイトちゃんの時にリンディさん達と一緒にお仕事したけど、私はただお手伝いをしただけですから」

 

「そう……もし興味があるなら言ってちょうだい

 なのはみたいな将来有望な魔導師は大歓迎だから」

 

「はい!!」

 

 元気よく返事をするなのはちゃん。

 基本的に頼まれたら断れないのがなのはちゃんだから、積極的にスカウトすれば管理局員になる可能性は高いだろう。

 何をどうしろと言うつもりはないけど、将来のことはしっかり考えてから決めて欲しい。

 早い内から就職すると子供のうちにしか学べないものを得られないだろう。

 

「けどたっくんとはやてちゃんはどうなんですか?

 二人とも私と同じくらいなんですよね」

 

「拓海はお父様から誘われたみたいで、ゆっくり考えるって聞いたわ。」

 

「ああ、まだ小学生だし色々調べてから決めたいと思ってる

 魔導師の仕事って言ったって管理局に限られるわけじゃないだろ」

 

「まあ、そうね

 はやての場合は既にそれに当てはまってるような物だし」

 

「はやてちゃんが?」

 

 なのはちゃんが疑問に思い首を傾げる。

 はやてちゃんは先日の聖王教会訪問で称号を授与された。

 これは聖王教会に認められたと同時に重要なポストについたようなものだ。

 現時点ではあまり拘束されるようなことはないが、将来的に重要な役職に就く事になる可能性は高い。

 

 そしたらSTSでの管理局の部隊長なんて役職に就くことなんて出来ないんじゃないか?

 前にも言ったが古代ベルカ式で広範囲型の騎士なんてレア中のレアだ。

 局員には成れても前線なんて出さしてくれないだろうし、魔導師と関係ない重役に納められるのが関の山だ。

 六課建設なんて完全に潰されそうだな。

 

「はやては既に聖王教会に就職してるようなものなのよ

 夜天の書の所有者ってだけで聖王教会の評価が高いみたいだから

 望めばたぶん簡単な仕事に就く事も出来ると思うわ」

 

「確かにあの歓迎のされ方なら大抵の我侭は聞いてくれそうやな

 まあ私も将来の事はまだ先の話やと思うとる

 今は魔法の勉強とはよ歩けるようにリハビリや」

 

 はやてちゃんはまだ病院に通っているが、異常が無いかの定期的な検査とリハビリの具合を見てもらってる。

 だんだん足が動くようになってきているのを喜んでいるが、ずっと通っていた病院に行かなくなるのは少しい寂しく感じるといっていた。

 本来嬉しい事なんだろうけど、主治医の先生と仲良かったらしいからな。

 

「なのはちゃんも将来の事を考えるのはいいけど直ぐに決める必要は無いよ

 じっくり調べて色々考えてから自分の将来を決めればいい

 俺達まだ子供なんだから」

 

「うん、わかったよ

 魔法でお仕事するならきっと大変だろうからもっと魔法をうまくならないとね

 アリアさん、また魔法の勉強をお願いします」

 

「才能が有るから二人とも教え甲斐があるからいいわ

 しっかり学べばクロノよりも伸びそうだし」

 

「クロノくんに魔法教えたのアリアさんだったんですか?」

 

「ええ、そうよ

 今は結構しっかりしてきたけど、昔はてんで大したことなかったんだから

 昔のクロノのこと聞きたい?」

 

「はい」

 

「じゃあクロノと同じ勉強をしながら教えてあげる」

 

 そしてクロノの過去話を交えながらアリアの魔法講習が始まる。

 

 

 

 

 

 変わってこっちは本体の思考。

 俺は外で結界を張ってシグナムさん相手に、気を中心とした組み手を行なっている。

 今回は円と纏の両方を試しながらの守りに回ってシグナムさんの剣を避けたり受け止めている。

 

 海鈴は今は分身側の傍にいるので今は素手で防御をしている。

 纏でも纏わないよりは防御は高まってるけど、それでも素手では痛いと思っていたら自然に体に纏っていた気が腕に集まって防御をより高めていた。

 練習してなかった流もどうやら出来るみたいだな。

 

「気というものは本当に騎士向きの力のようだな

 魔力は全力ではなくても本気でレヴァンティンで打ち込んでいるのに顔色一つ変えんとは

 打ち込んだ感覚もまるで鉄を叩いているかのようだ」

 

「普通の纏の防御なら多少は痛いだろうけど、今は腕に気を集めて防御してるから大したことないな

 まあその分他の防御が下がる事になってるけど」

 

「ならばそこを突かせて貰おう」

 

「遠慮する

 というかあくまでこれは組み手なんだけど」

 

「実戦を想定するのに越したことはないだろう」

 

 確かにそうなんだけど嬉々として打ち込んでくるシグナムさんが恐いんだよ

 箍が外れて本気でやってきそうで。

 

 円によって動きを細かく感じ取り、避けられないものは気を集中させた腕や足でガードする。

 気を腕に多めに回すことにも慣れたので足にも回して防御の手数を増やしている。

 

 目標は纏ではなく堅による戦闘維持だけど、現段階ではとても気を制御しきれない。

 今でも纏と円を維持しながらでは守りの回るだけでいっぱいいっぱいだったりする。

 だからこそ更なる気の制御訓練になってるんだが。

 

 

 

 組み手に一息を入れてシグナムさんからの評価を聞く。

 力だけなら渡り合えるが経験の差は圧倒的に負けている。

 戦い方について何かアドバイスを貰えればと思って今日は相手をしてもらった。

 

「お前の戦い方は私よりもザフィーラに似ているな」

 

「そうなのか?」

 

「盾の守護獣という名は伊達ではないからな

 攻めよりも守りを主体に置くのが俺の戦い方だ」

 

 組み手を見守っていたザフィーラも答えてくれる。

 確かに俺はあまり攻めるという戦い方よりも守りを固めるほうが性にあっている。

 俺が技開発だけじゃなくてこうして模擬戦を受けているのは、もうないと思うけどもしもの時の為の自衛のためだ。

 自分から事件に飛び込むような気は一切ないけど、覚えた技を自在に使いこなせるようにしておくことは前に事件に関わる事になった時からの課題だ。

 だからこそ時々手合わせなどをして何処まで使えるか確認をしている。

 美由希相手だと何故か新技の実験になってしまうことがあるが。

 

 とはいえ積極的でないからこそ攻めより受けに回る戦い方が俺には噛み合う。

 もし厄介事に巻き込まれたら必要でない限り戦わずに隙を見て逃げ出すつもりだからな。

 主を守る為の戦い方とは違うが、無手の戦いであればザフィーラが参考になるかもしれない。

 

「無手での戦いは俺も同じだ。

 守りを主体に置いた戦いであれば自信はある

 人に教えたことはないが少しくらいは参考になるかもしれん」

 

「じゃあ、頼んでもいいか

 とりあえず荒削りでいいから徒手空拳の基本は押さえておきたい」

 

 基本さえ抑えて練習を続ければ能力の御蔭で伸びるところまで伸びるだろうし。

 後は考えた技を組み合わせるだけでそこそこな戦い方は出来るようになるだろう。

 

「拓海は徒手空拳にも手を出すのか

 私としては剣一筋に絞ってくれれば嬉しいのだが」

 

「俺が色々やってるのは好奇心からで、実際に使うことになるのは自衛だけのつもりだ

 積極的に戦いに行くような事はしたくないんだ」

 

「お前なら良い騎士になれると思うのだが…」

 

「いい加減それは諦めてくれ」

 

 シグナムさんは事ある毎に騎士の道を進めてくる。

 気に入られているといわれれば嬉しい物だが、実際に騎士と言われてもピンと来ない。

 漫画とかのイメージだと確かにかっこいいんだろうけど、実際にやるのは仕来りとかありそうでかなりめんどくさい気がする。

 この場合の騎士は聖王教会に当たるんだろうけど、俺はベルカにも聖王教会にも思い入れとかはないので、騎士を目指すような理由も無い。

 

 けど、主に忠義を尽くすってのは憧れない事はないし眩しくも感じる。

 行き過ぎれば妄信とも思えるような忠義も貫き通せばとても眩しく思える。

 と言ってもそこまで眩しく感じるような騎士的行動をシグナムさん達が取ってたわけじゃない。

 普段から忠義一杯でもそれを示す場は戦場のような場所ばかりだ。

 

 というか、俺の騎士のイメージは全部フィクションで構成されてるしな。

 騎士を名乗って感動してしまうような活躍をしてたのは、やっぱりあのオレンジが印象強い。

 忠義の嵐は最高だった。

 今度、DVDでも借りてこようかな。

 こっちの世界にもあった作品だし。

 

 

 

 

 

 魔力で作った分身はアリアに魔法を教わって、本体は直に体を動かして気の操作訓練。

 今後はミッド式とベルカ式を交互に教わろうと思いながら、八神家での訓練を終えて帰宅した。

 久遠は途中までは抱えて帰り、さざなみ寮と自宅への分かれ道で別れた。

 毎日八神家に行って訓練をしようとは思っていない。

 時には前のように久遠と遊びながらも式神などを使っての訓練にしている。

 

 色々な技を覚えるたびに遊びの幅も広がってたりするんだよな。

 たとえばソーサーの制御の練習に久遠を乗せて浮かせてみたり、バインドを締めるのではなく輪っかにして複数出して宙に浮かせて久遠が潜り抜けてみたり。

 久遠が愛玩動物以外の何物でもないな。

 この時が一番訓練をしてて癒されてたりするんだよな。

 

 分身とマルチタスクのおかげで魔法と気の練習を同時に練習出来るようになった。

 魔力と気は性質なのか同時に出して触れ合わせると反発してしまうので、魔力と気を使った合成技や分身を作る際には霊力+魔力か気のみの分身しか作れないので、分身が使えるのは霊力+魔力か気のみになる。

 それでも同時に練習出来るようになったことで訓練効率は上がった。

 

 

 

 魔力も気も霊力も量を増やすなら使いきるのが基本だと思ってるので、一日の終わりには体調を崩さない程度に使い切っている。

 一日の最後の訓練と言うほどではないが咸卦法の動作を試している。

 左手に魔力、右手に気を同じくらいの量に集めて、出来るだけ無心になって魔力と気を掌の中で合わさる様にする。

 これをそろそろ一年くらい続けてるかな?

 

 事件の間は余裕がなかったから休んでたけど、能力があるからそろそろ出来てもいいんじゃないかとすら思っている。

 もしかして舞空術の時みたいに何か気づいてない要素でもあるんじゃないか。

 咸卦法は魔力と気を合成させるってのは単純だけど、心を無にするってどういうことだ?

 判ってる要素がこれだけだったから、とりあえず無意識に出来るくらいずっと続けて動作に慣れ親しんだけど、それでも出来るようにはならなかった。

 

 他に俺が思いつく限りで心を無にするとは気と魔力の波長を乱さない様にするためと考えて、そっと波立たせないように合わせてみても変化はなかった。

 いっそ混ぜ合わせるように気と魔力をグルグル回しながらと交わらせたらどうかと考えて、反発する力が一気に強くなって弾けとんだ。

 気と魔力にそれぞれ霊力を混ぜて合わせてみても弾かれる威力が強くなることはあっても弱くなることはなかった。

 

 進展がずっとないままだがこの動作はずっと続けて、心を無にするくらいに自然に出来るようになるのを目指している。

 漫画でももともとかなり高難度な技って言われてたんだ。

 どれくらい掛かるかもわからないけど気長に続けよう。

 舞空術もふとした拍子に出来たし、咸卦法もそんな風に出来るようになるかもしれない。

 

 それに舞空術ほど拘ってる訳ではない。

 出来るようになっても総合的に身体能力が上がるだけと思ってる。

 難しいだけあって桁外れなほどなんだろうけど、制御があまり利かなそうな力だと思うんだ。

 爆発的に膨れ上がるような力だと思うから、単純な技や素の攻撃力を極端の高めるくらいにしか使えないだろう。

 元ネタでも咸卦法の力を術式に流して使ってるところとか見たことないし。

 まあ、術とか使えないキャラばかりだったけど。

 

 

 

 そんな感じで普段の平日を俺は終えて眠りにつく。

 海鈴も寝る必要はないが一緒のベッドの上で寝て、また明日の朝起こしてくれるだろう。

 明日はどんな事をやろうかな。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。