【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第四十六話 動物の事情

 

 

 

 

 

 はやてちゃん達が聖王教会から帰ってきて少し経って、俺やなのはちゃんは夏休みに入った。

 はやてちゃんは足の調子は良くなってきてるけどリハビリ中で、学校はまだ当分お休みらしい。

 病院の判断でリハビリが順調なら来年度には学校に行けるとはやてちゃんが喜んで話してた。

 

 学校なんてのは普段行ってればどうってこと無い物だが、行けない者にとってはとても大事に思える時間だ。

 俺のクラスにも学校に来る事に冗談半分な様子ではあるが不満の声を上げる者もたまにいる。

 それでも学生時代というものは終わってみれば貴重な時間と思えてくる。

 まあ一度転生した人間だから思えることなのだが…

 

 ちなみになのはちゃんに学校をどう思うかと聞いたら、毎日アリサちゃんとすずかちゃんに会えて楽しいと言う返事が返ってきた。

 勉強と言わない辺りは優等生とは言えないが、まさにいい子を地で行く発言だった。

 ついつい久遠のように頭を撫でてしまったのは仕方がない。

 そのなのはちゃんの反応はご想像にお任せする。

 

 

 

 で、夏休みに入ったからといって俺の日常はあまり大きく変化しなかった。

 学校がないから朝起きるのに少々だらけてしまったりするが、それでも魔法の練習や技の考案などするために神社に行ったりはやてちゃんの家に行ったり、たまに高町家に窺う程度だ。

 

 普段と特に変わらない生活をしているが夏休みの宿題は当然出た。

 といっても今年の俺には分身の術がある。

 式神で分身の座る机を作って宿題を総攻撃。

 絵日記などの時間の掛かる宿題を除けば一日でほぼ終わらせられた。

 

 こんなに簡単に終わってしまうと前世の苦労がちょっと物悲しくなってしまう。

 前世ではギリギリまで宿題を残してしまったほうだ。

 今の俺はまだ小学四年生だから問題も簡単だし、子供なせいか頭の回転が早い気がする。

 若いってほんといいんだなと思い、逆に精神の老いを感じてしまった。

 

 

 

 

 

 今日も今日とて八神家に久遠と一緒にお伺い。

 けど普段通りに行くのもあれなので、今日は趣向を凝らしてみた。

 

 部屋に入ってみれば各々が寛ぎ、はやてちゃんは魔法陣を出しながらリインさんに教わってる最中な様子だった。

 

「いらっしゃい、久遠

 人の姿でくるなんて珍しいな

 今日は一人なんか?」

 

「違う…一緒」

 

 久遠は両手で抱えていたものをはやてに見せるように差し出す。

 腕の中には久遠とは別の狐がいた

 

「ん? 久遠の動物姿によく似た子やな

 久遠の友達なん?」

 

「俺だよ」

 

「へ、俺って………って、その声たっくん!?」

 

「おう」

 

 抱えられていた狐は実は俺だったりする。

 この間、アリアに変身魔法をデュランダルに入れてもらって、ちょっと練習してから今回で初お披露目だ。

 式神に感覚を通して動物視点で行動したことはあるが、やっぱり自身が変身してみると体を動かすのにも実感が違う。

 

 何より全身に体毛があるというのがちょっとサワサワする感じだ。

 まあ悪い気分はしないので昨日はこの姿で丸まって寝てみた。

 結構暖かいが夏はちょっと暑苦しいかった。

 

「変身魔法はうまくいったのね

 コレでも使い慣れるまでは難しいはずなんだけど」

 

「式神を介しての動物の姿や動きは十分に練習済みだったからな

 自身に魔法を掛けるってのがちょっと手間取ったが、この通り出来るようになった」

 

 一番最初に反応したのが教えてくれたアリアだ。

 今日も人の姿で俺の姿を伺っていたら、サッと手が伸びてきて久遠からアリアの腕の中へ移ってしまった。

 

「ん~、毛並みもいい感じに再現出来てるわね

 コレなら十分合格点よ」

 

「ありがとう

 でも何で撫でてるのさ」

 

「いつも撫で回されてるお返し」

 

「自分から来てるくせに」

 

 アリアに抱えられながら毛並みを整えるように撫でられる狐姿の俺。

 久遠の時も思ったけど、やっぱり抱えられるのって少し心地良くはあるが気恥ずかしい。

 ユーノはこういう状況を当たり前のように感受してるんだろうか。

 それだと少々手遅れに感じる。

 

 ちなみに逆に抱えるほうとしては久遠やアリアだと別に恥ずかしいとは思わない。

 純粋な人間じゃなくて使い魔とかなんだし。

 

「なぁなぁ、たっくん

 わたしも抱かせてもらってもええかな」

 

「え、あ~……」

 

 はやてちゃんの要望に俺は少し悩む。

 大人ならともかく同年代に抱えられるのは少々恥ずかしさの限度を超える気がする。

 精神年齢がどうとかいう問題じゃないんだ。

 

「いいじゃない、拓海

 コレも経験よ

 はい、はやて」

 

「ありがとな、アリア」

 

「経験って…」

 

 答える間もなくアリアがはやてちゃんに俺の体を預け渡してしまった。

 まあ、まだ変身すると言う新鮮さがあるから、この状態は面白くあるんだか。

 動物扱いの経験がなんの役に立つんだろう?

 何か悪いって訳でもないんだが。

 

 両前足の脇をはやてちゃんに両手で持たれて俺は抱え上げられている。

 それで下半身は宙ぶらりんな状態だが、この状態って犬などの四足歩行動物にはあまり良くないって話だ。

 俺自身はそれほど負担ではないんだけど。

 

「おー、ホンマにそのまんま動物やな

 重さも見た目くらいの重さしか感じへん」

 

「確かにそういうことが結構気になるんだよな

 魔法って変化した質量とかどうやって補ったり減らしたりしてるとか」

 

 その辺りがまさに現代の科学では証明出来ない魔法だ。

 実質巨大化とか縮小とかなんでも有りだからな。

 魔力さえあれば普通にウルト○マンに変身出来そうだし。

 

 そういえばジュエルシードで巨大化する子猫もいたな。

 変身魔法とは別に巨大化魔法とかもありそうだ。

 巨大化してSTSのキャロのヴォルテール相手にしたら、実写の怪獣映画になるぞ。

 それもそれで面白そうだ。

 

「ん?」

 

「どうかしたはやてちゃん」

 

 そこではやてちゃんが疑問符を浮かべる。

 何かと思って視線をはやてちゃんに向けると、逆にはやてちゃんの視線は俺の視線とぶつからずに僅かに下に逸れてる様に見える。

 その視線の辺りには宙ぶらりんになってる俺の下半身があって…

 

「ああ、やっぱりたっくんも男の子なんやな」

 

『!!!!!!』

 

 

 

 

 

「主はやて!!

 いくらなんでもあれは思慮に欠けると思われます!!」

 

「そうですよ、はやてちゃん!!

 男の子も意外と傷つきやすいってテレビで言ってました」

 

「あー…んー…ごめん、はやて

 今回は流石にフォロー出来ないや」

 

「ぐすん……」

 

「拓海、涙を拭いてください

 あなたが強いと言う事を私は知っています」

 

「だ、大丈夫よ

 動物の姿だったんだからなんてことないじゃない!!

 拓海がいつも私を撫で回してるほうがもっとすごいんだから」

 

「ご主人、気を確かに」

 

「拓海、いい子

 泣かない…」(なでなで)

 

「む、むぅ……」

 

 俺は泣いた。

 何か言う事も無く、喚くでも無く、目から涙がボロボロと零れ落ちてしまった。

 コレが泣かずにいられるかと言わんばかりに、体を隠すように体毛と尻尾で丸まって不貞腐れるように引き篭もった。

 

 周りははやてちゃんを怒る声と俺を慰める声が聞こえるが今は何もしたくなかった。

 変身していたとはいえ、女の子に≪オトコノコ≫を見られて宣言されるなんてなんて恥辱だ。

 こんな恥ずかしい思い、前世で生まれてから死んでからまた生まれてから初めてだ!!

 

 涙ぐむ俺の姿にはやてちゃんはかなり気まずいというか反省しているみたいで、まだ大して動かない足で俺に向かって土下座しているが、今の俺には気にしてる余裕は無かった。

 そして、他のみんなとはまた違う様子でソワソワして伏せの状態を維持しているザフィーラ。

 普段から動物の姿なんだから、今更気にしたってしょうがないだろうと言う突込みを心の中で思う事すらやはり余裕は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、俺の咽(むせ)び泣きが収まってきた頃になのはちゃんが美由希を連れてやってきた。

 まだ騒然とした様子に何事かと二人は戸惑った様子を見せている。

 その間に俺はアリアの指示の元、変身魔法に修正を入れた。

 

 その名の通り文字通り修正だ。

 とりあえず大事なところは何もない状態にした。

 有るとか無いとかではなく、ほんとに何もない状態。

 ヌイグルミみたいに普通に体毛で覆われている状態にした。

 愛玩動物に必要の無いモノは必要無いんです。

 

 

 

 色々落ち着いてきたところで、なのはちゃんと美由希に俺が変身魔法を使ってることを説明した。

 二人は今の騒然とした様子はなんだったのか当然気になっていたが、とりあえず先ほどの事はなかったことにしてほしい。

 他の皆も話すのは勘弁してくれてる様子だからとても助かる。

 

 言いづらい皆の様子に、流石に二人も追求してくることは無かった。

 もししつこく聞いてくるのが美由希だったら、割と本気で締め上げてたな。

 今の俺はテンションが上がったり下がったりで少々可笑しいぞ。

 

「何があったのかよくわかんないけど……

 とにかく、この久遠じゃない狐はたっくんって事でいいのかな?」

 

「だからそう言ってるだろう

 お前の頭はレンコンか?」

 

「この私に厳しい口調はたっくんだ

 何でレンコンなのよ」

 

「スカスカでも丈夫、丈夫でもスカスカ

 入った物は右から左に抜けていく」

 

「そういうんだと思った

 けど本当に見た目は普通の狐なのね

 抱えてみても普通の犬猫と変わんない重さだし」

 

「ていうか、何いきなり抱えてんだ

 はなせ」

 

 

-ポフッ-

 

 

 ちょっと美由希に観察されたと思ったら、サッと抱え上げられてしまった。

 油断してたとはいえ、美由希は本気で動いたら素早いから時々対処に遅れる。

 不意に俺は大きな狐の尻尾を振って美由希の顔を軽くはたく。

 動物姿でもイメージさえ出来れば普段は無い尻尾とかも自在に動かすことは出来る。

 

 その辺りも魔法の術式に組み込まれているらしい。

 でなきゃ骨格が人間とまるで違う体を自然に動かすことなんか出来やしない。

 その分仕草とかも本人のイメージが反映されるみたいだから、変身すると気づかない所でも動物的行動をとってしまうこともあるらしい。

 ユーノの動物的行動が様《さま》になっていたのには、そういう裏もあったようだ。

 

「ッ…、な、なんだか普段より元気がない感じがするけど

 皆の様子もちょっとおかしいし何かあったの?」

 

「今の俺はナイーブになってるんだ

 ほっとけ…」

 

 

-ポフッ-

 

 

 再び尻尾で先ほどとは逆の頬をはたく。

 大して力を入れてないし体毛に覆われてるから痛くないだろう。

 というか力を入れる気力が出ない。

 

「ぁぅ…、な、何か悩んでるなら相談に乗るよ

 友達なんだから」

 

「ならこの話題に触れるな

 今はカタツムリのように閉じこもりたいんだ」

 

 

-ポフッポフッポフッ-

 

 

 いい加減にしてくれという気持ちで美由希の顔を三度叩く。

 そろそろうっとおしく思ってきたので、次は気でも込めて叩いてやろうかと思い始めてた時に美由希が行動を起こした。

 

「ぅあ……あああぁぁぁぁ!!

 もうたっくん、カァイイィィぃ!!!」

 

「むぎゃぁ!!

 はっ、はなせぇぇぇ!!」

 

 

-ギュウウゥゥゥゥ!!-

 

 

    -ジタバタ!!ジタバタ!!-

 

 

 先ほどとは段違いの強さで抱きしめてくる美由希。

 突然のことに流石に驚いて美由希の腕の中から抜け出そうとする俺。

 新たな騒動はなのはちゃんが何とか美由希をなだめるまで続き、御蔭で落ち込んでた俺の気持ちはどこかいってしまった。

 少しばかり美由希に感謝するくらいはした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、お姉ちゃん

 たっくんがきつねに変身してたからって、無理やり掴んで乱暴にしちゃダメだよ」

 

「さっきの事といい、変身魔法を披露してから碌な事がない

 当分変身魔法は使いたくない」

 

「ごめんごめん

 長めで柔らかい尻尾がユーノみたいで我慢できなくなっちゃって…

 もう乱暴にしないから、もう一回変身してみてよ」

 

 俺は流石に嫌気がさしたので変身魔法を解いた。

 たまに遊ぶかもしれないがこの場ではもう変身したくない。

 美由希に遊ばれる気がしてならない。

 

「断る、お前の手の中にあるので我慢しろ」

 

「むぅ~、仕方ないかー

 けど流石たっくんだね

 まるで本物みたい」

 

『キュー』

 

 美由希の手の中には俺が逃れるのに作った身代わりの式神のフェレットユーノがいる。

 俺を掴みながらも時折ユーノの名前が何度も出てきたので、式神で偽者を出して注意を引いて、その隙に美由希の手の中から抜け出した。

 その後すぐに変身を解いて魔の手を逃れたが、偽者と判っていても美由希は式神ユーノをしっかりキープしていた。

 

「手触りはなんだか違う気がするけど鳴き声とかそのままだし

 たっくん、当分この子出しててよ」

 

「直接触った事はないから手触りの再現は無理

 出し続けるのはめんどくさいからヤダ

 最初に込めた霊力がなくなったら消えるよ」

 

 後から霊力を送れば存続させる事は出来るが、美由希の鬱憤晴らしにそこまでする気はない。

 

「しょうがないか

 それなら今の内にこのユーノを堪能しておこう

 ほらほら、ユーノー」

 

『キューキュー』

 

 とりあえず偽者だからキューキューとしか鳴かないそれっぽい反応をするだけの物を作ったが、遊んでる本人が楽しんでればなかなか様になる動きをしてるように見えるな。

 さっきの変身魔法もそうだが、術者のイメージで補正がかかる術の類はどうなってるんだろうか?

 

 動物の動きをCGやデータなどで再現するとかなりの内容になるはずだし、式神がもつ自己判断能力はまんま人工知能に当てはめる事すら出来る。

 理論的に説明したらかなり難解な内容になるはずなのに、イメージ一つだけで補えるってのはどういうことなんだろう。

 ご都合主義でもちょっとは納得のいく理由が知りたい。

 この辺りも今後調べていきたい魔法の要素かな。

 

 そう考えていると、ふとなのはちゃんがなにやらソワソワした様子をしている。

 視線の先には美由希が遊んでいるユーノの式神がいて…

 

「お、お姉ちゃん…私もそのユーノくんを抱かせてもらっていい?」

 

「うん、いいよ

 なのはもユーノがいなくなって寂しかったんだよね」

 

「それは…ちょっとだけなの」

 

 そう言いながらも美由希から式神ユーノを受け取ると顔を綻ばせて嬉しそうな顔を見せるなのはちゃん。

 改めてユーノが完全に高町家のペットという認識が固い事理解した。

 ユーノって今は何処までなのはちゃんの事を意識してるんだろうか?

 

 原作じゃ実際のところの恋愛事情はハッキリしてなかったけど、意識はしていたのは確実だと思うんだがな。

 STSまでの10年でそういった進展もない様子だったから、もしかしたらユーノ本人は折り合いを着けてしまってるのかも知れない。

 まあコレは原作の話だし、これからどうなるかは本人達次第か。

 

「本物じゃなくてもユーノくんを見るのはなんだか久しぶりなの」

 

『キュー』

 

「アハハ、お喋りしないユーノくんもなんだか変な感じ」

 

「そっか、なのははユーノとお喋りしてたんだっけ

 私もユーノとお喋りしながら遊びたかったなー」

 

 なのはちゃんと美由希が式神ユーノで遊んでいた時、庭の辺りでちょっとした魔力の高まりを感じた。

 誰かが魔法を使ったような感じで、最近では気を感じるというほどではないが察知するのに慣れてきている。

 なのはちゃんは式神ユーノに夢中で気づいておらず、まだ魔法を覚え始めて間もないはやてちゃん以外の魔導師は全員それに気づく。

 それで庭のほうを見てみると…

 

 

 

「ユーノくーん♪」

 

『キュー』

 

「キューじゃわかんないよー」

 

『キューキュー』

 

「な、なのは…?」

 

「なあに、ユーノくん?」

 

『キュー』

 

「こんなユーノくんもなんだか可愛いの」

 

「あー……なのはちゃん?」

 

「どうかしたの、たっくん?」

 

「あっち」

 

「あっち?

 んっと……あ」

 

 キューキューと鳴くだけの式神ユーノ相手にお話(・・)してたなのはちゃんに呼びかけて、俺は庭のほうを指差す。

 なのはちゃんが俺の指差す方向を見ると、そこには小動物姿でもハッキリ解る呆然とした表情の本物のユーノがいた。

 

 本物のユーノの姿を認識したなのはちゃんは、手に持っている式神ユーノと何度か見比べて状況を判断しようととしている様子。

 突然現れた本物のユーノの姿に少々混乱しているなのはちゃんの変わりに、美由希が俺に対して問いかけてきた。

 

「あのユーノもたっくんの出した式神?」

 

「んにゃ、俺が出してる式神はその一匹だけ

 だからあれは本物だな」

 

「じゃあ、戻ってきたんだ!?

 お帰「ごめん、なのは!!」」

 

 なのはちゃんが帰ってきた事を喜んだ様子で呼びかけようとしたところで、ユーノの謝罪の声が遮った。

 

「ゆ、ユーノくん?」

 

「すぐ帰ってくるって言ったのになかなか帰って来れなくて

 約束を破ってごめん」

 

「う、ううん、大丈夫

 気にしてないよ」

 

「気遣ってくれなくていいんだ

 もう遅すぎたんだって解ってるから」

 

「えっと、どういうことなの?」

 

 ユーノの様子のおかしさに少々戸惑うなのはちゃん。

 

「僕が早く帰ってこないから、別のフェレットを飼い始めても仕方ないんだ」

 

「え!? えっとあのね!!

 コレは違うの!!」

 

『キュー』

 

 原因が手の中にいる式神ユーノである事に気づいたなのはちゃんは取り乱し、喧騒とした雰囲気の中でも存在をアピールするかのように鳴く式神ユーノ。

 

「約束を破ってしまった僕が悪いのは解ってる

 けど………だからって………」

 

「ユ………ユーノくん?」

 

「僕の名前を付けなくてもいいじゃないかーーーー!!!!」

 

「ユーノくーーーん!!!」

 

 その場にいるのに耐え切れなくなったユーノは窓から外に走り出していき、慌ててそれを追うなのはちゃん。

 その手にはいまだに式神ユーノは握られたままだった。

 

 様子を見届けていた皆は呆然として二人(一人と一匹?)が出て行った庭の窓を見ていた。

 シンとした沈黙を終わらせたのははやてちゃんの一言からだった。

 

「修羅場やな」

 

「いやはやてちゃん、それは違う………とは言い切れないのか?」

 

「ユーノが二匹ともいなくなっちゃった

 たっくん新しいの出してー」

 

「今の騒動の後にそれを言うか!?」

 

 

 

 その後何とかなのはちゃんが連れ帰った本物のユーノは、式神のことを説明されて事は収まった。

 美由希が事情を知ってたり式神と言う物に興味を持たれたりなどいろいろあったが、この集まりに人が一匹加わったということ以外大きな変化はなかった。

 

 

 

 

 


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