「続きまして、現在製作中の兵装に関するデータです」
来た!キタキタ来ましたよ!俺のロマンと妄想とフロム脳の真髄を開発者達に託した結果生まれた素敵兵器が!
とはいえ現在はまだ開発中。異世界に行く頃には完成するらしい。
現在は製造段階に入っているので、実験等で得られたスペックデータの確認だ。
エリスの言葉と共に空間投影ディスプレイに仕様書が表示される。
一部の数値は意味が分かるのもあるが、基本的にワケワカメである。
「まず悠二様の『可変展開兵装構想』ですが、そのほぼ全てが実現可能であるとの結論が出ました。
その中から今回製造される兵装についてご説明致します」
可変展開兵装構想。大層な名前が付けられてしまったが中身は大した事は無い。
「あれ?ネクストって思考制御出来るのに武器は腕に一つって勿体無くね?」という考えからだ。
勿論ややこしい武器の切り替えなぞコントローラーで出来るかっていうのはわかっている。
だが実際に思考制御を使うならそれは別に不可能では無いはずだ。
しかし幾つもの武器を装備するのはかさばるし重いし邪魔だ。
なら、一つに纏めてしまえばいい。そんな暴論がまかり通ってしまった結果である。
大型の兵装ユニットとして存在するそれを変形させる事で様々な武装を使えるようにする、というもの。
開発者に話したら目を輝かせながらコンピューターへと飛んでいったのを覚えている。
「まず追加機構から。肩部・背部追加ユニットとしてアサルトドラグーンユニットを開発。
電子戦装備とブースターを内蔵した両翼を肩に装備し、大型ブースターとミサイルコンテナを背面に装備します」
仕様書を展開。そこには恐るべきデータが示されていた。
まず肩部ユニット。肩を覆うように取り付ける全翼機の翼のような形のユニットだ。
装甲を展開する事で内部の機構を露出する構造となっている。
機体のレーダーやカメラを補助するハイレベルな電子戦装置と広域ECMユニットを搭載。
さらに翼の後方・先端・上下へと内蔵されたブースターによって複雑かつ瞬間的な機動が可能。
小型軽量のコジマ電池を搭載する事でこれらの装置のエネルギー消費の多くを自給し、
機体の消費は広域ECM展開時などの最低限で済む。
翼自体も空力を考慮された形状で、機体胸部と合わせて見ると戦闘機に頭と脚が生えたようにも見える。
長距離航行時は肩部を固定、脚部を正座のように折り曲げ腕を後方へ折り曲げて前傾姿勢を取り、
まさに戦闘機的な見た目になって飛ぶのだとか。
で、それ以上に凄いというかえげつないのが後部ユニット。
1基の大型ロケットブースターの周囲をコンテナ型のブースターが8基取り囲んでおり、
コンテナの内部には膨大な量のマイクロミサイルが搭載されている。
コンテナは四角柱型で全長5m、一面の幅は1m。
そのコンテナの全ての面に直径50mmのマイクロミサイルが蜂の巣状にびっしりと搭載されているのだ。
横一列80発×16段で合計1280発。それが4面で5120発。さらにそのコンテナが8つあるので合計4万960発。
もはや頭がおかしいとしか言いようが無いのだが、雑魚や拠点の制圧用の制圧火力が欲しいと言ったら用意されてしまった。
いくら一括製造かつミサイル自体は小型で威力も低いとはいえ、全部合わせれば相当な額だ。威力など言わずもがな。
ロケットブースターの周囲を取り囲む構造上、一度に発射出来るのは各コンテナにつき1面だけ。
1面撃ち切ったらブースターの入っている軸を中心にリボルバーのように回転して次の面を展開する。
しかしそれでも最大で10240発のミサイル。まさに絨毯爆撃である。何より恐ろしいのは、この1万発のミサイル、全て半有人制御だ。
エリスの超処理能力でターゲット選定から追尾までをある程度遠隔操作出来るのだ。もはや悪夢と言えよう。
当然これだけ搭載すれば負荷は大きいのだが、エネルギーはやっぱりモーマンタイ。
なにせこのユニット、機体と接続する基部に小型の擬似小島ジェネレーターを搭載している。
しかも機体と接続してエネルギーの共有が可能だ。馬鹿げている。
小型低出力とはいえ炉心を二機も搭載すればそら出力は十分だろう。多少の重さなど苦にならない出力が得られる。
「長距離航行時はこれらを装備し、アサルトモードとして高速で移動。ネクストとの高速戦闘時は機動力確保のためパージします。
パージ後は自律稼働によって軟着陸、あるいは作戦領域を離脱します」
まあ、自分自身にブースター搭載している上に燃料もほぼ無制限だからこそ出来る芸当である。捨てるのは勿体無いもんね。
基本的には広域ECMとミサイルで制圧し、撃ちつくしたら後部ブースターをパージ後殲滅戦。
ネクストとの遭遇時は肩部ブースターもパージして機動力を確保する事になる。
翼は前方への空力を考慮しているし、大型なので邪魔臭い。旋回にマイナスになる以上ネクスト戦には不向きだ。
相手がタンクとかになるとその限りではないし、結局は状況次第なのだが。
「次に、アサルトドラグーンパージ後用の背部兵装として、ソニックフェニックスが用意されています」
表示されたのは、半月型の基部の局面から4本の棒を伸ばした形状の兵装。
基部は半月の切断面に接続用のプラグがある。機体背面のコンテナブロックの両脇に装備するようだ。
棒は少し平たく細長い。先端は尖っており、刃の無い直刀を寝かせたような形をしている。
背面用兵装なのでこれが二つ。基本的には両側に同時装備することを前提としているようである。
「支柱部分からは直刀状のSPAを展開。最大延長10mの翼の表面で粒子反応を起こす事により推進力を得ます」
エリスの言葉と同時に画面内の3Dモデルが稼働。平たい支柱の両脇から刃状のSPAが伸び、先端で交わって更に伸びていく。
機体の背面に装備されたユニットによって、機体の両サイドへ計8本の光の線が伸びた。
なんとなく、どこぞの紅◯可翔式を思わせる。あっちより羽根の数は多いが。
丁度細身の剣の両刃が生えて伸びたようにも見え、事実当たったら斬れるだろう。かなり鋭い。
「展開されたSPAは装甲型と同様にブースターとしての機能を持ち、永続的なブーストも可能です。
また、発生させた粒子とエネルギーを電磁場形成と粒子制御により収束・加速させ射出する事が可能です」
要するに、ビームである。羽根からビームである。便利兵装である。ロマンである。
専用の機構が居る上に脆くなるので装甲への導入は見送ったが、それでも強力だ。
使用に際する難しい演算はエリスにお任せ。多大な消費エネルギーはジェネレーターから。SPAと電脳とジェネの3つマジチート。
「簡易的なもののため威力自体は然程高くありませんのでご注意下さい。続きまして、腕部兵装の説明をさせて頂きます」
さて次だ。まず唐突だが、ゲームのACFAでは万能型より特化型の方が強いとよく言われる。
実際そういう意見が多いのも事実だが、それはACシリーズの操作性によるものだと思っている。
なにせこのシリーズ、コントローラーの殆どのボタンを瞬間的に使いまくるのである。ACFAのような高速戦闘では尚の事。
そんなややこしい操作をしつつ位置取りを考え距離と状況に合わせて最適な武器を使い分ける。無茶振りにも程がある。
だからこそ、ある程度プレイスタイルを限定出来る特化型は慣れやすいし扱いやすいのだ。
機体性能も一極集中した方がアセンブリがしやすく、その範囲においては最適化されている分強い。
しかしそれは決定的に苦手な距離、武器があるという事でもある。これは痛い。
なにせこれから俺が行くのは戦場。苦手な距離だったから負けたでは済まない。
アセンブリを変えようにも、ゲーム開始初期と同様使える種類は少ない。
だから必然的に万能型の方がいいし、何より俺は万能型が得意だ。
使い分けは大変だが好きなアセンブリで安定して戦えるし、次々と武器と距離を切り替えて戦うのは楽しかった。
ここまで言えば分かると思うが、これから出てくる武器はそういうものである。
「右腕の兵装から。マルチウェポンユニット1番、ガラティーンです。
ガトリング砲・プラズマガトリング・ガトリングパイルを搭載した近接用兵装です」
うん、振り上げたその腕を下ろして欲しい。取り敢えず順番に説明していく
英名『Gallatin』、日本語ではガラティーン。肘から手首までの下腕全体を覆う追加装甲からなる兵装である。
追加装甲の外縁部には四角柱型の基部が8つ並び、それぞれの内側には円柱型のバレルを内蔵している。
バレル後方には装甲内部からせり出した実体弾丸用弾倉が接続されている。
兵装の後方には大口径の杭を内蔵した8基の弾倉が装備されており、
兵装最後部の肘に当たる部分には杭の射出用の大型ユニットが搭載されている。
腕の周りをぐるっとガトリングが囲み、その後ろ少し開けた所に杭の弾倉、肘には大型ユニットという形状である。
砲身内には強力なローレンツ力を発する電磁コーティングが施されている。SPAは力場は阻害しない。
まずガトリング二種から見て行こう。
8本のバレル後方が追加装甲内と直結しており、装甲内部の装置で生成した低出力プラズマを装填。
コイルガンの機構を用いて射出し砲身内の電磁コーティングによって生じた強力なローレンツ力によって再加速。
ガトリング機構によって瞬間的に砲身を切り替え続ける事で砲身への負荷を抑え、冷却装置によって冷却し続ける事で連射性を確保。
ガトリング砲としての連射性・速射性を確保しつつ、エネルギー兵器らしい高火力を得ている。
また8本の基部最後部には弾倉が接続されており、プラズマの代わりに実体弾の射出が可能。
こちらもコイルガンの機構による射出と砲身内のローレンツ力による再加速を用いる。
プラズマ式と比べ装弾数と破壊力に劣るものの、高いPA減衰力とプラズマ式よりも長い射程を有している。
と、まあACFAでのガトリング不遇を受けて製作を依頼した兵装だ。断酒の切り替えによる対応力の向上に成功している。
そして、お待ちかねガトリングパイル。パイルである。杭打ち機である。ロマン兵装である。
この兵装の展開機構。まず装甲が前方へ展開し拳を含め完全に腕部を覆う。
その後8本の基部が前方へと迫り出し、実体弾丸用弾倉を装甲内部へ格納。
兵装後方の杭を内蔵した弾倉が前方へせり出して砲身へ接続。
兵装最後部の肘部分に装備された大型ユニットが迫り出して砲身後方へと展開し、弾倉後部と密着する。
これで杭入り弾倉と直結した8連バレルが腕を囲い、その内の一基の真後ろに大型ユニットが鎮座している形になる。
バレルとユニットはSPAによって隙間を詰めているが物理的に接続してはいないので回転を妨げる事は無い。
発射時は大型ユニット内で小規模なコジマ爆発を断続的に起こす事で衝撃を発生、それを弾倉内の杭へ伝える事で加速。
砲身内のローレンツ力と合わせて高速で射出し、対象へ撃ちこむ。
射出後はガトリング機構によって砲身を切り替え、再び大型ユニットと密着した弾倉へ衝撃を送り込んで射出。
射出した杭は即座に弾倉へと引き戻され、再装填される。
これを繰り返す事でパイルバンカーを高速で連射するという素敵性能満載な兵装が完成した。
射出用の大型ユニットが肘部の一基のみのため同時発射数は1発に限られるものの、
凶悪な威力で射出されるパイルを毎秒8発の高速で連射するというまさに一撃必殺のロマン武器と化している。
射出終了後は衝撃と熱の排出と高速冷却のためにユニットを後方へ戻し、ユニット後部を起こす形で展開。
杭用弾倉と射出用ユニット後部から勢い良く煙を吹き出すその様は非常にロマンである。かっくいい。
「続きまして左腕部兵装です。マルチウェポンユニット2番、アロンダイトです」
おっと悦に入っていて聞き逃す所だった。次は左腕部用兵装。
ガラティーンは近距離からゼロ距離用の兵装だったため、こちらは中距離以上を想定している。
説明が長いので飛ばし飛ばし読んでくれ。英名は『Aroundight』、日本語ではアロンダイト。
手先を含めた下腕全体を覆う追加装甲と、そこから真っ直ぐに伸びる四角柱型の砲身8本からなる大型射撃兵装。
追加装甲内部にトリガーを有し、装甲内部に多数の弾倉を内蔵。
砲身は長方形の砲口を持つ細長い四角柱型で、8本の砲身が砲身底部で八角形を描くように並んでいる。
各砲身の基部には2箇所に可動関節が内蔵されており、砲身底部で隙間なく八角形を描く通常状態から八方へ展開することが可能。
伸ばした指を引き寄せるような駆動によって円形のクロー状にするように変形する。
これらも切り替え可能な兵装であり、8連装レールガン・8連装レーザー砲・大口径レールキャノン・大口径プラズマ投射砲となる。
まずは8連装レールガンから。
クロー状に展開した状態で使用する。色々理由はあるけど、一番の理由はその方がかっこいいから。
砲身の内部にはガトリング同様強力なローレンツ力を発生させる電磁場コーティングを施されており、
弾倉から装填された弾丸を基部の電磁加速機構で加速し、砲身内の電磁場による再加速と合わせて高速で射出する。
非常に高い弾速と長い射程を誇り、貫通力が高く距離による減衰を受けにくいのが特徴。
8連装のため当然8発同時に発射する事が可能であり、大型追加装甲内に弾倉を組み込む事で装弾数の増加にも成功している。
続いて8連装レーザー砲。
上記のレールガンと同様クロー上に展開した砲身を、更にそれぞれの砲身を裂くように上下にも分割展開。
基部から送信された高出力レーザーを砲身に沿って放出する。
出力調整と電磁場制御による干渉によって偏光させ、最大80度・最多4回の射線偏光が可能。
要するに折れ曲がるレーザーであり、遮蔽物越しの狙撃から全方位攻撃まで幅広く応用する事が可能な超技術。
ただし各種制御や高速戦闘中での使用はAMSによる思考操作に加え特異な専門素質を要する。
しかし我が機体の火器管制はエリスさん。的選択やトリガー以外のロック作業は彼女持ちである。
素質なんて関係ない。世の努力家達に喧嘩を売っている気がする今日この頃。
さて問題の大口径レールキャノン。
砲身は外側下部にも電磁コーティングが施されており、砲身が円形に並ぶことで下部が八角形の砲身を構築する。
更にSPAによるエネルギーバレルの形成によって長大な擬似砲身を展開して準備完了。
大口径かつ強力なローレンツ力を持つ八角砲身からは大型の弾丸を超高速で射出でき、それだけでも絶大な破壊力を誇る。
そこに加え通常の弾丸ではなく専用の多重反応弾を用いるため、大口径レールキャノンとしての破壊力に加え、
多重反応による物質の分解・爆縮による超高エネルギー・放出されたエネルギーと粒子による衝撃波などによって広域破壊殲滅を行う。
機構の大型化によって射出力が向上されており、弾丸に対して対電磁波処理と空気抵抗を減衰するコジマジェルの塗布を行う事で、
音速の3倍にも迫る超加速・3000mにも及ぶ超射程・非常に高度な射撃精度・レーダーやカメラ等による認識阻害能力などを有する。
最大射程での使用には足場展開による空中静止と極超長距離狙撃用の狙撃モードの使用が前提となっており、
その状態では機動力0で近距離ロック性能も低下。通常状態では1.5キロほどが限界ロック距離となる。
「こちらが多重反応弾の仕様書です」
多重反応弾。
粒子の反応抑制技術を用いて二層構造の砲弾の中に陽電子と擬似コジマ粒子を保存したもの。
発射時に外側層をレーザー加熱して内部の反応抑制コーティングを融解、擬似コジマ粒子の反応を誘発。
着弾時の衝撃と反応状態の擬似コジマ粒子が持つ高エネルギーによって自壊し、
充填された陽電子の対消滅反応と擬似コジマ粒子の爆発反応を引き起こす事で砲弾を中心に爆縮を発生。
瞬間的に小規模炉心と化した元砲弾内の各種反応によって反応範囲内の物質を分解、
爆縮によって発生した莫大な熱エネルギーによって周囲の物体は蒸発し、
更に発生した膨大な衝撃波によって広範囲を壊滅させ甚大な被害を齎すというもの。
また、陽電子の対消滅によって生じるガンマ線と擬似コジマ粒子、そして反応地点で生成される幾つかの粒子が反応、
別の無害な粒子へと変換される事が確認されており、
この反応現象を積極的に誘発する分量配分にする事でこの砲弾の使用による各種汚染はごく最小限に抑えられ、
反応現象の追加による威力の向上にまで成功している。
要するに、『コジマ砲よりはクリーンで高威力な反応弾』である。
全く汚染がないわけではないが、通常のPAを展開しているネクストよりはマシであろう。
そして武器紹介ラストは大口径プラズマ投射砲。
レールキャノン用弾丸内の擬似コジマ粒子と陽電子を反応、反応抑制機構によって反応出力を調節し、弾殻をプラズマ化させる。
プラズマ化した粒子と生成された粒子及び高エネルギーを加速装置によって加速、
砲身の電磁コーティングによるローレンツ力と合わせて超高速で射出する。
生成されたプラズマを絶え間なく射出し続ける事で約1秒間の間高出力のエネルギーを放出する。
一種のビーム砲であり、距離減衰と射撃精度を代償に亜光速の超速度と圧倒的な破壊力を誇る。
無差別破壊を引き起こすレールキャノンと違い、純粋なエネルギーの投射のためピンポイント攻撃が可能な点が特徴。
「ほんと、どうしてこうなった?」
「全て悠二様のご提案通りですが」
悪いのは俺なのか?確かに開き直って中二病満載のアイディアを出しまくったけど。
それはあくまでその内の幾つかでも実現してくれればかなり強力な機体が出来るだろうな、と。そう思って言ったんだ。
正直に言おう。変態ナメてた。まさかあの変態技術者連中、こんあバケモノ完成させてくるとは思わなかった。
しかもタチの悪い事に有り得ない程の超技術満載というわけじゃない。
量子コンピューターなんて前からあったのを生体部品っていうグレーな手段まで使って小型化・高性能化させただけだ。
コジマ粒子に代わる粒子だってどこぞの世界で似たような粒子が在ったのを実験繰り返して使えるようにしただけ。
粒子制御技術だってどこぞの世界から持ってきたのを実験的に導入しただけ。
粒子反応の抑制なんて、ちょっと近未来で核融合炉とか使っている世界になら割とよくあるらしい。
電磁コーティング等の各種コーティングや特殊材質だって、幾つかの世界から丸写ししただけの技術だ。
ただ、それだけ。今述べたたったこれだけの技術を組み合わせ、こんなバケモノを作ってしまった。
技術をモノにした連中も、応用した連中も、変態揃いである。もう一度言う。変態ナメてた。
「本機は"ステイシス"及び"ホワイトグリント"を参考にデザインされており、全翼戦闘機をイメージしたフォルムとなっています。
空力を考慮しブースターも最新のものを用いた非常に高機動な機体です」
ああうん話進めるのね。
えっと、特に近いのはステイシスだね。SPA展開時は少し厚みを増してホワイトグリントに近くなる。
まあ作中でも印象の強かった二機だし、折角作るなら似たようなデザインに、と思いまして。細部はかなり違うけどね。
なんで完璧にイメージ通りに仕上げて来るかなあ。もっと違和感あるもんなんじゃないの?普通。
「悠二様には明後日、AMSを含めた各種調整処理を受けて頂きます」
取り敢えず機体の説明が終わったので格納庫から出つつスケジュール確認。
輸送機も別の所で組立作業中らしいし、完成したら見に行く事にしよう。
とまあ現実逃避しても仕方ないので話を戻す。
AMS。前述したが分かりやすく言うと思考制御を行うために神経を改造するのだ。
それにリンクスはAMSだけでなく、強烈なGへの耐性を含めた各種負荷などの諸々に対する耐性を得る必要がある。
そのために体をいじくりまわすのだ。場合によっては半ば生体機械化するかもしれない。
「ですが、悠二様へ施されるのはあくまでナノマシンによる強化処理のみです」
そう、俺は本来なら必要となるきっと痛いであろう手術をスルーして、ナノマシンによる手術が可能だ。
なんでも細胞を強化するナノマシンを用いて、細胞自体の強化と結合の強化を行うんだそうだ。
細胞一つ一つが出せる力を向上させるんだな。
強化された細胞はちょっとした刃物や軽機関銃ぐらいは当たりどころ次第では無傷で済むらしい。
当然Gへの耐性も万全。内臓等の機能や強度も強化されるので、勝手に健康になってくれるんだとか。
ナノマシンはがん細胞を避けるので強化された正常な細胞ががん細胞を駆逐してくれるなど、色々便利。
勿論医療補助用のナノマシンも含むし、AMSの変わりに量子通信によって脳と機体を直結させるナノマシンも注入される。
しかもこのナノマシン、燃料が脂質である。つまり体脂肪や血中脂肪を燃焼して動くのだ。
特に初回起動時の肉体を大幅に改造する時に物凄くカロリーを食うらしく、
ロクに運動もせずぽっちゃりしていた俺に対し足りないからもっと太ってこいと言うぐらいである。
そして燃焼されたカロリーの代わりに、強化された筋肉細胞は強化された事で自身への負荷を増すため常に筋トレ状態。
負荷と釣り合いが取れる一定レベルまで勝手に筋肉が鍛えられる。
細胞そのものの出力を上げるためムキムキマッチョになるわけでは無いらしいのだが、
どこぞのマンガの主人公が如くスマートでしっかりした体つきになること請け合いだとか。結構嬉しい。
普段の食事量を倍近く増やさないといけないこと以外大してデメリットも危険も無いのだが、
それでも手術とか処理と言われると少しビビってしまうチキンな俺。未だに採血と歯医者は嫌いです。
「リハビリが終了する頃には私も完成しますので、頑張ってくさださい、悠二さん」
よっしゃやる気出てきた。
ああ、ちなみにエリスはプライベートとそれ以外を使い分ける。
喋り方は変わらないが少し微笑みが増えて呼び方がさん付けになる。
元々、何かしらやる気を出す時や気合を入れる時に適当な語句に合わせて意識を切り替えるというのが俺の得意技だった。
本来ならこうして仕事とプライベートとかで使い分けるのだろうが、
俺の場合はもっぱらACFAでのネクスト戦みたいに集中力を要するゲームで使っていたので凄い無駄使いしていたが。
それでそれを見ていたエリスが人間らしい意識の切り替え方として学習して真似をしだしたのだ。
ちなみによく使うのは某正義の味方にあやかって撃鉄を上げるイメージ。「撃鉄を上げろ」と口にしたりもする。
案外こういうのは馬鹿にならないもので、やるとうまい具合に頭の中でスイッチが入るのだ。
大学入試の時に妙に頭が回らないと思ったらこれをやり忘れていて、
慌ててやったらすらすら解けるようになって普通に合格できたという経験もある。
普段から繰り返しているというのもあるだろうが、こんなのでスイッチ入る辺り中々人間の頭というのはファジーに出来ている。
「着きましたよ、現実逃避は終わりにして下さい」
せんせー、エリスが冷たいです。あ、元からですかそうですか。
さーて付いちゃったよ施術室。重厚な扉なんぞなく普通の医務室。
カプセルに入れて点滴さしてナノマシン注射して睡眠剤で眠らせて起きたら終了である。超簡単。
だからビビる必要など何も無い。無いのだ。
「が、がんばるぞー、おー」
どもったのはどうか見逃して欲しい。