・オリ主
・チート&俺TUEEE
・同系列作品多重クロス
・ハーレム
・おねショタ
・同人ゲームにおける設定
などが含まれます。ご注意下さい。
1ターン目
「おお、起きたか」
目が覚めるとそこには髭面のオヤジの顔…なんちゅう朝だ。
寝ぼけ眼を擦りながら起き上がると、今自分がどこに居るのかを思い出す。
此処はとある世界の海の上。定期便に乗ってビスタ港という港へ向かっている最中だ。
船室の中は必要最低限の家具が置かれており、ベッドの脇には俺の荷物も置いてある。
「もうすぐ港に着く。荷物を纏めて降りる準備をしておきなさい」
「はい」
俺に声を掛けてきた髭面のおっさんの名前は『パパス』。皆ご存知ぬわーの人。
さて、今の一行で俺がどういう存在でここがどういう世界かは概ね理解してもらえたと思う。
何を隠そう俺には前世の記憶というか知識があるのだ!そこ、テンプレ乙言うな。
まあ実際記憶は結構歯抜けがあるし、記憶というより知識…映画でも見たような感覚だ。
それに最初から自我があったわけではなく、自我の成長と共に思い出していった形になる。
俺個人としては今生きているこの肉体の精神のつもりなんだけど…実際どうなのかは分からない。
異世界から精神だけが乗り移ったのか、それとも単に前世の記憶があっただけなのか。胡蝶の夢かも知れない。
で、そんな記憶の中でもなぜか鮮明に、まるでハードディスクに記録でもしたかのように細部まで克明に覚えている事がある。
それが俺が今居る世界、ドラゴンクエストというゲームの記憶である。
正直最初は驚いたなあ。知らないはずのことを知っていて、それと全く同じものを体験するのだ。子供心にかなり怖かった。
ちなみに一応だが俺はドラクエシリーズは全てプレイ済だ。裏ダンなども全クリした。
といっても大概最近のハードでリメイクされたものであるし、昔あったバグ技や裏ワザ、消えた設定なんてのは全く知らない。
そもそも天空シリーズに至っては原作じゃなくて同人から入ったぐらいだ。
一番好きなのはⅦ。長いだのバランスおかしいだのネットでは散々言われていたが、
B◯◯K◯FFで2000円ぐらいで売っていた中古のⅦがドラクエシリーズの初プレイだった事もあってかなり気に入っている。
実際経験値は手に入りにくくてメタルゲーだったけど、現実的に考えればおかしくもない。
長さはストーリーの重厚さのウラ返しでもあったし、長く楽しめるという点でも好きだった。
「船長さん、お世話になりました」
「おお、次で降りるのかい?元気でな」
今何をしているのかって?挨拶回りだよ。この世界では現代日本よりも人付き合いとか礼儀というものが大事にされている。
だからこうして挨拶をするというのは大事な事であるし、そうだと教えられてきた。
実際現代と違ってこの世界での航海は危険が多い。
魔物も出るし、船はちょっとした嵐でも転覆の危険がある。GPSなんて無いから現在位置の確認だけでも大変だ。
そんな世界で船を動かし、俺達を安全に港まで届けてくれる船員さん達になら感謝の念も抱くというものだ。
それにこの時代の木製の船でここまで揺れが少なく快適に過ごせるというのは結構凄い。
「コックさん、有難うございました。料理美味しかったです」
「おう、有難う坊主。また利用してくれ」
そうそう、この世界の話だったな。
先程までの話でここがドラクエの世界だというのは理解して貰えたと思う。
だが誤解しないでほしい。ここは"ドラクエの世界"であって"ドラクエⅤの世界"ではない。
…何が言いたいかと言うと、だ。
部屋に戻って世界地図を広げる。それは俺の知っているものとはかなり違う。
勿論地球の地図と違うのは当然だ。しかし俺の脳内にあるどのドラクエシリーズとも違う。
だが同じ名前の大陸や地名は存在している。
ここまで言えば分かる人も多いだろうが、この世界はドラクエシリーズ全部纏めちゃった世界…なのである。
「イカリを降ろせ―」
おっと、港に着いたよだ。水夫さん達が慌ただしく接舷準備をしている。
とりあえずこの世界の事を頭の片隅に追いやって、様子を見に出てみる。勿論直ぐに降りられるように荷物を持って。
甲板に出ると丁度接舷が済んだ所のようで、この港で乗る客が次々と乗船してきていた。
定期便と言ってもこの世界じゃ一日何本も船を出す事は出来ない。数日から下手すれば数週間に一本だ。
だから乗り込む客も多い。殆どは商人だが、中には冒険者や旅人らしき人も見える。
そんな中でも中々に目立つ客が三人。でっぷりした商人風の男と娘らしき美少女(美幼女?)二人。
恐らく彼らが大商人ルドマンとその娘姉妹のデボラとフローラだろう。綺羅びやかさというか身に着けているものの豪華さが違う。
ルドマンさんはでっぷりした体型に見合わない身軽さで船に乗り込み、デボラは「邪魔よ」と毒を吐きながら乗り込んでくる。
その後ろに続いてフローラも乗り込もうとした所で、段差に躓いてよろけてしまった。
「きゃっ!?」
「おっと。大丈夫?」
「えっ!?あ、はい、ありがとうございます…」
危ない危ない。もう少しで海に落ちる所だった。乗り込みづらそうにしていたので近くに寄っておいて正解だった。
とりあえず大丈夫なようなので一安心して話そうとしたのだが、何故か服を掴んだ手を話してくれない。
どころかまるで見惚れるようにぼーっとこちらを見つめている。
この表情には見覚えがある。以前の旅先でも見たことがある表情だ。
何でも俺の瞳はかなり澄んでいて綺麗らしい。社会人の兄ちゃん(おっさんではない。断じて)の記憶というか知識があるのに。
まあ実際、目は口ほどにモノを言うと言えど、この年ではそこまで内面の影響は出ない。
心に思っている事が目や表情に出たりする事はあるだろうけど、そもそもこの年頃の子にそこまで見分ける能力も無いだろう。
そんなわけで俺の瞳は宝石クラスの美しさらしく、近くで見てしまうと思わず見惚れる…と、旅先のお姉さんが教えてくれた。
「おお、フローラ、大丈夫か?」
「ふぇっ!?お、お父様!?あ、はい、大丈夫です。あの、本当に有難うございましたっ!」
そう言って顔を赤くして走り去っていくフローラ。可愛いではないか。
ルドマンさんらしきおっさんも「ありがとうね」と頭を二、三度ポンポンと軽く叩いて去っていく。
デボラはこちらの様子を伺っていたようだが、目が合うとフンっと踵を返して去っていった。
これでフラグが立った…のか?いや、でも普通に考えてこんな事で結婚まで行くってあり得るんだろうか。
まあ、一応試練を超える必要はあるし、それまではちょっと気になる人ぐらいだったのだろう。
どちらかと言えば結婚してから絆を深める、お見合いのような感じだったのかも知れない。
「おお、ここに居たのか。さ、降りるぞ」
後ろからパパス…親父に声を掛けられてそのまま船から降りる
最初は『お父さん』と呼んでくれと言われたのだが、俺の前世での父親の呼び方が『父さん』だった事や、
当時急速に前世の記憶を思い出して混乱していた俺は軽い腹いせに悪戯してやりたい気分になり、親父と呼び始めた。
最初親父はガッカリしていた様子だったのだが、俺自身は結構得した事もある。
俺が親父と呼んでいるのが可愛らしい子供が背伸びしているように思えるらしく、お姉さま方やお年寄りに受けがいいのだ。
体が子供で反応しないため強い情欲を抱く事は無いのだが、
精神は半ば大人なため綺麗なお姉さんに可愛がられるのはやっぱり嬉しい。
俺は可愛いっていうのも褒め言葉だと分かってるから恥ずかしく感じたりはしないしね。
「む、スライムか…この程度ならお前でもやれるだろう。やってみなさい」
そう言って親父に声を掛けられて前を見ると、ゲームでよく見たとんがり頭のあんちくしょうが3体現れた。
実に可愛らしい容姿でモンスターでなければ犬や猫なみにペットとして普及していたかも知れない。
元々大人しく扱いやすい部類なので、魔物使いに調教されたスライムはペットとして結構人気である。
家の汚れや肌の老廃物を勝手に消化して食ってくれるというおまけ付きだ。
一家に一匹、スライム掃除機。
「ピギー!」
「ハッ!」
下らない事を考えているのがバレたのかは分からないが、3体の内の一匹が勢い良く襲い掛かってくる。
しかし普段から鍛錬でパパスの連撃を捌いている俺からすれば余りにも遅すぎる。
何せ鍛錬では常に俺が認識出来るギリギリの速度で打ち込んで来るのだ。
打ち込み、打ち込まれ、打ち合いを行う。
一時間ずつの三セットを朝と晩に二回、毎日繰り返していたおかげで剣術はこの年ではかなりのものである。
というわけで簡単に攻撃を躱した俺は横目で残りの2体が足を止めているのを確認し、
そのまま飛び込んできたスライムをカウンターで打ち払う。――クリティカルヒット。
「ピギーっ!?」
ひのき製の木刀で思い切り打ち払うと、あっさりとスライムは霧散した。
霧散した後にはゴールド硬貨が落ちている。
何故霧散するのかは分かっていない。単に死んだら消えるのか、それとも魔界にでも還るのか。
ゴールドだって何故落とすのかは分かっていないし、そもそもモンスターが持っていたゴールドを硬貨として流通させたのか、
人間が流通させたゴールドをモンスターが持っているのか、そのどちらかすら分かっていないのだ。
初めて国が出来たのやモンスターが現れたのは随分昔らしく、文献も何も残っていないらしい。
多くの国庫内に死蔵されている硬貨の量が莫大な事や敵を倒せば無尽蔵に出てくるせいで、
製造するよりもむしろ増えすぎた硬貨を回収して物価バランスを保っているらしいのだから凄まじい。
「ぴ、ピギ…」
「ふっ!ハァッ!」
関係ないことをつらつらと考えている間にも戦闘は続く。
仲間が倒されて怯んだスライムの1体に素早く接近し、斬りかかる。
数mの距離があったがこのぐらいなら一歩の範囲内だ。
片足で地面を蹴り飛ばして一瞬で肉薄し、そのまま勢いと体重を乗せて木刀を振りぬく。――クリティカルヒット。
一瞬で迫った俺に全く反応出来なかったスライムは全力の一撃を受けて霧散する。またゴールドを落とした。
一連の流れを見て怖くなったのか最後のスライムが逃げ出そうとするが、回りこんで斬りかかる。
確かに臆病ではあるがメタル系と違って足は早くない。人間の足なら十分に回りこめる。
折角の経験値兼ゴールドを逃がすつもりも無かったので、さっさと打ち倒す事にする。
「セイヤッ!ちっ、ハァッ!」
「ピギっぴっ…ピギーッ!」
回りこんで斬りかかるも今度はしっかりと受け止められた事でクリティカルならず。一撃で仕留めそこねた。
しかし殆ど瀕死だったようで完全に動きが止まり、そのまま木刀で打ち払って倒す。
そして経験値とゴールドを落とし、戦闘を終えた俺の耳にファンファーレが鳴り響いた。
―ててててってってってー―
レベルが1から2に上がる。力と素早さが少し増した気がする。体力と魔力容量も結構増えた。
やはりゲームと同じで序盤はレベルアップの恩恵がデカい。特に体力と魔力。
力などは武器を装備すればレベル数個分上がるのでそれ程でもないが、
体力と魔力容量…所謂HPとMPが増えるのは有り難い。1レベ上がるだけで魔法2、3発分増える事もあるしな。
俺は精神が成熟していた影響かMPが高い。
MPとは魔力の容量と、それを操る精神力のバランスで成り立っている。
精神力や魔力の制御技術が低ければ魔力容量が高くてもMPは低い。
ちなみにこの世界の生物は人間魔族動物問わず、自身が持つ魔力で肉体を強化している。
転職でMPやかしこさが上下するのは、要するにこの強化に割り当てる魔力容量と制御能力が変化するからだ。
かしこさとか単純化されているのは子供や学のない人間にも分かりやすくするため。よく出来ている。
逆にHPは肉体耐久値のみを意味する。スタミナとか体力はまた別物だ。
スタミナ回復を追求した携帯食料は冒険者の必需品だったりする。
「ふむ、ちゃんとレベルも上がったようだな」
「うん、ちゃんと上がった。実感もあるよ」
そうそう、鍛錬をしてきたと言ったが実際の俺のレベルは1のままだった。これは魔物との戦闘経験が無いためである。
この世界、よく分からんのだが戦闘経験と鍛錬経験は別扱いなのである。
分かりやすく言うとキャラのレベルと職業の熟練度の違いに似ている。
何でもルビスの加護だとか天空人の叡智だとか神の祝福だとかいう類のものらしく、
敵を倒せば倒す程その加護とやらが強まり、一定を上回ると肉体や戦闘力が強化される。これがレベルアップらしい。
とはいっても盗賊倒しても経験値が手に入るのだからよく分からんのだが、
そもそも各国の研究者もレベル関連についてはよく分かってないらしいので考えない事にする。
勿論俺のようにレベルが1でも鍛錬によって体を鍛えたり技術を磨いたりも出来る。
ただレベルアップの恩恵がデカいのと手っ取り早いので、鍛錬するぐらいなら実戦で鍛える、という人が多いのだ。
俺は子供の頃からいい師を得た事もあって鍛錬を中心に行なってきたのである。
そもそも、今まで居た所の敵が俺の手に負えるレベルではなかったというのもあるが。
「うむ、中々の動きだった。流石わしの子だな」
「ありがと。親父がいつも鍛えてくれてたおかげだよ」
これは本当に感謝している。そもそも前の世界の親の顔は薄ぼんやりとしか覚えていないし、
年齢と共に思い出した記憶はどちらかというと人に教えられたような感覚だ。
だから俺にとっての親父はパパスで、母親はマーサだ。
厳しい所もあるが基本息子には甘くて優しいし、こうして俺が生きるための技術もしっかりと叩きこんでくれた。
確かにパパスの息子だと色々大変な事も起こるのだろうけど、それでもこの親父の息子に生まれて良かったと思う。
「ははは、そうかそうか。よし、問題も無いようだしそろそろ進もうか」
「うん」
さて、目指すはサンタローズの村。確かビアンカっていう将来のお嫁さん候補と会える筈だ。
フローラの時は一瞬だったためさほどでもなかったが、
流石にこれから未来のお嫁さん候補と会うとなると緊張してくる。
何せ嫁候補について思い出したのは2年間の旅の途中である。
とはいえここからサンタローズまでは数日かかる。ゲームでは野宿シーンなんてカットされてたから分からんかったけど、
やっぱりこの時代街道があるとはいえ子供の足では時間がかかる。モンスターも出るしね。
今は余計な事を考えず、モンスターを倒してレベルアップする事を考えよう。
次は魔法を試してみようかな。剣の技を試すのもいい。ちょっと…いや、かなり楽しみだ。
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「バギ!飛剣、ツバメ返し!」
2体のスライムのグループにバギを放ち、巻き込まれていくのを横目に見ながらドラキーに斬りかかる。
ツバメ返しは親父が覚えていたので鍛錬の時に教えて貰ったものだ。
流石に低レベルで習得するのは大変だったけど、親父直伝という事もあり何とかモノに出来た。
低レベルの内はこういう特効技はかなり役に立つ。ドラゴン斬り、ゾンビ斬り、メタル斬りも覚えている。
魔法に関しては中位呪文までなら一通り使える。補助なども一通り。
この世界での魔法はひたすら魔導書を読み込むか、自身か職業のレベルを上げるか、研究して開発するかで覚える。
俺は1番目の魔導書を読み込む事で覚えた。
文字は精神が成熟していたのと前世のものに似ていた事もあり、比較的簡単に習得出来た。
後は魔導書を読み込んで呪文と魔力の制御パターンを憶え、詠唱してぶっ放す。それだけ。
…親父は攻撃魔法苦手らしいのでそう教えたら「"それだけ"で済むのはお前だけだ」と呆れられた。
本来はレベルが追いつかなければ簡単には覚えられないものらしい。
で、そんな事よりも何よりも問題というかおかしいというか気になる事が一点。
「ライディン!!」
「ピギーーーっ!」×4
…うん、何でライディン?何、歌えばいいの?ららいらーいってか?ゴッドボイスってか?え、古い?サーセン。
っていや、だからそうではなく。何故に使える。勇者の特権では無かったのか。
もしかして天空装備使えるんじゃなかろうな。
いや、予想は出来る。先程話したと思うが、この世界はドラクエシリーズごちゃまぜの世界である。
今居る土地は天空シリーズの舞台となる大陸。
で、ここから遠く離れた北の方にアレフガルドという大陸がある。
トロデーンという国のある大陸とグランエスタードという国のある島国も確認した。世界地図で。
9の舞台は無いらしい。何故かは知らん。作者のしゅm…ゲフンゲフン。
まあつまりごちゃまぜの世界という事は『職業:勇者』も存在するという事だ。
天空の装備が使えるかは別問題だろう。あれは血が問題なんだし。
血と言えば、いたストでⅤの主人公…つまり俺がロトの血を引いているっていう話もあったような。まさかロト装備使えるの?
使えない気はする。なにせ前世の関係ない一般人の記憶があるのだ。天空装備にもロト装備にも反応しない可能性は高い。
となるとⅦ主人公みたいにあくまで人の身と装備で神クラスに挑む事になるんだろうか。
世界の出来事も学んだが、どうやらアレフガルドはⅡ、此処はⅤ、トロデーン周辺はⅧ、グランエスタード周辺はⅦの、
それぞれ本編開始前の世界のようだ。要するに各シリーズの最終章に当たる世界という事だ。
多分グランエスタードの遺跡とかで過去に飛んだらそれぞれの過去時系列の作品世界に辿り着くのだろう。
各作品の主人公は居るのだろうか?Ⅴ主人公は俺だろうけど、まさか他の作品の事件も俺が解決、なんて事は………あり得る。
やばい、幼年期編とかで無駄に時間掛けられないぞ。奴隷生活なんてもっての他だ。
最低でも他に主人公が居るのを確認しないととてもじゃないけど時間を無駄には出来ない。
「おお、サンタローズが見えてきたぞ。うん?どうしたアベル」
「へ?あ、ううんなんでもないよ」
はい、やっと名前が出ましたアベルです。リメイク版の公式ガイドブックや説明書での名前だね。
最初は母さん(親父と違って素直にそのまま呼んでいる)がリュカって付けようとしていたのだが、
親父がアベルで押し通したらしい。リュカと呼んだら泣いて、アベルと呼んだら泣き止んだそうだ。
実際リュカって名前は自分へのイメージ的に微妙な気がするので、
恐らく潜在的に記憶していた前世の人格が反応したのだろう。
そんなわけで俺の名前はアベル・エル・ケル・グランバニア。名前以外は小説&CD通りである。
勿論現在はグランバニア性は隠して偽名を名乗っている。
親父は俺が王子だと知らないと思っているようだが、前世知識で知っているのだよはっはっは。
「お?おおっ!パパス様!パパス様では御座いませんか!それに坊ちゃんも!」
「ああ、久しぶりだなサンチョ。元気にしていたか?」
「勿論でございますとも!パパス様もお元気そうで。坊ちゃんも大きくなられましたなあ」
村に入るや否や男性が声を掛けてきた。親父の召使のサンチョさんだ。
陽気に大声で名を呼ぶもんだから、他の村人達も集まってきてしまった。
結局そのままわいわいと騒ぐ人の波に連れられ、再会を喜ぶ人達との歓迎会に発展してしまった。
小さい頃から自我があったため覚えているが、やはり親父は村の人に好かれている。
このサンタローズ以外でも友好的な人は多いし、出会った人は概ね友好的に接してくれる。
やはりその強さと人柄が好まれるのだろう。
なにせ強さ…要するにレベルが高いとそれだけで強者の風格がヒシヒシと滲みだす世界だ。
加護が目に見えるとでも言うのだろうか、見た目ひ弱そうだったり気弱な人物でも、纏う空気で一目瞭然。
魔物が跋扈するこの世界では男でも女でも強い・頼りになるというのは好かれる要因の多くを占めている。
だから強い風格を持っているとそれだけで一目惚れされる、なんてこともあるぐらいだ。
見た目完全におっさんな親父に一目惚れして告白してきた20代前半らしき女性が居たのには流石に驚いたのを覚えている。
まあ要するによほどの下衆でなければ強くなるだけで嫁さんには困らないというわけだ。
王族や一部の国では一夫多妻も認められてるしな。
一夫一妻にするよりも、力ある者が複数の女性を守り、優秀な遺伝子を多く残す方がいいという事らしい。
実にうらやまけしからん話しだ。あ、俺も王族だっけ。ありがたやありがたや。
「あ…えっと、アベル?」
「へ?」
いきなり躊躇いがちな声で名前を呼ばれたので振り返ると、なんとも可愛らしい金髪美幼女が一人。
将来はきっととんでもない美人になるだろう。いや、知識に関係無くそう思える。
まあ読者諸兄なら直ぐに分かると思うが、彼女がビアンカだ。
金髪を三つ編みのおさげにしていてちょっとお姉さん気取り。背伸びしたいお年頃。
以前会ったのは2年以上前で俺は当時4歳。流石に普通なら覚えていない可能性の方が高いのだが、
3歳頃には人の顔を憶えられるぐらいには人格が形成されていたのでモーマンタイ。
いきなりの再会でちょっと驚いたが、可愛らしい姿を見て笑みを浮かべながら名前を呼ぶ。
「久しぶり、ビアンカ」
「えっ!?あ…覚えてて、くれたんだ」
お姉さんらしくしたいのか必死で抑えようとしているが、嬉しそうな空気が滲み出ていて完全にバレバレだ。
勿論それを指摘するような事はせず、久しぶりに会った幼馴染を優しくハグする。
顔を赤くしたビアンカはそれでも抵抗せずに抱き返してくれて、改めて「ひさしぶり、アベル」と声を掛けてくれた。
この世界は欧米文化なので親しい人同士がハグするのは別段おかしくはないのだが、
流石にこうして相手に恥ずかしがられたり、色っぽいお姉さんにされたりするとドキドキしてしまう。
…というか、長い。普通ハグって挨拶代わりの一瞬で終わるんだけど。何故か離れようとしないビアンカ。
あれ、なんでこんな好感度高いの?レヌール城イベントまだだよ?
「…ビアンカ」
取り敢えず俺の方から離れる気は毛頭無いのでそのまま抱きしめ直す。
頭を優しく撫でて、そのまま頬を撫でながらそこで手を止める。
若干ビアンカの目が潤んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
というか女の子と抱きあって頬に手を添えるってこれキス直前の体勢じゃね?
…あ、なんか恥ずかしくなってきた。やばいドキドキする。俺今絶対顔赤い。
「…ふふっ」
と、突然何が可笑しいのかクスリと笑うビアンカ。
さっきまでのうっとりした表情とはうって変わって、いつものお姉さん気取りの表情だ。
「アベル、顔真っ赤よ?あはは、可愛い♪」
「うぐっ…」
やっぱりかあ…
いや、しょうがないだろ?ビアンカ可愛いんだから。
前世の知識あっても精神や人格はこっちの俺のものだし。だからロリコンではない。決して。
というかもうロリコンでもいいや。ビアンカ可愛い。
「おやおやまあ、微笑ましいねえ」
「ほお、やるなアベル。もうお嫁さん見つけたのか?」
馬鹿な事を考えているとビアンカのお母さんと親父から茶化すような声が聞こえる。
振り返ると集まっていた人たちが実に微笑ましいといった様子で生暖かい視線をこちらに向けていた。
…完全に忘れていた。そうだ、今周りには大量の人が居たんだった。あ、やばいはずい。
見ればビアンカの顔も真っ赤だ。多分お嫁さんとか言われたのもあるんだろう。
とはいえそこは20過ぎの知識を持った俺。顔を赤くしながらも務めて冷静に切り返す。
「あはは、お義母さんも、お久しぶりです」
『おおっ!?』
「なっ!?」
俺が声を掛けると小母さんがあらあらといった感じでほほ笑みを浮かべ、
親父は流石わしの息子だと言わんばかりに頷いた。
周りの大人たちは『言うじゃねーか坊主』的な歓声を上げ、ビアンカに至っては真っ赤になって俯いている。
お嫁さん発言を認めるような事を言っただけでこれである。実に可愛らしい。
難点としては言った俺も中々に恥ずかしく、顔の赤さを全く誤魔化せていない所だろうか。
「はっはっは、相変わらずだなアベル。積もる話もあるだろう。
わしはわしで話があるから、ビアンカと一緒に部屋に行ってなさい」
「うん、分かった。ほら、ビアンカ」
「え、ええ…分かったわ。…もう、アベルのばかっ」
気を利かせてくれたらしい親父の声に従ってビアンカの手を取る。
ビアンカも満更でもないのか、口では悪態をつくも表情は嬉しそうだ。
取り敢えず何から話そうか。まずは改めて再会を喜んでいることを伝えよう。こういうのはマメさが大事。
そしたら次は旅の思い出だな。親父が告られた事とか、俺の鍛錬の事とか。
初めての戦闘の話もしたいし、新しく覚えた魔法の話もしよう。
ビアンカの方も話したいことは沢山あるはずだ。ちゃんと聞いてあげて忘れないようにしないとね。
話が終わったら一緒に遊ぼう。鍛錬ごっこをしてもいいし、魔法の練習でもいい。
裏手の洞窟に行くのもいいし、ただ喋りながら歩くだけでも楽しいだろう。実に楽しみだ。
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