黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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2話

「ライル!」

 

「ん?あー、ムウか。どしたー?」

 

「なんだ、気迫がないな」

 

「これが地だよ。仕事の時は気合が入るのさー」

 

「ははは、切り替えが上手いのはいいことだな」

 

「で、何の用?」

 

「おう、お前の寄越してくれたミネアな」

 

「ミネア……ああお前に付けた専属ドールの名前か」

 

「驚いたぞ、出会って最初に名前をつけて下さいなんてな」

 

「初恋の相手か?」

 

「ただの思いつきだよ。それでも喜んでくれたけどな」

 

「俺はクールな方が好きだし楽だから"クーデレ"の思考パターン入れてるけど、お前らのは感情豊かだからな」

 

「エリスの様子見てもっとAIっぽいの想像してたんだけどな。あれ生身の人間だって言われても信じられるぞ」

 

「俺のAI萌えへの情熱舐めんな。で、予想は付くけどどうだった?」

 

「ああ、すげえよ。容姿やスタイルも俺好みだし、仕草や行動の一つ一つがドストライクだ。

 お前が言ってた"萌え"っていうのが理屈じゃなく心で理解できた気分だ。惚れるかと思ったぜ」

 

「惚れればいいじゃない」

 

「バーカ、俺は割りきって付き合うつもりだよ」

 

「まあ、本物の女と違うからな。あくまで男の理想とする女を再現したものだ」

 

「その割にはなんていうか、演技って感じがしなかったんだが」

 

「そりゃそうだ。演技じゃなくてほんとにそういう人格だからな」

 

「ハニートラップじゃねえのか?」

 

「非接触回線」

 

「本人に自覚がなくても機能するってことか……こええなおい」

 

「まあ流石に自覚や意識はあるけどな。その上であの人格なんだ。プログラムだからな。

 そうだと知った上で天然の行動を取るなんて矛盾した事も、しっかりプログラム組めばやれる」

 

「おっそろしいな」

 

「実際、トラップタイプは男にとっても女にとってもどこまでも都合のいい存在だよ。

 エリスとか他のはもっとまともに調整してあるけど」

 

「そうなのか?」

 

「ハニートラップ用は確かに理想通りの思い通りだが、逆に言えば面白みがない」

 

「ああ、それはそうか」

 

「新鮮な内はいいが、慣れると飽きるぞ。俺がそうだった」

 

「あ?じゃあキラに送ったのは」

 

「エリスに近い調整をしてある。多少融通は効かせてるけどね」

 

「なるほど、俺に送った奴はハナから割り切ったやつってことか」

 

「お前は大人だからな」

 

「まあ、でも暫くは飽きねえわ。少なくとも飽きても捨てる気にはなれんな、アレは」

 

「そりゃ、いくら飽きようが自分に都合のいい存在ってのは時々欲しくなるもんさ。

 その辺のバランスを取って調整してあるのがエリスやキラに送ったドールってわけだな」

 

「なるほどな。よく考えるな」

 

「そりゃまあ自分がいいと思ったようにするだけだからな。男の欲望なんて単純なもんだからツボ抑えときゃハズレはしないし」

 

「そりゃそうだ。……しかし、あの体はどうにかならんのか?搾り取られたぞ?」

 

「サキュバスボディという奴だ。……良かっただろ?」

 

「人間抱けなくなるかと思った」

 

「ははは、気をつけろよ?俺はもう手遅れだ」

 

「おいおい」

 

「そういえば件のキラの様子はどうだ?」

 

「手も繋げないで初々しいもんだよ。しかしあの娘すげえな。キラに上手いことリードさせてやがる」

 

「ただ引っ張られるだけや引っ張るだけじゃダメだと思ったんでな」

 

「あれも地か?」

 

「素の人格だ。狙ってとか計算とかは一切無いし、本人もキラのために存在する事を自覚し許容している」

 

「ほんと、男にとっては理想の存在だよなあ。いっそ麻薬みてえだ」

 

「あながち間違ってないさ。キラに送った奴は初心者仕様だけど、猿にならなきゃいいけどな」

 

「あー、俺が貰ったのと同じので初体験はちょっとキツすぎるか」

 

「あんなもん初心者に出してみろ、猿通り越して死ぬぞ」

 

「体験談?」

 

「天国が見れたよ」

 

「分り易い解答をどうも」

 

「キラは流されるきらいがあるみたいだからな。引っ張らないと"いけない"とか引っ張られて"しまう"ってのは駄目だ」

 

「自分の意志で引っ張りたいと思わせる、か」

 

「日常でそういう思考の仕方が身につけば、いずれ大事な所でも自分の意思で動けるだろ」

 

「ほんと、お前にゃかなわねえな。ホントに年下か?」

 

「さて、どうだろうね。ま、第三者だから見えるものがあるのも事実だ。ムウはムウなりに支えてやってくれ、お兄さん」

 

「ガラじゃねえんだがなあ」

 

「ぼやくなよ。さて、俺も癒されてくるかねー」

 

「おう、愉しんでこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、ここはこう、なのかな?」

 

「はい、そうですね。あ、そこバグが出てますよ」

 

「あ、ほんとだ」

 

「おーいキラ!」

 

「ん?あ、トール、ミリアリア」

 

(ぺこっ)

 

「よっ。なにしてるんだ?」

 

「アイリスと一緒にプログラミング。最近趣味らしい事ってしてなかったから」

 

「趣味でプログラミングっていうのもキラらしいわね」

 

「ふーん……その、アイリスさん、だっけ?」

 

「アイリスで構いませんよ」

 

「アイリスは例のジャンク屋の人?」

 

「はい。キラさんの専属サポートを任されまして」

 

「いいなー、すげー美人……いや、悪かったから睨まないでよミリアリア」

 

「確かパイロットには専属のサポートが配属されたのよね?」

 

「ええ。フラガ大尉の所にも私の姉妹が伺っていますよ」

 

「姉妹?」

 

「クローンなので、姉妹のようなものなんです」

 

「へー、クローンなんだ。……あんまり私達と変わらないわね」

 

「うん、ほんとに違和感無くて……それに知識も豊富で頭もいいから、話してて楽しいんだ」

 

「ふふふ、有難うございます」

 

「あはは……」

 

「あー、赤くなってやんの。けど知的な女性っていいよなー。ってミリアリアだって頭いいだろー?睨むなよー」

 

「ふんだ」

 

「あはは。でも、やっぱりライルさんの言った通りだったのかな」

 

「言った通りって?」

 

「ライルさんに言われたんだ。心や体の触れ合いが無いまま戦ってたら、いつか壊れるって」

 

「心と体の触れ合いかあ」

 

「その時は曖昧に返したんだけど、こうしてると実感するんだ。皆を守ることに必死になりすぎてたのかなあ、って」

 

「そうよ、キラは頑張ってるんだから。たまには休まなきゃ。私達だって戦ってるんだしね」

 

「そうだぞ、ちょっとは俺達も頼ってくれよ。……俺もパイロットなろうかなあ」

 

「え!?ちょっと本気?いやよ、キラが危ないのは分かってるけど、それでもトールが戦うなんて……」

 

「でもさ、ライルさんってナチュラルなんだろ?それであんなに強いんだ。俺達でも訓練すればちょっとぐらいは……さ」

 

「でも……」

 

「そうですね……男性は、女性を守りたいものだと言います。それは尊重してあげて下さい。

 ……ですが、死地へと向かう男性を見送る女性の気持ちも、分かってあげて下さいね?」

 

「うん……そう、だよな。よく考えて決めるよ」

 

「そうだね。僕はなりゆきだったけど……トール達は、ちゃんと話し合って決めたほうがいいと思う」

 

「ふふふ、一段落ついた所で、皆さんお茶はいかがですか?クッキーを焼いてみたんです」

 

「料理まで出来るのかよ」

 

「キラさんのためになることなら、何でも、ですよ」

 

「うらやましー」

 

「トール?」

 

「ごめんなさい」

 

「よろしい。……ねえ、私も料理教えてもらっていいかな?」

 

「構いませんよ。料理に関しては食堂にいる調理師タイプの姉妹が得意なので、そちらに頼んでみるのもいいかもしれませんね」

 

「ほんと?やった。見てなさいトール!おいいしもの食べさせてあげるからねっ」

 

「良かったね、トール」

 

「へへへ」

 

 

 

 

 

 

「初々しいもんだなあ」

 

「ん?なんだって?」

 

「いや、回線越しにキラ達の様子をな。あ、切られた。こっから先は覗き禁止か」

 

「便利なのかなんなのか分からん機能だな」

 

「他人のラブコメほど面白いものもそうないさ。で、ムウ。頼みってなんだ?」

 

「ああ、お前んとこの戦艦やMSに興味があってな。見せて貰えないか、とね」

 

「何だそんな事か。いいぞ。来たい奴集めとけ」

 

「……えらくあっさり許可したな」

 

「別にうちは軍隊じゃないから技術秘匿とか無いしな。見たけりゃ好きに見ればいい。流石に一部制限はかけるけどな」

 

「相変わらず太っ腹だな。んじゃ、艦長達に許可貰ってくるか」

 

「ああ、なら一応俺も挨拶をしておこう」

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、ですから――」

 

「よーっす。ちょっと話が……どした?」

 

「ああ、フラガ大尉、丁度良い所に。これから取るルートについて協議していたのですが……」

 

「当初はアルテミスを経由する予定だったのですが、補給の目処が付いたため少しでも速く月を目指そうという事になりまして」

 

「ああ、なるほどな。で、その時通るルートで悩んでたのか」

 

「本当に真っ直ぐ向かうとなるとデブリベルトに突っ込む事になるのよ」

 

「かといって迂回すれば直行する意義は薄まる。どうしたものかと思っていたのです」

 

「うーむ」

 

「ああ、それならうちが協力しようか?」

 

「ライルさん?……フラガ大尉、許可は出していませんが」

 

「悪い悪い。こっちも頼みがあってな」

 

「頼みですか?」

 

「いや、後でいい。それよりライル、アテがあるのか?」

 

「アテも何も、邪魔なデブリは陽電子砲で消し飛ばせばいいじゃない」

 

「いやいやちょっと待ってください」

 

「ノイマン曹長?」

 

「操舵手のノイマンだ。よろしく。で、陽電子砲ですが威力的には問題ありません。連射すれば航路を確保出来るでしょう。

 ただ、そうなるとエンジン含め艦の航行に支障が出ます。奇襲でも受けたらマズイことになりますよ?」

 

「そう……それじゃダメね」

 

「別にこのフネの陽電子砲を使う必要はないだろ?というかこのフネ陽電子砲積んでるのか。初めて聞いたぞ」

 

「ええ?知ってて言ったんじゃないのか?」

 

「そういえば武装に関しては何も話してなかったわね……つまり?」

 

「うちのフネの陽電子砲を使う。低出力型で連射向きだし、デブリ程度なら威力的には十分だ」

 

「なるほどな、そういやお前のフネもジャンクの寄せ集めだったか」

 

「そういうコト。うちのは低出力のを複数積んだ連装型だけどな。こういう時には使いやすくていい」

 

「そうか、ジャンク屋ならデブリに突っ込んだりも日常茶飯事なのか」

 

「傭兵家業でデブリを利用する事もあるしな。砲撃による突破は慣れたものだし、相応の調整もしてあるから心配は無い」

 

「なるほど。いかがしますか?艦長」

 

「そうね、こちらとしては願ってもない申し出だわ。お願いしてもいいかしら?」

 

「任せろ。契約どおり別料金は取らないさ。俺達にとっても邪魔だしな。……というわけだエリス。頼んだぞ」

 

『畏まりました』

 

「ほんと便利だな」

 

「好きなことしてられるから楽でいいよ」

 

「しかし陽電子砲まで積んでるたあ本格的な戦艦だな。ほんとにジャンクかよ」

 

「それはまぎれもなくジャンクさ。動力だって独自のものを用いてる。こっちはAランクだから残念ながら秘匿させて貰うよ」

 

「クローンより上かよ」

 

「クローンは精々失敗した技術だしな。それにクローン技術の詳細は流石にAランクだ」

 

「そりゃそうか」

 

「動力は下手すりゃエネルギー問題とかの点でややこしい事になるからな。

 NJの影響を受けない特殊な化学反応を用いた量子反応炉によって莫大なエネルギーを恒常的に生成している……あたりが限界かな」

 

「すげえなそりゃ。補給はいらねえのか?」

 

「詳しくは言えんが真空や大気中から必要な素材を取り出してるからな。半永久稼働が可能だ」

 

「羨ましい限りね……」

 

「まあ、半分壊れてる炉心をおっかなびっくり使ってるだけだからな。知られても真似しようとは思えないだろうけど」

 

「おいおい大丈夫かそれ」

 

「俺は俺とエリスが出した計算結果に自信を持ってるさ。そういえば、さっきの話はいいのか?」

 

「ああ、そうだった。艦長、キラ達連れてコイツの艦の見学に行きたいんだが」

 

「フラガ大尉、何もこのような時に……」

 

「つったってこのような時だから一緒に行動してるんだぜ?技術提供の話もあるし、いいだろ」

 

「……そうね。気分転換にもいいでしょう。私も見せてもらっていいかしら?技術屋として興味が有るわ」

 

「艦長!……はあ、分かりました。艦の運行はお任せ下さい」

 

「悪いわね、ナタル」

 

「悪いと思っているならやめてください。……全く」

 

「やっぱり苦労性だな」

 

「うるさい」

 

 

 

 

 

 

 

「はー、すげえな。うちにも負けないぐらい綺麗じゃねえか」

 

「設備的にも負けてないさ。最新鋭のジャンクを最適に調整してあるからな」

 

「ほんとに全部ジャンクなのね……このフネはどういう船なの?」

 

「型式名称EW-TTTA-24、サターン級宙空両用機動戦艦、艦名ヴァルハラ。型式番号は設計案からだ」

 

「イマイチどこのか分からんな」

 

「まあ第三勢力のものだしな。今は壊滅してる。構想だけして技術や物資が伴わなかった哀れな未完成品さ」

 

「なるほど、そういうパターンもあるのか」

 

「これがアイリス達のフネなんだ……」

 

「私達の製造設備は専門の生産艦がありますけど、家といえばこのフネですね」

 

「ほらキラ。無重力なんだ。お姫様の手を取ってやれ」

 

「あ、はい……えっと、アイリス」

 

「ふふ、ありがとうございます、キラさん」

 

「青春だねえ」

 

「着いたぞ、ブリッジだ」

 

「これは……凄いわね」

 

「いらっしゃいませ」

 

「うわー、皆同じ顔」

 

「ちょっとトール、失礼よ」

 

「ははは、誰も気にしないさ。それに双子だ三つ子だいうのと変わらない」

 

「それもそうか。おいカズイ、何呆けてるんだ」

 

「え!?あ、いや、皆綺麗だなあ、って」

 

「まあ作り物だしな。わざわざ不細工にはしない。さて、うちはナイトブルーがパーソナルカラーで、船体も機体もその色だ。

 これは夜間・宇宙迷彩も兼ねている。シンボルは赤い悪魔の翼」

 

「デザインとしては縦長の艦体にリボルバーのような回転式コンテナが付いた形ですね」

 

「射出角や位置の調整が出来る。コンテナは5つ。一つのコンテナに3機ずつ搭載が可能だ。一つは俺のガンダムが占領してるけどな」

 

「随分と多いんだな?」

 

「クローンを利用した半無人兵器の利用を考えているからな。現在3機がオーバーホール中だ」

 

「まだ機体があるんですか?」

 

「暫くは使えんさ。調整も済んでないし残り9機も未完成だ。そもそも制御用のシステムがまだ出来てない」

 

「彼女らのっけるだけじゃダメなのか?」

 

「あれは脳にプログラムを組み込んでココのマザーサーバーとリンクさせた、半遠隔操作だからな。

 日常生活程度なら兎も角、戦闘させるなら相応の調整が要るし生体部品として直接組み込む必要がある」

 

「色々あるんですね」

 

「まあ、普通に接する分には人間と変わらんさ。大事にしてやってくれ」

 

「は、はい」

 

「ふふふ」

 

「当艦はE.L.I.S.システムを始めとした電子設備に力を入れており、電子戦装置も搭載しています」

 

「戦闘エリア一つ程度なら非接触回線による電子回路への干渉とそれによるハッキングで機体のプログラムに干渉し、

 動作を鈍らせる事も可能だ。

 無人機相手なら完全に行動不能にすることも出来る。どちらも短時間だがな」

 

「マジか?うちの電子戦設備よりすげえじゃねえか」

 

「非接触回線様様だな」

 

「戦術的にも当艦は絶対数が少ないため、多対一の状況を作らないための手段でもあります」

 

「なるほど、ちゃんとした意義があるのね」

 

「半ば以上に趣味だけどね。艦装甲は無限減衰装甲を使用。おたくのPS装甲の雛形技術だ」

 

「うえ、マジか?」

 

「そう……動力の出力が大きいからそういう事も出来るのね」

 

「性能的にはPS装甲以上だ。おたくのは量産前提だが、うちのは効率面もコスト面も度外視した性能追求型だからな。

 対物理は大差無いが、対ビーム能力がPS装甲よりも高い。大体5分の1は軽減してくれる」

 

「へー」

 

「アンチビーム爆雷も搭載しており、対ビームに関しても相応の自信があります」

 

「凄いわね。確かに軍用じゃ考えられない仕様だわ」

 

「多少問題があっても自前でどうにかする技術がないと運用出来ないからな」

 

「武装に関しては牽制用のミサイルユニット、各コンテナ外郭部に内蔵された連装ビーム砲『ミストルティン』、

 艦前後方上下に内蔵された各2連の連装陽電子砲『ブリューナク』、あとはレールバルカンによるCIWSを搭載しています」

 

「す、すげえ重武装だな」

 

「連装陽電子砲を4つ……どんな動力出力してるのかしら」

 

「低出力型だからな。威力足りないから2つ繋げただけだよ。

 まあ全門一斉射すればちょっとした小型核弾頭ぐらいの威力と放射線被害は出るけど」

 

「おいおい」

 

「敵に回さなくて良かったわ」

 

「と言っても基本は電子戦専門だ。電子戦中は最低限の戦闘行動しか出来なくなるしな」

 

「そのための装甲か」

 

「そういうコト」

 

「はー、よく分かんないけど凄いねー」

 

「カズイ、お前曲りなりにもブリッジ勤務なんだからこういうのは分からないとまずいだろ」

 

「サイは分かってるの?」

 

「……まあ、凄いんだろうな、とは」

 

「だめじゃん」

 

「うるさいぞトール」

 

「ねえねえ、やっぱりキラの事好きなの?」

 

「ふふふ、どうでしょう?キラさんが私のことを思ってくださるなら確かに嬉しいですけれど」

 

「へー」

 

「ちょ、ミリアリア……アイリスも」

 

「おい後ろ、何ラブコメやってんだ混ぜろこのやろー」

 

「フラガ大尉、自重してください」

 

「さて、それじゃドックに行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

「ここがドックだ」

 

「コンテナの中じゃないのか?」

 

「コンテナはカタパルトみたいなものだな。簡単な整備や補給、調整なんかをするための設備がある。

 オーバーホールや製造は専門の技術艦に任せてるけど、俺の乗機の改造や修理なんかはここで行うんだよ」

 

「じゃあ今は修理中なのか?」

 

「いや、改造かな。さっきも言ったがシステム面や特殊機構で未完成の部分が多くてね。その作業をここでしてる」

 

「他の機体はその技術艦とやらか」

 

「ああ」

 

「一体どれだけの艦があるのかしら」

 

「旗艦、偵察担当艦、補給担当艦、人員製造・調整担当艦、技術開発研究艦、戦闘支援艦だな」

 

「艦隊じゃねえか」

 

「旗艦以外は戦闘能力は最低限だよ。少し大きい規模の宙賊に襲われたら危ないぐらいだ。

 オーバーホール中の3機も、俺の居ない時に艦隊を軍艦隊と間違えて特攻してきたテロリスト共相手にドンパチやって壊れたんだよ」

 

「あれ、戦闘出来るのか?」

 

「3機だけな。それも緊急時用の対処プログラムを用いてだ。本来の5分の1の力も無い」

 

「そうか、よく無事だったな」

 

「あやうく偵察艦が落とされかけたけどな。あれは駆逐艦も兼ねていて一番前に出る艦だからな。

 流石に落とされたら直すのが大変だ」

 

「人的被害は無かったのか?」

 

「オーバーホール中だと言っただろう?3機とも大破だよ」

 

「え、じゃあ中に乗ってた人達は?」

 

「原型を留めてなかったからな。破棄した」

 

「なっ!?」

 

「は、破棄…って」

 

「別に死んではないぞ?肉体はあくまで仮のもの。人格自体はデータだ。ちゃんと回収して新しい体に移してある」

 

「ほんとに服と大差無いんだな」

 

「戦闘服みたいなもんだ。少なくとも彼女らに、自らの体という意識は薄いな。俺としてはもう少し自愛して欲しいぐらいだ」

 

「本人達の意識の問題かよ……」

 

「無茶はするなと言っているのに平気で自爆特攻しようとするから困る」

 

「おいおい」

 

「よく分からない話だなあ」

 

「ヤバイ話題ってのは分かるけどな」

 

「need to knowって奴だね」

 

「お前それ気に入ったのか?」

 

「うんちょっと」

 

「全くもう、男はこれだから」

 

「ふふふ、いいじゃないですか。私は男性のそういう純真な部分は好きですよ?」

 

「――さて、これが俺の機体、型式番号AGX-303、シュヴァリエガンダムだ」

 

「ガン……ダム」

 

「確かOSの頭文字から来てるんだったか」

 

「型式番号の意味は?」

 

「元になった機体の設計プラン名がAGXでな。それに因んでうちのシリーズの開発プランをAGX開発計画としたんだ」

 

「303ってことは3世代目の3号機って事か?」

 

「ああ。この機体は何度も大幅な改修や設計変更を行ってるからな。

 初期の100から大規模な設計変更2回、その後で大型改修0回、小規模改修3回。それで303」

 

「なるほど」

 

「マントを背負って、騎士みたいですね」

 

「シュヴァリエはフランス語で騎士という意味だからな。デザインコンセプトは王道騎士じゃなくて黒騎士だけど」

 

「まあ確かに黒騎士だわな、これは。色的に」

 

「当然、ナイトブルーで夜間・宇宙迷彩兼用だ。エンブレムは頭部に描かれている。肩とかだとマント展開すると隠れるからな」

 

「展開出来るんですか?」

 

「肩部と背部のマウントで固定されていて、肩部マウントは可動式なんだ。普段は後ろに回してるが、機体を覆う事も出来る」

 

「ということはただの飾りでは無いのね」

 

「伊達や酔狂であんな邪魔臭いものは付けないさ。あれはアンチビームマントって名前でな。対ビーム性能を持ってる」

 

「対ビーム!?」

 

「ただのコーティングじゃなく、繊維やその原子構造から熱拡散性と粒子減衰を付与した特別製だ」

 

「通常のビーム兵装であればおよそ8割、貫通性の高い特殊ビームでも3割は減衰出来ます」

 

「無限減衰装甲と併せて、大概の物理攻撃は半減、ビームはほぼ無効化してくれる」

 

「す、すごいな。鉄壁じゃないか」

 

「その分素の装甲強度は低めだけどな。そもそも当たらなければどうという事はない」

 

「実際に見ていたから知っているけれど、確かに一度も直撃は受けていなかったわね」

 

「まあ、完全にノーダメージってわけじゃないし、衝撃自体はパイロットにも伝わるからな。当たらないに越したことはない」

 

「それにPS装甲ならエネルギー的な問題もあるか」

 

「ああ。まあ無限減衰装甲はPS装甲と違って当たった時だけエネルギーを消費するなんて器用な真似は出来ないけどな。

 常に一定量のエネルギーを消費し続けているから継戦能力はあまり高くない」

 

「バッテリーの容量と効率で誤魔化しているのが現状ですね」

 

「あ、これは普通にバッテリー駆動なんだ」

 

「ああ、最初はこのフネと同じ動力にしようとしたんが、小型化した途端に上手く安定してくれなくてな。

 今は安全を考慮して完成するまでは封印中だ」

 

「搭載はしてるのかよ」

 

「危なくて使えないけどな。一つ間違えたらコロニーぐらい消し飛ぶぞ」

 

「ま、マジか……」

 

「両腕に装備しているのはシールドかしら」

 

「ああ、小型のアンチビームシールドだ。ABマントの技術を応用していて、ビーム攻撃を半減してくれる。

 下腕を覆う程度の大きさしか無いし、主にマント非展開時用の防御装備だな。まあ大概戦闘中は展開してるけど」

 

「そういえばこの前も展開してたな」

 

「機体がすっぽり隠れるからな。初動が見えないというのは相手にとってかなり戦いにくいんだ。抜き打ちもやりやすいしな」

 

「そういややってたな。腰から引きぬいてそのままズドン」

 

「正直、よくあれで当たるものだと思ったわ」

 

「抜き打ちはオートじゃ出来ないさ。完全マニュアルで勘任せだよ。生憎と俺の勘はよく当たるからな」

 

「すげえなおい」

 

「流石に経験豊富、というわけね」

 

「ライル様の勘は経験がどうとかいう次元を超えていますが」

 

「こらこら、人をバケモノみたいに」

 

「大差あるのですか?」

 

「割りと無い」

 

「おいおい」

 

「なるほど、機体は高機動寄り、装備は防御寄り。大したものね」

 

「この機体の真髄はその火力ですが」

 

「つっても今使えるのはガラティーンとロンゴミアント、あとはCIWSとレールマシンガンぐらいだけどな」

 

「説明頼めるか?」

 

「はい。ガラティーンとは左腰部マウントに装着された鞘に収められた長剣の名称です。

 特殊な粒子振動と熱反応、さらに無限減衰装甲の技術を応用したエネルギー加速力場によって高い切断性を持ちます」

 

「実体剣だが熱や特殊な力場も利用しているから、PS装甲にも通る。流石に多少は減衰されるけどな」

 

「その代わり力場の形成時間・加熱限界・機構の可動用バッテリーの容量の問題などから、連続展開は3分48秒が限界です」

 

「それが過ぎるとただの実体剣だ」

 

「停止後は鞘に収め冷却・再加速・再充電に最大22秒を要します」

 

「ああ、だから何回か戻してたのか」

 

「実際には展開時間ギリギリまで使うわけには行かないからな。タイミングを見て再充填するんだ。

 結果的に、居合い抜きのような戦法を取る事になる。騎士のくせに旧日本の武士みたいだな」

 

「確かにマントがあるから見切るのは難しそうだな。……マント切れねえのか?」

 

「マントは粒子振動等の無い剣では幾ら鋭くても切れませんし、機構の切り替えは手元で出来ますので」

 

「停止状態から稼動状態になるには一瞬間が開くからその間に抜いちまうんだ。一度抜いたら殆ど電源入れっぱなしだけどな」

 

「マントの内側には力場に干渉する素材を使用する事で加速力場を反転させていますので、内側からはまず斬れません」

 

「なるほど。それを防御に使ったのが無限減衰装甲か」

 

「加速の反対は減速……なるほど、だから無限減衰装甲というわけね」

 

「装甲材自体を改良したりと機構は大分違うと思うが、基本的なノウハウやコンセプトはPS装甲にも受け継がれてるだろうな」

 

「次に右腰部マウントのビームバスターですが、名称を『ロンゴミナント』といいます」

 

「えらく独特な名前と形だな」

 

「ガラティーンもロンゴミナントも、騎士王アーサーの伝説からの出典です」

 

「ガラティーンは円卓の騎士ガラハッドの所持した名剣。聖剣エクスカリバーの兄弟剣とも言われている」

 

「ロンゴミナントはアーサー王が所持していたとされる名槍の名ですね」

 

「へー。知ってるか?ラミアス大尉」

 

「いえ……私その手のには疎くて」

 

「あ、僕知ってます。大分前にやったゲームに出ていました。一部地域ではとてもメジャーな伝説だとか」

 

「ライル様がお持ちのゲームにもよく出てきますね」

 

「まあ、それは置いといて。形状はそもそも歩兵用と同じ形にする理由も無いからな。

 銃身後部にグリップを垂直に付けることで、掴んで抜き放って撃つという一連の動作をやりやすくしてるんだ」

 

「粒子充填と充電を腰部マウントからできるようにしていますので、必然的に抜き撃ちを多用することとなります」

 

「あの時やってた抜き撃ちか」

 

「抜き撃ちも居合いも、俺の十八番だからな」

 

「前は機動予測が十八番とか言ってなかったか?」

 

「切り札は多く持つものさ」

 

「正直な所、ライル様の戦闘センスはずば抜けていますので、全て十八番でも間違いは無いのですが」

 

「褒めるなよ照れるじゃないか」

 

「調子に乗らないで下さい」

 

「今日は毒舌だね、君」

 

「しかし出力も凄かったな。アグニ並の火力はあったんじゃないか?」

 

「さすがにアレほどじゃないさ。射程も犠牲にしてるしな」

 

「アグニのような照射式ではなく、あくまで大型弾丸式のビームライフルですので、射程に限界があります」

 

「まあ見た目は完全に砲撃だけどな。一応でかい一発って事になってる。構造的にな」

 

「貫通性の高いビームを使用しているため、対ビーム性能の高い対象にも有効な点が強みです」

 

「単純に強力な剣とビーム砲か。弱点がないな。大概どっちかは通用するだろ」

 

「あとは近接攻性防御用にCIWS、両腕部に牽制用のレールマシンガンを内蔵してる」

 

「PS装甲に撃ってたけど、効くのか?」

 

「機体に効かなくても中の人間には効くさ」

 

「ああ、そうか。衝撃は殺せないのか」

 

「キラも気をつけろよ。エネルギーだって無限じゃない。頼り過ぎないようにな」

 

「は、はい!」

 

「やっぱ実際に経験有る奴は目の付け所が違うな」

 

「一度それで醜態を晒したことがあるだけさ。なんとか死に損なったがね」

 

「なるほど。……ん、ラミアス大尉?おいマリュー?マリュー・ラミアス大尉~?」

 

「いえそれにしても……は、はいっ!?なんでしょうっ!?」

 

「いやいや技術屋として興味があるのは分かるが、トリップするなよ」

 

「あ、あははは……すみません」

 

「いやまあいいけどな」

 

「さて、流石にそろそろお疲れでしょう。ドール達が食事の用意をしています。どうぞ」

 

「お、そりゃありがたい。おーい坊主共、メシ行くぞー」

 

「あ、はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「美味い!」」」

 

「本当、凄く美味しいわね。あとフラガ大尉、うるさいです」

 

「う、悪い。しかし本当に美味いな。宇宙用食材でこんな美味いもんが作れるのか」

 

「アークエンジェルの料理も大概美味いと思ってたけど、これはそれ以上だなー」

 

「ほらトール、口に付いてるわよ」

 

「これどこぞの高級レストランで出ても違和感無いな」

 

「まあそりゃそうだろ。レシピ盗んだ上に改良してあるからな。半分機械だからそういうのは得意なんだよ」

 

「へー。メニュー見てもA級グルメもB級グルメも満遍なく揃ってるな。よく食材があるもんだ」

 

「一部は流石に数量限定だけどな。無くなれば補給部隊に連絡すればいい」

 

「非接触回線便利だな。というかそんな距離で届くのか?」

 

「戦闘エリア内程度なら兎も角、流石に遠距離通信は専用設備でやってるさ。同じ技術の流用だけどな」

 

「連合かザフトが手に入れたら一気に戦局傾くんじゃねえか?」

 

「いや、レーダーとかはまた別物だから単に通信技術だな。多少有利にはなるだろうけど」

 

「現時点で危うい均衡を保っていますので、何かしらの要素で傾く可能性は有りますが」

 

「ま、立て直せないほど傾きはしないだろ。うちもレーダーは軍で使ってるのより多少マシって程度だし」

 

「その辺りは採算度外視かつワンオフの上に定期的な専門家によるチェックを前提としていることによる差ですね」

 

「軍じゃ使えないわね」

 

「そもそも軍で研究してた技術なんだから、似たようなのはどっかにあるだろ。制式化されてないだけで」

 

「それを全部一纏めにしちまったお前らが凄いんだがな」

 

「俺、ジャンク屋なろうかなあ」

 

「ちょっとトール……」

 

「いいんじゃないか?社会的にも認められた職業だしな。

 俺みたいにデブリ漁りしなくても単なる技術屋としてのジャンク屋なら危険も早々無い」

 

「え、そうなの?」

 

「街の電気屋みたいなもんだ。単にジャンク屋連合に加盟した方が信用を得られるってだけ」

 

「へー。ほんとにいいかも?」

 

「アークエンジェルで活躍した経験と箔がありゃ食うには困らないだろ。刺激が欲しけりゃ俺みたいな事もすればいい」

 

「う、ちょっとトール」

 

「ミリアリアだって戦場カメラマンやりたいって言ってたじゃないか」

 

「それはそうだけど……」

 

「おお、いいじゃないか。ジャンク屋の戦いを記録する戦場カメラマンってのも面白いかもしれないぞ?

 それなら公私共に一緒に居られるしな」

 

「一緒に……」

 

「キラはどうする?」

 

「え?」

 

「進路とか決めてるのか?このフネを降りるのか、降りるならその後はどうするのか」

 

「えっと、それは……考えたこと……ううん、考える余裕が無かった……かな」

 

「これからは俺も居る。多少は余裕も出来るだろ。今のうちに考えとけば後で楽だぞ」

 

「うん、そう、ですよね」

 

「なんならお前らうち来るか?」

 

「え?」

 

「うちって……ライルさんのチームに!?」

 

「ああ、アークエンジェルでの経験を生かしてくれればこちらとしても助かるし、やっぱり生身の人間が必要になることもあるしな。

 お前ら工学系だろ?ジャンク屋として活動するには十分な知識と技術は持ってる。うちはNとかCとか関係無いしな」

 

「でも……危険もあるんじゃ」

 

「まあ戦闘中は一般人やってるよりは危険だろうが、このフネの丈夫さ考えたら日常は下手な一般人よりも安全だぞ?

 普通に街歩いてたって危険な目に会う時は会うんだからな。戦闘の危険がある分、その手の危険とは無縁だ」

 

「それは……確かに」

 

「キラはアイリスと一緒に居やすいしな(ニヤニヤ)」

 

「うっ」

 

「実際、通常のクローンと違ってテロメアの問題が無い以上寿命は俺らと変わらんが、それでも定期的なチェックは要る。

 だからってこともないが、何かあった時に安心なのは確かだろう」

 

「それは……はい」

 

「人手不足ってわあけじゃあないが、流石に周り全員これだと面白みもない。人間じみているとは言っても結局は俺の組んだAIだ。

 時には本物の人間が必要になる時もあるし、俺はリーダーだから優先順位がある。そういう意味でも、な」

 

「なるほど」

 

「ま、特にアテが無いならジャンク屋になるって道もあって、それなら俺のとこに来ないかってだけの話だ。

 特にキラはOS書き換えたりガンダム乗って戦闘したり、優秀だからな。是非一緒にジャンク屋をやりたいと思ってる」

 

「優秀……えっと、有難うございます」

 

「コーディネーターでも早々出来ない事をやってのけたんだ。これでも一目置いてるのさー」

 

「へー、凄いじゃないかキラ」

 

「ああ、坊主もずっと軍で戦うってわけにも行かんだろう。俺はいい話だと思うがね」

 

「でも……本当に危険は無いんですか?」

 

「今は戦時中だから傭兵業もやってるが、普段は日がな一日拾った機械弄って、たまに売りさばいて金にしてるだけだからな」

 

「しかも毎日女としっぽりか。気楽なもんだなおい。羨ましいぞこら」

 

「フラガ大尉、周りに女性が居ることを考慮して発言して下さい」

 

「悪い悪い」

 

「そっか、普段はそんなかんじなんだ……」

 

「このフネは早々落ちん。危険度で言えば、一般人が見えないフリしてる日常の危険度と大差ないさ」

 

「うーん、少し揺れるな」

 

「でもサイ、フレイは?」

 

「う。まあ、流石に無理があるかな。フレイの親父さん連合軍人だし。カズイこそどうなんだよ」

 

「戦艦はちょっと怖いかな。戦いも……でも、せっかく工学技術があるんだから活かしたい、かな」

 

「このご時世だ、大概の工学仕事はMSの開発とかに関係して来るだろうな。

 低給料の平社員ならともかく、その技術と知識を本格的に活かすならどうしてもその辺の影はチラつくだろ」

 

「とはいえ、一般人であれば早々危険は無いとは思われますが」

 

「いきなりテロに巻き込まれて死ぬなんてのも珍しくないしなあ。俺としては大差無いと思ってしまうんだな、これが」

 

「ライル様はこのフネが安全だと、技術的な面からも心理的な面からも確信されていますから」

 

「そりゃそうだ」

 

「そっか……どこに居ても、たとえ中立国でも、もう無関係じゃ居られないんだ」

 

「中立とか言いつつMS作ってたぐらいだしな。おそらく連合向けだけじゃなく自分達用のも作ってただろ。

 もしあのままヘリオポリスに居たら、知らないうちに兵器開発に関わってたかもな。いや、もう関わってるかも知れないか」

 

「えっ!?うそ!?」

 

「いや実際、工学系のカレッジに居たんだろ?ヘリオポリスで工学系。きっと一部の教授とかは関わってたと思うぞ。

 教授とかの手伝いでよく分からない作業とかプラグラムとかさせられなかったか?」

 

「そういえば……」

 

「キラ、よく手伝ってたよね。カトー教授とか」

 

「ええ?もしかして?まさか……」

 

「まあ実際のとこは分からんが、少なくとも大人達の誰一人無関係って事は無かったろうな」

 

「俺達も、巻き込まれてたかもしれないのかな」

 

「カズイ、それ違う。現在進行形で巻き込まれてるから」

 

「言わないでよサイ、敢えて考えないようにしてたんだから」

 

「まあ、余程追い詰められない限り学徒徴兵なんてそうそう無いだろうけどな。そう考えれば今の方がヤバイか」

 

「ま、それもアークエンジェルが月に着くまでだ。坊主たちもすぐ降りられるさ」

 

「だと、いいけどな」

 

「……どういうこと?」

 

「現在制宙権の殆どはザフトに有り、アルテミスなんかを除けば宇宙はザフトの独壇場だ」

 

「ああ」

 

「地上に降下したザフトも猛威を振るっているが、しかし敵地だ。兵も物資も長くは保たない」

 

「確かに、限界はあるだろうな」

 

「更には地球連合軍がGの開発に成功した。MSが連合に正式配備されれば、パワーバランスは数的に連合有利となる」

 

「多少技術で遅れを取っても、数で誤魔化せるからな」

 

「ザフトには時間がない。制限時間は刻一刻と迫ってくる。逆に連合は物量にモノを言わせ時間を稼げれば優位に立てる」

 

「少なくとも、俺達がGを持ち帰れば多少は変わるだろうな」

 

「ならばザフトは電撃作戦で一気呵成に攻めるしかなく、連合はその猛攻を必死の思いで多くの犠牲のもと凌ぎ切らないといけない」

 

「まあ、大体今の連合とザフトの状況だな。結果的にどちらも有効な戦略が立てられず、膠着している」

 

「ああ。だがそれは打つ手が無いから膠着しているわけじゃない。ザフトは電撃侵攻の準備のため、連合はそれに備えるため」

 

「小競り合いはあちこちで起こってるしな。俺達もそれに巻き込まれたクチだ」

 

「で、さっきも言ったが制宙権はザフトのもの。だが地上のザフトを援護するには宇宙に居る連合宇宙軍は邪魔だ」

 

「……つまり?」

 

「俺の勘を含めた予測にすぎないが……近いうち、ザフトによる連合宇宙軍への攻撃作戦が始まるだろう」

 

「なんですって!?」

 

「なるほど、な」

 

「アルテミスは前に一度行った事があるが、確かに傘は強力だ。だがブリッツなら落とせる。ミラージュコロイドあるからな」

 

「そうか、ステルス状態で接近して傘さえ壊してしまえば……」

 

「4機のGと準備期間を得たことで、ザフトは必要なコマが揃いつつある。

 補給の要であるアルテミスを落とし、次に地球軌道上で艦隊戦を行なって月の部隊を引っ張りだす。後は……」

 

「アルテミス同様、ブリッツの奇襲を軸に月基地を落とすなり港を使えなくするなりすれば……」

 

「連合は軌道周辺の宇宙戦力の大半を失うな」

 

「オイオイマジかよ……」

 

「現時点で地球上もかなりザフトに食い込まれている。宇宙に上がれなくなれば巻き返すのは難しい」

 

「確かに、な。物量だけあってもどうにもならん」

 

「なら鍵となるのは開発したMSによる高質物量作戦。つまり……俺達が、鍵だ」

 

「僕達が……カギ」

 

「連合もザフトもそれは分かってる。ザフトは俺達を潰そうとするだろうし、連合はなんとしてでも持ち帰れと無茶振りするだろう」

 

「こりゃ、死ねなくなったね」

 

「でも、それが僕達がアークエンジェルを降りる話と関係あるの?」

 

「大有りさ。さっきも言っただろう?この戦争が膠着してもう随分経つ。そろそろ準備も整う頃だ。

 そして、ザフトは俺達に月へ到着されると非常に困る」

 

「まさか……」

 

「恐らく俺達の連合軍合流に前後して、仕掛けるだろうな。さっき言ったような作戦を」

 

「じゃ、じゃあもしそれで月が落ちたら……」

 

「そうだ、カズイ。俺達は地球の連合軍基地に降りるまで、戦うことになるって事だな」

 

「そんなあ!」

 

「まだ、そうなると決まったわけではないのでしょう?」

 

「そうだが、軍人は最悪のケースを想定して動くものだろう?それに、俺の勘は善くも悪くも当たる」

 

「お前の言う、最悪のケースってのは?」

 

「まずアルテミス陥落による退路の断絶。後に二面作戦による月基地陥落によって降下を余儀なくされ……

 二面作戦の陽動側の戦闘に巻き込まれて低軌道会戦を行い、その結果緊急降下によってザフト勢力圏内に降下すること、かな」

 

「………………思わず、絶句しちまったぜ」

 

「アフリカ辺りに降りれば最悪だ。周りを海と山に囲まれ、砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルド率いる部隊の勢力下。

 あの部隊はザフトでも精強な部隊で有名だし、俺も一度ジンもどきでドンパチしたことあるが強かった」

 

「砂漠の虎とやったのか!?」

 

「ジャンクから修復したばかりのジンでな。結果はドロー。逃げおおせたよ」

 

「マジかよ……機体が機体だっつってもお前相手に引き分けか」

 

「今のキラとストライクなら……キラが不利だろうな。出てきたら任せろ」

 

「って、戦う前提なんですか!?」

 

「言っただろ、最悪の想定だと。それにあいつとはもうすぐ再会しそうな予感がある。

 正直会いたくないな。コーヒーの好みだけはいいんだがな。いかんせん面倒だ」

 

「その、勘って言うの、本当に当たるんですか?」

 

「少なくともここまではっきりとした予感が外れた憶えは無いな」

 

「マジかよ……」

 

「もし会戦になってもキラはフネから離れるな」

 

「え、どうしてですか?」

 

「降下地点なんてそうそう逸れるもんじゃない。一番可能性が大きいのが、MS回収のために艦を寄せた場合だな」

 

「な、なるほど」

 

「このフネは単独での大気圏離脱が可能だ。一応、程度だけどな。少なくとも少し逸れたぐらいなら修正出来る。

 だから、回収やら機動対応は俺達に任せろ」

 

「ええ、お願いします」

 

「てか単独離脱出来るのかよ」

 

「あくまでスペック上の限界値を考えれば、だ。現実的には降下地点の修正が精々だな」

 

「それでもアークエンジェルで回収に向かうよりはマシね。その時はよろしくお願いします」

 

「ああ。それに俺達はジャンク屋だからな。降下時に契約を切ったって事にすれば、一応バラバラに降りてもなんとかなる」

 

「ああ、そういう手もあるのか。第三勢力らしいやり方だな」

 

「ま、そんなわけでみんな心に留めるぐらいはしておいてくれ。もしかしたら、俺達は地球に行く事になるかもしれない」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、トール。あの人の言ってた事、どう思う?」

 

「あの人ってライルさん?どれの話?」

 

「ジャンク屋とか、危険とか、地球に行くとか……」

 

「要するに全部か。まあ、どれもあり得る話ではあるな」

 

「あ、やっぱりサイもそう思う?」

 

「理論としても、悪く想定はしてるけど荒唐無稽では無いしね。僕も、このまますんなり行くとは思えないかな」

 

「キラもやっぱりそう思うんだ」

 

「アイリスは、どう?」

 

「そうですね、私はどうしてもデータから結論を出してしまうので断言は控えさせていただきますけれど……

 どのような事態になれど、私はキラさんをお支えいたしますよ」

 

「アイリス……」

 

「あーあ、いい雰囲気作っちゃって」

 

「僕達、生きて帰れるのかな……」

 

「ちょっとカズイ、滅多なこと言わないでよ」

 

「でもさあ」

 

「それよりも。さっきライルさんが艦長達と話してるの聞いたんだけどさ」

 

「ちょっとトール、趣味悪いわよ」

 

「いいから。ほら、もうすぐライルさんとこの補給艦が物資持ってきてくれるだろ?」

 

「ああ、うん」

 

「その時に、避難民の人達を補給艦に預けようかって話になってたんだ」

 

「それ、ほんと?」

 

「うん。ほら、一応僕らオーブ国民だろ?連合の戦艦が救出したってなると色々あるらしくてさ」

 

「だから第三勢力のライルさん達に預けよう、って事か。いいんじゃないか?ずっと戦艦に乗せとくのもなあ」

 

「でも、一度連合の軍艦で救助しちゃっったから、色々規則とか取り決めとかあるらしくて」

 

「あー、その辺はややこしそうだもんねー」

 

「それで結局合流した補給艦に乗せ換えていつでも離脱できるようにして、連合と連絡が取れたら指示を仰ぐんだってさ」

 

「へー」

 

「まあ、妥当かな。現場の判断で勝手にあっちこっちやるわけにも行かないだろうし」

 

「何にしても、俺達はもう降りれるようになるまで頑張るしかないよな」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

 

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