黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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4話

「――なるほど。事情は把握致しました。これからあなたは捕虜として連合軍基地へと連れて行かれる事となります」

 

「はい」

 

「その後の対応は上が決めますので私には分かり兼ねますが、条約に従い相応の扱いをさせて頂きます」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「さて、話がまとまった所でキラ」

 

「は、はい!」

 

「さっきの話、ここでするか?」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

「まあ、アスランと……」

 

「坊主、戦えるんだな?」

 

「……はい」

 

「そうか、分かった。まあなるべく捕虜に出来るようにしてみるが、限度もある」

 

「はい」

 

「なるべく俺達が止めをさしてやりたいが……それでは納得出来ない部分もあるだろうし、いつも融通が効くわけでもない」

 

「はい」

 

「……壊れるなよ」

 

「はい!」

 

「よし。んじゃラクスの扱いについてだ。今後は暫く今のままでいいだろう。不便はないか?」

 

「はい、皆さんよくして頂いています」

 

「ほう?毎回同じ容姿の奴を送ってるんだが、よく違いが分かるな」

 

「ええ、皆さんよく似ていらっしゃいますけれど、少しお話すれば違いがわかりますわ」

 

「そりゃ凄い。万分の一の差異を理屈じゃなく直感で把握してるのか。ほんと政治家向きだな」

 

「ふふふ、そうでしたら、お父様も喜んでいただけるのですけれど」

 

「ああ、きっと自慢の娘だろうさ。色々と、な。さて、その自慢の娘を連合のバカどもにくれてやるのはしのびないな」

 

「え?」

 

「何されるか分からんぞ?綺麗な体で帰れりゃ奇跡だろ」

 

「そ、そんな!」

 

「…………それで、どうしようってんだ?」

 

「人質にする」

 

「なっ!?」

 

「そうすればザフトはこちらにラクスが存在することを知ることが出来、傷物にされる前に取り戻そうと必死になるだろう」

 

「……なるほど、そうして譲歩を引き出すと」

 

「現場の判断でやっちゃ問題だから相応の相手に頼むことになるが……艦隊指揮官あたりなら申し分無いんじゃないかな?」

 

「…………!つまり」

 

「ああ。おそらく近々起こるであろう会戦で彼女を利用して敵の侵攻を食い止め、状況把握の時間を作る。

 更に人質引渡しの条件として部隊の撤退を指示し、作った時間と隙を利用して艦隊を月へ返す」

 

「……で、月の攻撃部隊を挟撃する、ってわけか。えげつねえな」

 

「ラクス・クラインを乗せたまま敵は戦闘を出来ない。それで傷物にでもなれば責任者の首が飛ぶからな。

 護衛も兼ねて多少の戦力は引っ込むだろう。婚約者って話だからアスラン達Xナンバーが退いてくれれば楽なんだがな」

 

「なるほどな。お互いに退かせる……少なくとも体勢を立て直すには、有効というわけか」

 

「間に合えば指揮官にラクスを使うことを進言し、既に戦闘中なら強行する。

 月へ向かう別働隊を確認したとでも言えば勝手に使った事は咎められんだろう」

 

「で、本格的な追求が来るまえにさっさと月へ行くか地球へ降りちまおう、と」

 

「そういう事だ」

 

「うわー、えげつねー」

 

「でも、そんな……一般人の彼女を人質にするなんて」

 

「クラインの名を持つものが一般人なんて、馬鹿笑いされるぞ」

 

「だからって……」

 

「で、本音はなんだよ大将」

 

「……何が」

 

「どうせお前の事だ。さっき言った建前が本音なんだろ?連合に傷物にされるのは忍びない。本気でそう思ってるんじゃねえのか?」

 

「……ガラじゃないんだけどな」

 

「ライルさん……」

 

「兎も角、人道的にも戦略的にも価値があるのは事実だ。当然後々使いドコロも出てくるだろうが……相手は連合軍人だ。

 後で出来る"かもしれない"程度の使いドコロと、上手く人質を使って敵部隊を退かせ、月攻略部隊を挟撃した功績」

 

「どっちを取るか……分かりきった答えだな」

 

「……艦長」

 

「そうね。即決は出来ないけれど検討はしてみるわ。本当に貴方の言うような状況になれば、彼女を使うのもやむをえない、わね」

 

「……それでいいか?」

 

「はい、ご配慮いただき有難うございます」

 

「はあ」

 

「ははは、そう拗ねるなよ」

 

「ったく。えりすー、めしー」

 

「畏まりました」

 

 

 

 

 

 

 

「ライル様」

 

「……エリス達以外にそう呼ばれたのは初めてだな。どした?」

 

「本当に、有難うございます」

 

「……婚約者が、居るんだろ」

 

「はい」

 

「キラの親友だったそうだ」

 

「はい」

 

「恋人は悲しませるもんじゃない」

 

「……はい」

 

「……お前な」

 

「はい?」

 

「政治家になる気は、あるか」

 

「……まだ、分かりません。ですが、父が議長ですから」

 

「まあ、そうだろうな。だが、別にお前が政治をする必要はない。

 アイドルとして活躍すれば政治家とは別の形で誰かを幸せに出来るだろう」

 

「……」

 

「お前には、魅力がある。人を引き付ける才覚がある。それは王才だ」

 

「王才、ですか?」

 

「王に必要なのはなんだと思う?」

 

「……知識、ですか?」

 

「まあ、大事だろう。だがそれ以上に大事……いや、これさえあればいいというものがある」

 

「何でしょう?」

 

「魅力だ。人を惹きつけ、民を惹きつけ、将を惹きつける。頭が悪ければいい奴に。武力が無ければ有るやつに。

 優秀な人材を惹きつけ、集め、そして裏切らせない。これだけ出来れば国は繁栄出来る」

 

「…………」

 

「あとはおおざっぱな方針出しとけば周りが実現してくれる。それが王才というものだ」

 

「それが、王才」

 

「王が平和が欲しいと言えばその生命を賭して平和にしようとし、食べ物が欲しいと言えば他者から奪ってでも捧げる」

 

「それは……」

 

「そう、暴君だ。だが、紛うことなき王だ。お前には、その才覚がある」

 

「私に、王才が?」

 

「自分が人気者の自覚ぐらいあるだろう?人によっては生命を賭すことすら厭わないほどの」

 

「……」

 

「王になりたいなら、政治をやればいい。上手くやればクライン王国が誕生するだろう」

 

「……」

 

「だが、政治家になりたいならあえて言おう。無駄だ。やめておけ」

 

「……なぜ、ですか?」

 

「分かるだろう?政治家に王才は必要無い。あってはいけない。

 政治家に求められるのは叡智を集め、議論・討論し、国をよりよくしていくことだ」

 

「……」

 

「それは、王の仕事じゃない。大臣の仕事だ。王佐の才を持つ者の役目だ。王才を持つお前には、決して出来ないことだ。

 叡智を持つ必要がなく、議論・討論の前に相手が屈服し、国が勝手についてくる。それでは、政治家にはなれない」

 

「……」

 

「アイドルとして、偶像として生きるならいい。教会の女神像を前に熱心に祈るのと変わらない。無害だ」

 

「……」

 

「だが教主が聖戦を声高に叫べば?平和のための戦いを掲げれば?……信者達はついて来るだろう。己が生命を賭して」

 

「……」

 

「お前は、政治家にも宗教家にもなるべきではない。ただのアイドル。みんなの憧れ。

 いつか誰か素敵な人と契を交わし、皆のシンデレラはただ一人のためのシンデレラとして幸せな生涯を終えました。

 めでたし、めでたし。それがいい」

 

「……」

 

「それが、多くの誰かとお前にとって幸せな事だ」

 

「………………私には、何も、出来ないのでしょうか」

 

「出来るさ。言っただろう。人を幸せにする方法は政治だけでない。宗教だけでもない。

 知らないのか?この戦時中という悲愴感漂う中で人は誰を心の拠り所としているのか」

 

「……それ、は」

 

「あの人が居るから笑ってられる。彼女の声を聞けば力が湧いてくる。彼女の歌に心を救われた」

 

「……」

 

「ファンレターとか、来てるだろう。それとも全部目を通す前に事務所がシャットアウトかな?」

 

「……ええ、問題の無いものは、読ませて頂いています」

 

「分かるだろう。人は誰を必要としているのか。君は誰から必要とされているのか。

 誰かに必要とされ人が必要とする君の姿が、どういったものなのか」

 

「……はい」

 

「お伽話だがな。歌で世界を救った者が居るそうだ」

 

「歌で、世界を?」

 

「あり得ないと思うか?……俺は、思わない。歌に限らず文化というものは、時には対立を招くこともある。

 だが、最も簡単に人が分かり合える手段でもある」

 

「……」

 

「文字、言葉、歌、食べ物、遊び。誰もが知っていて誰もが持っている。それを通わせ、共有し、共に過ごす。

 ……平和ってのは、そういうものだろう」

 

「……」

 

「聞くが。誰かと共に過ごす時間、その時に聞く素敵な歌。それが歌われなくなってしまったら、人は何を聞けばいい」

 

「あ……」

 

「お前には類まれなる才がある。それは政治家の才でも、宗教家の才でも、王の才でもない。

 人を幸せにする歌手の、アイドルの、歌姫の才だ」

 

「…………」

 

「まあ、思う所もあるだろう。君自身の意見もあるだろう。ゆっくり考えて、頭が沸騰するほど悩んで、そして答えを出せばいい。

 悩んで悩んで、迷って迷って、そうして自分なりの答えを出せれば、きっとそいつは前に進める」

 

「前に、ですか」

 

「キラにも言った言葉だ。受け売りだがね。立って歩け、前に進め。君には立派で綺麗な足と……歌声が、ついている」

 

「………………………………ありがとう、ございました」

 

「……それと、帰ったらこれをアスランに渡せ」

 

「これは?」

 

「手紙だ。大したことは書いてない。生きろ、ただそれだけだ」

 

「生きろ?」

 

「キラは俺が死なせない。すべてが終わり、お前達が元通りになるまで絶対に死なせない。

 だからこころおきなくかかってこい。そして、生きろ。そう書いてあるだけだ」

 

「……お優しいん、ですのね」

 

「ガラじゃないんだよ。こんなのは。誰にも言ってくれるなよ?こっ恥ずかしくて死にたくなる」

 

「ふふふ、ええ、誰にも言いません。……今日のこの事は、私の宝物です」

 

「やめてくれ、人殺しの言葉なんざ真に受けるもんじゃない」

 

「それでも、私はあなたを優しい方だと、そう、思います」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

「……お疲れ様でした。中々の名演説でしたよ」

 

「ああ。飲みもんくれ」

 

「どうぞ」

 

「準備がいいな」

 

「ライル様のためですから。それとこちら、アークエンジェル及びストライクの技術データです」

 

「ああ、流石に時間がかかったな」

 

「絶対にばれないようにとのお申し付けでしたので。その代わり、映像データの解析や分析資料の作成も行いました」

 

「流石だな。さっきの会話もそうだが、ログは徹底的に消しとけよ。人に見られていいもんじゃない」

 

「心配ありません。私を攻略出来る者など居ませんから」

 

「随分と自信満々じゃないか」

 

「ええ、あなたのお手製ですから」

 

「……そうだったな」

 

「ところで」

 

「ん?」

 

「先程の名演技、台本はどちらに?」

 

「頭の中さ」

 

「即興ですか。流石ですね」

 

「ははは、元演劇部舐めんな」

 

「経歴は」

 

「小学校高学年の頃3年間」

 

「流石です、ライル様」

 

「褒めるなよ、照れるじゃないか」

 

「褒めていません」

 

「ま、なにはともあれ。これで少しは考えるだろう。多少はスケジュールがずれこむかもな」

 

「変わらない可能性もありますが」

 

「変わるさ。いや、変わらなくてもいい。それが彼女の選択ならな」

 

「……なぜ、そこまで」

 

「――全部カミサマとやらの定めたシナリオ通りなんて……面白み、無いじゃないか」

 

「……同意します」

 

「ふう。さて、そろそろ行こうか。」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラ」

 

「あ、ライルさん」

 

「よーっす。アイリス、キラの様子はどうだー?」

 

「ほ、本人目の前に聞きますか……」

 

「ええ、いつもして欲しい時にしっかりリードして下さって……ふふ、ドキドキしてしまいます」

 

「あ、アイリス……」

 

「ほうほう、上手いことやってるみたいだな。いい事だ。どうする?船降りる時に持っていくか?」

 

「ええ?いや、でも……」

 

「そもそもお前用に調整してあるんだ。突き返されたってデリートするだけだからな」

 

「じゃ、じゃあ貰います!」

 

「嫁に貰ってくれるそうだ。良かったな」

 

「はい♪」

 

「え?……ええええええっ!?」

 

「ははははっ!冗談だ冗談。まあほんとに持って行ってもいいけどな。結婚したけりゃ戸籍ぐらい偽造してやる」

 

「ら、ライルさんっ!」

 

「ははは。……で、実際問題、降りるのか?」

 

「っ!……実は、迷ってます」

 

「だろうな」

 

「ライルさんが言ったように、どこにいてももう無関係じゃない。僕にも出来る事があると知ってしまった」

 

「ああ、大概の人間には出来る事って奴がある」

 

「だから……でも、どうしたらいいのか」

 

「アスランか」

 

「……はい」

 

「簡単だ」

 

「え?」

 

「死ななければいい」

 

「それは……どういう」

 

「お前が死ななければ、当然生きたまま戦争は終わる。お前が死ぬまで戦争が続くなんてわけがない」

 

「はい」

 

「で、アスランはそう簡単に死ぬか?」

 

「……」

 

「死ねないだろうな。死なんさ。生きて戦争が終われば……元に戻れる」

 

「戻れるんでしょうか」

 

「今お前達が対立している理由を思い出せ」

 

「え、それはアスランが襲って来るから……」

 

「ああ。で、お前は仲間を守るために戦う。嫌々戦ってるんだ。それに、まだお互いに誰か大事な相手を殺していない」

 

「だから、やり直せる?」

 

「親友がライバル会社に勤めてるようなもんだ。退職しちまえば関係ない」

 

「え、つまり」

 

「単に戦争終わるまでお互い生きてりゃ、別に喧嘩する理由無いだろ。一発ずつぶん殴り合って仲直りしちまえ」

 

「え、ええええ……そんな単純な事なんですか?」

 

「そんな単純な事なんだよ。だからな、仲間を殺させるな。相手の仲間も死なせる必要はない。捕虜で十分だ」

 

「それは……」

 

「まあ、難しいな。俺もいつでも支援出来るわけでもない。だから、腕を磨け。生きるために、守るために、失わせないために」

 

「……」

 

「乗り続けるならどの道強くなる必要がある。だから、それに理由を持たせろ。戦う理由は多いほどいい。それだけ強くなれる」

 

「ライルさんにも、あるんですか?」

 

「殆ど無い。生活とか趣味の延長で戦ってるだけだからな。だから、俺はもう伸びない」

 

「伸びない?」

 

「今の力はただ単に経験と……生きるのに死にものぐるいだった頃に身につけたものだ。理由を失った今じゃ、もう強くなれん」

 

「……」

 

「きっと、お前は俺より強くなる。それだけの理由がお前にはある。それだけ強くならないと達せられない理由がな」

 

「……はい」

 

「だから、乗り続けるなら強くなれ。どんな形だろうと、何を利用しようと。それだけお前が望む壁は大きい」

 

「……」

 

「心だろーが武力だろーが権力だろーが。世の中、力ってもんが手に入れば案外どうとでもなる。

 だから強くなれ。そのためにも……死ぬな。いいな」

 

「………………はい!」

 

「よーし。最近説教というか人生相談ばっかりしてる気がするからな。遊ぶぞ。ガラじゃないんだよ」

 

「ええ?でも、何をするんですか?」

 

「どうせならさっきの話題に繋げるか。シミュレーターやるぞ。一つ教導してやる」

 

「ええ!?」

 

「まあこっちの艦にゃ俺の機体データ無いし、やるわけにもいかん。逆も同じだろう。俺はジンでやるぞ」

 

「じ、ジンで、ですか?」

 

「なんだ?いくら俺でもジンでは……ってか?」

 

「え、あ、いえそういうわけじゃ」

 

「まあ所詮ジンだ」

 

「ええ?」

 

「だが、それでもジンだ」

 

「はあ」

 

「ふ、これでもガンダムに乗るまではジン乗りだったんだ。見せてやろう、エース級の戦いって奴をな」

 

 

 

 

 

 

 

「そらそらそら!どうしたどうしたそんなものかキラ・ヤマトォッ!」

 

「く、うわああっ!?は、速すぎるっ!」

 

「なあ、何やってんだあれ」

 

「ああ、フラガ大尉。ライルさんの申し出でね。キラくんとシミュレーターで模擬戦がしたいと」

 

「で、この状況か」

 

「かれこれ1時間はやってるわね」

 

「で、戦績は?」

 

「ライルさん対キラくん、32勝12分け0敗」

 

「うげえ。つーか一戦1分半ペースかよ」

 

「最初が酷かったのよ。数秒で瞬殺されて」

 

「油断でもしてたのか?」

 

「みたいね。ライルさん、ジンだから」

 

「ジンでその戦績かよ!?油断してたとはいえクルーゼを撃退したキラだぞ?クルーゼよりよっぽど強いって事じゃないか」

 

「そういえばこの前の戦闘はエネルギーがギリギリだったわね」

 

「それで中破させて追い返したんだもんなあ」

 

「純粋に乗り慣れているというのもあります。ライル様は数週間前にガンダムが完成するまで、ジンに乗っていましたから」

 

「うげ、マジか」

 

「とはいえ艦隊と予備機があるのだから、もっと前からあったのよね?」

 

「以前から製造はしていたのですが、戦闘に耐えられるレベルではなかったのと、乗り慣れていなかったためですね」

 

「ほー。で、乗り換えたのがつい数週前、と。そりゃジンを使いこなせるわけだ」

 

「シミュレーターも含めれば、恐らくザフトのエース級の更に数倍の搭乗時間がありますから」

 

「だからこの結果、か」

 

「さっき見せてもらったのだけれどね。驚きの数値よ」

 

「何がだ?」

 

「それぞれにライルさんが乗ったガンダムとジンの戦闘シミュレート結果」

 

「データを比較しただけのものですが、蓄積されている量が量ですので、相応の精度はあります」

 

「で、その結果がこれ。100戦中、シュヴァリエ56勝、ジン33勝、11引き分け」

 

「………………最近、絶句してばかりだな」

 

「私もいつも戦ってる様子を見ているから、同じ気分よ」

 

「あの廃スペックガンダム相手にジンで勝率3割超え?冗談だろ?」

 

「あの強さ、確かにガンダムの能力もあるけれど……確実に半分は、彼の技量というわけね」

 

「どうしたキラ!その程度では生き残れないぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

「声が小さい!クソするつもりで腹に力入れろ!」

 

「はいっ!」

 

「軍に残ろうが抜けようが、緩い気合で世の中渡れるなんてあまっちょろい事考えるなよ!死ぬ気でもがけ!」

 

「はいっ!」

 

「良い返事だ!褒美にもう100回殺してやろう!」

 

「ひいいいいいっ」

 

「そらそらそらァッ!」

 

「おい、どこの鬼教官だあれ」

 

「頭が痛いわね……」

 

「ライル様、すっかりお楽しみですね」

 

「楽しんでる、のか?」

 

「完全に遊んでます」

 

「そう、なの?」

 

「そもそも遊びでない方が珍しいのですが。創作の名言を真似するのが好きな人ですから」

 

「へえ」

 

「少なくとも、ここ1ヶ月の名言珍言の類はなにかしらの引用が殆どですね」

 

「それって、俺達と出会ってからたまにしてた真面目な話とかいい話とかも……」

 

「その場の勢いと思いつき、キメたい時は創作から引用、でしょうか」

 

「おいおい、俺の感動返せよ」

 

「はあ。むしろ大した役者ね」

 

「まあ、嘘は言っていませんよ、嘘は。真面目と遊びを常に混同させている方ですから」

 

「切り替えがいいのはいい事、なのか?」

 

「そういうことにしておきましょう。……一応、嘘は言ってないのね?」

 

「ええ。言ったことはほぼ本心ですし、心配したりしているのも事実でしょう。気遣いは得意な方ですし」

 

「嘘や誇張の類でないなら構わないわ。助かってるのは事実だもの」

 

「まあそりゃそうだけどなあ。なんかもやっとするなあ」

 

「本人はシリアスなつもりも気負いもまったくありません。機密情報に関しても、実際には機密ともなんとも思っていませんよ」

 

「……そういえば、Bランクまでという事だったからそれ以上は聞かなかったけど」

 

「頼めば教えてくださると思いますが。Bランクまでと決めた時も、

 『んー、A以上は流石にうそ臭い。Bぐらいでいっか』という決め方でしたので」

 

「…………」

 

「今まで、何度か戦闘を行ったのは?」

 

「ライル様に死の恐怖も殺す気負いも殆どありませんね。ゲームの延長線上という感覚ですよ。

 だから前回のクルーゼ戦のように、戦闘中にマンガやアニメのセリフを言ったり出来るんです」

 

「あれ引用かよっ!?」

 

「はっきり、パクリと言います。全滅させてしまっても、というセリフですが」

 

「ああ、最初の時に言っていたわね」

 

「一度は言ってみたいセリフベスト10だそうです」

 

「…………」

 

「よし、殴る。あいつぶん殴る。感動返せ」

 

「抑えてください大尉」

 

「だってよお……」

 

「いやー、楽しかった。鬼教官ごっこ面白いな。おー、ムウじゃんどしたー?ミネアとはよろしくやってれぅー?」

 

「(ピキッ)お前、ちょっとこっちこい。軍人の拳ってモンを教えてやる」

 

「大尉、お願いですから抑えてください、お願いですから」

 

「とまあエリスが好き放題言ってくれてたのは置いといて」

 

「……ああ、そういえば繋がってるのだったわね」

 

「そろそろ、だな」

 

「またそうやって……」

 

「か、艦長!」

 

「どうしたの!?」

 

「艦前方に所属不明艦多数!こ、これは小規模艦隊レベルです!」

 

「なんですって!?」

 

「来たか」

 

「っ!おいおいマジかよ」

 

「俺は先に出る」

 

「ライル!?」

 

「ええ、悪いけどお願い出来るかしら」

 

「ああ、任せておけ」

 

「ライル、お前やっぱ……」

 

「話はあとだ。じゃあな」

 

「……どうする、艦長」

 

「不明艦隊に動きは?」

 

「ありません。沈黙しています」

 

「そう……」

 

「シュヴァリエ、発進しました」

 

「早いな、準備してたのか?」

 

「はい」

 

「例の勘ってやつか。やっぱり頼りに……」

 

「いえ、来るのは分かっていたので」

 

「へ?」

 

「どういうこと?」

 

「つい先程連絡がありまして、間もなく合流する、と」

 

「………………ちょっと待て。前方の艦の所属を聞いてもいいか?」

 

「ジャンク屋連合チームウェヌス所属艦隊です」

 

「あ、あんのやろおおおおお……」

 

「……もう、どうでもいいわ」

 

 

 

 

 

 

「なあカズイ、トール。なんか艦隊居るんだがアレなんだ?お前らブリッジに居たんだろ」

 

「なんかライルさんの艦隊らしいよ。艦長達おちょくってから出撃してた」

 

「……撃ってきたりしないかな」

 

「カズイ、ぼそっと怖いこと言うのやめてよ」

 

「ライルさんの艦隊なら大丈夫だと思うけど。確か戦闘能力は低いって話だし」

 

「そうですね、陽電子砲を搭載した戦闘支援艦や撹乱兵器を搭載した偵察艦は兎も角、後は補給艦の類ですから」

 

「ああ、やっぱり詳しいんだね、アイリス」

 

「ええ。説明、いたしましょうか?」

 

「お願い出来るかな」

 

「はい♪まずは、艦隊全体の説明からさせていただきますね。

 艦隊の構成は旗艦1、偵察担当艦5、補給担当艦3、人員製造・調整担当艦2、技術開発研究艦2、戦闘支援艦5です」

 

「うわあほんとに艦隊だあ」

 

「連合の小規模艦隊クラスだな。ザフトなら中規模に片足突っ込んでるんじゃないか?」

 

「でも非戦闘用艦もあるんだよね?」

 

「ええ。戦闘用の艦は護衛の役割が大きいですね」

 

「これもジャンクなの?」

 

「はい。アガシオン級駆逐偵察艦とシャンバヴァン級補給艦は連合のドレイク級を、

 オーカス級人員製造艦とペンドラゴン級技術開発艦は連合のネルソン級を、

 ベルセルク級戦闘支援艦はザフトのナスカ級をジャンクから再生・改造したものですね」

 

「へー」

 

「旗艦と違ってオリジナルじゃないんだ」

 

「旗艦も元はそれらのフネを分解したものですよ?旗艦以外はあくまで急ごしらえなので」

 

「そっか、流石に全部一から作ってる時間無いよな」

 

「人手は問題無いのですが、材料を集め建造する時間がありませんでしたから。

 まだ戦争開始から1年ほどですし、ようやくジャンク部品が揃い始めた頃ですね」

 

「そんな状態でガンダム作ったんだから凄いよなあ」

 

「流石に購入した部品等も多いんですよ?」

 

「そりゃそうか。旗艦はなんだっけ、ヴァルハラ?」

 

「サターン級旗艦ヴァルハラ、ですね」

 

「ナントカ級って、どっから来てんの?」

 

「MSを含め、ライルさんがよくやっていたゲームの中で出てきた悪魔や妖怪の名前から、適当に選んだそうです」

 

「え、そんな適当でいいの?」

 

「ただの名前ですから。それに軍用ではないですし、趣味以上の意味はありませんね」

 

「そっかー」

 

「まあアークエンジェルだって天使の階級から来てるらしいしな。いまさらか」

 

「けどやっぱ戦闘用のフネは多いんだな」

 

「といいますか、それ以外の用途のフネは然程要りませんので。

 製造艦と開発艦はそれに特化させて居住区等は最低限以下ですし、戦闘用のカタパルト等も必要ありませんから」

 

「そっか、アークエンジェルだって丸々補給物資用のスペースにしたら相当積めるもんね。何隻も要らないか」

 

「私達の本体はプログラムですので、肉体が消耗すれば取り替えれば済みます。居住区が必要無いんですよ」

 

「ほんとに服を着替える感覚なんだあ」

 

「ライルさんは多少は用意しようと仰って下さったのですが、

 エリスさんが『スペースの無駄』と切って捨てたという経緯もありますね」

 

「や、やっぱり」

 

「ライルさんって結構優しいよね」

 

「キラさんはどう思いますか?」

 

「うん……取り替えれば済むっていうのは理屈では分かるよ。でも……やっぱり僕としては自分を大事にして欲しい、かな」

 

「ふふ、畏まりました♪」

 

「あー、いいn……ミリアリアごめんって」

 

「ふんだ。でもそうなると戦闘用艦も完全に戦闘用よね?やっぱり戦闘用だと数が要るのかな」

 

「元がジャンクの上武装も限られているので戦闘能力は低いですし、最悪の場合自爆特攻も考慮されていますので。

 それに相手の数が多い場合は少数では後方の非戦闘用艦を守り切れない場合もありますから」

 

「あー、そっか。分かってはいるけど生命が安いわねー」

 

「そもそも肉体ごとに別個の生命、というわけではありませんから。

 私のような独立型を除いて、全てのドールはオリジナルタイプであるエリスさんと人格をリンクさせた、言わば同一人物なので」

 

「あ、だから誰に話しかけてもおんなじ感じの喋り方なんだ」

 

「はい。そもそもライルさんの隣に居るエリスさんや艦のブリッジに居るエリスさんはほぼ毎回別人ですよ?」

 

「え、うそ!?」

 

「全然気づかなかった……」

 

「以前も言いましたように、本体は艦内部のマザーサーバーに構築されたプログラムですから」

 

「ああ、ネットゲームと同じか。大本はサーバーにあるからどの端末で見ても中身は変わらないんだ」

 

「そうなりますね」

 

「毎回体変えてるの?」

 

「消耗したものは各艦の修復用設備で修復体勢に入り、他の体と配置を交代するんです。

 ブリッジ要因など重要度の高い所は修復後間もない体が担当し、消耗したら生活支援などに回されるんです」

 

「全部能力が均等だから出来る事よねえ」

 

「へー、すげえな」

 

「要するに使い回し……は言い方が悪いな。お下がり……も違うか。ローテーションなんだな」

 

「でもさ、あの旗艦って相当ヤバイ戦闘力なんでしょ?」

 

「艦長達はアークエンジェルクラス、場合によってはそれ以上って言ってたね」

 

「となると性能低いって言ってもあの艦も強いのよね?」

 

「非戦闘用艦はレールバルカン等のCIWSと牽制用の中型ミサイルユニット、あとはAB爆雷やフレア弾ぐらいの最低限の武装ですね」

 

「流石に完全非武装じゃないか」

 

「戦闘用艦の場合、戦闘支援艦はミサイルユニットを大型化、両艦とも搭載数を増加しています。

 更に偵察艦は大型連装ビーム砲を、戦闘支援艦は艦前方両翼に低出力陽電子砲を一基ずつ搭載しています」

 

「旗艦のヴァルハラは低出力陽電子砲を2つ繋げて、それを更に前向き後向きに2セットずつ、だっけ」

 

「確かに攻撃力はかなり落ちてるわけね」

 

「それでもジン程度であれば、直撃すれば助かりませんね」

 

「へえ。最低限の最大威力って事か」

 

「陽電子砲は艦隊周囲のデブリ等を破壊する役目も担っていますので、そのためというのもあります」

 

「そっか、このまえみたいな事もあるもんね」

 

「あれだけ沢山居れば、むしろ敵よりソッチの方が問題か」

 

「あとは量産型の量子反応炉と量子反応推進で高出力高機動を確保し、戦線離脱能力を高めてありますね」

 

「あ、やっぱ量産型なんだ」

 

「本格製造するための部品が足りなかったのです。特に非戦闘用艦のものは、つい先日のオーバーホール時に完成したばかりですね」

 

「へえ」

 

「やっぱ大変なんだあ」

 

「いや、そもそもジャンクからそんなもの作れる時点で凄いと思うんだけど」

 

「ライルさんがさ、量子反応炉はミスったらコロニー吹っ飛ぶって言ってんだけど……」

 

「あ、そういえば」

 

「その点は大丈夫ですよ。量産型なので出力は落ちていますし、大型なので安定していますから。

 それに暴走等によって臨界を超えた場合が危険なのであって、撃墜等では暴発の心配はありません」

 

「あ、そうなんだ。じゃあ自爆特攻って言うのは」

 

「わざと量子反応炉を臨界状態にし、特攻するものです。

 量産型ですので威力は小さいですが、艦周囲の敵艦を巻き込むぐらいの威力はありますね」

 

「へえ」

 

「巻き込まれたら大変ね」

 

「影響範囲程度なら兎も角、完全に反応効果範囲内であればアークエンジェル級であろうとも確実に撃沈しますね」

 

「うわあ」

 

「防御とかもしっかりしてるの?」

 

「むしろそうちらに重点を置いていますね。量産型の無限減衰装甲……そちらで言うPS装甲を搭載していますから」

 

「確かビームにも効果あるんだっけ」

 

「ええ、多少ですけれど。非戦闘艦を後方に下げ、戦闘支援艦がAB爆雷と陽電子砲で援護し、偵察艦が撹乱と特攻が基本戦術ですね」

 

「ほんとに艦隊だなあ。機動兵器無いんだよね?」

 

「ええ。戦闘支援艦や偵察艦にMAを載せようかという話も出たのですが、補給の点から保留となりました」

 

「ああ、流石にMAやMSの弾薬とかまで補給するのは無理があるか」

 

「ジャンクでは統一規格の完全品を確保するのは難しいですし、安定供給が出来ません。かといって購入すると高く付きますから」

 

「いくらなんでも軍用じゃないのにそんなに金使えないよなあ。稼ぎにも限度があるだろうし」

 

「そもそも、ドールによる半無人制御システムがいまだ完成していないというのもありますね」

 

「けどさ、実際凄い金額でしょ?お金足りてるの?」

 

「弾薬以外はほぼジャンクですし、修理等も自前です。

 人件費も要りませんし、その人を作るために必要な遺伝子は大量に保存されていますから」

 

「じゃあ弾薬とか食べ物とかの基本的な補給物資と……」

 

「遺伝子培養設備用の物資等ですね。これはごくありふれたものを装置で専用に調整や合成して使っているだけですので、

 基本的には弾薬費が殆どです。次にゲームや酒類などの嗜好品、食料品と続きますね」

 

「嗜好品2位かよ。というか弾薬ってやっぱ高いんだあ」

 

「資源の量が限られますし、基本的にジャンク屋連合や傭兵ギルド向けに降ろされている品を使っていますから」

 

「ほんとよくお金足りるわね」

 

「修理したジャンク品を売るだけでもかなり稼げますよ?

 戦艦一隻修理すれば、私達が修理したものなら修理費の10倍近い値が付きますから」

 

「へえ」

 

「私達って言い方、やっぱりブランドとかあるんだ?」

 

「ええ。修理する者によって出来が変わってきますので。私達はジャンク屋連合の中でも古参ですから、信用もありますし」

 

「ああ、そっかもう10年もやってるんだっけ」

 

「へえ、俺それ知らなかった。ジャンク屋歴10年かあ。すげえな。結構ベテランじゃん」

 

「ううん、そっか。ぽっと出だと信用も得にくいのか」

 

「良品を降ろしていれば直ぐに評価は上がりますけど、新人の方でしたらやはり腕も相応ですので」

 

「ベテランのノウハウとか、新人は考えないとこまで考えてたりするんだろうな。その辺の差か」

 

「うーん、やっぱジャンク屋やるならライルさんに頼むのが一番いいのかなあ」

 

「ちょっとトール、あんたほんとにジャンク屋になるつもり?」

 

「いや、考えてるだけだよ。それにほら、稼ぎいいらしいじゃん。ミリアリアにも楽させてあげたいし、さ」

 

「それは……嬉しいけど」

 

「カズイです、周りの空気が以下省略」

 

「まあ、ブランドって意味なら最強だよなあ。ミスとかド忘れとか絶対しないわけだし」

 

「元の状態次第ですが、完全に同ランクの修理品を大量に用意する事もできますので」

 

「完璧かつ全く同品質に修理された最高ランクの戦艦を一辺に投入……ザフトがやってきたらと思うと怖いな」

 

「実際、ライルさんが想定されているザフトの連合攻略作戦では、私達の商品も幾らか混ざっていると思われますよ」

 

「うげえ」

 

「まあ商売なんだしその辺はしょうがないか。恨むのはお門違いだよな」

 

「殆どはジャンク屋連合や傭兵ギルドに降ろされているので、連合やザフトに渡っているのは全体の3割程度でしょうか」

 

「じゃあ今度の作戦で投入してくるのは……」

 

「私達が修理したものをほぼ全艦投入してきたとしても、数隻程度でしょうね」

 

「あんま変わんないか」

 

「その分こっちにもライルさん達居るしね」

 

「むしろそっちの方がでかいだろ。ちょっとした艦隊ぐらいなら相手にならないんじゃね?」

 

「状況にもよりますよ」

 

「ま、キラも居るしな、きっと大丈夫だって」

 

「でもライルさんは心配してたよね」

 

「かーずーいーっ!不安になること言うなって!」

 

「そうだよ、ただでさえライルさんの勘はよく当たるんだから」

 

「私、アレ絶対超能力だと思うわ」

 

「未来見えるんじゃね?」

 

「いや、あくまで勘なんじゃ」

 

「いやいや実はもっと――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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