黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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四之巻『卒業試験』だってばよ!

四之巻『卒業試験』だってばよ!

 

うずまきナルト13歳。卒業試験の日。

そして、物語が動き出す日でもある。

 

「や、ナルト」

 

「あ、ミカン!おはようだってばよ!」

 

今声を掛けてきたのは甘味ミカンという女の子。

オレンジ色の髪をショートカットにした可愛らしい子で、原作では見なかった子だ。

活発な子で元はヒナタの友人だったのだが、ヒナタに惚気られている内にナルトに興味を持ったらしい。

少し話して気に入ってからはヒナタ同様ナルトと仲良くしてくれている。

どうやらヒナタの恋を応援しているらしく、ヒナタに色々吹き込んでいるのを見かける。

 

「今日の試験分身の術だって。アンタ苦手なんでしょ?大丈夫?」

 

「へっへー、オレってば父ちゃんに教えてもらって完璧だもんねー!

 それにコハクも本気出していいって言ってたし!」

 

そう、オレは先日、この卒業試験からナルト自身の判断で本気を出すことを許可した。

といっても早々に習得してしまった螺旋丸等は緊急時以外の使用を禁じているのだが。

手札は隠して戦うものだと教えたこともあって、それなりの戦術眼は身に付いている。後は経験次第だろう。

そして今後は実戦の機会や緊急の出来事も増えてくる。

俺達の事が上層部に限ってだが浸透し、個々人の思惑はあれど概ね受け入れられている事を鑑みても、

制限解除には丁度いい時期だと思い始めたのだ。

最近は別に家を用意して貰って離れて暮らしている事だし、緊急時には自己判断で使えたほうがいい。

とは言っても力の大部分はナルトの中に置いたままなので、単に一人の時間を確保しただけなのだが。

 

「うそ、ナルト本気出すの?先生達怪我しない?」

 

「別に暴れるわけじゃねーんだから大丈夫だって。ミカンはオレのこと何だと思ってるんだってばよ」

 

「ヒナタの彼氏」

 

「み、ミカンちゃん!?」

 

今まで相変わらずのとろんとした目でナルトを見つめていたヒナタが過剰に反応する。

何時ものやり取りなのだが全く慣れていないあたり、相当免疫が低いのだろう。

というか、あのとろけた目は大丈夫なのだろうか。

他所では普通にしているのに、ナルトと居る時はとろけた目でナルトだけを見つめ続けている。

今はいいが、思春期になったらとろけたまま無意識的にナニを始めたりしないだろうな…

気にし過ぎだとは思うが、余りのメロメロっぷりに少し心配になる。

 

「へへっ、ヒナタのことは大好きだってばよ!」

 

「なるとくん…」

 

「うっわー、言い切った…って、コハクさん?」

 

「急に使うからびっくりしたってばよ」

 

心配にはなるが更に弄りたくなる不思議。

しかもナルト自身は一応本心のため否定しない。

もう全部ヒナタでいいんじゃないかな。作中で一番ヒロインしてたイメージあるし。ペイン戦の時は胸を打たれたなあ。

ちなみに二人にはオレの力の一部をナルトに封じてあると言っている。

ナルトがヒナタを助けた時自分の力でなかったことを気にしていたので、二人にはこう言ってある。

けど他人に体を譲り渡してでも助けてくれたナルトにヒナタの好感度は限界突破…

もう何しても喜ぶんじゃなかろうかこの子。

 

「コハクさんもイタズラ好きよね~。最初は火影様の直属なんてどんな怖い人かと思ってたけど」

 

「同じ直属というナルトくんのお父様も優しげな方でしたし…」

 

「へへ、二人共優しいから大好きだってばよ!」

 

本当に、こっちが恥ずかしくなるぐらい素直な子だ。

そういえばヒナタ嬢、何時の間にかナルトの両親に挨拶済みだったりする。

父親同士の仕事の関係で日向家に行く機会があり、その時に挨拶したらしい。

本人の与り知らぬ所で物凄い勢いで外堀が埋まっているのは気のせいでは無いだろう。

そういえば俺の同僚も言っていたな。男が気付いた時なんて、全部手遅れになってるもんだと。…俺は気をつけよう。

 

「あーあ、いいわね二人共。私も素敵な人に出会いたいなあ。コハクさんてって独身?」

 

「あと10年早く生まれてれば丁度良かったんやけどね。…変なこと言うのに使うなってばよ~」

 

「あ、今のコハクさんだ。10年かあ。うん、頑張る」

 

一体何を頑張るというのか。

そういえば俺は何故か子供に人気がある。

ナルトの相手で慣れているというのもあるが、こっそり尻尾をもふらせてやってるのも大きいと思う。

自分で言うのも何だがあのもふもふには抗い難い魔力があると思うんだ。うん。

 

「次、うずまきナルト、来なさい」

 

「あ、オレの番だ。行ってくるってばよ!」

 

「いってらっしゃい。大丈夫だと思うけど頑張ってねー」

 

「ナルトくんなら大丈夫。怪我には気をつけてね」

 

「おう!」

 

ヒナタの声援が小規模任務にでも行くようで少し微笑ましい。

さて、どうせだから追加試験と行きますか。

 

 

 

 

「合格!」

 

「よっしゃ!」

 

結局俺がチャクラを乱したにも関わらず、あっさりと成功。

チャクラを乱されるのにすっかり慣れてしまっているようで、

これなら幻術などへの耐性もかなりのモノだろう。

ただの分身で何十体も出そうとした時はイルカ先生も驚いていたが、

流石に影分身と違って多重が出来ないので10体前後がせいぜいだった。

とはいえどの分身も恐ろしく精度が高く、やはりイルカ先生は驚いていた。

はてさて、一体どんなスパルタを施されたのやら。思わず目頭が熱くなるな。

 

「へへっ、今までありがと、イルカせんせー!」

 

「ああ、これからだぞ。頑張って立派な忍になれよ」

 

ああ、ちなみに原作でナルトを騙して禁書を持ち出させたあいつ。

予知として調べて貰ったら余罪が出るわ出るわ。裏で色々こそこそやっていたらしい。

現在は投獄中なので原作イベントは置きず。

まあ既に二人の信頼関係は十分なものがあるので問題無いだろう。

以来俺の予知は割と信用されていて、幾らか似たように未然に防いでいるモノもある。

 

『コハク、俺ちょっとイルカせんせーと一楽寄って帰っからさ』

 

『りょーかい。ほなボクも仕事あるさかい行くわ。分体残してくさかい心配いらんで』

 

最近は口寄せが安定してきた事やナルトの両親の協力もあり、

一日の大半は外に出られるようになっている。

振るえる力も10分の1を超えた。

これで上位の中忍から並の上忍ぐらいならどうとでもなるだろう。

ナルトの修行の礼として飛雷神の術の仕組みも教えてもらい、妖術式に改良してある。

時間が切れてもマーキングしておけば次の日には戻れるため、

遠出して任務を行うことも増えてきた。

出かける時などナルトから目を離す時はチャクラから作り出した分体を置いていっている。

本体ほどの能力はないが、ちょっとやそっとでは消滅しないし反応自体は同じなため、感知系も誤魔化せる。

基本的にナルトの中と俺の自宅の二箇所に置いておき、

ナルトの保護や任務等の連絡の受け取りを行なっている。

 

「さて、ほな行こか」

 

懐から最近は習慣となったキセルを取り出して咥える。

前世では二十歳になってすぐ煙草を吸っていたが、こちらに来てからはもっぱらキセルだ。

容姿的に煙草よりキセルの方が似合いそうだというのもあるが、実はこのキセル武器にもなる。

米粒大に縮小した印がキセルの内外に模様として散りばめられており、

様々な忍術や妖術の発動触媒として使用することが出来るのだ。

キセル自体も煙草とはまた違う美味さがあるし、我ながら良い物を作ったと思う。

基本的に俺の持ち物は全て用意した材料を元に妖術で作っている。

そのためこういった特殊な物品も多く、

そういった物に目がない上層部のとある忍者はしきりに製造方法などを聞いてきたものだ。

妖術が掛けられているとは分からないようにしていたはずなのだが、

キセルそのものを見ただけでただのキセルでないと分かる辺り、流石と言える。

 

「装束も神槍も問題無いな。ほな、狩りにいきましょか」

 

そう呟いて、黒と白の装束を着込み短刀を携える。

もふっとした九尾を出現させ、狐の意匠を施した仮面を着ける。

 

装束も様々な術を織り込んだ特性の一品で、デザインは某死神マンガのアレ。

高い防御能力を誇り、属性耐性も高い。半分は九尾のチャクラで出来ている為九尾の再生能力の範囲内でもある。

ちなみに体長羽織の背には木の葉のマークに重ねて"九"の文字をあしらっている。

実はこれ、尾獣用の羽織だったりする。

尾獣仲間にプレゼントするつもりで、各里のマークと尾獣の番号を振ってある。

俺のように独立するにしろ、原作のように人柱力のままにしろ、出来る限り助けたいという意思によるものだ。

半分チャクラのため変化時にはそのまま巨大化するようにもなっている。

これはガマ達が服を着ていたのをイメージしてみた。

これを身に着けることで、暴れ狂う猛獣ではなく、里の守護者であるとのアピールの意味も込めてあったりする。

 

神槍も俺の姿の元ネタが持っていたモノを真似している。

柄の部分が術の組み込まれた実体を持つ部分で、刃の部分は純粋なチャクラの塊。

チャクラを高密度に圧縮することで物質のように見せかけている。

チャクラで出来ているため伸縮自在で、九尾の膨大なチャクラを使えば13キロどころでは済まない程伸びる。

原作同様一瞬だけ塵(チャクラの圧縮を解く)にする、敵の体内に破片を残す、といった事も可能。

破片は高密度の九尾のチャクラのためそれだけで毒になるし、

遠隔で術を発動したり、チャクラの流れを乱すのに使ったりと用途は様々。

原作と同じではつまらないので俺なりに改良し、

刀剣のチャクラの性質変換による氷剣や炎剣の再現なども可能になっている他、伸縮の速さは拍手の千倍まで速めた。

とまあ色々魔改造してあるが、

はじめての刀剣制作の上考えうる限りのモノを好きなだけ詰め込めるという事で調子に乗った結果である。

基本的に武器はこれとキセルで事足りる。遠中近全用のため、単独で動く事のある俺には丁度いい。

 

仮面は死神マンガの主人公の仮面と、暗部の連中の一部が身に着けている狐の面のデザインを合わせたもの。

強度も頭部の保護を目的として高めにしてあり、顔の表面に貼り付けるタイプで落ちる心配もない。

仕事の時は何時もこの容姿のため、白黒ギツネとか木の葉の九尾とか狐面の者とかと話題になっているようだ。

事情を知る者が必ず一人は同行するが、

たまに知らない者が混ざることもあるので、里の内外問わず噂になっているらしい。

猿飛サンの直属という事や、同行者の信用も考えて行動している事からか、仲間からは概ね好意的に受け入れられているようだ。

 

「お、来たねーそんじゃ行こうか」

 

「なんや、あんさんにしては早いなあ。尾獣でも降るんちゃうやろか」

 

「洒落にならないこと言ってくれるね君は。一人で行かれたら困るだけだよ」

 

飄々とした様子で答えるのははたけカカシ。一部では五代目候補とすら言われる優秀な上忍の一人だ。

俺は一応特別上忍級という事になっているのでカカシのほうが上司に当たるのだが、

猿飛サンの直属という事になっているので立場は微妙な所だ。

独自行動の権限も持っているため、命令をされる事は少ない。

しかしこの人、人当たりはいいのだが異常なまでに時間にルーズなのである。

任務の待ち合わせに半日遅れるといった事も多いらしい。

らしいというのは、一時間以上遅れた場合は不慮の事態があったとして先行して任務を行う事にしているからだ。

他の忍と組む時は多少は待つが、この人の場合待っていたらキリがないので咎められた事も無い。

前に、彼が待ち合わせ場所に来たら既に任務を終えて帰って来た俺と出くわし、

その後の報告で猿飛サンにこっぴどく叱られるという事があったりする。

 

「流石に任務に遅れる忍は色々どうかと思うで。せめて連絡ぐらい寄越し」

 

「そうは言うけどね、こればっかりはどうにもならんのよ」

 

はてさて、仕事ほっぽり出してまで一体何をしているのやら。

下らない事からアンタッチャブルまで、わんさか溢れてきそうだ。流石元暗部か。

 

「そうそう、今回の任務は卒業試験を兼ねてるからね」

 

「へー。ようやっとか。早いような遅いような。ま、何時もどおりやるだけやわ」

 

どうやらこちらもようやく監視を卒業出来そうだ。

注目自体はされるだろうが、常時監視体勢は解けるという事だろう。

それにしても、今日俺の試験をして明日にはナルト達の試験か。忙しい事だ。

 

 

 

 

 

 

―火の国・某森林地帯―

 

「ひ、ひぃぃぃ…ば、化物!」

 

「化物とはえらいひどい言いようやなあ。まあ、正解やけどな」

 

呟いてキセルを一振り。

耳障りな声を上げて男は燃え尽きた。

これで対象全員の始末を完了。抜け忍の処理とはまた重たい仕事だ。

恐らく同族意識が薄いだろうという事で選ばれたのだろう。

仲間意識が強く、チームワークを重視する普通の忍には中々やりづらい仕事だからな。

まあそれを言えば元一般人の俺に殺しをやらせるというのも無茶な話だが…

生憎と九尾の知識を得た時に感情や人格も多少侵食された。

あのドス黒い感情の塊を思い出せば人殺しの罪悪感なんて薄れてしまう。

やらないという選択肢は無い訳だしな。

 

「問題無いね、はいごーかく。ラーメンでも食って帰るか」

 

「感動も何もあったもんやないなあ。ま、ラーメンは好きやけどな」

 

何時もの和服に着替え、近場の町のラーメン屋に入る。

ナルトに強請られて何度も一楽に足を運ぶ内にすっかりラーメン好きになってしまった。

またこの一楽のラーメンが美味いんだ。

しょうゆのあっさりも、とんこつのこってりも、みそのまろやかさも、どれも絶品だ。

ちなみに俺のイチオシは『とんこつしょうゆラーメン、チャーシューともやし特盛』。

とんこつのコクとしょうゆのあっさり感が絶妙にマッチしている。

チャーシューは濃い目のタレによる味付けが絶品で結構厚めに切ってあるし、

ラーメンにもやし特盛は前世からの俺のジャスティス。

 

「お前んとこ二人はほんとよく似てるね。兄弟みたいだよ」

 

「ボクは兄弟おらんかったからよう分からんけど、言われてみればそうかもしれんなあ」

 

まあ確かに、ナルトが生まれ時から見守っていた訳だし、

血の繋がらない兄弟と言えば確かに近いかも知れないが。

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

「ん、なんや?」

 

ラーメンを堪能した後、店から出ると突然見知らぬ女性に声をかけられた。

淡い桃色の髪を水色の大きなリボンで後頭部から二つに分けて結び、

肩口や襟の下の部分が無い所謂ノースリーブの、リボンと同じ水色をした水色の和服に身を包んでいる。

袖口などから白や黒の生地が見えているから二重三重の構造なのだろう。

下半身部分はスリットの入った…というより前と後ろに分かれた構造に、黒い帯をしている。

胸の谷間が見える構造という事もあり中々に扇情的にも見えるが、

彼女自身の容姿の淡麗さ、理知的な面と無邪気さを併せ持つような雰囲気が下品さを感じさせない。

一言で言ってしまうと、かなり好みの美人の子が居た。

 

「あの、その、あなたのその尻尾…なんですけど」

 

そう言って俺の背中で揺れる九本の尾を指差す女性。

先程から何か視線を感じると思えばこれが原因だったようで。

すっかり消すのを忘れてしまっていたようだ。

彼女の言葉が俺の素性を確かめるものだと悟ったカカシが警戒態勢を取る。

久々のシリアスが到来かと思いきや…

 

「その尻尾、本物ですか!?本物ですよね!?きゃーっ!こんな所で九尾様に会えるなんてっ!しかもイケメン魂!

 あ、私もなんです見てください―ポンッ―あ、申し遅れました、わたくし『た・ま・も』と申します。

 謂れはありませんが此処が運命の地だと言うのならば天照とかなんとかよく知らない運命の神様にでも感謝してっ!

 お名前すらも存じ上げませんが私は今ビビっと来ました!

 私との出会いは良妻狐のデリバリーに当たったとでも思って頂いて、

気軽にたまも、なんて呼んで頂ければ嬉しいです!

あ、でも旦那様さえよろしければ強めの語調でお・ま・え、なんて呼んでくだされば私きゅんと来ちゃいます!

 きゃー!言っちゃった♪旦那様なんて言っちゃた♪きゃー!♪」

 

………開始3秒でブレイクされたシリアスが泣いとるでー。

うん、なんつーかまぁ凄い無邪気な子だな。

あんまり馬鹿っぽく見えない辺り計算してやってるのかとも思えるが…いや、無いな。

というかここまでで最長のセリフがこれか。記録更新は無さそう…いや、自分で更新するかもしれんな。

 

「…えーと、何これどうなってんの?」

 

カカシもすっかり警戒を解いているようだ。

当の女の子は目にハートマークを浮かべてこちらを見ている。

どうやら俺が九尾であることに感動しているようだが、生憎と普通の妖狐の感覚は分からない。

…この子を普通に分類したら全国の妖狐達から怒られそうなのは置いといて。

 

「というわけで、私をあなたの良妻にしてくださいっ!」

 

「…えー、なんやそのー」

 

わけがわからないよ。

どういうわけだよ一体。これは何か、出会って1分でプロポーズされたとそう解釈していいのだろうか。

…なにそれこわい。

そもそもイケメンと言っても変化なわけで、それは同じ妖狐である彼女も知っているだろう。

イケメン"魂"というからには違うのかも知らんがよう分からん。

それに良妻て。なりたいんだろうか、良妻。

いきなりの事で返答に窮してしまったが、冗談めかした口調とは裏腹に結構本気のようだ。

可愛らしいし、いい子そうではある。口調はシリアスブレイカーだが知性は感じられる。

それに生まれてこの方女の子に本気で告白された事なぞ無いし、女性経験もそれこそ風俗ぐらいしかげふんげふん。

うん、アリだな。

 

「ええよ。流石に妻とかは早すぎる気ぃするけど、仲良うしような」

 

「「えっ」」

 

「えっ」

 

なにそのはんのうこわい。

 

 

 

 

「えへへ、まさかこんな素敵な方に貰って頂けるなんて♪」

 

「いやまあほんまに結婚すんのかとかは暫く横に置いといて、やけどな。時間もあるし」

 

取り敢えず俺達の泊まっている宿に向けて移動することに。

たまもは("タマモ"ではなく"たまも"らしい)妖狐の集落から遊びに来ていたらしく、

何時でも帰れるので暫くは俺についてくるとのことだ。

何でも良妻になるのが夢だったらしく、俺を一目見た瞬間ビビっと来たんだそうだ。

良妻が夢というだけあって結構出来た子で、言葉の節々で俺を立てるような気遣いが感じられる。

知識面でも回転の速さという面でも頭が良く、

俺の前世知識+九尾の知識+妖狐の知能の全力全開難解トークにも当然のようについてくる。

カカシなんかは途中で聞くのをやめたのに。というよりこのトークに着いてこられたの初めてだ。

少し話しただけでも感じのいい子だと分かるし、割と本気で狙ってもいいんじゃなかろうか。

 

「いやあのね、怪しすぎるでしょーよ」

 

「そないゆうても妖狐なんはほんまやで?気配で分かるわ」

 

「それにしたって色仕掛けでもするつもりかも知れないでしょ~が」

 

「心配要らへんよ。それならそれで、"俺”のモンにしてまうだけやさかい」

 

「旦那様…きゃっ♪」

 

嬉しそうな笑みで頬を抑えていやんいやんしだすたまも。

これが演技だというならもう俺は女を信じない。

とまあ冗談はさておき、彼女自身はかなり本気なようだ。

妖狐なんてものは少数の上に年寄りや既婚者が多いし、相手に恵まれなかったのだろう。

以前正体を隠して付き合っていた人間の男性にこっぴどく捨てられた経験から、

素敵な旦那様の良妻目指して頑張っていたんだそうだ。

俺も前世で告白してこっぴどく振られた経験あるが、そこで自分を磨こうと思えるのは純粋に素晴らしい。

 

「しかしえらい色々話してくれるなあ。そういう話題って普通シリアスシーンで出さへん?」

 

「旦那様に聞かれたことに答えないなんて考えられません!スリーサイズから性感帯まで何でもお答えしますよ♪」

 

いやいやいや、からまでと言う割に相当偏っている気がするのは気のせいだろうか。

あと性感帯は探し当てるのがロマンだと思います。

いや、そんな話ではなく。

取り敢えず暫く話していて思い知った事だが、彼女とシリアスは絶対に無理だ。

こちらが沈むような内容は盛り上げようとするし、彼女が沈みそうな内容でも全く陰りを見せない。

暗い話しだろうが明るい話だろうがまとめてブレイクするその手腕は見事というかなんというか…

 

「だってだって、大好きな旦那様とお喋りするなら楽しい方がいいじゃないですか♪」

 

ええ子やなあ。凄い好みやわこういう子。

と、流石にそろそろ本題に入らなくてはいけない。

彼女のことが好ましいのも事実だが、態々着いて来て貰った目的を済ませなくては。

 

「ちょっとええか、たまものとこの集落の人に挨拶したいんやけど」

 

「そうですね~。族長…いえ、副族長に相当する方にお繋ぎいたしますね」

 

何気ない様子でしかし唐突に切り出した俺の言葉にも変わらぬ口調で、しかし真面目に返してくる。

緊張している様子はなく自然な振る舞いではあるが、きちんと切り替えも出来るようだ。

それに俺が木の葉の忍であり、集落の外の者である事などの立場も考慮して族長への直通を避けた。

普段ははっちゃけているが、こういった真面目な話もしっかり出来るあたりは流石に長い時を生きた妖狐か。

 

「ん?何かあるのか」

 

「ああ、試験は合格やろ?早速で悪いけど勝手に動くさかい先帰って報告しといてくれんか。

 今日明日中には帰るさかい」

 

 

 

 

 

 

「いやはや、うまい具合に話進んでよかったわ」

 

「皆歓迎してましたね~。やっぱり生い立ちによるものでしょうか。わたしもびっくりしちゃいました」

 

俺が集落の妖狐と会った理由は、俺独自の繋がりや情報網が欲しかったからである。

最初は妖狐と人間の関係をこじらせた存在として警戒されたのだが、

猿飛サン達に語ったように事件のあらましなどを伝えると、信用してくれたようだ。

たまもは集落内でも人気があったらしく、そのたまもに気に入られているというのも大きかったように思える。

結局、うちはマダラの事を中心として情報協力をお願いした所、

九尾を操り暴走させたマダラへの憤りもあってか、人里の嗜好品との交換を条件に快諾してくれた。

そもそも九尾という時点で妖狐の中での立場はトップクラスらしく、

お年寄りの中には俺を崇めだすものまで居る始末。

概ね友好的な関係を築けたこともあってこれから独自の情報網として活躍してくれる事だろう。

 

「ふふふ、大好きな旦那様が皆さんに認めて貰えるというのは嬉しいですね♪」

 

「ご両親の墓に挨拶も済んだし、これで思う存分たまもをボクのモンに出来るわ」

 

「旦那様~♪すりすり♪」

 

軽口に軽口で返したら擦り寄ってきた。

妖狐なだけに動物が甘えてくるような気分になる。

このまま飛雷神の術で帰ってもいいのだが、折角なので外の空気を満喫して帰ることにしよう。

 

周囲を見渡せば、穏やかな森の途中に小さな滝があり、清涼感溢れる空気が漂っている。

川は澄んでいて川魚が元気に泳ぎ、汚染とは無縁そうだ。

川沿いに下れば野原が広がり、少し外れた所に街道が見える。

街道沿いに歩けば時折行商と出会い、最近の情勢や掘り出し物について言葉を交わす。

 

町に着けば獣の侵入を防ぐ門を潜り、脇を数人の子供が元気に駆けていく。

通りには呼子の声が響き渡り、人間の町らしい活気に溢れている。

通りを抜けた町の中央には大きな公園があり、その外周では様々な屋台が夜の稼ぎ時に向け準備をしている。

公園に入れば穏やかに陽の光を浴びるお年寄り、愛を語り合う男女、元気に走り回る子供達の姿が見える。

 

町を抜ければまた街道が続き、その先には浅い谷が見えている。

思いの外しっかりとした造りの橋を渡り、踏み鳴らされた街道を歩く。

帰路を辿る道中、隣を歩くたまもと言葉を交わし、他愛も無い事で笑い合う。

言葉が尽きればただ共に歩く時間を楽しみ、また思い出したように会話する。

前世では考えられなかった程の穏やかで素晴らしい時間を満喫し、束の間の小旅行を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

「と、今日あったこと言うたらこのぐらいやな。あとは猿飛サンにひと通りの報告と許可貰って、いつも通りや」

 

「へえ、一目惚れとは、やるね」

 

「外見だけじゃないですよ。魂で感じたんです♪」

 

そう言いながらお稲荷さんをパクつくたまも。

ミナトさんが出先で買ってきたお土産だ。

何でも行きつけの店があるらしく、近くに行った時は何時も多めに買ってきてくれるのだ。

俺自身稲荷寿司は前世の頃からの好物だったので嬉しい。

稲荷の甘さと酸っぱ過ぎない酢飯の食感とが絶妙にマッチしている。

 

「ナルトといいコハクといい、うちの男連中は手が早いわねえ。ね?ミナトさん?」

 

「あの、こういう話の度に俺に振るのは…」

 

「あら、何か言いましたかしら?同期一の美男子さん?」

 

「なんでもないですはい」

 

…俺はこうならないよう頑張ろう。うん。

どちらかと言えばたまもは尻に敷くタイプではない気もするが。

 

「ハーレムはめっ、ですよ」

 

だ、そうだ。

現在俺達は俺の自宅に集まっている。

最近は二人が俺の家に出向くことが多い。

この報告会はいつもナルト抜きでやっているため、こちらの方が都合がいいのだろう。

ちなみにナルト抜きの理由は、大人同士で話をするため大概酒が出てくるから、である。

酒と煙草の匂いが充満した報告会なぞナルトの教育に悪い。

 

「兎にも角にも、これからはコハクさんのお家に住まわせて頂くことになりましたので、よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく。コハクを支えてあげてくれ」

 

「よろしくね、今度人里の料理を教えてあげるわ」

 

すっかり意気投合した様子の三人が挨拶を交わす。

特に女性二人の協調具合には驚いた。

これが同僚の言っていた「嫁同士の繋がり程恐ろしいものはない」と言う奴か…

結局、たまもについては俺の家に住まわせる事に。流石に此処まで連れてきて他所にやる訳にもいかない上、

たまもは妖狐のため目の届く所の方が心配せずに済む。

たまも自身も俺の世話がしたいようであったし、最終的に住まわせることにした。

幸い広めの家なので二人で住んでも狭くは感じないのだが、寝室が一つなので同じ部屋で寝る事になるわけで。

…我慢できるかなあ。出来なかったら責任取ろう。うん。

 

「これからよろしくお願いしますね、旦那様♪」

 

「ああ、よろしゅうな、たまも」

 

 

 

 

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