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「ええと、なんぞ、これ」
はいはい皆さんおはこんばんにちは。俺『M.M.』です。
なんとかかんとか死ぬような思いでドラゴンをぬっ殺し終えた俺はたった今レベル処理の真っ最中…だったのだけど。
高速で上がるレベル。まず最初に経験値表示がバグった。次にレベル表示がバグった。
次はステータス。最後はスキルの一部までバグりだした。
まあ文字化け程度だとは思うのだが、何か俺の体がドラゴンみたいにバグってる。
ノイズ走ったりバグっぽい粒子が零れたり。俺の体大丈夫なんだろうかと少し不安になってしまう。
取り敢えずレベルが100超えたのは確認した。処理の時間から考えて300ぐらい行ってるかもしれん。
スキルは文字の一部がバグっただけなので一応分かるため大丈夫。
よく使うスキルや重要そうなスキルはメニューのメモ帳機能でメモっておく。
「うーん…なんだよ、これ」
手元には何かよく分からないアイテムいっぱい。ドラゴン倒したら宝箱が10個ぐらい出てきたので回収したのだ。
まあ大型ボスで山分け式なら10個ぐらいは珍しくは無い。各個数も大概複数ある。今回は一個ずつっぽいけど。
よく分からないアイテムはまさに電脳世界のバグって見た目でなんか三原色で構成された粒子っぽい何かの塊。
ボロボロ零れているように見えるのに消えない辺り謎エフェクトである。
メニューで確認したら説明なんかもかなりバグってた。スキルの比じゃない。
何とか確認出来たのは武器2個、防具3個、魔導書2個、アイテム3個ということだけ。
全部別物らしいのだがよく分からない。あと宝箱は報酬でドラゴンの剥ぎ取りは別だったらしく、
同じような見た目でちょっとそれっぽく見える素材3つとアイテム2つ。
「転送ポータルは…開いたままだな。ちょっと確認したから行こう」
まず武器。これはどうやら剣っぽい何かと杖っぽい何かっぽい。
剣ぽい何かは何か形が変わる。鞘から抜く時に反ったり、突くと伸びたり。如意棒じゃねーんだから。
バグのせいで形が不定形らしい。零れている部分以外の、固まっている部分に当たり判定がある模様。
鞘はここで手に入れたものでは無いためあまりバグっていない。
かなり威力は高いようなので恐らく上位武器だろう。
ただ、属性のとこが盛大にバグっているせいか特定の属性を持たないようだ。
通常攻撃に属性が無かった。無属性とかの属性すら無い。
次は杖っぽい。こっちは変形せず結構形が定まっている。宝石っぽい球体に羽っぽい何かが巻き付いている形だ。
媒体にして魔法つかったら数倍の威力が出た。なんぞこれぇ…これも上位武器のようだ。
剣といい、本来レベル制限が有るはずなのだが…バグってるんですねわかります。
で、防具三個。軽鎧とローブと小さい盾。どれも上位級の一級品だ。
こちらは割りと原型とどめている。相変わらず色々零れているが。
どうやら軽鎧はそこそこの防御性能のそこそこの回避性能、ローブはかなりの魔法耐性と異常耐性、
盾はかなりの防御性能と少しの属性耐性を持っているようだ。
盾は取り回しが難しいので防御力が欲しい時だけとして、あとは派手でもないし普段から着込んでいても目立たないだろう。
…こぼれ落ちるバグ以外は。
次に魔導書。これは魔法を覚えるためのアイテムなのだが、使うのが怖い…
勇気を出して読んでみると、無事文字化けの塊を習得。説明すら読めねえ。
恐る恐る放ってみた所、一つは何か綺麗な虹がかかる噴水魔法。魔力思いきり込めても玩具の水鉄砲程度だ。威嚇にもならん。
魔力の消費を殆ど感じない事からしても完全なハズレ魔法だろう。
こんなとこで宝箱に入ってる魔法のはず無いので、おそらく習得する魔法の内容自体バグっているのだろう。
そして若干気の抜けた俺はもう一つの魔法を使って見ることに。一応外に出て森に向けて。
正直俺はこの時の俺の判断というか危機回避能力を絶賛したい。自画自賛でも構わない。
結果は、視界一面の森が消し飛んだ。なんかプラズマかなんか知らんが眩い光がゴウッっという音と共に瞬間的に広がり、
目の前の森のおよそ2、300mが球場に消し飛んだ。後にはバグの残滓が残っている。
「…ゑ」
言葉も無い。とりあえず暫定的に《エクスプロージョン》と名付けよう。被ったら変える。
モンスターが居なかったのでダメージがよく分からないが、
多分中位級の魔法の中でも上位に位置する広域殲滅魔法だ。なんでこう、極端なのだろうか。
(現実世界という名の)天国の父さん母さん、そして姉ちゃんと妹よ。俺はどうやら人ではなくなってしまったようだ。
いや、ガチで冗談じゃなく。仲間巻き込むだろこれ。普通なら識別機能あるんだけど…バグってるもんなあ。
「えーっと…そ、そうそう次だ次」
気を取り直してアイテム3つ。うち一つは…装飾品か?
腕輪っぽいので装着。すると体がえらく軽くなった。ステータスを確認。バグってるけど…
何とHP・MP・スタミナの最大値が軒並み上がっている。1.5倍ほど。これはでかい。空腹の進行速度も下がっている模様。
どうやらハラヘラズ的な効果もあるらしい。ほーっと思いながら腕輪に手を掛けると………外れねぇ。
「…呪い装備かよ…orz」
変な効果じゃなくてよかったよ。特にデメリットも無さそうだし。
気を取り直し直して次。アイテム二つ。恐らく1個はポーション。もう1個はなんか石っぽい。
石の方は説明文や辛うじて残る見た目から正体を突き止めた。転移石だ。
魔力を込める事で記録した位置へ何時でも飛べる移動兼緊急脱出アイテム。
一度たどり着いて登録する必要はあるものの、かなり便利だ。使い減りもしない。
中級ダンジョン辺りで宝箱とかからたまに手に入るようになる。
上級以上に関してはβ版では上級以上のフィールドやダンジョンは色々制限が多かったため発見報告無し。
そのためβ版では非常にレアだった。まだ始まって1週間も経たない現段階、
β版でのデータはリセットされたため持っているのは俺ぐらいのものだろう。
「この薬はなんだ?」
なんか赤い色のポーション。ライフポーションっぽく見えなくもないが、説明文の一部からして違う。
魔のなんちゃらとか神のなんちゃらとか見えるし、そもそも"あの"バグドラゴンが守っていたのだ。
不老不死の薬とか言われても否定出来ないぞ、俺は。
とりあえず正体不明で怪しすぎるので保留。質量無視の鞄に大事に仕舞いこむ。
お次ぎはドロップアイテム。素材3つにアイテム二つ。
素材はどうやら牙、心臓、目。アイテムはドラゴン肉×3とドラゴンの血一瓶。何れもAランク相当のようだ。
…つーかAランク素材って。上級クラスじゃねえかよ。まあそうだろうとは思ってたけど。
Aランクを素材やアイテムとして落とすぐらいだからあのドラゴンは上級の中でもそこそこのランクだな。
マジ俺色んな意味でよくやったよ。
「…取り敢えず現状を纏めると」
・上級ボスドラゴン無傷で倒すとか俺TUEEEEEEE!(無抵抗です)
・レベル数百でスキルチート過ぎで俺TUEEEEEEE!(棚ぼたです)
・上級の武器とか防具とかゲットで俺TUEEEEEEE!(バグってます)
・上級の広域殲滅魔法とか超パネエ俺TUEEEEEEE!(味方識別出来ません)
・上級のアイテムとか素材とかマジ俺TUEEEEEEE!(用途不明です)
「うん、ちょっと自重しよう俺」
色んな意味でね。ほんとどうしようもねえな…とりあえずドラゴン肉3つで今5日め。まだ5日保つ。
いや、ハラヘラズ効果で3割引きぐらいになってるしドラゴン肉の回復量もでかい。あと1週間は保つか。
およそ半月か…いい頃合いだな。ポータルはダンジョン出ない限り消えないし、
あと一週間はスキル鍛えよう。まずは簡単に練習できない広域魔法。
消費MPを減らして威力アップ。流石に効果範囲は変わらない。
次が絶技。こちらも消費を減らして補正も強化する。
プラス化するかは分からんけど、マイナス補正を減らすぐらいは出来るだろう。
あとは有用な移動スキルとか補助スキルと鍛えていけばどうにでもなるな。スラッシュとか手加減用は後でもいい。
ポータルで飛んだ先がまともとは限らないので、なるべく準備は整えておこう。
「よっし、まずは殲滅連打だ!」
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「あれからもう半月…現実世界では2時間半ぐらいかな」
レートが元のままならその程度だろう。VRにはタイムレートというのものが存在する。
画面の前に座ってプレイする旧来のゲームとは違い、VRでは人間の脳に直接データを送り込む。
そのため体感時間を引き伸ばすことが可能なのだ。夢の中では何時間も経ってるのに起きたら数十分だったというのに近い。
旧来のゲームなら数十分ごとに昼と夜を繰り返すことで日数を再現するが、
VRでは1日分のデータを数十分でやり取りする事で日数を再現する。
このためVRの世界では何日も過ごしていても、現実世界では数時間、という事になるのだ。
基本的にレートは10分~1時間対1日となる。このゲームは10分:1日のタイムレートだった。
つまり15日過ごしたので現実では150分、二時間半が経過しているということになる。
「寝る前にログインしたからあと1ヶ月ぐらいは大丈夫か」
基本的にログイン中は体は寝ている状態で、記憶の整理などもVRの処理とは別の領域で行なっている。
そのため基本的にVRは寝ている間にプレイする人が多く、
学生や社会人のプレイヤーも気兼ねなくプレイできる一因となっている他、
寝る間も惜しむどころか寝ている間もプレイする超級廃人を大量に生み出す原因にもなってしまっている。
何にせよ、ゲーム内時間1ヶ月でクリア出来るわけもなく、そもそもどうやれば帰れるのかも不明。
クリアしたら帰れる、という保証も無いのだ。ヘタしたら寝たきり状態で永遠にこの世界を彷徨う可能性だってある。
「やめよやめよ」
とはいえ今そんな事を考えても意味が無いのもまた同じ。取り敢えず手掛かりを探し続けるしかない。
「しっかしグレバニア王都は流石に広いねえ。NPCしか居ないけど」
ここはグレバニア王国の王都グレン。魔動工学の発達した富国強兵中の大国、その中心地だ。
周囲を険しい山と巨大な川に囲まれ、天然の要塞を利用し防壁も厚い。
ポータルに乗った俺は眩い光に包まれ、気が付けばこの街のポータルターミナルに居た。文字通り駅である。
やっと人の居る所に出られてほっとした俺は街を巡ってみたのだが、かなり賑やかだ。
NPCの冒険者もかなり居る。しかし5000人のプレイヤーの内一人も居ない。
だが、当然といえば当然だろう。何せここは中級エリアの中でも上位に位置する国。
上級エリアは殆どダンジョンにしかないので実質フィールドとしては最高ランクになる。
レベルで言えばここに到達するのに最低200、一人なら300は必要になる。
ゲーム開始半月。序盤はレベルが上がりやすい事を考慮しても、せいぜい50程度が最高ランクだろう。
100超えが一人でも居れば驚く。勿論こんなところまで来れる奴が居るはずもない。
レベルが低いと狙われやすくなるため、敵を無視して突っ切るのも不可能だ。
ゲームなら兎も角、流石に半月も経てば死んだら生き返れないのは知れ渡っているはず。誰も無茶はしまい。
一応上限は無いので今後上位ランカーが増えれば更に高レベルのエリアが追加されたりもするだろうが、
少なくとも現状では最高でも1000程度、普通は500超えが現実的なところ。それ以上はレベルの上げようがない。
そんな中でも辿り着くだけで300以上のレベルが求められるこの国に来れる人間は、今はまだ居ない。
「とはいえ、NPCはそこそこのレベルも居るんだよなあ」
驚いた事に彼ら自我がある。話しかけたらちゃんと相応の対応をしてくれるのだ。
これだけの人数のここまで高性能なAIなど用意できるわけもない。
つまり、彼彼女らは…"生きている"
「まあ、流石にその中でもトップクラスになるとは思わなんだけど」
ギルドに行ってレベルやランクを見てもらった所、なんとまさかのレベル500超え確実。
実際はバグってて分からないというか何故かちょこちょこ上下しているらしいのだが、
それでも魔力等から鑑みるに500は確実に超えているとの事。あり得ない。
いくらあのドラゴンのレベルが高くとも、獲得経験値が多すぎる。レベル1000の裏ボス倒したってそこまで行かない。
となれば恐らくバグの影響。バグってる状態でバグってる奴倒してバグりながらレベルが上がったせいで、
際限無く阿呆ほど上がってしまったのだろうと考えている。真相は闇…もといバグの中。
「…チャットうぜえ」
流石に面倒になってきたのでチャットを切る。知り合いにプレイヤーは居なかったので別にいいだろう。
何せバグで隔離されてたのにいきなり戻ってきたのだ。チャットや掲示板なんかにも接続できるようになった。
勿論ランキングにも俺の情報が出ている。殆どの情報が初期の非公開設定のままなので、名前とレベルと現在地ぐらいだけど。
それでもレベル500超え(こっちは500少しで安定しているらしいが合っているのかは不明)、
しかもレベル帯200~300のグレンに居て、更に突然現れた。
取り敢えず実在するという証明のために大規模なパーティー組んでる奴らに何度か受け答えした以外は、
流石に鬱陶しくなってきたためチャットを切ってしまったのだ。
以前のβ版で面識のあった奴にはきちんと応対したし信用出来る奴にはプライベートチャットのアドレスを教えた。
最悪漏れてもアドレスは簡単に変えられるので、暫くはプラチャだけでいい。
「NPC…いや、"住民"とも仲良くなれそうだし、暫くは満喫するかなあ」
何せ今までのVRでは考えられなかったほどのリアリティだ。きっと今まで出来なかったような事も出来る。
例えばNPCとイチャイチャとか。高レベルの冒険者やってりゃ嫌でもモテるさ。
根拠?さっき逆ナンされたからだよ。何かオーラ?とかいうのが違うらしい。よう分からん世界観だ…
え、ナンパ相手?流石に断ったよ。まだ宿も取ってないっつーの。金無いからね。
とりあえずギルド行って、依頼受けて、金稼いで、出来れば家がほしい。
あとはちょっと身の回りというか主に武器にバグが多すぎるから何とかしたい。
「やること一杯だな…うっしゃ!兎に角気合入れていくか!」
どうせ暫くはプレイヤーが来る事も無い。たっぷり満喫させて貰おうか!
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「こっちに来てから早一月…」
え?何?だからはえーよって?知らんなあ。まあ、あれだ。特に代わり映えも面白みも無い無い毎日だったのだよ。
依頼こなしては金稼ぎ、討伐しては金稼ぎ、ドラゴンの討伐報酬は出ませんでした。そりゃあねえ。
ちょこちょこ女の子誘ってデートしたり、あちこちの店をひやかしたりもしたねえ。
デートはあれだ、お茶飲んだり買い物したり。この世界の人結構社交的だねえ。ナンパの成功率たけえ。
多分元の世界のフツメンでもその辺歩いて「暇ならお茶でもしよー」と声かければ遊べるんじゃなかろうか。
俺も元から顔そんなに変えてないしね。一応特定されない程度には弄ってあるけど、知り合いならすぐ分かる。
そんな俺がいくら強いとはいえ100戦錬磨だぜ?ねーよ。まあ相手も遊びって感覚が強いんだけどね。
子供がその辺で遊んでる子見てボクも混ぜて-ってのと大差ない。流石にベッドインは…ねえ?
その辺の子と遊びで初体験ってのもなあ。この世界なら頑張れば彼女ぐらい出来そうだし。
もし上手くいけば永住してもいいかもしれん。っていやいやいや、待て待て俺。違うだろう。帰らないと。そうだろう。
「あぶねえあぶねえ、素でこの世界に馴染んでた…」
これもまだ一人もプレイヤーに会ってないせいなんだよなあ。
とりあえずプラチャで知り合いが騒ぎが収まったって教えてくれたからチャット再開したんだけどね?
何か凄い神扱いされてるの。今レベルランキング見たら俺の下54だぜ?俺今582とかになってるよ?
これガチで合ってるならマジで神ってレベルじゃねーぞ。
何かソロで特攻してグレンまで辿り着いた神って事になってる。まあ一応ランキング非表示にする機能あるけどさあ。
だからってグレンに着くまではランキングから隠れてたんだよ!って言ったって普通信じねえよ。
普通チートとか何とか考えるだろ?なんかね、ここが半ば現実って事であり得ないだろうって結論みたい。
「まあ、叩かれるよりかはマシなんだけどさあ」
もう妬みとか懐疑とか以前に、こんな高レベルでグレンに居てしっかり活動もしてる(功績ポイントが増えているため)、
そんな状態ならその実力は疑いようがないみたいな感じでさ。これがまだ正式サービス開始して、
わけの分からん連中が押し寄せてたら色々誹謗中傷もあったんだろうけど。
何故か先行サービス組だけなんだよね。現実で中止になったのか俺達だけこの世界に来たのかは分からん。
現実との連絡手段無いんだよなあ。そもそも普通のVRなら有る外部ネットワークとの通信コマンド自体無いし。
そんな状態で帰るに帰れず、既に少なくない犠牲者も出ているせいで、人々の希望の象徴みたいになっているフシもある。
幾つかの大型パーティーから、レベル上げの護衛に着いて来てくれないかなんて依頼もあったりして。
ゲームなら甘えるなよってとこなんだけど、命かかってるからなあ。俺が居れば確かに安全っちゃあ安全だし。
「そうそう。そういや新しく魔法覚えたんだよ」
王都に来て半月、この世界にきて一ヶ月。金も貯まったし魔導書でも買おうかと思ってね?
ジョブはまだノービス。今Bランクだから、A+まで育ってから転職しようと思っている。
ドラゴンのお蔭と結構サクサク魔物を狩れたおかげで戦闘回数と戦闘時間も伸びてね。おかげで大分上がった。
まあここからがキツイんだけどねえ。B+超えると有用なスキルなんかが一気に増えるから。
この辺のバランスはよく出来てるわ。
転職しても前のジョブのランクは据え置きなんだけど、
経験値はランクに合わせてリセットされるからランクアップ直後が望ましい。
別系統のジョブに転職するのは金も手間もかかるから、同系統内での転職の方がいい。
再度転職しなおしたりは金や時間がもったいないから出来るだけ上げきる方がいい。
ただしSランクは必要な経験値がアホすぎるので本命以外は却下すべき。
以上が大体の転職に関するオススメである。
初期職ノービスからは物理をメインに使う一次職ファイターと、魔法をメインに使う二次職マジシャン、
各種生産系をメインに使っていく一次職クリエイターの三種がある。
俺の予定としては、攻撃面は問題無い。物理威力はダメージ1でも10万に化ける『閃花』があるので後回しでOK。
魔法は広域殲滅のエクスプロージョン(とりあえず被らなかった)が高威力かつ万能属性のためこちらもOK。
万能属性は中位級の中でも下位以下に軽減してくる奴は居らず、ボスクラスでも無効化までしてくるのは上位級以上。
雑魚なら中位級の中でも中位以上に耐性持ちがちらほら、上位ならそこそこ居る程度。
万能耐性持ちはそもそも魔法効かない事の方が多いのでそこは物理でOK。
あとは適当な高位攻撃魔法を高い金払って2、3買えばOK。補助や回復も高位のモノを5つ程習得している。
防具の性能のおかげもありそこまで戦闘面で苦労はない。というかこの辺りならダントツで反則級だ。実際反則だけど。
まあそんなわけで、目指すはクリエイター。最終ランククラスのアイテムは自作しないと手に入らない。
これはラスボス倒したりして得た武器でも、クリエイター系の改造スキルで更に強化出来るからだ。
そこまでして作った至極の一品を売りに出す馬鹿もそうそう居ないのでまず入手は不可能。
他にもあると便利なアイテムをその場その場で作れるのはかなり有利である。
素材は安く簡単に手に入るし、同じ素材を使うアイテムも複数あるため無駄にならない。
戦闘面にも秀でた上位職なら即席合成というスキルを憶え、回復アイテムなのどの一部アイテムを戦闘中に作成出来る。
ほんの少しの時間で簡単に回復アイテムを用途に合わせて作れるというのは、自分にとっても仲間にとっても嬉しい事だ。
「てなわけで暫くはノービス強化。次にクリエイターをC辺りまで育てて二次職の工学士になって、三次職の魔動工学士に。
A辺りまで極めたら今度は二次職の錬金術師になって、三次職のヘルメスになってSランク目指すかな」
Sランクは+や-が付かないランクで、完全に極めた事を意味する。
SランクになるとSランクボーナスと言われる程強力なスキルを行使できるようになる。
錬金術師の上位職、ヘルメスのSランクボーナスは賢者の石とか言うらしい。
想像はつくがβ版ではスキル名が公開された程度だったので詳細は不明。
もしかすると高位のアイテム…下手すりゃ準|宝具(アーティファクト)級をバカスカ錬成しまくるようなチートになるかもしれない。
それぐらい強力なのだ。現在判明しているのは、戦士系職のいずれかの最終段階をSにすると絶技が憶えられるとか。
はたして一年以内にそこまで辿り着く猛者は居るのだろうか。勿論俺みたいな反則技は猛者とは言わん。
『ほー、流石だなあ。雲の上過ぎてワケワカメwww』
『チートめっ!このチートめっ!』
『リア充爆発汁』
「お前らなあwww」
途中から気付いてたかもしれんが現在チャット中。
文章の性質をカスタマイズして登録しとけばあとは口頭や脳内での言葉を文章に纏めてくれる。
チャットにはプレイヤーだけ参加のプレイヤーズチャットと、
NPCも参加して来るオープンチャット、アドレスを登録した1対1のプライベートチャット、
適当に指定したグループ内でのグループチャット、パーティー内でのパーティーチャットなどがある。
このチャットの管理は神様がしている事になっているらしく、現実世界の話題なんかはNPC相手にはしないのがマナー。
早々に事実を知ってあっさり溶け込んでるNPCも極稀に居るらしい。さすがファンタジー世界。おおらかというか何というか。
今は丁度オープンチャットに参加している。こうして参加しても結構まともな会話が出来るので安心していたり。
最近では俺の経験…というか、真っ先に跳ね上がったレベルによる知識を生かしてアドバイスしたりしている。
β版とどこがどう違ったというだけでもかなり有益な情報になるのだ。
運命共同体ということもあってか意外と皆結束しているようで、状況を正しく理解しているという事だろう。
少し前までは阿鼻叫喚だったのだが、一ヶ月も経てば大分慣れたらしい。
一番期待されているのは勿論俺。俺が帰還手段を見つけてそれを教えればそれだけで帰還成功率はグンと上がる。
情報交換掲示板にもグレン周辺で得た情報なんかを頻繁に書き込んでいる。
「実際、もっと疎まれるかと思った」
『そりゃーおめえ、希望の星だもの』
『それでヘソ曲げられちゃこっちも大変だしなwww』
『まあ居ないとは言わんけど、そういう奴は村八分だわな』
なるほどねーといったところだ。単純にゲームだった頃とは違うってわけだ。
実際俺の一個下のレベル54の奴。元はネトゲ廃人だったのが危機に陥って一念発起し、
元々の知識と経験とセンスを生かしてかなり活発に活動している。
ちょっと前にもうちょっとで50レベじゃんがんがれって言った時は流石にレベル差考えたら嫌味くさいかとも思ったのだが、
『おう!絶対追いついてやるから待ってろ!』と笑って返された時はちょっとほっとした。
流石の日本人というか、一度危機に陥った時の連帯感とか団結力は流石の一言だな。少数居る外人も驚いてた。
『ニホンジンは、たいしたモノダナー』
『ウィリアムさん、何か上から目線っぽくなってるよww』
『ン―、にほんごムズカシイ』
と、まあこんな具合に。ある程度は翻訳も効くのだが、敬語の概念がない英語圏の人は妙に高圧的に見える文章だったり、
漢字が一切入ってなかったりと結構わかりやすかったりする。文化の差異的に大変だろうに。
こういう状況でも和気あいあいとしながら生きていけるんだから人間はたくましいな。
…まあ、協調性の無いやつは大概死んだってのもあるんだが。このゲームで協調性無いのはそら死ねるわ。
『あいつらも真面目に協力し合ってりゃ生き延びれただろうになあ』
『しんじまったら もともこもねえ ってか』
『どっかで聞いたなそのフレーズ。FEだっけ?』
「おまいらすぐ脱線すんなしww」
まあ、おかげで不安に苛まれる事も無く過ごすことが出来るのはいい事だ。
完全に不安を消す事は出来ないけれど、やっぱりこうして馬鹿言い合える相手が居るというのは心の支えになる。
ひょんな事で手に入れた力だけど、出来る限り恩返しぐらいはしたいよなあ。見捨てたくも無い。
「あ、そういえば何かこっちでイベントあるっぽいんだが」
『mjd!?』
『早くね?あ、M.M.がそっち行ったから始まったのか?』
『悪いが手助けは出来そうにねえなあ。国から出るのも一苦労だ』
『間にもう一個国挟まってるしなwwがんがれー』
「おう、何とか孤軍奮闘…いや、街の皆と協力して乗り切るわ」
そう、どうもここ最近魔物たちが騒がしい。少しずつ活発化して、衛兵が走ってるのもよく見かける。
恐らく斥候か何かだろう。魔物関係ということは戦争じゃなくて恐らく大規模な襲撃か何か。
実際β版の時も新しい街に就いた途端襲撃イベントに巻き込まれたこともあったし、
数ヶ月に一回のペースで起きていたから今回もそれに近いものと見ていいだろう。
繁殖期は魔物ごとに違うので時期の合うやつだけ警戒すればいいのだが、
襲撃イベントでは周辺の魔物の殆どが活発化する上に混成群の大襲撃などもあるので気が抜けない。
ゲーム中なら参加するもしないも自由だし、死んでも痛くも痒くもないので気軽に参加できた。
しかしここではそうは行かない。NPCだって生きている。見殺しには出来るだけしたくないのは人情ってものだろう。
実際無理や無茶をするかは兎も角、出来る範囲でなら手伝わないと良心の呵責がががが。
まあ、やれるだけはやってみるさ。
「そっちは大丈夫だと思うけど、魔物の活発化には気をつけてな」
『おう!』
『こっちは任せとけ!たまには帰ってこいよ!』
『んでもって手伝え!』
あはは、相変わらずだな。まあ一段落着いたら行くのもいいかな?転移石に登録もしておきたいし。
各街のポータル同士は繋がってるから、行くだけならさほど苦労も無いだろう。利用料がバカ高いだけで。
あとは…おや。
「こんな所に居た。依頼終わったのよ。遊びに行かない?」
声を掛けてきたのは赤髪の剣士、美乳系美女のエレーナ。以前自由討伐(特に依頼を受けずに魔物を狩ること)に出かけ、
その先で偶然出会って以来こうしてたまにデートするのだ。
まあ恋愛感情とかでなく暇つぶしとか息抜きに遊ぼう、というわけだな。
殺伐としていて遊び道具も少ないこの世界では異性とのデートはいい遊びになる…らしい。
正直冗談半分で誘ったら簡単にOKされた時はポカーンだったよ。それ以来だな、よく女の子誘うようになったの。
「悪いお前ら。赤髪美乳美女剣士に誘われたからデート行ってくるわ」
『んだとおっ!?』
『祭りじゃー!嫉妬団であえー!』
『美乳うp』
『出来ねーよwww』
ほんと、騒がしいけど平和だなあ。
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