黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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3話

 

 皆さんはPKというものをご存知だろうか。プレイヤーキル、もしくはプレイヤーキラーの略称である。

プレイヤーがプレイヤーを殺す事やそれをする奴の事を言うのだが、このゲームでもPKは出来る。

本来なら死んでも拠点に戻るだけだしこのゲームはデスペナルティが小さいので余り影響はない。

勿論経験値は手に入るのだがアイテムは手に入らないというか死んでも落としたりはしない。

この半現実世界でも殺した相手のアイテムは落ちたりせずに消えるらしい。

特にドロップ総数に上限があるわけでも無いので、経験値以外に余り旨みはない。

 それ以前に、この世界では協力しないと生き抜くのは難しい。何故なら皆スタートラインが同じだからだ。

廃人と一般人の間のプレイ時間の差、というのもずっとこの世界に居るのなら大差はない。

ここに居る連中は全員先行サービスに通った者だけ。β版プレイヤーか事前に情報を集めていた者ばかりなので、

あまり情報量に差も無い。情報掲示板なんかもあるし、NPCもそこそこの知識は持ってるしな。

殆どはその者の勘とセンスと努力次第。となればPKしようにも大してレベルに差がない、という状態になる。

 それに、PKなんぞすれば村八分当然である。初期にPKが暴れるのを予想し恐れた一部有志によりPK狩りが行われたのもある。

PKとなる可能性のある者を監視し、誰かを襲った時点で逆襲撃をかけて殲滅する。

勿論PK推奨チームなんぞ作れば纏めて皆殺し確定であり、5000人居てもそこは小心者な日本人(オタク多数)。

ゲーム中なら兎も角実際に人が死ぬ世界でPKなんぞしたがる奴も少なく、少ないそいつらは早々に駆逐された。

所詮ゲームと舐めてかかった奴らは早々に退場したし、他人を陥れるようなタイプはこの環境じゃ長生きできない。

5000人という数字や、事前プレイヤーが多かったのもあるだろう。おかしな連中は少なかったし、皆経験的にも平等だった。

 そんなわけで、アクの強い奴やら我の強い奴、しぶとくしつこく活動してるバカ共は居るものの、

概ねこのような状況にしては正常な状態を保っている。仲間意識が強いというのもあるだろう。

周囲は自分達の正体など知らないNPCばかりで、協力しなければすぐ死んでしまうような状況。

皆同じスタートラインなので純粋に隣人が頼りになるし、自分一人じゃないと思えば精神的な支えにもなる。

何かしら不和を煽るような要素でもあればまた違ったのだろうが、そういうのは割りと少なかったのも幸いしている。

 

『ま、一番はM.M.が居るからだよなー』

 

『強すぎワラタwwwグランドスラッシュとかなんぞwww』

 

『新スキルに高レベルに一人だけグレン到着だもんなーww』

 

『M.M.はホンマ希望の星やでえ』

 

 グランドスラッシュはスラッシュの上位スキル『チャージスラッシュ』の強化派生版である。

β版では無かったスキルの一つで、スラッシュの範囲が通常のリーチの約三倍になり、威力補正も大きい。

ちなみにチャージスラッシュは溜めが長くなる代わりに威力も相応に上がったスラッシュだ。

これらスキルは使い続けてランクを上げていけば初期のスキルでも中盤ぐらいまでは使える。

派生スキルなら十分終盤でも通用するようになるのだ。ランクを上げていけば自然と派生スキルは覚えるので、

基本的によく使うスキルを絞って育てた方が戦闘力は上がるとされている。

そうして戦闘力が偏った連中が互いの不得手を補い合うためにパーティーを組むのである。

俺のように一人で何でも派は珍しい。

 

『実際M.M.が居るおかげで不安も少ないもんなー』

 

『順調に進んでる奴が居るって思うだけで一安心だよな』

 

『順調って次元じゃねえけどなwww』

 

『マジでなにやったしwww』

 

 チャットであちこちから合いの手が上がるが実際、超絶レベルで突き進んでる奴が居るというのは精神的に楽だろう。

俺も脱出法は一人で独占するなんてケチな事を言うつもりはない。

一人しか帰れないならまた考えるが、現状帰還方法の手掛かりを探している段階だからな。

勿論皆も俺一人だけ帰還する心配もしているのだろうが、手掛かりの手の字すら見つかっていない現状ではどうしようも無い。

おだてたり持て囃してヤル気を出させてさっさと見つけてもらおうという打算もあるのだろう。

その辺は俺だって帰還方法を求めている一員なのだし、険悪になるよりはいいので文句もない。

 ああ、それとバグについては話していない。ただでさえ危険な状況なのだ。

バグなんていう目に見えない上に唐突に訪れうる危険を無為に広める気も無いし、

現状俺以外にバグに巻き込まれた奴も居ないようなので情報開示は様子見しているのだ。

俺以外にもバグの被害を受けたりといった報告が上がれば俺の情報も開示しようと思っている。

へたに反則技でやらかしたって自分から知らせるのもなんだしね。

 

「…来た。おまいらー、視聴準備はいいかー?録画出来てるかー?」

 

 ドドドと遠くから鳴り響いてくる地鳴り。俺は戦闘撮影用の撮影機三台を起動させ、リアルタイム配信を開始する。

これはVRなら大概のゲームに備わっている機能だ。何せリアルな感覚で戦えるゲームである。

強い奴の超絶戦闘何かは大概撮影されてて人気があったし、こういう所謂生放送もよく見かけたものだ。

勿論戦闘方法の研究やスキルの考察なんかでも役に立つし、撮影対象も自分の戦い方を観察出来るのだから有用である。

取り敢えず生配信用の魔法具を三機使って生配信し、録画は視聴者に任せる事にした。多少画質は落ちるが構うまい。

 こっちに来てから今日で35日。俺がこの街に来てから20日。現在レベル582で据え置き。

この辺のフィールドは200~300代だし、グレバニア王国内の最高位ダンジョンでも500程度が精々だろう。

そもそも現段階ではフラグ等諸々の理由から開放されていない可能性も大きい。

それ以上ともなればどこの国にも属さない所謂『未開拓地域』に行かないといけないだろう。

この未開拓地域、実はこの大陸の外にある。というかβ版の時はこの大陸だけが舞台で、

正式版になって新しい大陸や地域が追加されたのだ。この大陸にも新ダンジョンは追加されているが、最高レベルは変わらず。

となればそれ以上は未開拓地域というの名の別大陸へと赴く必要がある。

今までには無かった高レベルモンスターの徘徊するフィールドやダンジョンも当然あるだろう。

 が、フラグの関係からか未開拓地域への移動手段が今のところ無い。

情報ではどうやらグレバニア王国王都グレンつまりは此処で、海洋超えをするための冒険者を募集しているらしい。

恐らくもっとゲームが進行してプレイヤーが多く集まったらイベントが開始され、

海洋超えクエストとかの大型イベントをクリアして乗り越える事で未開拓地域に到着。

その後幾つかの大型イベントを皆で協力してこなせば直通手段確保、といったところだろう。

 

『録画準備おっけー!』

 

『いてこましたれー!』

 

『期待してっぞー!』

 

 考察している間に準備が済んだようだ。地鳴りも大きくなり、山岳地帯の向こうから押し寄せる魔物の大群が見える。

周囲には今回の防衛戦に参加する有志の冒険者(NPC)達。大概は200~300レベルだ。

中には400ぐらいのお助けキャラ的な奴も居るが、それすら軽く上回る俺の582。

レベルのせいかプレイヤーだからか、何故か防衛隊のリーダーに認定されてしまった。

指揮自体はNPCの王国騎士がやっているので俺にそこまで細かい役割は無いのだが、

リーダーが撃破されるとNPCの士気が下がり弱体化するというデメリットがあったり、

逆にリーダーが活躍するとNPCの士気が上がって強化されたりするぐらいだ。

死ぬ気は無いし負ける気もしないので何とかなるだろう。

 

「さて…来いよ雑魚ども。目にもの見せてやるッ!」

 

 自身に喝を入れ高速で飛び込む。思い切り踏み込んで気合一閃、《グランドスラッシュ》を放つ。

半径数m、扇状の範囲内に存在する魔物を一撃でナマス切りにした。200程度ばかりだったのだろう。

レベル差が倍もあれば流石に一撃圏内だ。武器の性能というのもあるが。

瞬間、チャットに沸き立つ歓声が上がる。それもそうだ、200超えという自分達では手も足も出ないバケモノが瞬殺。

士気を上げるためにも敵の掃討を最優先とし、《ソニックムーブ》で高速移動をしながら《アクティブスラッシュ》を発動。

ムーブ系は風の加速魔法《ブースター》とステップ系スキルの合成スキルで、両者が一定のランクになると習得する。

《ソニックムーブ》は《ステップ》と加速魔法《ブースター》の合成スキルでムーブ系では一番効果が低い。

しかしそれでも二つのスキルの合わせ技だけあって尋常ではない移動速度を叩きだす。

更に《アクティブスラッシュ》は移動系スキルと同時に発動する事の出来るスラッシュで、

移動スキルによって高速移動しながら次々と敵をナマス切りに出来るため非常に強力だ。

スキルによる威力補正があれば200後半でも一撃圏内。通常攻撃だと最低2発は必要。この差は結構大きい。

 

「っ!固まってるな。――――――――――――――――――――――ッ!《エクスプロージョン》!!」

 

―ゴウッ―

 

 魔物が一箇所に固まっているのを確認した俺は《エアーシューズ》で空中待機。MPが少しずつ減っていく。

そのまま詠唱状態に入り、俺の口が勝手に呪文を詠唱する。流石に強力な魔法だけあり詠唱時間が長かったが、

その代わり放たれた一撃はまさに必殺。周辺の岩山ごと飲み込んで広範囲を一気に殲滅した。MPが5分の1ほど持っていかれる。

 

『ゑ?』

 

『なんぞそれ?』

 

『ヤベーツエー!?』

 

『今までナマ言ってサーッセンシターッ!!』

 

 チャットの向こうが少しうるさい。とはいえまあ仕方なかろう。街のNPC冒険者達もポカーンだ。

そりゃそうだ、今ので5分の1ぐらいの魔物が消し飛んだのだから。

とはいえ固まっている奴らはもう居ないし、元々長期戦前提のイベントだ。

後から湧いてくる連中も居るだろうし、MPは温存しながら進むとしよう。

 

『ワーーーーーーッ!』

 

 後方から上がる歓声。チャットも大盛り上がり。士気が上がったおかげか殲滅速度が上がった。

とりあえずレベルの低い奴をナマス切りにして進み、高いやつを見かけたら積極的に殲滅していく。

《ステップ》、《スラッシュ》、《スラッシュ》、《ソニックムーブ》、《グランドスラッシュ》、《ステップ》、

《スラッシュ》、《ソニックムーブ》、《ファイア》、《フリーズアロー》、《ステップ》………

兎に角移動しまくって片っ端から片付けていく。敵の攻撃は『直感』スキルで察知、《空蝉(うつせみ)》で背後を取る。

 『直感』スキルとは危険を察知するスキル。ランクに応じた確率で敵の攻撃が頭にイメージとして浮かぶ。

Sランクまで上げれば100%発動するようになる強力なスキルだ。

更に察知範囲の広い『超直感』や察知の早い『未来視』などの強力なスキルに派生する事もあり、積極的に育てている。

 《空蝉(うつせみ)》は相手が自分に向け攻撃してきた時に発動する事で、攻撃をすり抜けて相手の背後に瞬間移動するもの。

相手は当たったと思ったら後ろを取られている状態になるわけで、やられたら結構焦ると思う。

ランクに応じて成功率が上がったり瞬間移動後の硬直時間が短くなったりする他、

Dランクを超えると10レベル以上レベルが下の相手には発動率が倍になるためかなり強力なスキルでこれも育てている。

 

『おおおおおーーーーっ!!!』

 

『すげえつええええ!?』

 

『何いまのかっけー!』

 

『くっそ早く上がれ俺のレベル…』

 

 こら、チャットうるさい。少し静かにしなさい。というかあれか、読み上げ切っておけばよかったのか。今更後悔。

とはいえ戦闘中に悠長にメニュー操作してるのもあれだし撮影している以上見栄えも悪いのでスルー。

しかしあれだな、こういう歓声の中で活躍するというのも悪くない。

以前はそこまでプレイ時間の長い方でも無かったし、ちやほやされるのは廃人とかの上位陣ばっかりだったわけで。

今までここまで無双したり活躍したり応援されたりという経験が無かった。

スポーツ選手がよく『応援があったから頑張れた』って言ってるのを聞いてはいはいテンプレ乙とか思ってたけど、

これは確かに癖になるし力も湧いてくる。なんか知らんが頑張れる。こういうの、いいな。

いや、待て待て俺。現実世界に帰るんだろう。慣れるなよ。喜ぶなよ。永住したくなるじゃまいか。

 

『スキル:『英雄気質』を習得しました』

 

 うわーい何か覚えたー!?気になる。視界にメニュー開きながら戦うか?

なんかちょっとガチで力湧いてきてるし。気になるから見てみよう。

 習得条件は…英雄的な行動を好んで取り、一定以上の人間から評価又は応援される事、それを本心から喜ぶこと、か。

感情が条件になるスキルも結構あるしそれっぽいスキルだからいいとは思うんだが…

やっぱ一人無双してるのがでかいんだろうなあ。英雄的な行動ってのはあれか、

誰かを助けたり敵に単身突っ込んだり大規模イベントのリーダー張ったりか。うん、全部やってるな。

 効果は…HP・MP・スタミナを除く各種ステータスに上昇補正、か。ランク上がれば効果も上がるかな?

今は1.01倍ぐらいだし、多分最終的には1.2倍ぐらいは行くか?ちなみに消費なし常時発動のパッシブで1.2倍はかなりデカい。

似たようなのを複数所持すれば平気で2倍とか3倍とか行くのだ。アクセサリー類の補助効果も含めればかなり強くなる。

それに『英雄気質』て何かちょっとしょぼい気がする。多分もっとそれっぽい派生スキルがある。

英雄の資質とかまんま英雄とかそういう類のスキル。きっと英雄的状況下でのパワーアップ効果とかあるよ。

これも育てていく事にしよう。純粋に強化は嬉しいし、派生してくれれば更に嬉しい。

派生しないスキルは無いと言われる程スキルの種類が豊富だからな、このゲーム。スキルコンプとかしてみてえ。

 

「と、いうことで何か覚えた」

 

『まじかよwww』

 

『チートが更に加速するwww』

 

『wktkが止まらねえwww』

 

 チャットの連中とくっちゃべりながらも敵を一心不乱に屠っていく。

正直この辺の敵じゃあ細かい描写をするほどの戦闘にならない。

木々や岩陰の合間を縫い、駆け抜けながら只管に切り裂いていく。

物理の効きにくい奴には魔法を放ち、強力な攻撃は大事を取って【直感】と《空蝉》で回避していく。

雑魚の一撃でも急所に当たると洒落にならないダメージが通るためだ。

まあスキルを育てるというのが一番の目的なのだが、兎にも角にも俺無双。

敵がバラけてきたためか高速各個撃破が出来るようになり、大分余裕も出来た。

駆け抜けて斬る、駆け抜けて斬る、飛んで放つ、駆け抜けて斬る、躱して斬る、飛んで放つと繰り返していく。

視界の端では撃破数の表示がどえらいことになっているが無視無視。

チャットの向こうではすっかり観戦モードでわいわいと賑やかな応援やヤジが飛んでいる。

 

『ナナシ様に続けーーーッ!』

 

『おおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!!』

 

 後方で更に奮闘する冒険者と騎士達。また士気が上がったようだ。

ちなみにナナシというのは、M.M.では明らかに偽名っぽいという事でNPC向けに用意した名前である。

M.M.→エムエム→ムエムエ→ムメエ→無名→ナナシ、というアナグラムもどき。名前表示がバグってる事にもかけてある。

俺以外の人には普通に見えるらしいんだけどね。何故か俺にはバグって見える。

レベルも582となっているらしいので合っては居るのだろうが、いかんせんバグっているので若干不安でもあったり。

俺の本名をメモ帳に書いてみたのだが俺には文字化けにしか見えず、ナナシは普通に読めた。

多分誰かが俺の名前を呼んでいても上手く聞き取れなさそうなので本名は却下。結局ナナシに落ち着いている。

名前の表示も変更したのでチャットでもナナシと出ているのだが、殆どM.M.で定着してしまっているらしい。

 

「しっかしこれ、時間かかるなあ。ま、いい機会だ。片っ端からスキルを鍛えさせて貰うか!」

 

 本来なら湧き待ちをするか敵を求めてダンジョンを練り歩かないといけないのに、

こういったイベント中はイベントの終了時刻までは無制限に湧いてくるため非常にいいカモになる。

ありがたーく色々な経験値を頂くことにした俺は、宣言通り片っ端から殲滅していくのだった。

 

 

 

 

 

 

「お疲れー」

 

「おつかれさま~」

 

「おう!兄ちゃん凄かったなあ!」

 

 開始から3時間。やっと敵の殲滅を終えた俺達は街の酒場で呑んだくれていた。

現実と違って成長を阻害されたり二日酔い等のデメリットが無いので未成年だろうと飲み放題だ。

VRが流行ってから未成年の飲酒や喫煙等による補導が大分減ったらしい。

そりゃそうだろう。わざわざ捕まるリスクを犯さなくても好きなだけ吸ったり飲んだり出来るのだから。

VR内の酒やタバコなら健康被害や中毒作用も無いので酒や煙草で失敗するという心配も無い。

酔ったりはするが精々気分が良くなる程度で酔いつぶれる事も無い。

多少リアリティが低いというのが欠点だが、そもそも酒のんで気が良くなってる時にそんな細かいこと気にしまい。

それにこの世界はやけにリアルなので現実世界と変わらない感覚で飲める。こっちでも酔い潰れたりしないのは確認済みだ。

 

『見てきた。すげーなおい』

 

『だろー?あのうつせみってのかっけーよな』

 

『つーかチート過ぎワラタ。え何、あれが例の噂の人?』

 

『お前チャットで喋った事無かったっけ。そうそう、あの人あの人』

 

 チャットの方でも盛り上がっているようだ。向こうの街の酒場で鑑賞会の真っ最中らしい。

あっちのNPCやら生放送見逃した連中が見たりするためらしいのだが、一回見た奴も酒のつまみに見直しているようだ。

暫く…少なくとも2、3日ぐらいはオープンチャットの話題を独り占め出来るだろうな。流石に気分がいい。

気になった会話にちょこちょこ参加したり相槌打ったりしつつ、今回の活動報告を掲示板に書き込んでいく。

スレタイは『【俺達の】ナナシことM.M.神を応援するスレ【希望の星】』。何か気がついたら出来てた。

現在既にPart5まで行っていて、俺が覗いていない時もかなり賑わっている。

適当な合間に覗いては雑談に参加したり、俺が手に入れた情報や所見を報告していくのがメイン。

スキルの詳細な情報からβ版との変更点、こちらの地域で見つけたものやあった出来事、

元のゲームや現実との差異など気になった事もどんどん書き込んでいこうというのが目的。

基本的には情報提供によって団結強化と各種アドバイスと周知徹底と帰還方法模索を促すというものだ。

まあ近況報告や雑談も結構多くて情報が埋もれたりしてるので、有志によってwikiなんかも作成されている。

題して『皆で帰るwiki』。探索範囲の拡大と帰還に関係する情報の纏めに重点を置いて作成されており、活動も活発。

 

『あ、そういえば報酬どうなったんだよ聞いてねえぞ』

 

「あ、悪い忘れてた」

 

 そうそう、今回のような大規模なイベントやクエストには勿論報酬というものが存在し、

基本的にそれらは活躍に応じて変化する。魔物にダメージを与えた回数や倒した数、リーダーなら士気への貢献度など。

勿論途中退場とかもマイナス要因になるし、イベントで最も活躍した者には特別報酬も出る。

今回の報酬はまず金でおよそ150万ルード。よく分からないだろうからここでちょっと金銭価値について説明。

 初期の街なら宿に1泊500ルード、休憩250ルード。冒険者向け1食100ルード、リンゴ一個8ルード、ポーション一個30ルード。

木剣一本300ルードで、鉄の剣一本1000ルード。旅人服が250ルードで、皮の軽鎧が600ルード。皮の重鎧で800ルード。

 グレバニア王都グレンなら1泊10000ルード。休憩5000ルード。1食500ルード、上級ポーション3000ルード。

標準的なアクルム鉱の剣50000ルード、軽鎧45000ルード、重鎧60000ルード。最高級品なら10万ルードを超える。

 ココで言う宿や食事は全て冒険者用のシステムやサービスが整ったものであり、

周辺の環境が悪い地域や冒険者の質が高い地域程相応のものを提供するために値段も高くなる。

そもそも宿屋は冒険者向けしか無いし、冒険者用の食事にはスタミナ回復やステータス一時アップなどの恩恵がある。

ただ腹を膨らませるだけなら50ルードから100ルードもあれば普通の食事量ならたらふく食える。

まあつまり今回の報酬は、この大陸最高級クラスの装備品を15回は買える金ということだ。

素材等を用意してオーダーメイドで作ってもらう特級最上品でも5つは買える。

 

『150万!?』

 

『うっはボロ儲けwwww』

 

『くっそ裏山www』

 

『さすがM.M.神やでえ』

 

 とまあチャットもこういうリアクションになるわけだ。

それもそうだろう、普通なら大所帯のチームで貰う金額をたった一人で得てしまったのだ。

例え高レベルのやつが偶然居合わせて無双しても、他にもプレイヤーが居れば10分の1ぐらいにはなるはずだ。

今回はイベントへの参加者が少なかったための結果である。まあソロっていうのが一番デカいんだが。

 

「とりあえずもう金には困らんし、当面はスキル上げかな」

 

 これで金とレベルはモーマンタイ。ジョブランクと武器熟練度は戦ってれば上がる。

当面は覚えたスキルを使いまくって成長させたり派生させたり、後はジョブチェンジやサブ武器育成を行う事になるだろう。

ジョブは今回でノービスA-まで上がった。あとはA+まで上げてからクリエイターに転職する。

どの道大陸超えは出来ないし、初期の街訪問は後回しでもいい。

この辺りのダンジョンを片っ端から探索し尽くして、その過程で色々上げていく事にする。

最初に目指すは北東にある魔の霊園かな。年代不明の巨大な墓地遺跡が広がっているエリアで、森に囲まれている。

アンデッド系のレベル300クラスのモンスターが出没する高難度ダンジョンだ。

 

『こえー、俺なんか一歩も動けずに瞬殺だわ』

 

『お前アンデッド駄目なんかいww』

 

『いや実際レベル差もひどいよな』

 

『そもそもダンジョンまで行けないっていうwww』

 

 こうやってちょっと方針を話すだけでノリノリで会話してくれるのは地味に嬉しい。

彼らとしても俺が積極的に活動しているというのは進展を感じられて励みになるのだろうし、

俺もこうして平和な日常を感じられるのは心の支えになる。

実際に生きるか死ぬかの戦いを繰り返すこの世界じゃ精神的なものは大事だよ、ほんと。

 

 

 

 

 

 

 そうして1ヶ月弱。こちらに来てからもう二ヶ月だ。現実では10時間は経っている。

確か休日だったかな?まあよく寝ているレベルで済むだろう。丸1日起きて来なかったら流石に心配されるだろうけど。

というか、早く帰らないと現実の体餓死しないだろうな。点滴ぐらいは打ってくれよ、頼むから。

まあ5ヶ月弱経っても向こうじゃ1日。2、3日は餓死もしないだろうから1年は少なくとも保つだろう。

それ以上はマジで向こうでちゃんとした処置をしてくれることを祈るしかない。

…もしかすると、向こうでは俺は行方不明になっている可能性もあるのだが。

単純にログアウト不可では無く異世界トリップだとしたら…まあ、その時はその時だ。

 

「ん…はっ!」

 

 考え事をしている間にでかいトカゲを切り捨てる。リザード系モンスターで、言ってしまえば雑魚式ドラゴン。

とはいえドラゴン種とくらべれば小型だし翼も無いしであまり脅威では無い。

四足歩行のフレイムリザードから二足歩行のリザードナイトまで一つの系統でもかなりの種類だ。

まあどいつもこいつもレベルは精々400以下。ボスクラスでも500超えはまずいない。

この大陸でのラスボスが500ぐらいだったか。クリア後のダンジョンで500超え、裏ボスで1000。

もうあれはチートとか反則ってレベルじゃねえわ。雑魚とのレベル差最低で200って。完全やり込み向けだな。

何度数多の冒険者達が散っていった事か。正直あれが居たら勝てる気しねえというか絶望しかねえ。

とはいえ実際β版ではこの大陸以外の地域が実装されていなかったためのお遊びダンジョンだったらしく、

触れ込みでもβ版限定裏ダンジョン解放!とかいう感じだったから正式版では無いはず。

まあその辺の確認をするのも俺の仕事になるのだろうな。

 

「後はフラグ待ちかなー」

 

 ラスボスに関連する一連の大型イベントはある程度の期間や進行度などのフラグが立たないと発生しない。

それにβ版でもラスボス関連イベントはβ版終了間近に最後の大型イベントとして発生したものだ。

弱い冒険者も皆で後方支援に当たり、強い冒険者は徒党を組んで押し寄せ、多大な犠牲と共に打ち倒した。

実際あのイベントが発生したらどれだけの死者が出ることやら。

多分俺はその時最前線に居るだろう。死者を減らしたい、なんて殊勝な事を言うつもりはない。

ただ自分が生き残るために。いつか必ず帰るために。

絶対に安心して勝てるってぐらいに、ラスボスなんて一撃余裕でしたとでも言わんがほどに。

俺は絶対強くなる。

 

「なんてなー」

 

『かっけーなおいww』

 

『出来そうで怖いわwww』

 

『ラスボス一撃はねーだろwww』

 

 うん、何か色々台無しである。

 

 

 

 

 

「てな感じで、あらかたのダンジョンは制覇したかな」

 

『すげー』

 

『888888888888』

 

『バケモン乙』

 

『チート過ぎワロタwww』

 

『リア充爆発汁』

 

 おい最後。いや、まああの英雄イベント以来かなりモテるようになったけどさ。むしろ怖いくらいに。

あっちに行っては声かけられ、こっちに行っては声かけられ。市場のおばちゃんは気前よくリンゴくれたし、

酒場に行けばマスターが一杯サービスしてくれる。ギルドに行けば羨望と嫉妬でざわざわだ。

チャットや掲示板でも好意的な意見やコメントが増えた。前は流石に懐疑的な奴も多かったのだけど、

流石にあの戦闘映像(直感チート・スラッシュ無双・うつせみ無双・超絶大破壊(エクスプロージョン))を見たら…ねえ?

実際このゲームはβ版でかなりやり込んでいたからリアルスキルもあったという事もある。

敵が雑魚ばっかで同レベル相手の所謂"実力"は分からなかったけど、それを抜きにしてもおかしい強さなのは間違い無い。

そのおかげか好意的な意見や積極的に協力してくれる人が大分増えたのだ。

俺でも知らなかったようなシステムに関する情報を提供してくれたβ版廃人も居たりして、眼から鱗だったな。

 

「何はともあれ転職だ」

 

 そうそう、予定通りクリエイターに転職した。これは各種情報を元にCぐらいまで伸ばそうと思っている。

ノービスA+まで育てたおかげで探索系や基本系のスキルで有用なものを憶えられたし、戦闘面はこれでもういい。

クリエイターで覚える汎用系作成スキルは二次職以降で覚える専門系作成スキルには劣るため、

作成スキルの補助を狙えるスキルを取ったらさっさと転職してしまう事にする。

いずれはA+目指すかもしれないが重要度と優先度は低いので、まずは二次職になることが最優先だ。

転職は条件に指定されたジョブがCランク以上である必要があるため、そこまでは上げる。

工学士や錬金術師も完全な上位互換の職があるのでさっさと転職する。

勿論重複する各種補助効果を保つスキルを得れば色々と底上げにはなるが、

最低限必要な分は最上位職でも得られるし、上げ幅もそちらのほうが大きい。

転職にかかる金や手間は同系列であればさほど気にならない程度の余裕はあるし、

下位職を極めるのはまず先に最上位職を極めてからでも遅くはないのだ。

 

『なるほどなー。つーかもう転職かよ』

 

『俺でもこの前転職したばっかだぜー?…Cランクで』

 

『うわお前もったいねえ。ノービスのA+スキル便利だぞ?』

 

『mjd!?ぐっはあ…金と手間がががが』

 

 うん、確かにあれは便利だ。何せノービスで手に入るスキルの消費軽減と効果底上げ効果を保つスキルだからな。

ステップとかスラッシュとかの初期スキルにも効果があるし、その派生スキルにも少しだが効果がある。

おかげで連続戦闘可能時間が伸びて戦闘時間は縮んでいる。もう初期スキル辺りはスキルランクA+ぐらいは行ってるし、

その辺のスキルは殆ど使い放題の域だな。スタミナ回復系装飾品での回復量の方が消費より多いぐらいだ。

俺みたいにレベル差が激しいなら兎も角、レベルが拮抗していて…それも序盤のステータスならかなり有用なはず。

 

『やらかしたああああああああああああっ!?』

 

『m9(^Д^)プギャー』

 

『だから掲示板かwikiを少しは見ろとあれほど…』

 

『バカスwww』

 

 ほんと、ネタに困らない連中だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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