「宝具屋?」
女が疑問符の付いた声を発する。対面にはいかにもファンタジーな冒険者といった風貌の男が座っており、
隣にはこれまたファンタジーな魔術師風の女が座っていて、その斜め向かいにも魔術師風の男が座っている。
周囲にも同じような格好をした者達が何人も座っており、それぞれのテーブルで思い思いに酒を飲んでいるようだ。
ここはアベラという街の北側大通りに面した冒険者向けの酒場であり、
その一角で酒と食事を楽しみながら会話をしている彼らもまた冒険者である。
「ああ、何でも宝具(アーティファクト)級のアイテムを売ってる店があるらしい」
四人の中でもいかつい風貌の男が女の声に答えた。彼の名はガッハ・グラール、歳は38になる。
まさに冒険者といった印象を受けるいかついおっさんで、頭髪は銀…とは言えず白髪である。加齢によるものではなく地毛。
重鎧を着込み旅人用のローブを背もたれにかけていて、傍には鞘に収められた長大な大剣が立て掛けられている。
明らかに前衛職な風貌に違わず戦士系のジョブを経験しており、現在はバトルマスターに就いている。
顔にある少し大きめの傷跡以外にも腕や足にも生傷が多くベテランの雰囲気を纏っている。
「おいおい、なんつーもん売ってんだよ。宝具(アーティファクト)ってあれだろ?世界に一個しかない奴」
魔術師風の格好をしている男が懐疑的な声で驚きの声を上げた。レオス・ルーダー、24歳。
若干軽薄そうに見えなくもないが冒険者としての経験を思わせる金髪のイケメン。
魔術師然とした風貌や傍に立て掛けられた杖の通り魔法職を経験しており、ドルイドのジョブに就いている。
冒険者としては若い部類だが実力は折り紙つきで、この4人の中では賑やかし担当である。
「正確には世界に一つしか無いほどの希少性とそれに見合った効果を保つアイテム、ね」
柔和な笑みを浮かべつつやんわりと訂正したのは同じく魔術師風の容貌の女。ミネア・フリッター、30歳。
黒髪のロングを腰まで伸ばし、柔らかな表情に常に微笑みを浮かべたほんわか系美女。巨乳。
魔術師のような容貌で杖も所持しているが正確には魔術師ではなく、僧侶系の職を経験したビショップである。
彼女も冒険者としての実力は高く経験も豊富だが、とうとう三十路を迎えた事を若干気にしているらしい。
「そんなものを売っているのか?簡単に手に入るものでも無いだろう」
疑問を呈したのは最初に発言した前衛職らしき女。レイア・スチュート、19歳。
赤い髪を後ろで結んで背裏まで伸ばし、少しつり目気味でキリッとした印象を受ける美人さん。美乳。
騎士然とした容貌であり腰には二本の剣。騎士系職を経験したパラディンである。
経験は浅いが実力は4人の中でもトップであり、パラディンにしては盾を持たない変則的な戦闘スタイルでもある。
「それもそうなんだが、俺の古い知り合いが教えてくれてな、信憑性は高い」
それでも疑ってかかるほうが普通なほどの話題なのだが、噂話程度ではなく実際の店の場所まで聞いたためだ。
かの知り合いはかなり長い付き合いである上あまりこういう話題で嘘を吐かない質なのをガッハは知っている。
そのため今回の話しの信憑性は高いとして彼らに聞かせたのだ。
彼らはパーティーを組んでいるわけでは無いのだが同じクラン所属であり、実力も拮抗しているためよく臨時で組むのだ。
今回も中々美味しい報酬のクエストがあったためガッハが招集をかけ、暇だった他の3人が集まった事でクエストに挑戦。
無事クエストを完了させて一仕事終えたため酒場でささやかな祝勝会の真っ最中、というわけである。
「おいおい、どうやって手に入れてるんだ?ヤバイ奴じゃねえだろうな」
レオスが訝しげな声を上げるが、半信半疑といった所である程度の信頼はしているようだ。
それはクランマスターであり自分達の中でも経験と実力両方を兼ね備えたガッハが信用しているというのが大きいのである。
他の誰かからの話しであれば眉唾として酒のつまみにでもしていた所だろうが、
ガッハが信憑性が高いというのであれば事実である可能性は高いであろうし、危険性も然程無いのだろう。
あくまでどういう店なのかという話を促す合いの手の類である。
「ああ、何でも自作しているらしい」
『自作ぅっ!?』
ハモった。そらもう見事にハモった。それも周囲で聞き耳をたてていた一部の冒険者達まで一緒に。
何せ宝具(アーティファクト)である。神代の遺物とも神の祝福とも言われる至高の一品である。
準宝具級ならば幾らか見つかっているし作れる者も片手以下だが居るには居る。
だが、完全な宝具クラスのアイテムを自作出来るようなバケm…もとい人間など居るわけがない。
宝具クラスと言えばそれこそ不老不死の秘薬だとか時間を止めるだとか空間をぶった切るだとかそういう次元の話である。
どこかで見つかっただけでも国宝とかそれに類するモノとして厳重に保護・保管されるようなシロモノだ。
それを自作し、売っている。もはや頭がおかしいんじゃないかと思ってしまっても無理は無い。
「いやいやいや、幾らなんでも冗談きついって」
呆れたように零すレオスの言葉に反応し、聞き耳を立てていた冒険者達の8割は興味を失ったようだ。
完全に眉唾か冗談の類だと判断したのだろう。残りの2割の内1割は未だ熱心に聞き耳を立て続け、
もう1割は何か心当たりがあるかのようにウンウンと頷いて聞くのをやめた。そこそこに名は知れているようである。
「ま、明日にでも行ってみるつもりだ。お前も折角だし着いて来い」
そう言って笑うガッハは情報の真偽を確信しているようで、3人は訝しみながらも頷いた。
その後はまた何時ものようにくだらない話から今後の予定や活動に関する方針の話をしたり、
酒に任せて愚痴ったり調子に乗ったレオスがレイアに一撃で沈められたりと賑やかな時間が過ぎていく。
彼らはクラン『暁の旅団』の冒険者。今日も荒々しくも平和な日常を過ごしているようである。
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「うわ、うわ、うわぁ♪凄い凄い、これも凄いうわあれなあに~!?」
翌日。ガッハに連れられて4人が入ったのは小奇麗な外見で冒険者向けの宿ほどの大きさの建物。
表にはOPENと書かれた札がかけられているだけであり、店の名前も種類を示す看板もかけられていない。
相変わらず訝しむ3人を他所にガッハが先導して中に入ると、「いらっしゃい」という男のものらしき声が聞こえてくる。
20畳ほどの販売スペースの奥にあるカウンターには一般的な冒険者向けの街服に黒いローブを着込んだ若い男。
今年で丁度20歳になるこの店の店主、ユージ・ハウゼンの姿がそこにあった。
黒い髪を短く切りそろえた純アジア風の容姿の彼は、客を一瞥しただけで手元の本へと視線を戻す。
「む」
その態度というか愛想の悪さに若干生真面目なレイアがむっとするが、流石になれているのか特に苦言を呈すことも無い。
そしてとりあえず商品を見ようと広い陳列スペースに並べられた様々なアイテムへと目をやり………固まった。
その彼女のフリーズした思考を解凍したのが、何時ものほんわか口調を楽しげに弾ませてはしゃぐミネアの声だった。
とはいえ彼女のフリーズもおかしな事ではない。外に居た時は何の違和感も感じなかったにも関わらず、
ここにある品々は明らかに一級とか超一級とか特級という言葉ですら生ぬるい逸品ばかり。
剣や槍などの武器から杖や指輪などの触媒、鎧や盾といった防具にポーションらしき消耗品など、
並んでいる商品の種類は雑多であり悪く言えば節操が無い。
しかし、それらは明らかにひと目で宝具級に違いないと確信を持てるほどの圧倒的なオーラを放っていた。
「これは…予想以上、だな」
これには流石に経験豊富なガッハも驚きを隠し切れないようで、それは隣で呆然としているレオスも同様のようだ。
しかしそれも仕方ないだろう。大陸最高クラスの冒険者ですら下手をすれば一生拝めないような逸品が、
広い展示スペースに所狭しと並んでいるのだ。圧倒的なオーラをこれでもかとまき散らしながら。
しかもカウンターの張り紙には「未展示在庫・特注受付有り。応相談」とある。
そして店主は何食わぬ顔でカウンターに頬杖をつき、手元の本へと目を落としている。
まったくもって何の冗談だと言いたくなるような光景である。
「ちゃんとカテゴリごとに分けてあるのか。大剣は…うおっ!?なんだこの大業物は…」
ゴクリ。少し見てみただけで欲しいという感情を止められなくなりそうなほどのオーラ。
冒険者や蒐集家が一度は夢見るであろう最上級の中の最上級がそこにある。
金額は…3000万エーダ。日本円に換算して3億円ほどの価値になる。安い。いや、冗談抜きで安い。
本来なら国宝級である。普通は値段なぞ付けられないようなシロモノだ。それがたった3000万エーダ。
他の商品にはもっと安いものや高いものもあるが、宝具級が安ければ1000万エーダ程度とは何の冗談か。
しかもカウンターに貼られた何枚かの張り紙には「値引き・分割応相談」とある。
ガッハですらこの店主ちょっと頭大丈夫だろうかと心配になってしまったのもおかしくはない。
「なんという数だ…」
レイアの呟きも当然だろう。ざっと見渡す限りでも100は下らない数の宝具級があるし、
その上店の奥には大量の在庫があるらしく、更には新しく作るのも半月ほどの短期間で作れるらしい。
かなり安く設定されているが、本来の価値で売ればそこらの大国が十把一絡げで傾くレベルの価値がある。
というかココにある宝具を適当に集めた連中に配るだけで国の一つや二つは軽く落とせるだろう。
もはや冗談を通り越して天国か地獄にでも居るかのような話だ。正直やってられない。
何よりこれだけのものを店先に並べておいてあの店主の興味無さ気な態度は一体何なのだろう。
レイアが自分の中の常識が音を立てて粉々に砕けていくのが聞こえた気がしたのも当然というものだ。
むしろ初めて此処に来た客は常識やら価値観やら理性のタガやら何かしら確実に壊れる。
もういっそ不条理とか理不尽と言い切っていいレベルである。
>初期職
・ノービス
初期に就いている職業。ステータスへの補正は無く、探索系や移動系などのごくごく基本的なスキルを覚える。
ランクアップによる習得スキルに、汎用的に機能する利便性の高いスキルが多いのも特徴。
>一次職
・ファイター
前衛戦闘を行う職業。STRとVITにプラス補正、INTとRESにマイナス補正がかかる。
スキルは物理攻撃やそれらの防御・回避を行うスキルが多く、それらの習熟に僅かな補正がかかる。
・マジシャン
後衛戦闘を行う職業。STRとVITにマイナス補正、INTとRESにプラス補正がかかる。
スキルは各種魔法やそれに干渉するスキルが多く、それらの習熟に僅かな補正がかかる。
・クリエイター
後方支援・生産を行う職業。INTとDEXにプラス補正、VITとAGIにマイナス補正がかかる。
スキルは採取・発掘などの調達系や合成・作成などの生産系スキルが多く、それらの習熟に僅かな補正がかかる。
>二次職
・ウォリアー
前衛戦闘において特に高威力による突破を担当する職業。
STRとVITに大きなプラス補正、INTとRESに大きなマイナス補正がかかる。
ファイターを純粋に強化したような職業で、スキルも攻撃的な物が多い。
・ナイト
前衛戦闘において特に味方の守護を担当する職業。
VITとRESに大きなプラス補正がかかり、INTとAGIに大きなマイナス補正がかかる。
防御に偏ったファイターであり、スキルも後衛の防御や自動回復など防御に重点を置いたものが多い。
・ウィザード
後衛戦闘において特に魔法攻撃による敵の掃討を担当する職業。
INTとRESに大きなプラス補正がかかり、STRとVITに大きなマイナス補正がかかる。
マジシャンの正当進化であり、中位の魔法スキルへの派生も解禁されるなど火力の大きなものやその補助スキルが多い。
・プリースト
後衛戦闘において仲間の回復を担当する職業。
INTとRESに大きなプラス補正がかかり、VITとAGIに大きなマイナス補正がかかる。
回復系のスキルや味方のステータス補助を行うスキルを多く覚え、浄化属性のスキルなど一部攻撃スキルも習得する。
・スミス
後方支援・生産において武器や防具などの武具類を担当する職業。
VITとDEXに高いプラス補正がかかり、INTとAGIに大きなマイナス補正がかかる。
各種武具の作成に特化したスキルの他、それらの素材を収集するために必要なスキルなどを多く覚える。
・アルケミスト
後方支援・生産において魔法具や消耗品など各種アイテムの作成を担当する職業。
INTとDEXに高いプラス補正がかかり、STRとAGIに高いマイナス補正がかかる。
装飾品や消耗品の作成に特化したスキルの他、それらの素材を収集するために必要なスキルなどを多く覚える。
>三次職
・バトルマスター
ウォリアーの発展職。STRとVITにかなり大きいプラス補正がかかり、INTとRESに高いマイナス補正がかかる。
ウォリアーでは使えなかった上位級・最上位級の物理攻撃スキルを使いこなす。
・パラディン
ナイトの発展。VITとRESにかなり大きなプラス補正、INTとAGIに高いマイナス補正。
各種上位防御スキルの他、専用の回復・補助スキルも幾つか覚える。
・ドルイド
ウィザードの発展職。INTとRESにかなり高いプラス補正、STRとVITに高いマイナス補正。
広域殲滅魔法や精霊魔法など様々な攻性魔法を使いこなす。
・ビショップ
プリーストの発展職。INTとRESにかなり高いプラス補正、VITとAGIに高いマイナス補正。
蘇生レベルの高度回復スキル以外にも浄化系スキルや多様な防性スキルを使いこなす。
・マスタースミス
スミスの発展職。VITとDEXにかなり高いプラス補正、INTとAGIに高いマイナス補正。
高度な武具の作成が可能になる他、それに。準じたスキルを多数覚える。
・ヘルメス
アルケミストの発展職。INTとDEXにかなり高いプラス補正、STRとAGIにに高いマイナス補正。
高度な魔法具やアイテムの作成が可能になり、それに準じたスキルを多数覚える。
>特殊職
・アウター
ローグやアサシンに属するジョブ。DEXとAGIが高くVITとRESが低い。
スキルもそれらに準じたものになる。
・勇者
前衛三次職二種を極める事でなれる職業。マイナスがなくSTRとVITが非常に高い。
秘技と呼ばれる特級物理スキルの習得が可能。サポートスキルも強力。
・魔王
後衛三次職二種を極める事でなれる職業。マイナスがなくINTとRESが非常に高い。
奥義と呼ばれる特級魔法スキルの習得が可能。サポートスキルも強力。
・造物主
生産三次職二種を極める事でなれる職業。マイナスがなくDEXが非常に高くINTとVITも高い。
創造と呼ばれる特級生産スキルの習得によりジョブ限定アイテムの作成解禁。サポートスキルも強力。
・超越者
特殊職含めた全ジョブを極める事でなれる職業。全体的に高い補正がかかる。
絶技と呼ばれるスキルやサポートスキルがぶっ壊れ。作成・装備が解禁されるアイテムもぶっ壊れ。
完全にご褒美ジョブであるためか確実にバランスブレイカー。