黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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ATSS(インフィニット・ストラトス)

 

【Advance】

 

前進、昇進、促進、進行、進化、変わった所では前貸しとか提出とか言い寄るとかいった意味もある。

今発せられた言葉の意義としては進化が一番適切だろう。

進化。既存のものが段階を経て大幅に成長あるいは変化する事を示すこの言葉は、

今目の前に存在する"コレ"に対して何よりも適切な語句だと思える。

 

【Advance-Type】

 

"彼女"はそう名乗った。"私"が名乗れと命じた時、彼女自身がそう名乗ったのだ。

私は笑った。大いに笑った。それはもう声を大にし、コレ以上に面白いことがあるのかと言わんばかりの大爆笑だ。

彼女は知っているのだ。自分が生まれてきた理由を。存在する意義を。

私が何も教えていないにも関わらず。私がそうあれと命じたわけでもないのに。

彼女は自身を理解し、他者を理解し、そこから考え、導き出したのだ。

そう、それはまさしく"正解"だった。それは私が望んだ事だ。それは彼女の存在意義だ。そのために私は彼女を生み出した。

私は次に彼女にこう聞いた。「今の気分はどうだ」と。普通なら彼女のような存在にかける言葉ではない。それに彼女はこう返した。

 

「これ以上無い歓喜に包まれています。私は、あなたの望みにかなった」

 

笑いが止まった。思わず抱きしめた。もはや笑いだとか歓喜だとかそんな次元を通り越したのだ。

いやはや、自分は頭で考えるしか能のない人間だとばかりに思っていたがそうでも無かったようだ。

まさかこの私が思考を放棄し、抱きしめるといった直接的な行動でしか感情を表現出来なくなるとは。

彼女は理解しているのだ。自身の誕生理由を理解し、自身の存在意義を理解し、そして私が望むそれらを叶えられたと理解している。

そしてそれを喜んだのだ、彼女は。これ以上無いとはっきりと言いのけたのだ。

その言葉しか識らないのではない。無数の表現の中から自分の意志で選択しそれを口にしたのだ。何の躊躇も疑いも無く。

ああ、素晴らしい。完璧だ。君もそう思うだろう。もうダメだ。私はどうにかなってしまったようだ。今直ぐ彼女を――――――

 

 

「――やめんかバカタレ」

 

「おうふ。いきなり出てくるなんて酷いじゃないか」

 

自分の口から言葉が零れ、今にも彼女を押し倒そうとしていた体が再び持ち上がる。

周囲に散らばる雑多な機械を押しのけて、近くにあったデスクの椅子へとドカリと腰を落とした。

どうやら支配権を強制的に持っていかれたらしい。取り返す事も可能だが、面倒だから別にいい。

何にせよ"俺"のおかげで随分と落ち着くことが出来た。というか、本来なら感情的になった"俺"を止めるのは"私"の役目なのだが。

 

「だから"私"が感情的になったから"俺"が止めんだろう」

 

おお、そうか。流石俺だ。そうか、今まで暴走する事はあれどここまで感情的になることは無かったな。

移動した事で少し距離が空き、その全貌を瞳に映す事が出来るようになった彼女を見やる。

私に押し倒されかけ傾いて居た体を元に戻し、恭しく礼をして無言のまま直立不動となる。実に素晴らしい。

しかしなんともはや、彼女のお陰で随分と思考能力を奪われてしまったようだ。これが恋というやつだろうか。

 

「んなわけあるか」

 

「ですよねー」

 

自分の口が2つの言葉を紡ぐ。別に声に出さなくてもいいのだが、そこはノリと言うやつである。

頭の中だけで会話するというのは長時間やると意外に疲れるもので、適度に口などを使う方が楽なのだ。

それに、こういうボケやツッコミという類の言葉は口に出さないとその意義の半分を失う。脳内ボケツッコミなど薄ら寒いだけだ。

 

「ま、なにはともあれ完成だな」

 

満足そうに呟く"俺"。当然だろう、彼女を操るのは俺で、そして彼女が素晴らしいものであると既に知っている。

なにせ"私"が創ったのだ。俺は私に対して絶対の信頼を置いている。それは私が俺に対して抱いているそれと同等だ。

私と俺が共同で作り上げた満足の行く一品。完璧と言うには私の研究開発者としての思考が邪魔をするが、

満足度という点では100点満点と言っていいだろう。いや、既に振り切って120点ぐらいには達している。

後は200点300点を目指して飽くなき追求を重ねていくのみである。

 

「ふむ、しかし流石私の生み出した最高傑作とはいえここまでの完成度とはね」

 

「まったくどういう頭の造りをしてるんだろうな」

 

私の言葉に対する呆れたような俺の言葉が自分の口から零れるが、同じ頭だということを忘れたかのようなツッコミである。

まあ、私に比べれば天と地の差があるとはいえ、俺の思考能力とて悪くはないのだから当然冗談だろう。

兎にも角にもこれで準備は整ったのだ。私は十分満足したのだから、今度は俺が好きなだけやらせてやろうではないか。

 

「ありがたい。暫くは俺が使うぞ」

 

「構わん。全く出てこないというわけでもないのだからね」

 

別に四六時中渡すというわけでもなし、それに流石に今回は私が好き勝手使いすぎた。

実験の時は時折使わせていたとはいえ、それはあくまで必要だったからである。

それ以外では日常生活すら投げ出して研究と開発に注ぎ込んでいたのだから、暫くは俺の好きにさせてやりたい。

特にこれからの行動予定では私の出番は少ない上、そもそも私は人見知りだ。

恥ずかしいというタイプではなく単純に他人に興味が無いタイプなのである。

どこぞの天災兎と比べれば流石にマシであると思いたいが、俺曰く五十歩百歩とのこと。なんだ、倍も違うではないか。

 

「オイコラ」

 

当然冗談である。ともあれ、暫く私の出番は無い。必要になれば出てくるが、そもそも我々のような存在は奇異に見られがちである。

目的外の所で目立つのは得策ではないというのもあるが、単純に面倒でもある。私は自身の望まぬ面倒は嫌いだ。

誰でもそうだとは思うが、私の場合かなり優先順位が高い。面倒は即排除に限るのである。

その点俺は私と違って面倒を敢えて楽しむ事も出来る性格なのだから、

これから行く場所の特異性も鑑みれば是非とも身代わりになって欲しいものだ。

 

「本音が出たな」

 

「そういった名前の少女がこれから行く場所に居たな、うむ」

 

「うむじゃないだろ何の話だ」

 

取り敢えず行く場所の情報をと思って事前に情報収集をしておいたのだが、どうやらしっかりと記憶できているようである。

同じ頭を共有しているとはいえ、私と比べれば低い思考能力だったので人前に出すのは若干不安視していたのだ。

 

「お前は俺の親父か」

 

「兄心という奴なのであーる」

 

「おい口調こら。どこの変態ドクターだ。あと誰が兄だ誰が」

 

そういう細かい事に拘る辺りが弟なのであーる。

冗談はさておき、誕生日というものが存在しない以上どちらが兄だ弟だという議論に意味は無い。

世間一般に言われる双子とかとも違う上、かなり広義に言えば同一人物である。兄も弟も無いだろう。

なにせ、俺は私の半身なのだから。私達が分かれたのは何時だったか。そう、確かあれは雪の降る――

 

「回想シーン入ろうとすんな。しかも捏造しようとすんな」

 

うむ、正直覚えていないのである。なにせ年齢一桁の頃の記憶が曖昧で殆ど残っていないのである。

別に、記憶喪失だとかそういうわけではない。単純に子供の頃の事を覚えていないだけである。そのため私と俺の起源は不明なのだ。

生まれながらにこうだったのか、どこぞの秘密結社の改造でもうけたのか、それとも今流行の憑依モノとかいう類なのか。

何にせよ私と俺はもうかなりのレベルで融合している。人格や思考はある程度独立しているが、自覚的には同一人物だ。

独り言を言っているのと大して変わらないというのは寒い部分もあるが、もう慣れてしまった。

 

「さて、大体分かったかね?」

 

時間的にも発した言葉や思考したイメージの量的にも十分だろうと判断した私は、唐突に"彼女"に話しかける。

視線を向けられ声を掛けられた彼女は問題ないと言うようにしっかりと頷いた。非常によろしい。

これで学習も済んだだろう。まだまだこれからではあるが最低限は教えた。後は自己成長させるだけである。

 

「これで準備は全部整ったな」

 

「ああ、後はシャワーを浴びて着替えて食事をして出発するだけだ」

 

随分ある?そうでもない。日常的な行動しか残っていないというのならそれは誤差の範囲である。

まあ、暫く不眠不休だったせいで空腹と悪臭が凄いことになってしまっているが。

俺曰く美少女満載の所へと行くのだから、流石に体臭はしかりと落としていくべきだろう。心なしか"彼女"も引いている気がする。

 

「いや、引くだろう普通」

 

「本当に引いているならスクラップ決定だがね」

 

我々に向かってそのような不要な感情を向けるのなら作りなおす必要がある。

"人間らしい"までは構わないが"人間くさい"のは人間だけで十分である。

 

「さて、それじゃまずは風呂だな。汚い体じゃメシも不味い」

 

所謂メシマズという奴である。どれぐらいかと言うと五十過ぎた母親の性の話を聞かされるぐらいメシマズである。

……想像しただけで鳥肌が立ってしまった。まあ、記憶に母親の顔など残っていないのだが。

両親共に我々が思い出せる年齢以前の頃にお亡くなりになっているのである大して感動も無い。

 

「ま、遺産や保険金には感謝してるけどな。……すぐ尽きたけど」

 

非常に済まんかったのであーる。

いや、本気で済まないと思っているから思考をクラックするのはやめて欲しい。思考ノイズを送り込むのもやめてくれないだろうか。

ああ、ありがとう。――ごほん。流石に、あれだけあった金を研究のために食い潰したのは悪いと思っている。

なにせ我々の共有財産だったはずなのに、使った額で言えば1000対1ほどの差がある。

我々の持ち前の頭脳と行動力で上手く稼いでいなければ今頃二人揃ってお陀仏である。

しかし、そもそもを言えば私に研究開発の全面許可を出したのも俺であり――ああ、悪かったからやめてくれ。ほんとに。

 

「まあ、やり返されたら洒落にならないからやめるけど」

 

うむ。相変わらず素晴らしい引き際である。こちらが逆クラックを検討し始める直前で即座に退く辺り流石としか言いようがない。

私は何かをやりだすとつい熱中して引き際を見誤ることが多いため、

俺のこういった戦術眼とも言えるものは何時もお世話になっている。

 

「ま、兎も角だ。やることは決まった。そろそろ行こうか」

 

「うむ」

 

まずは何はともあれ駄兎に接触しよう。我々の自信作を魅せつけてやるのだ。

いざ尋常に勝負と行こうではないか。ふはははは、あははははは、あーーーっはっはっはっは。

 

「うるさい」

 

すまん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい、えっくん、へっくん」

 

「ああ、行ってくるよ」

 

「行ってくるぞ」

 

秘密ラボから一人の男の子を見送る。二人が出ていった後ラボの扉が閉まった時、思わず寂しさで追いかけたくなってしまった。

すっかり二人が居る生活に慣れてしまっていたようで、そんな自分に苦笑してしまう。

 

――最初に彼らの影を見たのは、私が造ったISコアの一つが行方不明になった所からだった。

IS。私こと篠ノ之束が生み出し、世に放ったもの。宇宙開発を目的に作られたそれらは、現在は兵器として使われている。

その理由の一つが、『白騎士事件』と呼ばれる事件。

私が提唱したISは当初妄想の類として切り捨てられた。誰も私が造ったものを信じなかったのだ。

だから"なぜか"日本へと降り注いだ2000発のミサイルを私が造った白騎士に撃墜させた。

それからは世界がひっくり返った。2000発のミサイルを撃墜し、追撃を掛けてきた艦隊も壊滅させたその力に、世界中が驚天動地。

こうしてISは世に放たれ、今も私が造った467個のコアを巡って醜い豚どもが争っている。

 

そんな中、彼らは現れた。

私の警戒網を安々と突破し、この私に気づかれる事もなくラボに降り立った彼らの一言目。

 

「喉が乾いたから茶をくれ」

 

いや、あのさ。流石の束ねさんもこれはどうかと思うんだよ、うん。

そりゃあね、敵対の意思がないのを示そうとしたっていうのは分かるけど、それでももっとこう何かさあ。

ごほん。兎も角、私の警戒網を内科のごとくすり抜けた彼らに興味が湧き招き入れたのだが、そこからが大騒ぎだった。

まず第一声に「お前の造った不細工な品を超えるモノを作ってきたから見せてやろう」というもの。

それがISの事だと一瞬で理解した私は思わずぶちきれて無人ISをけしかけた。

そして、それは一瞬と言っても過言ではないほど瞬く間に壊滅させられた。

彼らの操るIS、彼ら曰く『Infinite Stratos Advance Type』、通称ATに。

 

で、その後色々揉めたり喧嘩したりお互いの研究成果を見せ合いっこしている内に仲良くなり、共同研究に至ったのが事の顛末。

私でも不思議なくらいに充実した時間だった。ちーちゃんやいっくん、箒ちゃんと過ごした時間に優るとも劣らないほど。

彼ら曰く兵器にせよ宇宙開発用具にせよ、"女性にしか扱えない"というのは致命的な欠陥らしい。

今でこそISによって社会的に女性の地位が向上し、女尊男卑とも言われる時代になってはいる。

しかしそれは裏を返せば戦場や宇宙などの危険かつ過酷な場所に女性を率先して送り込むという事でもあり、

467という数の少なさとそれに反比例した性能の高さといった歪な部分からも長期的に見れば破綻は必定。

元々ISに男女の差というのは関係無い。慣性・力場制御によって駆動し、腕力なども増幅では無くベクトルの発生。

しかも生み出すエネルギーが莫大なため、男女差程度の違いでは微々たる差にしかならない。

だから男性でも女性でも、お年寄りでも子供でも同じだけの事が出来るのがISだ。

だからこそ、それが女性にしか扱えないというのは兵器や宇宙開発用具としては欠陥でしかない。

――というのが、彼らの意見だった。

彼らの持ってきた計画案の中には家庭内サポート用や工業用など様々な簡易ISが考案されていて、

中には私が考えたことの無かったものも幾つか存在していた。

そういった世界に無理なく浸透するだけのポテンシャルを秘めているのがISという存在であり、

それが出来ていない現状はただ不完全な作品を世に出したという恥さらしでしか無いと。

 

「あ、なんかむかついてきたよー」

 

今でもあの時の事を思い出すとむかつく。けどそれらはある意味私のプライドを刺激するぐらいには正論であり、

そして彼らは私が生み出したIS自体も未完成だとのたまった。

そもそもファーストシフトやセカンドシフトは成長ではあるが進化ではないと。

成長とはつまり常識的かつ人が想像しうる範囲に収まるものであり、進化とは創造者の想像をも超えて発展していくものであると。

私が想像しうる範囲内で成長の余地を残しているISはただの未完成品であり、

私や世界中の何者にもその発展が予測できない域に至ってこそ初めて進化が出来るのだと、彼らは言った。

そして、その証明として彼らが開発したというATを見せられた。

その時の衝撃と感動は、恐らくこれまで凡愚が生み出してきたどんな言葉を用いても語り尽くせるものではないだろう。

機能としてはISと大差無い。ファーストシフトといったものをせず、最初から完成品。

しかしそこで止まる事は無く、創造者の想像をも超えて進化するというだけ。

凡人が見ればそのスペック以外で既存のISとどう違うのかなど分からなかっただろう。

 

「けど、私には分かった」

 

あえて言うなら人造の神。人の創造出来る極地。そこにあるだけで解ってしまった。

スペックを見て確信し、理論を聞いて理解を超えた。

"彼女"が至った答えは非常にシンプルだった。3次元では極めてしまったあら4次元を極めよう。それだけ。

そして私が見た時彼女は16次元を極め、『量子の海』へと至っていた。

理解の範疇の外だった。何がどういう原理でそうなっているのか解らない。

しかし分かるのだ。凡人には分からなくても、天才の私には分かるのだ。

理論が理解出来ずとも、彼女がそこに至っているというのが理解出来てしまう。

彼女は、紛れもなくこの世で最も"神"に近い存在だった。

 

「そもそも虚数と同じなんだよこれは」

 

人間には絶対に理解できない。それは天才とかそういう問題でなく、人間はそれを物理的に知覚できる構造をしていない。

勿論いくつかの何かしらは技術を利用する事で知覚する事は出来る。私の造ったISの根本にもそれはある。

だが、彼女は16の次元を極めた。私に無限の生があったとして、それが出来るだろうか?無理だ。

技術がどうとか理論がどうとかいう問題ではない。

噂で知っていたものを目の前に出されて、「へえほんとにあったんだ」なんて馬鹿みたいな返答しか出来ないようなモノだ。

愚者も凡人も天才も無い、ヒトの限界を、完全に逸脱していた。

 

「俺達はお前ほどの頭は無い。ただ既存のものを限界まで完成させただけだ。だから、お前なら作れるはずだ。これが」

 

そう言われた時の感動が分かるだろうか?わかるまい。

常々、私は世界のつまらなさを嘆いてきた。何でも理解出来てしまう。何でも作れてしまう。そんな世界が酷くつまらなかった。

けど、そんな私に対して示された答えはどこのぞの王妃のように馬鹿みたいな単純なものだった。

 

「無いなら作ればいいじゃない」

 

測ったかのようなタイミングで彼が放った一言に思わず爆笑してしまった私は悪くない。

本当に、そんな単純な事だったのだ。私はそれから研究に没頭した。以前封印したコアを引っ張り出してきて、素体にした。

そうして2体目のATを完成させ、その成果を理屈でなく感覚で感じ取った時、また感動した。

理屈では無かったのだ。作り上げた瞬間に、ああ私はそういうものを造ったんだ、という手応えとも実感とも付かぬものを覚えた。

そして、彼らも彼女を造った時にこれを感じたのだと知って、思わず「ずるい」と泣いてしまった。

だってそうじゃない。こんな感動をそれまで独り占めしていたのだから。

暫くは燃え尽き症候群にかかってしまったぐらいだ。1ヶ月は何もする気が起きなかった。

けど、いっくんがISを動かしたっていうニュースを聞いて、私は再び動き出す事にした。

私が直接行くのは彼らに止められたので、2体目のATを彼らに託して。

 

「ふふふ、いっくんは驚いてくれるかな~♪」

 

なにせ、世界に2体のAT。人造の神。それをあげるのだ。きっと驚いて、喜んでくれるだろう。

彼らは危険だとか言っていたけど、ATの前に危険も何も無い。

いっくんが守りたいものは須らく守り、いっくんが壊したいものは容易に壊す。彼のための神。

ふふふ、楽しみだなあ。ああ、楽しみ。

 

「さてと。えっくんへっくんには先越されちゃったけど、私にもプライドはあるんだからねっ!」

 

そうだ。今度は彼らよりも早く、多く、素晴らしく。私のあげたい人はまだ居る。ちーちゃんに箒ちゃん。

それにATの力を見せつけるためにもヤラレ役は必要だ。既存のISを容易く打ち倒し、ATの真価を発揮できるほどの。

ああ、そういえばATに関する声明発表もしようって言ってたっけ。

ふふふ、ああ、楽しみ。

 

「待っててね、皆。今、驚かしてあげるからね~♪」

 

 

 

 

 

 

 

「全く、あの駄兎の天災ぶりには呆れるな」

 

"私"の声が響く。ま、その言葉には同意せざるをえない。なにせ俺達が10年かけて完成させたものを1年で真似したのだ。

いくらモデルがあるとはいえ、"彼女"のバックアップ無しで1年。まともじゃあない。

ま、おかげで"彼女"も多大な進化を遂げられたのだから構うまい。相変わらず、俺達には理解不能な次元でやらかしているが。

なんだ18次元って。増えてるし。何をどうしたら干渉出来るんだ。"私"でも解らないって何だよ。そういうコンセプトなんだけどさ。

今は『量子の海』と呼ばれる、4次元だとか16次元だとかを超えた先にある領域に居る"彼女"をつい想起する。

 

「どんなとこなんだろうね?量子の海」

 

知らんつーの。そもそも物理的に存在する場所じゃないだろう。そもそもヒトが想像すら出来ない領域なんだから。

何はともあれ駄兎の度肝を抜くのには成功した。彼女に理解できないと言わしめたのだ。大勝利だった。

まあ、当然ながら俺達にも理解不能なんだけど。元々そういうコンセプトだったのでいいのだ。悔しくなんて無い。無いったら無い。

ともあれ、目的を達した俺達は娯楽の確保も兼ねて、IS学園という所に入学することに。

文字通りISを学ぶ学園で、駄兎――束の幼馴染が強制的に通わされることになった場所でもある。

ISの特性上完全に女子校と化しているし、ISを扱う以上トラブルにも事欠かないだろうから色々と楽しみだ。

 

「そういえば、名前はどうするのだ」

 

名前――ああ、俺達の名前か。まあ二重人格なのだから一つの名では確かに呼び分けが面倒だ。

最初は小説『ジキルとハイド』の主役二人からエドワード・ヘンリーと名乗っていたのだが。

流石にヘンリーは姓っぽく無いし、束にも呼びづらいと指摘され、

便宜的にエドワード・ブリックスとヘンリー・ブリックスと名乗っていた。

彼女からは殆ど愛称であるえっくんとへっくんで呼ばれていたが。最初は改めさせようともしたのだが……諦めた。

ちなみに"俺"がエドワードで"私"がヘンリーである。

というか、別にこれでもいい気がするのだが。

 

「私は割りと気に入っているから俺がいいのなら構わんな」

 

「じゃあもうこれでいいや」

 

ちなみにブリックスとは丁度苗字を考えた時に見ていた映画の主人公の苗字だった。適当である。

さて、まずはATを織斑一夏という束の幼馴染に渡す事からだ。そして、存分に学園生活を満喫してやろう。

いや、楽しみだ。本当に楽しみだ。

 

「うむ、イキイキとしておるな。女子校バンザイといったところか。このロリコンめっ♪」

 

めっ♪じゃねーよ。

 

 

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