黒歴史自由帳   作:ゼロゼロ大神

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恋姫御使文官記 (真・恋姫無双 董卓ルート 文官)

見知らぬ部屋で目が覚めた。どうやらベッドで寝かされていたようだ。

ベッドのクッション性は低かったが、長時間寝かされていた訳では無いのだろう、痛みなどは無い。

 

まず考えなければいけないのは此処が何処か、という問題。

内装を見るに中国風の一室。

ベッド、調度品等からして客人用のワンルーム。

ソレらから考えられる推測は

1、此処は日本国内の中国風施設である。

2、此処は中国内の純中国風施設である。

3、此処は日本・中国以外の国の中国風施設である。

以上の三通りだ。

 

次に窓から見た景色。

窓にはガラスが嵌められておらず、木が十字に組んであるのみ。

外の景色は庭らしきものが見えるが、かなりの広さである。

また庭の周囲は城壁のようなモノに囲われており、

建物の建材は木・土・石が主に使われているようだ。

 

自分に対して確認する事は

Q,まずこの景色に見覚えは?

A,無い。

Q,ではこのような建物に見覚えは?

A,無い。

Q,ではこのような建物が日本にあると知っている?

A,知らない。

Q,では日本国内にこのような建物は存在しうるか?

A,見る限りこの施設はかなり大きく、広い。

 恐らく城や宮殿程度の大きさはあるだろう。

 しかし日本国内に残っている城などは文化遺産等に指定されていたりして、

 少なくとも内部に宿泊施設や一般人を寝かせる寝室など無いだろう。

観光資源として利用している可能性もあるが、知らないので確率は低いものとする。

 更に言えば内装も外装も中国風であり、まともな施設として存在しうる可能性は限りなく低い。

 あえて可能性を上げるなら映画等に使用する目的の特殊施設であると言う事ぐらいか。

Q,ではそのような特殊施設である可能性は?

A,無いとは言い切れないが、そもそもそんな場所に俺を置く理由がない。

 倒れていた等なら救急車を呼べばいい話である。

 

以上の事から、日本国内である可能性はかなり低い。

また、日本と中国以外の国にもこのような中国風の城や宮殿が実在する可能性は極めて低い。

中国国内である場合も含め、特殊な施設である可能性も先述の内容と同じく低い。

 

つまり、此処は中国の何処か、という線が濃厚である。

しかしこれだけ立派な建物の窓にガラスが嵌っていなかった事、

城壁には松明らしきものが置かれていた事(昼間のため火は消えている)、

何より城壁の上には『鎧らしきモノを着た兵士のような者』が歩いていた事。

これらの事からこの地の技術レベルは未発展国レベルであると推察される。

中国国内として考えるなら、都市部からは遠く離れた山間部の少数部族レベルである。

しかし少数部族の集落や里として見るには明らかに城(又は宮殿)の規模がおおきい事、

幾ら少数部族だとしても武装した兵士が見張りをしている城など存在する筈も無いし、

あったとしてもそんな所に自分が居る理由が分からない。

 

此処に居る理由の可能性としては、

1,誘拐されて連れてこられた。

2,何らかの超常識的方法で連れてこられた。

3,実は自分の足若しくは誰かに連れられて来たが、忘れている。

4,実は、これは全て夢若しくは幻覚である。

…ぐらいか。

 

まず1だが、俺は日本の自分の家に居た。

何らかの方法で家の中に入り俺を昏睡させたとして、

こんな場所まで連れてくるにはどれだけの時間がかかるだろうか。

体は健康そのものであり、衰弱等もしていない上、空腹感も無い。

飯を食ったのは意識を失う3時間程前。正確に言えば飯食って3時間で寝た。

大凡食事から空腹までの時間は起きていれば6時間、寝ていても倍は行かない。

そんな短時間でこんな場所まで連れてこられるとは思えないし、

寝ている人間に空腹感を感じさせないレベルでモノを食わすなど不可能だろう。

つまり、1の可能性は低い。

 

次に2。超能力だか魔法だか知らないが所謂ファンタジー或いは超科学な方法。

…これは例えそうだったとして、予想のしようがない。

ならば俺にそこまでして攫う価値はあるだろうか?

両親は既に他界。親戚も遠縁しか居らず、特に裕福という話も聞いていない。

自身に特殊な能力や知識の自覚は無いし、知り合い全て極普通の一般人だ。

となるとお手上げ。保留。

 

そして3。

これは要するに何らかの方法や理由で俺の記憶が欠落している可能性。

少なくとも外的損傷は見当たらないし痛みも無い以上、頭を打って記憶を失ったという事も無いだろう。

二重人格や夢遊病なども思い当たるフシは無いし、

記憶の混乱や混濁も無い以上、単純な記憶喪失とは考えづらい。

先述した超常識的な方法による記憶の喪失または書き換えだが、

これもまた予測のしようが無い。

少なくとも現実的な記憶喪失では無いはずである。

 

最後に4。

これは考える意味がない。

夢ならその内覚めるのだ。放っておいても問題ない選択肢は無視すべきである。

これは現実として話を進める。

幻覚であった場合、これもどうしようもない。

そもそも幻覚を見るような状態でここまで冷静かつまともな思考が出来るのかは疑問だが、

兎も角これだけはっきりとした幻覚を見るようならもう自分ではどうしようもない。

精神病院で投薬などの治療が行われる事を祈るしかない。

つまりこの選択肢は基本的に無視。現実に起こっている事として考えよう。

 

………長々と考えてみたが。

要するに現実的・常識的に考えられる理由・方法でここに居るとは考えられない、という事である。

ならば此処は敢えて超常現象…それこそ神隠しにでも会ったと思って考えてみよう。

可能性としては

1,タイムスリップで過去の中国へ。

2,異世界へ。

3,現代ではあるが超常的な方法による誘拐。

…ぐらいか。

どれが一番現実的にあり得るか、などとは考えまい。

非常識な事態と手段だと仮定し話を進める以上、現実性は無視して考えるべきである。

 

2と3は正直無いだろう。

異世界にここまで中国に似た文化の国が存在するのかというのもあるし、

よく似た平行世界だと言うならタイムスリップに含めてしまっていい。

現代だとして、先述のこんな土地・施設が実在するのかという疑問や、

手足を拘束されていなかった事、

ただの犯罪者がそんな能力使えたら普通に一般人にも異能者が居るだろうという事、

超常的な力を有した裏組織なんぞに狙われる理由も憶えも無い事などがある。

1の場合、何らかの理由で時を遡ったのだとすれば、周囲の状況や文化の確認で簡単に確認可能である。

 

此処までの考察をまとめると。

1,此処は中国系の城若しくは宮殿の一室である。

2,常識的な事態とは考えにくい。

3,非常識な事態だとして、最有力はタイムスリップ。次に特殊手段による誘拐。最後に異世界旅行。

 

これらを確定付けるために必要な行動は、

1,知性ある人間若しくはそれに類するモノとの接触。

2,この部屋以外の内装や街並み、文化の確認。

3,故意に此処に連れて来られたのか、それとも偶然に類するものかの確認。

 

これらを遂行するに当たっての問題は

1,言語体系を含め、マトモに意思疎通可能な存在と接触出来るかどうか。

2,この部屋から出られるかどうか。

3,正直に話しをして貰えるかどうか。

となる。

 

当面の目標は

1,現在位置・年月日の確認。

2,帰還の可能性の確認。

3,長期滞在する場合は衣食住の確保。

4,早期帰還する場合はその手段の確保。

…といった所だろう。

 

当面は諸々の問題の確認を最優先事項として動くのが適切だろう。

他人と遭遇した場合はまず友好的に接し、意思疎通を図る。

 

そんな事を考えている内に腕時計の針は30分ほど進んでいた。

それなりに高速思考には自身があったのだが、やはり混乱もあったのだろう。

 

-コンコン-

 

そんな事をつらつらと考えていた時、丁度ドアがノックされた。

誰か来たようだ。俺は日本語と簡単な英語しか話せない。

果たして会話は成り立つのだろうか…

 

「失礼します。…お目覚めでしたか」

 

…どうやら日本語は通じるようだ。

先の考察と併せて考えるに現代という線は薄いらしい。

 

「…落ち着いていらっしゃるようですね。言葉は通じておりますでしょうか」

 

「はい、こちらは問題なく認識出来ています」

 

言葉と共に首肯を返す。

入ってきた女性は青い色の髪をした侍女風の女性だ。

ネットで見かけるコスプレのようなものと違い、

自然な色合いの髪色と実用性を加味した純メイド服。

明らかに日本人の風貌では無いし、青い色の髪の人種など聞いたことが無い。

そもそも髪の色というのは色素によって染まり、

髪質による光の反射等によって別色に見えたりするモノである。

幾ら淡いとはいえ、青い髪の人間など少なくとも現代にはまず居ない。

明らかに日本人では無いにも関わらず日本語が通じている事から、単純なタイムスリップでも無いようだ。

 

「あー、グラスとウォーターはありますか?あるいは2chやニコニコでも構いません」

 

「???…申し訳ありません、ぐらす、うぉーたー、にちゃんねる、とはなんでしょうか?」

 

そう言って微笑む侍女。

ニコニコだけはそのままの意味で受け取ったらしい。

どうやら英語・横文字・スラングは通じないと思っていいようだ。擬音は通じるらしい。

比喩やことわざなどが何処まで通じるかも疑問だが、そちらは後回しでもいいだろう。

 

「ああ、申し訳ありません。私の国の言葉で、容器と水の事です。後ろ二つはお気になさらず」

 

「成る程、お水でしたか。少々お待ち下さい、直ぐにお持ちいたします」

 

そう言って女性は部屋を出たが、すぐに戻ってきた。

恐らく誰かに指示を出したのだろう。

これで外に誰か居ることははっきりした。

別に人を待機させていたぐらいだ。向こうも話があるのだろう。

そして彼女がある程度人を使える立場だという事もはっきりした。

侍女長あたりか、或いはここが城や宮殿なら文官というのも考えられる。

まずはこの人と意思疎通を図るのが先決か。

 

「有難う御座います。ではまずは、自己紹介を。◯◯・??です」

 

「いえ。私の性は賈、名は駆、字は文和と申します」

 

…っ!?

…三国志、か。…不味いな、かなりの過去だ。

嘘を付いているとも思えん。

幾ら知名度自体は主役級に劣るとはいえ、三国志の登場人物を騙るメリットが無い。

しかし賈駆は女性だったか…?いや、待てよ、そうじゃない。そうじゃなくて…

 

「私は性が◯◯、名が??です。字はありません。…つかぬ事を伺いますが、董卓という方は男性でしょうか?」

 

「…?いえ、董卓様は女性ですが」

 

…やはりか。史実と違う。

どこまでかは分からんが少なくとも董卓は女性化している。

下手をすれば著名どころは皆女性化している可能性もあるな。

そして今の会話から、恐らく董卓が存命である事、そしてそれなりの地位に居る時期である事が予想出来る。

となれば此処は恐らく漢王朝の洛陽。三国志での群雄割拠以前という事となる。

 

「黄巾党は存在しますか?諸侯連合は?」

 

「つい数日前に討伐の報告が上がったばかりです。諸侯連合、というのは…?」

 

流石に少し訝しまれた。まあこれぐらいなら記憶の整理とでも思って貰えるだろう。

…で、黄巾党討伐後か。それも諸侯連合が出来るまでの空白期間。

十常侍あたりのゴタゴタはどうなっている?

いや、そもそも董卓が女性なら史実道理の方法では上手く行かないだろう。

下手をすれば呂布や何進が女性だった可能性もある。…傾国の美男貂蝉?有りうるのか?

 

「…どうやら、少し複雑な状況のようです」

 

そう前置きして、ここまでの自身の考察を話し、

証拠として腕時計やポケットに入っていた携帯、

ベッドの脇に置いてあった鞄の中からノートパソコン等を見せた。

多少冒険ではあるが、そもそも異邦の地だ。

情報の取得を何より優先する事にする。

全く、胃が痛くなるな…

 

 

………………

 

…………

 

……

 

何とか話は終わった。

途中何度かドスを効かされたりもしたが、

概ね友好的な情報交換が出来たと言っていいだろう。

得られた情報を纏めると、

1,流星が落ちた場所に俺が居た。周りは荒れておらず、傍に居た董卓にも傷一つ無かったらしい。

2,ここは三国志の世界で間違い無いようだが、多くの有名人が女性化している。sneg。

3,市井では天の御遣いとかいう乱世を治める者の噂が広がっているらしい。恐らく俺。

4,帰る方法に心当たりは無く、仙人や妖術師でも頼るしか無いとのこと。

5,俺の持つ知識、技術等の提供次第で衣食住の用意も検討する、との事。

 

…まさか、想定していた可能性の1~3全部ごちゃ混ぜスペッシャルだったとは。

パラレルワールドの過去に特殊な方法でタイムスリップとかSF超えてもうファンタジーだな…

まあ、少なくとも三国志に関する知識は人並み以上に在るつもりだ。

三国志好きで良く読んでたからな。一番好きなのは横山光輝三国志。

高校の授業もまともに受けていたし、理数系が得意で大学でもそっちを専攻する予定だった為、

数学や物理学関係はそれなりの知識もあるし、

機械工学や農業系への知識も高校の必修過程分までは完全に覚えている。

パソコンの中には各種データも入っているし、鞄の中には教科書や参考書、ノートもある。

これらを上手く利用すれば十分彼女らの力にはなれるだろう。主に文官として。

どうせ天の御遣いとして担がれれば、戦場で前に出ることは少なくなる。

流石に自分の采配一つで人の生き死にが決まるようになれば多少怖いものもあるが…

少なくとも足を引っ張るという事は無いだろう。

後は必要な知識について教えて貰いながら協力し、衣食住の確保。

余裕があれば帰る方法も探していこう。

…正直、二度目の非常識を起こす方法なんざ見つかるとも思えん。

最悪この世界に骨を埋める覚悟をすべきだろう。

なんにせよこんな時代だ。人を殺す覚悟とやらは早々に付ける必要があるかな…

…まあ、なるようになれさ。

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

賈駆side

 

流星が落ちたら男が居た、と聞いた時は妖術でもかけられたのかと思ったが、

他ならぬ月の話だったので信用して見に行ってみれば…

どうにも胡散臭い男が一人。

顔つきは優男といった風貌で割合普通だったが、着ていたモノや持ち物がよく分からない。

取り敢えず月の意向で客室に寝かせた所、数刻して目が覚めたとの知らせが入ったため様子を見に来た。

外に見張りを置いておいたとはいえ最悪怪我ぐらいは覚悟していたのだが、

意外にも落ち着いた風でマトモに会話も出来た。

最初は記憶の整理のためか幾つかの確認をしてきたが、

途中いきなりぐらすだのうぉーたーだのと言い出し、挙句の果てには「自分の国の言葉」だという。

流石に胡散臭く感じ始めていた所、

男は複雑な状況だと前置きした上で、自分の考えを語り始めた。

 

…聞いてみた感想は、何をトチ狂った事を、だ。

馬鹿にしているのかと怒鳴りそうになったが、至極冷静に諌められたため取り敢えず最後まで聞いた。

私としてもコイツが嘘をついていないなら、時間を超えたとしか納得のしようがないのも事実。

証拠として見せられたけーたい、とかぱそこん、とか言うのは確かに現代では有り得ないシロモノだ。

 

そこまで話を聞いて私の脳裏に浮かんだのは『天の御遣い』という言葉。

流星と共に天の御遣いが現れ乱世の世を治める、という今市井で流行っている噂だ。

どこぞの有名な占い師が出した予言だそうで、

正直今までは眉唾だと思って気にも止めて居なかったのだが…

ここまで来たら信じない訳にも行かないだろう。

何より彼が持っていた異常技術の塊がそれを裏付けている。

彼も衣食住の確保のために協力を惜しまないと言ってくれたし、

ある程度とは言え未来の歴史や知識があるというのは強力な武器になる。

天の御遣いとして担ぐことも出来るし、これはとんでもない味方が出来たのかも知れない。

とりあえず詳細は後で詰めるとして、皆への紹介や各所への通達を済ませないと…

ハァ、忙しくなりそうで素直に喜べないなあ…

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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