――――― 一度見れば理解する。
――――― 理解すれば模倣する。
――――― 模倣すれば昇華する。
"一見三邪の法"。あらゆる物質・現象・技術・存在を理解し、模倣し、昇華する。
それは才能が開花したものか?―――否。
それは努力が結実したものか?―――否。
それは何者より授かったのか?―――断じて否。
それは肉体が、精神が、魂が、存在が、原初より持つと約束されたただ一つにして三つの法。
彼が持つ事が当然であり、彼が持たなければならず、彼が持たぬ事はあり得ない。
彼は―――――原初より約束されていた。
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「聖杯戦争?」
「ええ、近々行われるみたいです」
初めまして皆さんこんにちは。ライエルと申すものでありんす。
いやまあ冗談は置いといて。今俺は勤め先の同僚と共にイタリアに居ます。
彼女の名前はシエル。青い髪シスター服の美女さん。頭の両サイドを伸ばしたショートカットスタイル。
これがかなりの美人さんで、しかも眼鏡が似合う。
敬語が標準だったりカレー大好きだったり異常な戦闘力を持っていたりとちょっと特殊な人でもある。
まあ特殊さで言ったら俺が言えたことではないのだけど。
「何でまた俺が…」
「何でも聖杯に対する異端の監視と審問を行うのが目的…らしいですよ」
で、今何時かと言うと西暦2004年春某日、場所はイタリアのとある都市のストリート沿いにあるカフェ。
何でまたこんな美人の同僚と顔突き合わせてひそひそやってるかというと、
俺達の勤め先からちょこっと逝ってこい的な軽いノリで仕事が来たらしい。
一応ではあるが拒否権はあるので行かなくてもいいのだが、
権限があっても不用意に使いたくないNOと言えない日本人な俺は渋々了承する。
理由がないわけでもないのだけど、正直面倒というか絶対面倒になる予感がするというか…
「いいじゃないですか、あなたなら"英霊ごとき"に負ける事など無いでしょう?」
「いやいや、流石に伝説級のバケモノと殺り合うのは面倒過ぎるって。宝具とかどうしろと」
今回回ってきた仕事は聖杯戦争とという戦争に参加する事。
戦争といっても兵隊集めて国同士でやるわけではなく、
7人の魔術師がそれぞれ英霊(サーヴァント)と喚ばれる伝説上の人物を従者として召喚し、それらを戦わせて競うものだ。
目的は聖杯と呼ばれる万能の願望機。何でも願い事が叶うとされているが、今回のそれは伝説上のアレとは違う偽物。
とはいえ強大な力を秘めているのは事実であり、過去に呼び出された英霊も尋常ではない強者ばかり。
今回で五回目になるこの聖杯戦争だが、これまで俺達の勤め先である聖堂教会は傍観していた。
が、前回だか前々回だかにとんでも無い魔性が召喚され、そのせいで聖杯戦争を行なっていた土地にかなりの被害が出たらしい。
呼び出された英霊が聖堂教会の意に沿わない異端者の類なら始末し、聖杯がそうなるのであれば処分する。
それが仕事という事なのだが、確か聖堂教会縁の監督者が居た筈である。
ならば何故今回俺にお鉢が回ってきたのだろうか。
「一応私達も代行者ですから選ばれるのは可笑しくありません。それに今回の監督は"あの"言峰綺礼ですから…」
「あー、あー……成る程」
俺達もその代行者と呼ばれる者達の一員で、自分で言うのもなんだがトップエリートである。
代行者の中でも埋葬機関と呼ばれる部所に所属しており、埋葬機関は七人の代行者と一人の予備人員で構成されている。
で、今話にでた言峰と言うやつは以前代行者として活動していた時期があり、ほんのちょっとした知り合いである。
本人は気付いていないようだが割りと危険な思想を秘めた人物で、
その空気を敏感に察知したシエルといざこざを起こした事がある。
前回の聖杯戦争の参加者でもあり、ちょっと派手な動きをしたらしく聖堂教会から若干目をつけられている。
今回の聖杯戦争では聖堂教会と魔術協会の両方に顔が利くという事で監督役に就任するらしいのだが、
以前のいざこざで破綻者であることが一部の者に露見し、監督役就任に異を唱える人がどこぞに居るらしい。
「いや、けどアレ知ってるのは俺とシエルを除けば殆ど居ないだろ?」
「ええ、向こうも詳しいことは知らずにとりあえず批判しているみたいですね」
ま、何処にでも勢力争いや派閥争いはあるという事か。
一応聖杯と名の付くモノが関係する事柄だ。自分らの都合のいい人員を送り込んで発言力を上げたり、
あわよくば聖杯の確保と利用を…とでも思っているのかも知れない。
で、そういう奴らを黙らせるのに丁度いいのが俺、というわけだ。
どこの派閥や勢力にも属して居らず、埋葬機関第三位として相応の権限があり、これでも埋葬機関の中ではマトモな常識人だ。
場合によっては二十七祖クラスの異端者が現れる可能性も考慮したのだろう。
普段からあまりこの手の依頼とか仕事を拒否しないというのもあるんだろうな。
本当に面倒な事だ。何で神話やら伝承の英雄クラスのバケモノとガチで殺り合わにゃならんのか。
「いえ、流石に生身で英霊と戦えとは………あなたなら出来ますよね、うん」
いや、そこで頷かないで欲しいんだけど。俺も大概バケモノ化してきたなあ。
…此処100年程で。うん、不老の時点で十分バケモノか。
しかし英霊ねえ。幾ら何でもアルクェイド以上の身体能力なんて無いだろうから"パクる"意義は薄いか?
宝具ってのがどれほどか分からないけど、有用なら"パクって"もいいかも知らんね。
「コレ以上パワーアップする気ですか?アルクェイドの身体能力と直死の魔眼だけでも異常なのに」
力は一定を超えたら後は幾らあっても困らないよ。中途半端だと危ないけど。
それに直死の魔眼は色々と負担がデカい。
それ以外じゃ身体能力と技術に物言わせたパワー殺法と多少の魔術ぐらいのものだしねえ。
一応第七聖典やらゼルレッチの宝石剣やらはあるけど、生憎と魔法自体は"見れなかった"からな。
宝具とかいうのが強力だったり使い勝手がいいなら"パクる"のもいいかも。
「あなたは一体何と戦ってるんですか…」
俺には見たものを技術だろうが物質だろうが即座に理解し、
理解したものを完璧に模倣・再現し、一度使えば自分に最も合った形に昇華できる異能がある。
異能というか体質というか性質というか、まあ特殊能力だ。
アルクェイドという強力な吸血鬼の真祖の身体構造を模倣し、
シエル達代行者や今まで相対してきた連中の武器を制作し、技術や技を盗み、
遠野志貴という以前会った少年の持っていた直死の魔眼を再現した。
ここ100年で色々と手に入れ強くなり、真祖の体コピーしたおかげで不老になれたのはいい。
星との接続は流石に出来なかったので不死では無いが、代わりに吸血衝動やら破壊衝動も無い。
俺用に昇華したおかげで大部分のデメリットは無くなったのだが、流石に急所殺られたら死ぬ。
万が一が無いとは限らないので何らかの手段で誤魔化したいとは思っていたので、そういう意味では渡りに船だ。
太古の英雄や神話のバケモノなら不死性を持っている奴なんて山ほどいる。
ジークフリードだったりアキレスだったりヘラクレスだったり。
そういう奴らの能力を"パクる”事を目的にするのもいいかも知れない。
「しかし英霊ねえ。媒体使わなければ自分縁の奴が呼ばれるんだっけ」
アルクェイドとかが来てくれれば楽勝なんだけど、それならそもそも協力者として手伝ってもらえばいいか。
協力者を用意するのが駄目なんて言われてないし、それが世界最強の一角でも特に問題は無いだろう、うん。
どうせ呼ぶならそれこそ不死の奴とか便利な宝具持ってる奴がいいな。
魔術あまり使えないしキャスターあたりがいいかな。
不死なら他にも居るかも知れんし、これから手に入れる機会もあるだろう。
聖杯手に入ったら何願おう。まずは聖杯の異端確認だよな。
で、使えるようなら…聖杯の魔力ごっそり頂いちまうか?その方が使いで有りそうな気もする。
「願いとか無いんですか?」
「特になあ。金には不自由してないし、支配願望なんて無いし、女ならシエルとか居るし…」
俺の言葉に急に顔を赤くすシエル。いい加減長い付き合いなんだから慣れろよとも思うけど、
この初々しさも可愛らしいので良しとする。
でも正直願望もなあ。魔術師ちゃうから根源興味無いし、そもそも根源ぐら魔法使いから色々パクれば行けるだろう。
警戒されてるのか知らんがゼルレッチ爺さんも青子さんもあまり会えないけど。
大層な夢も無いしなあ。強いて言うなら今幸せなんでこのままがいいです。可愛いくて美人な恋人も居ることだし。
「本人目の前にして惚気ないでください…でも嬉しい」
HAHAHA、俺は幸せものダナー。
正直聖杯戦争とか面倒なんで適当に隠居してアルクも入れて3人で茶しばいてたいですちえるてんてー。
「チエル言うなっ!…ごほん、まあ分からないでもないですけどちゃんと働いて下さい」
はーい。