時間よりもだいぶ早く来てしまったため、まだ全員集まらない。絵里と2人っきりなのは嬉しいが話すことがない。いつもは絵里がつっかかってきてそれに対応するのだが、今日は何も言ってこない。さて、どうしたもんか。
絵里「なんでみんなディズ○ーに行くのかしら?」
天満「さあ?」
突然過ぎて簡素な返事しか出てこない。
うちの学校はかなりフリーダムで今回の社会科見学は6時までに帰ってこれる範囲ならどこでもいいそうだ。行った先の歴史や文化を調べて提出するだけの簡単なお仕事です。
大抵の班はネズミの国へ赴くのだろうが、そんなことしたら学校の掲示板がネズミに支配されてしまう。信者までもがねずみ算式に増えていくのか。さすがネズミ恐ろしいな。
天満「ちょっとトイレに行ってくる。」
絵里「時間には戻ってきてよ。」
ーーー
??「どこ〜?」
なんだ煩いな。トイレ前で騒ぐな。
??「海未ちゃん、ことりちゃんどこ〜?」
さっきからどこどこ煩いな。たい達なら他所でやれ駅でやるな。さて、こんなボケはほっといて迷子か?迷子と思しき女子は重そうなバッグとキャリーバッグをもっている。修学旅行にでも行くのだろう。……時間はあるけど遅れたら希のちょっかい(物理)がありそうだからな。悪いけど無視……はまずいよな。…しょうがねぇか。
天満「そこの迷子どうした?」
俺の声に反応し迷子は振り返る。迷子の子は顔立ちは整っており、人を探してる時の声のトーンから明るいとわかる。明るい性格に明るい髪の毛の色の明るい子だった。
??「いや〜みんなに置いてかれちゃって。」
クラスにいたらとても目立つであろうこんな子でもいじめられるのか。いや可愛すぎていじめられてるのか。まあ、どっちでもいいか。
天満「なんだ、いじめられてんの?」
??「そうじゃなくて、勝手にトイレに行ったら逸れてしまいまして。」
ボッチじゃないのか。ああ、アホの子か。
天満「でどこ行きたいの?」
??「え?」
天満「どこのホームに行きたいの?」
??「みんなと合流したいんですけど。」
天満「目的地が同じなら時間になれば来るだろ。そこで落ち合えばいい。」
??「おお、そっか。……でも。」
天満「?」
??「知らない人にはついて行くなってお母さんが。」
しっかり教育がされているな。お兄さん安心だよ。
天満「ああ、じゃあ頑張れ。」
??「見捨てないで!」
天満「どっちなんだよ?」
??「案内お願いします。」
上目遣いでお願いされると断れん。まあ、元から助けるつもりでいたけど。どうも照れくさくなり軽く頭を掻き迷子の子に目を向けないように了解した。
助けることになったら重そうに持っていたバッグをこちらに渡してくる。もう荷物持ちですか。初対面なんですけどね。
??「お兄さん名前は?」
天満「交野天満。」
??「天満か。うん、天満くんね。覚えたよ。」
天満「別に覚える必要ないだろ。どうせ新幹線の改札まで送ったら終わりなんだから。」
??「いいの。私が覚えたいと思ったの。」
なんで思わせぶりな発言すんだよ。これだからカーストの高い女子は恐ろしいんだ。もう騙されんぞ!
穂乃果「高坂穂乃果。」
天満「は?」
穂乃果「私はの名前だよ。」
天満「俺は言われても覚えないからな。」
口ではこう言ってるがきっとこの名前は忘れないだろう。それでいつか会った時に名前を呼んだら
「初対面ですよね?なんで名前を知ってるんですか?」
って丁寧に返事されて変人扱いされるのが目に見えてる。ああ、怖い。
穂乃果「それでもいいよ。天満くんはなんで東京駅にいるの?」
天満「東京駅が社会科見学の集合場所なんだよ。」
穂乃果「穂乃果は修学旅行なんだ!」
言われなくても大体わかる時期としては遅いが東京駅に来る学生の大半がそうであろう。
なのに学生には優しくない作りをしている。こんな駅普通に迷うから。だからへんなゲームが出るんだよ。それは新宿か。
天満「そうか。」
穂乃果「その制服って?」
天満「音ノ木坂のだけど、どうかした?」
穂乃果「えっ!天満くん音ノ木坂に通ってるの?わたしも来年から通うんだ!」
通うこと決まってんの?こいつ受かるかな?
天満「そうか、頑張れよ。ほら、着いたぞ。」
穂乃果「あっ!海未ちゃ〜ん、ことりちゃ〜ん!」
2人はこちらに気づき心配そうな顔をしてこちらに近づいてくる。
??「穂乃果!どこに行っていたのですか!私たちがどれだけ心配したことか。」
??「まあまあ海未ちゃん落ち着いて。穂乃果ちゃんが無事に着いたから、ね。」
海未「まあ、そうですね。穂乃果こちらの方は?」
穂乃果「天満くん!音ノ木坂に通ってるんだよ!」
人の紹介下手すぎんだろ。こっちも時間ないし適当に済ませよう。
天満「交野天満です。高坂さんが迷子のようだったんで届けただけですので、この辺で。」
穂乃果「ちょっと待って。はい、これあげる。」
渡されたのは綺麗に折り畳まれた紙だった。この手の紙には悪口しか書いてないと相場が決まってる。
天満「なにこれ?」
穂乃果「いいから。天満くんバイバ〜イ。」
天満「おう、もう迷うなよ。」
一通り終えたかな。この紙なに?
中を見てみるとメールアドレスが書いてあった。連絡しろってことか?やっぱりお兄さん心配だよ。おっと、時間を確認しなくては。2分前か。こりゃひどい勢いで怒られそうだ。
絵里「遅れた理由を聞きましょうか?」
天満「迷子の迷子の中学生を新幹線の改札まで送ってました。」
絵里「まあ、ロリコンの天満だから仕方ないわね。」
天満「いや、ロリコンじゃねぇし。しかも1歳年下だからロリコンの定義にも合わない。」
絵里「人間の観点で見れば14歳なんて幼女と変わらないわ。」
天満「そんなこと言ったらガラパゴスゾウガメの観点から見たら人間全員幼い年だろ。よって全員が全員ロリコンかショタコンになる。」
絵里「話が飛び過ぎよ。それぐらいわかったら?」
希「まあまあ。落ち着いて。はよ川越に行こ!」
絵里「まあ、希がそう言うならまあいいわ。」
希言葉で絵里とにこが動き出す。それに続きおれも足を進める。と希が歩みを緩めて俺の隣へ来る。
希「天っちはやっぱり優しいな。」
天満「それは気のせいだ。たまたまだよ。」
希「天っちのたまたまはよく起こるんやな。」
天満「……それも気のせいだ。」
希「それも天っちぽくていいんやけど。」
意地悪に笑いながら二人の元へ走って行った。
ーーー
川越は小江戸と言われており昔の街並みが残っているところまである。なかなかに有名なスポットだ。
この街では着物で練り歩くことを許してくれるお店があるらしくそれに惹かれてここにしたらしい。で俺も着替えるはずだったのだが安いものがちょうどなくワンランク上のものしかなかったので諦めて制服で待機してるわけだ。長い間待っているせいか鳩のムニンとフギンとも仲良くなってしまった。それはカラスだっけ。
天満「お前は家族持ちか頑張れよ。おっ、お前は独り身か。頑張れよ早く見つけないと先生みたいになるぞ。」
鳩と戯れてると後ろ呆れた声が飛んでくる。
にこ「あんた何やってんのよ。」
薄い桜色の浴衣を着てきたのはにこだった。なぜか帯あたりに違和感を感じる。
天満「お前帯のあたりなんか変じゃね?」
にこ「そ、そんなことないわよ。気のせいよ気のせい。」
明らかに動揺している。追求しても良かったが。後ろから希がきたのでやめておこう。
希「天っちどう?」
希は髪の毛の色と同系色の紫の浴衣だった。
天満「ど、どうと聞かれても。」
希「気が利かないな。こう聞かれたら嘘でも似合ってるとか言うもんやで。」
正直かなり似合ってた。だが口に出して肯定してしまえば恥ずかしくなり希の方を見れなくなってしまいそうだった。
天満「悪いな。気が利かないもんで。」
絵里「希、本当にこれで合ってる?」
イメージカラーとしてはぴったしだが、季節感を間違えているのではないかと思うほど清涼感に溢れた水色の浴衣。着ることがないからか間違って着てないかと首を左右する姿はいつものクールな絵里とは違い可愛さが溢れてる。
希「だから、大丈夫やって。さて、気の使い方を覚えた天満くん。この先どうするか分かる?」
やはり読めない。希と話してる時はいつもそうだ。何を思ってちょっかいを出しているのかがわからない。大抵ちょっかいを出す意味は面白さを求めてやる。だが希の場合はどこか違う気がする。どことまではわからないが他の人のからかい方とは何かが違う。まあ、今は余計な詮索はよしておこう。今は絵里をどう褒めるかだ。
天満「あれだ。なんつうかその似合ってると思う。」
絵里「当たり前でしょ。私なんだから。」
と自信ありげなことを言いつつもどこか表情は嬉しそうだった。
3人が並んだところでようやくにこの帯の皺の意味がわかった。きっときつく締めて胸を出したかったんだろう。浴衣はそれなりに体のラインを見せるらしい。出なくて残念だな。でも大丈夫そういう人もいっぱいいるドン。もちろん俺も嫌いじゃない。昔好きだった武田さんもあんまりなかった気がする。
希「みんな揃ったことやし、回ろっか。」
もちろん俺は出発前に鳩たちに別れを告げといた。
ーーー
古き町並みが残っているところは嫌いではない。昔の情緒ある建物など見ていると昔の生活の不便さを感じ同情してしまう。だが機能性で言えば今よりもいいかもしれない。騒音も少ないので薄めで風を通すの壁。穴を開けたくなるような障子。うん二個目はいらなかったな。
こう言った趣のあるところは新聞にし易いよってその後の課題も容易というわけだ。
希「うちと絵里ちはお土産見てくるけど天っちは来る?」
天満「俺はいいや。東京でサブレ買うから。」
さて、待ってる間は本でも読んでるか。そう思い手頃なベンチに腰をかける。古いからといって壊れることはなさそうだ。本を読み始めるとどこで買ったか知らないがソフトクリームを持ったにこがこちらを睨んでる。
天満「こっち睨んで、何か用?」
にこ「特に座りたいと思っただけよ。」
用あんじゃねえか。こう書くと「よう!アンじやねぇか」って見える不思議。
天満「そうか。じゃあどうぞ。」
にこ「あんたは座らないの?」
天満「本を読むくらいなら立ってでもできる。」
にこ「ああ、そう。…ねぇ、あんた。希のことどう思ってんの?」
天満「なんで?」
にこ「希があんな態度取るから気になっただけよ。」
希の態度変だったか?いつもと様子が違った感じはなかったんだが。
天満「いつもあんな感じだろ。」
にこ「希があんな態度を取るのはここにいるメンバーぐらいよ。」
天満「じゃあいつもはもっと違うのか?」
にこ「いつもというか他の子と話してる時とかね。」
天満「その時はどんな感じなんだ?」
にこ「かなり無に近いんじゃない。知らないけど。」
天満「ふーん。」
にこ「興味なさそうね。」
天満「その姿を見たことないからな。」
興味はあった。だけどその姿を見ていいものなのか、俺らにそういう姿を見せないのは何か理由があるのだろう。もし聞いて欲しいなら希ならもっと露骨にやるだろう。だがそうしない。ということは聞いて欲しくないことなのかもしれない。なら聞く必要はないだろう。
ーーー
絵里「今から各自自由行動ね。15分後にまたここで集合ね。」
さて、本を読むか。俺はお土産やには行かない。親から「川越のお土産いらないから東京駅でサブレ買ってきて」と言われている。さすが気が利かない子の親。蛙の子は蛙と言うべきか、それとも瓜の蔓に茄子はならぬと言うべきか。どっちでもいいな。
希「隣ええ?」
天満「構わへんで。」
希「うーん20点かな。発音がね。」
天満「厳しい採点だ。でいいのお土産?」
希「さっきのところで買ったからな。それより、こういうイベントの時がええんやないの?」
天満「何がだよ?」
希「とぼけなくてもええんよ。絵里ちに告らへんの?」
やっぱりバレていたか。なら、いつものちょっかいも面白がってやっているのだろうか?自分の中で納得できなかったがそれは押し込むことにした。
天満「気付いてたんだ。」
希「そりゃあ、あれだけ熱烈な視線を送ってるのに気づかないなんて絵里ちくらいのもんやで。」
天満「いや、気付いててあえて知らないふりしてるのかもしれないぞ。」
希「それはないと思うで。もし知ってるとしたら絵里ちなら確実にその人に一言申しに行くと思うけどなぁ。」
天満「ああ、その通りだな。」
こんな会話をしてる時さっきのにこの言葉がふと頭をよぎる。
天満「ねえ、東條さん。」
希「天っち東條さんはやめてや。うちのことは希でええよ。」
だから勘違いするからそういうのはやめて欲しい。まあ、呼び方を変えないと先に進まなそうなので致し方なく名前で呼ぶことにした。か、勘違いしないでよ、べ別にそういうのじゃないんだからね!
天満「じゃあ、の、希。」
やっぱり女子を名前で呼ぶのは恥ずかしく顔をまっすぐ見ることができないので横目でチラリと見ると希は顔を真っ赤にして両手で抑えて何か呟いている。
やだ!なにこの反応すごく可愛い!
天満「な、なんで希が顔を赤くしてんだよ。」
希「やっぱ、恥ずかしいな///そう呼ばれんの。」
天満「なら、やめるか。互いのために。」
希「いや!名前で呼んで!もし、天っちがい、嫌なら別にいいんやけど。」
ドキッとした。いつもみんなのことを抱擁する母親の様な雰囲気の希が突然子供の様な反応をした。これがギャップ萌えなのか。
天満「ま、まあ、希がいいなら別に構わないけど。」
希「そ、そう。なら、これからも名前で呼んで。」
「……」
この間どうしよう。話しかけていいのかね?そうだ。にこの言葉の意味を確かめよう。口を開こうとすると先に希の方から口を開いた。
希「そ、そうや!ほら、告らんと。」
天満「いや、告んないから。」
希「なんで⁉︎」
天満「失敗するからに決まってんだろ。」
希「いや、わからんで」
希言葉を潰すように俺は続ける。
天満「いっつも眺めてるから大体わかるよ。それにもうイカロスみたくなりたくないからな。」
希「イカロスってあの?」
天満「ああ、天に憧れて蝋でできた翼で飛び、その翼を失い地に堕ちたイカロスだよ。」
希「でも、やってみたら成功するかもしれよ。」
天満「励ましは嬉しいけど時間はまだあるし気長に行くよ。」
希「そ、そうやね。焦っても良くないしな。」
その言葉は俺に言っているのか、それとも他の誰か、希自身に言っているのかはわからなかった。だけどその言葉には何か深みがあった。
天満「そうするよ。さあ、行うぜあいつらが待ってるし。」
希「うん。」
もう俺は間違えない。イカロスは天に憧れてそして堕ちた。人々はそれを愚行と呼ぶだろう。もし、イカロスが天にたどり着くことができたのなら、それは勇敢な行為と呼ばれる。この通り成功すればよく言われ、失敗すれば皆から非難を受ける。それは別にイカロスに限ったことではない。今の世の中にも言えることだろう。例えば原子力発電。これはできた時低エネルギーで効率よく電気を作ることのできる夢の様な発明だった。しかし大地震によって放射線が漏れ出した。そのことで原子力発電は最悪の発明とまで言われた。この様に成功こそが全て、失敗なんて持ってのほかだ。
さらに日本にはこんな言葉がまでもある「高嶺の花」この言葉は高嶺に咲いている花は手にすることはできない。だがこれは高嶺に咲いている花をとろうとすれば痛い目を見るという戒めなのだろう。それ以前に俺には飛ぶための翼すらもうないのだ。
だからもう失敗はしない。天に憧れようと地で空を見上げよう。どんなに綺麗な花が咲いていようと手をポッケに突っ込んどこう。
もう俺の行為を愚行とは呼ばせない。だから俺は高嶺の花を見続ける。
すごく息抜きが捗りますね。なぜでしょう?これからも頑張って息を抜いていきたいと思います。どうやって頑張るんでしょうね?
次回「恋は優しい嘘を呼ぶ」