絢瀬絵里に恋をする   作:パステルカラー

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間隔が空いてしまってすみません。それと少し長いかもです。では、始まります。


波乱がやってくる

波乱はやってくる。

 

天満「うん、今年も空気が澄んでる。そして寒い。」

 

吐いた息が白くなるのを見てそう思った。不思議なものである。白い息が上がればどれだけ重装備をしてても寒く感じてしまう。なるほどこれがスノーマジックファンタジーなのか。今日は雪降ってねぇや。恋はしてるけど。

師走という師匠さえも走り回るという忙しい月を終え睦月になる。この月が忙しくないのかと聞かれれば忙しいわけだが、12月に比べればまだゆるかやな方というだけである。それなのに寒さに関してはより厳しくなるというなにこの反比例?そしてこんな寒さの中マラソンやるとかなにそれイジメ?

そんなことを考えるとより学校に行きたくなくなる。まあ、もう学校の目の前なんだがな。

 

 

ーーー

冬休みも開けクラスではお年玉をいくらもらったか、とかどうでもいい話ばかりする。もしそんな話しをして自分のお年玉が増えるのならどんな恥をかこうと話に行っただろう。そんなもんはないから行かないが。

冬休みに会わなかった連中が大声で話しているのでうるさいったらありゃしない。こっちは昨日大晦日の特番を見るのに忙しかったんだ。静かにしてほしい。そろそろうちの学校でも騒いでいけない365日とかやればいいのに。

 

そう思いつついつも通り顔をうっぷして寝ていると左斜め前の席が引かれる。

 

絵里「久しぶりね。天満。」

 

なんだよ。そのバトル漫画特有の倒置法。漫画だとしたら、絵里が修行から帰ってきてめっちゃパワーアップしてたりすんのかね。これ以上に毒舌とかそれ相当だよ。

 

天満「おお、絵里。久しぶり。」

絵里「これからまた天満の顔を見なくちゃいけないと思うと辛いわ。」

 

あって早々にディスるのやめてくれません。

 

天満「絵里、日本にはこういう言葉がある。美女は見てたら飽きるがブスは見ていても飽きない。これを男に置き換えるとイケメンとブサイクになる。絵里が飽きて辛いのというのは逆説的に俺をイケメンと示唆している。よって俺はイケメン。証明完了。」

絵里「なにその破綻した論理は。」

天満「ふっ、俺の完璧な理論に言い返すこともできないか。」

絵里「違うわよ、呆れて物も言えなかっただけよ。まず天満の顔を見て辛いと思ったのはあまりに醜かったからで飽きたからではないわ。その時点で破綻してるのよ。」

天満「生徒会長これってイジメに入りますか?」

絵里「社会勉強よ諦めなさい。」

 

そう言われ話が終わる。こんなこと言い合っているがこんなのはただのおしゃべりにすぎない。周りから見たら大丈夫かと疑われるが大丈夫だ、問題ない。

 

希「2人ともおはようさん!」

 

そう言ってやってきたのは希だ。ついでに言うと俺の席の後ろである。

 

絵里「おはよう。」

天満「…おはよう。」

希「天っちどうかしたん?」

天満「どうもしてねぇよ。」

 

こう聞いてくるということは向こうも意識しているのだろう。なら、他に聞く機会があるだろうその頃まで待つとしよう。

 

絵里「今日のお昼どうする?」

 

今日は生徒会のメンバーで昼飯を食いに行くことになってる。絵里はそれが楽しみなんだろう。

 

希「始業式前の休み時間にでも決めよっか。」

絵里「そうね。」

天満「了解。」

 

そろそろHRが始まるしトイレにでも行ってこよう。

 

 

ーーー

 

 

蒲田「突然だが転校生がうちのクラスにくる。」

 

本当に突然ね。それにだいたい転校生ってのは波乱を呼ぶ。問題起こしたり、存在が問題になったりする。なので近づかないのが吉。これ、豆な。

 

蒲田「ほら、入りたまえ。」

 

入ってきたのは絵里と同じ金髪を持ち爽やかイケメンというのにふさわしいイケメンが入ってきた。

 

拓也「ロシアから引っ越して来ました。清瀬拓也です。見た目ロシア人のクウォーターですが、日本語もこの通りペラペラなので気軽に話しかけてください。」

 

最後ににっこりとはにかみ一通り自己紹介が済むと黄色い歓声が沸く。かっこいいだ、イケメンだとか。それほぼ同意義だからな。そんなことを考えていると絵里が小刻みに揺れているのがわかる。

 

絵里「タク⁉︎」

 

ん?タクどっかで聞いた名前だな。どこだっけ、…思い出した!小学校同じクラスだった魚河岸琢磨くんだ!確かあだ名が魚河岸って長くて、ガシ.餓死って呼ばれてたな。それで親が虐待の容疑で呼び出し食らってたな。そのあとガシからガッシーにあだ名が変わったけ。 そのタク?違うな。ガッシーこと魚河岸琢磨くんはもっとブサイクだったな。それに体もミイラみたいにヒョロヒョロだったはず、あれ?本当に虐待を受けてたの?

 

拓也「絵里!」

 

清瀬は絵里に元へ走り寄りそのままハグをした。

あれ?なにこれどっかで見たぞ?マジコイだっけ、それともウソコイだっけ、ニセモノの恋だっけ。まあ、ともかく。何やってんのだ!

 

絵里「ちょっと!タク離れなさいよ!」

 

絵里が顔を真っ赤にして反抗する。だが、清瀬の方が力が強いせいかふりほどけない。そんで、こっちに助けてという顔をしてくる。

おいおい、俺にそれ頼む?君の知り合いでしょ。みたいな顔をしようもんなら睨まれるんだろうな。しょうがない助けてやりますよ。

 

天満「えっと?ガッシーじゃなくて、転校生の人。」

拓也「ん?ガッシーって誰?俺、清瀬拓也ね。」

天満「そうそう。じゃあ…清瀬くん?ここ日本だから、外国みたいに挨拶でハグすると変な目で見られるから気をつけたほうがいいよ。」

 

なんで俺と絵里の再会に口出してくんの?みたいな顔をされたが引き下がったらもっとひどい目にあったと思うのでその顔を無視しといた。

 

拓也「ふーん。そうなの絵里?」

絵里「ええ、天満の言う通りよ。それに彼、人によく嫌われるからそういったことは詳しいわ。彼の言う通りにいたほうがいいわ。」

 

せっかく助け船を出してあげたのになんでその船から俺を突き落とすんですか?何マントン号事件だよ、まったく。いや、違うか。

 

拓也「まあ、絵里が言うなら。」

 

そう言って絵里から手を離す。そうすると何かを思いついたのか手を叩きこちらに向き直る。

 

拓也「そうだ!ねえ、天満。学校案内天満がしてくれよ!」

天満「いや、絵里に案内してもらえよ。」

 

絶対にごめんだ。言っちゃ悪いが清瀬の第一印象は最悪だ。そんなやつと会話が持つ気がしない。それになんとなく嫌な予感がするし。

 

蒲田「そうだな。そうしてもらおう。交野、君が清瀬の案内をしてくれ給え。」

 

冗談じゃない!何が何でもその役から降ろさせてもらう。

 

天満「でも、彼には知り合いがいますし。それに俺なんかじゃ役不足ですし、それに」

蒲田「上司命令だ。」

 

これを言われちゃ反論のしょうがない。仕事ではどんなに辛いことでやりたくなくても「上からの命令だから。」と言われてしまえば逆らうことはできない。まだ学生なのになんでこんな悲しいこと知ってるのかな。仕事したくないな。

大きくため息をつき了解と呟いた。

 

ーーー

天満「ここが音楽室。」

拓也「ヘェ〜。」

 

こいつ聞いてんのかね?お前が俺に頼まなければ今日放課後に行く店の意見出しができたのに。そんな大事な時間を割いてやってんだぞ。ちっとは興味持てよ。

 

天満「聞いてる?」

拓也「いや。あとで絵里に聞くからいい。」

 

じゃあなんで俺を誘ったわけ?もしかして俺に興味あんの?でも、俺は女の子が好きなんでちょっと。

 

拓也「ねえ、誰も寄り付かないところってある?」

 

「俺の周り。」って言おうとしたけどこいつにボッチアピールとか誰得だよ。というかなんでそんなこと聞くんだよ。やっぱこいつゲイなのか。

 

天満「まあ、あるけど。」

拓也「じゃあ、案内して。」

 

 

ーーー

天満「ここ。」

 

そこは俺がいつも昼飯を食べている階段のすぐそばで、昼は俺がいるため寄り付かず、放課後はたまにバレー部とバスケ部の部員が通るくらいだ。ここ以上に静かな場所はこの学校にはないだろう。

 

拓也「うん。ここならいいや誰にも見られない。」

天満「絵里に告白でもするつもりか?」

拓也「それは自分で場所を選ぶよ。今はこっち。」

 

そう言いこちらに向かい歩みを早めてくる。

 

拓也「お前さ、絵里の弱み握ってんだろ。」

 

さっきまでの明るめの声とは打って変わり低く敵意のこもった声を出す。

どこをどう見たらそうなるのだろうか。何か誤解をしているのであるのなら早めに解いておこう。

 

天満「いや、全く。」

拓也「じゃあ、なんでお前みたいな、陰キャラで、根暗で、人面魚みたいな顔のやつが絵里と喋ってんだよ。」

 

なんでこんなに酷い言われをされなきゃいけないんだ。そういうことを言われ慣れていないやつならいじめ扱いされるぞ。あれっ、目から汗が出てきそう。

 

天満「同じ生徒会メンバーなんだよ。」

拓也「……そう。案内はもういいや、あとは絵里に聞くよ。じゃあね。」

 

天満「なんだあいつ。」

 

率直な感想だ。何か考えがあるのか、それともたんに俺が嫌いなのか。後者だとしたら俺の嫌われ性能半端じゃないな。

チャイムまで時間もないし駆け足で教室に戻っていく。

 

 

ーーー

ようやく始業式が終わり放課後になる。いつもなら生徒会室でお茶を飲みながらふわふわな時間を過ごすのだが、今日は昼飯を食べに行くことになっているためマシュマロ食べたりはしない。

 

 

天満「で、どこに行くの?」

絵里「今から決めるのよ。」

天満「さっきの休み時間じゃなかったの?」

希「天っちの意見も取り入れんとな。」

 

希めっちゃいい子やん。大抵俺の案を否決してくるけど、めっちゃいい子やん。

 

天満「そうか、悪い。」

絵里「そう思うなら早く案出してちょうだい。」

天満「お、おう。」

 

ちょっといい感じなところだったのに邪魔しないでください。

 

天満「そうだな。前見つけたラーメンとか。」

希「うちは焼肉が食べたいんやけど。」

 

おいおい、昼間っから焼肉とか、人間火力発電所にでもなりに行くつもりか。

 

絵里「私はラーメンかしら。」

天満「珍しいな。俺の意見に賛同なんて。」

絵里「たまたまよ。」

希「いや、焼肉にしよう。」

天満「残念だな、希。少数派の意見は尊重されるが決定はされないんだ。」

希「うぅぅ、焼肉〜。」

 

ということで行き先も決まったので皆おもむろに帰り支度をする。それを止めるように声がする。

 

拓也「なあ、絵里。久しぶりに一緒にメシでも食わない?」

絵里「お誘いは嬉しいけど先客がいるから。」

希「無理せんといてもいいんよ?」

絵里「無理はしてないわ。それに晩ご飯は一緒に食べるだろうし。そういうことだから、タクごめんね。」

 

ふう、よかったぜこれで「じゃあ、四人で食べよう」とかいうことになったら豚骨スープの中に俺の脂汗まで入るところだった。そんなにギタギタ好きじゃないんで。

 

希「なら、四人で食べれればいいやん。」

天満「ちょっと待とう。」

希「待たへんよ。」

絵里「私は構わないけど。」

拓也「なら決定だな。」

 

なんで君が決定してるの?図々しいのにもほどがあるよ。ここが法廷なら異議あり!って答えてるところだよ。こんな奴と行くなんて絶対勘弁だ。何かしら理由をつけてなしにしよう。四人になると席が取れなくなる。でも、テーブルに通されるのが目に見えてるし。出てくるのが遅くなる。きっとさして大差ないし。外国人はラーメンがすすれない。それは絵里もか。テーブルならボッチにならない。あれ、いいところを探してない俺。

 

天満「まあ、お前らがいいならいいよ。」

絵里「そう。じゃあ今日は四人で行きましょうか。」

 

まあ、飯の間の辛抱だ。どっかの誰かが飯を食うときは自由じゃなくちゃいけないって言ってたんだけどなぁ〜。まあ、さっきも言った通り少数派の意見は尊重はされるが決定はされない。よって俺があがいたところで無意味。俺の存在ってちっぽけね。

 

 

ーーー

ラーメン屋まではそう遠くはないが近くもない。まあ、だべりながら行くのだろう。そこは問題ない。問題はそのだべる相手がいないことだ。絵里とあいつはだべるだろ。それに希はそれに乗っかるだろ。俺は一人だろ。蒲焼きさんは太郎。ふう、……なんかバカみたい。

と思ってもこの空気に耐えられないのか足がおもむろに早くなる。それを制止するかのように絵里が隣を歩く。

 

絵里「少し早くない?」

天満「あれだ、テーブル席が取れなかったら困るだろ。」

絵里「なんかごめんね。」

天満「何がだよ。」

絵里「タクが来るのあんまりよく思ってなかったでしょ。」

 

心を見透されていたのか、それとも俺の思考が読めるほどに俺のこと好きなの?

 

天満「なんで分かったの?」

絵里「顔に出てたわよ。」

 

あーあそっちですか。顔ですか、顔ですよね。知ってました。

 

絵里「あとは昔の名残ね。」

天満「は?」

絵里「ほら、私って可愛いでしょ。」

 

この話の流れで突然自分の自慢話する?この子本当に賢いのかしら。

 

絵里「だから近づく男たちが多かったの。それの相手を全部タクがやっていたからタク男の友達作るのが苦手なのよ。それでもしかしたら天満にもそういう対応してるのかなって思ったわけよ。」

天満「なにそれ下僕?」

絵里「違うわよ。タクが自分からやり出したことなの、昔の私は今ほど気が強くなかったから。」

 

どこか懐かしむような顔をして空を見上げた。昔の絵里。俺の全く知らないことであり、清瀬や家族とでしか共有できない過去。でも、人を好きになるということはそういうことをひっくるめて付き合うということだ。だから、少しは清瀬と仲良くしなくてはいけない。

 

天満「昔のことなんて知らんけど、そういうことね。」

絵里「やっぱりやられたのね。」

天満「まあな。でもさして気にしてねえよ。気にするほどのことでもないし。」

絵里「そう、ありがとう。」

 

この後も関わっていくことになるだろうからどんな奴かを知っとくべきか。それに暇つぶしにもちょうどいいしあいつのことを聞いとくか。べ、別にあいつのことが気になるわけじゃないんだからね!絵里と話ができるから聞くだけなんだからね!勘違いしないでよね!

 

天満「あいつってどんな奴なの?」

絵里「そうね、ちょっと自己中心的で、いつも私を引っ張ってくれた。それと、写真を撮られるのが嫌いで一緒に映ってるのなんて片手で足りるくらいしかないわ。あと、味は濃い目が好きね。」

天満「そこまできいてねぇよ。」

絵里「まあ、いいじゃない。」

 

絵里はどこか楽しげに話してくる。昔を思い出しているのか、それとも清瀬のことを話せるのが嬉しいのか。後者ならイラっときますね。

でも意外だ。確かに自己中心的な考えの持ち主かもしれない。だが人を引っ張るイメージを持たなかった。勘が外れたのかね。まあ、良い感じに時間も潰れたのでよしとしよう。

 

ーーー

『ラーメン』

男子高校生やサラリーマン、はたまたOLまでを虜にする悪魔的なジャンクフード。味のバリエーションも豊富でトッピングまでつければ無限の可能性を秘めた俺のソウルフード。自分に合った味を作り上げるのが醍醐味でもある。ラーメンについて話せばきりがない、とにかく言えるのは上手いということ。

 

希「うちはあっさりかな。」

 

そう言い希はあっさりと書かれたボタンを押す。無論俺はこってりだ。それにトッピングでチャーシューでも付けようか。

 

絵里「私もあっさりかしら。」

拓也「なら俺も。」

絵里「あら、拓也が薄味なんて珍しいわね。」

拓也「あっ、ああ。たまにはいいかなって思ってな。」

 

俺が押したからみんなあっさりにしたの?陰湿なイジメですね。

 

店員「悪いね今テーブル空いてないからカウンターでいい?」

 

俺的にはラーメンはカウンターで食うもんなのだがどうするかをジェスチャーすると満場一致でカウンターになった。

 

ラーメンが来るまでは皆バラバラに会話したりメニューを読んだりして待っていた。

 

店員「あっさり3つにこってり一つお待たせ!」

 

明らかにスープの色が違うラーメンに手を伸ばし箸を取り、合掌をし麺に箸をつける。

 

ここは俺がオススメした店だ。みんなの反応が気になりチラッと横目をやると、髪を耳にかけ蓮華に小さなラーメンを作り、ふうふうと息を当て冷ましたラーメンを口につけようとしている絵里と目が合う。

 

絵里「何よ?」

天満「いや、なんかラーメン食ってる姿も様になんだな。」

 

口から感想が漏れていた。気付いた頃には言い終わっており、絵里はきょとんとした顔でこっちを見ていた。

 

絵里「何よ突然。そんなの当たり前でしょ。」

 

と言いつつもどこか満足げである。

こいつ素直じゃねぇな。

 

希「うちは?」

天満「そうだな。ザ日本人って食い方だな。」

希「それって褒めてる?」

天満「ああ、褒めてる褒めてる。」

希「うわ〜すごい雑な言い方やな。もういいもん、天っちチャーシューもらうから。」

天満「ちょっと待てよ!俺のチャーシューメンがただのラーメンになるだろ。」

希「このチャーシュー美味しいなぁ〜。」

天満「お前、」

 

一度口に入れたチャーシューを返してもらうわけにもいかないので仕方なく自分のラーメンをすすることにする。はあ、チャーシューが。

 

 

ーーー

絵里「うるさいわねここ。」

 

汗が滲み出てくるほどの暖房と大音量の音楽が館内を包んでいる。あるところではメダルがじゃらじゃらと音を立てており、一方では音ゲーの機体をすごい勢いで叩いている。ここはゲーセンである。なぜここにいるかというと、希がラーメンを食べ終わった後にゲーセンに行こうと言い出し今に至る。

 

天満「で、なにすんの?」

希「プリクラかな。」

天満「ああ、あの偽りの証明写真機か。」

絵里「何よそれ。」

天満「いや、あれを自分の証明写真かのようにプロフィール写真にしてる奴いるだろ。でも、あの写真って元の8割増しくらいになってるだろ。そんで、その写真に引っかかり、軽く好きになっちゃって、実際の人を見たときのがっかり具合は異常。ソースは俺。」

希「天っちのどうでもいい失恋話はいいとして早よ撮ろ!」

絵里「でも、タク」

拓也「……早く撮ろうか。」

 

あれ?こいつ写真撮られるの苦手じゃないの?

 

 

ーーー

うーむ、やっぱり顔が笑ってないんだよな。

プリクラの写真を見てそう思った。みな笑顔なのに俺の顔は仏頂面だった。

 

絵里「なんで天満は仏頂面なのよ。」

天満「俺は誰かと違って作り笑顔が苦手なんだよ。」

絵里「……タクのことね。作り笑顔って気づいてたんだ。」

天満「伊達に昔特技が人間観察なんて言ってないぜ。」

 

顔は笑っていた。だが目の奥が全く俺と変わらないかった。それどころか俺より腐った目をしていた。無理してプリクラを撮ったのだろう。嫌なら嫌と言えばいいのに。

 

絵里「かなり痛いわね。」

天満「昔はな。」

絵里「今は違うアピールなんてやめてよ。今もでしょ。」

天満「微笑みながら言うのやめてくださる?」

希「あれ、清瀬くんは?」

絵里「きっとトイレね。昔からそういう癖があったから。」

天満「はあ〜、面倒くせえな。先帰っていい?」

希「みんなが揃うまで帰らせへんよ。それとこれ渡してきて。」

 

希から四分の一にカットされたプリクラを渡された。

 

トイレに入ると鏡の前で顔を洗っている清瀬がいた。勢いよく顔を洗い、こっちにまで水が飛んできた。それは自分の仮面を取るために洗っているのか、それともげっそりした顔を洗い流そうとしているのか、俺にはどちらかはわからない。

 

天満「おい、清瀬。早く帰りたいから早く出てきてくんね。」

 

俺の声に反応するが顔を洗う手を止めず合間合間に返事をしてくる。

 

拓也「勝手に帰ればいいだろう。」

天満「それができないんだよ。」

拓也「絵里か。」

 

まあ、希なんだがめんどくさくなりそうだし適当に返事しとくか。

 

天満「まあな。」

拓也「すぐには出れそうにないからちょっと待ってくれって伝えとけ。」

 

なんでいちいちカンに触る言い方するのかね。

 

天満「そんな状態になるのに、なんでプリクラ撮ったんだよ?」

拓也「あそこで断ったら空気悪くするだろ。」

 

ん?何か変だな。絵里の話を聞く限り自己中って話だったんだけど。

 

天満「そんなの断ったくらいで空気が悪くなったなんて感じるような奴らじゃねぇよ。」

拓也「いいから早くあっち行け。」

天満「はいはい。じゃあ、これ置いとくから。あと、空気を悪くしたくないならもっと笑ったほうがいいぞ。」

 

顔だけを見たら人に言えた義理ではないか。

 

 

ーーー

希「じゃあ、ここでうちと天っちはこっちから帰るから。」

天満「いや、何言ってんの?俺の家もっとあっち側だし。」

希「いいから早く!」

 

そう言い腕が外れるほどに強く引っ張て行く。希さん、俺人形じゃないからそんな腕ぷらぷらしないのだからもう少し優しく運んで。

 

天満「なんで、俺まで一緒なんだよ。」

希「それは後で教えてあげるから、公園行くよ!」

 

希は先ほどのように腕を外れるぐらい強く引っ張り連れ回す。ああ、腕が、腕がぁぁ。

 

 

ーーー

腕が引きちぎられるほど強く引っ張られて来たのは先ほどの別れた地点から少しのところにある公園だった。

 

天満「なんでこんなところに連れてきたんだ?」

希「もう少しでくるよ。」

 

少し経つと絵里と清瀬がやって来た。

あいつらあのまま帰ったんじゃなかったんだ。というより希はなんでこれを知ってるわけ?

 

希「少し移動するよ。」

 

先ほどの隠れ場所より少し2人に近い位置に隠れ耳を澄ませ二人の会話を盗み聞きする。

 

拓也「こう二人でいると昔のことを思い出すよな。」

絵里「ええ、そうね。」

拓也「よく砂場に城を作ったけ。」

絵里「ええ。」

拓也「亜里沙と三人で。」

絵里「そうね。」

 

まあ、ありきたりの話をしてるな。でも、絵里の反応がどうも悪い。昔の話をするのが嫌いなのか、それとも。

 

拓哉「昔の約束。覚えてる?」

絵里「昔の約束ね…」

拓也「前、公園で約束したよな。」

絵里「確か付き合うとかだったかしら。」

 

その言葉を聞き心臓をギュッと閉まる気がした。

 

拓也「そう!それだよ。」

絵里「確かにそんな話をしたわね。私の返事は…」

 

その後に絵里は言葉を続けない。もしかしたら小声で続けているのかもしれない。そうだとしたら少し離れた俺らには届かない。そのせいか自分の心臓の鼓動がよく聞こえる。いつもより早く強く刻んでいる。

 

絵里「嫌よ。」

 

静寂を破る一言は少し離れた俺にもはっきりと聞こえた。その絵里の言葉を聞いた途端に心臓の鼓動が正常値に戻ろうとする。安堵が漏れた。正直どこか不安だった。そのまま絵里が清瀬が付き合ってしまうのではないかと思っていた。

 

拓也「どうしてだよ!昔約束しただろ!」

絵里「それは昔でしょ。私は今を生きてるの、そんな昔の約束に縛られないわ。」

拓也「どうしたんだよ絵里!」

絵里「これは私の意志よ。」

拓也「なんでだよ?」

絵里「確かに昔はあなたのことが好きだったかもしれない。いや、好きだった。元気でいつも私をどこかに連れて行ってくれたタクのことが好きだった。でも、今のあなたは違う。」

拓也「そんなことない!俺は俺だ。昔も今も。」

 

清瀬は変わったのだ。いや、変わったのではない、変わらされたのだ。絵里の話を聞く限り、絵里以外の友達がいなかった。それで絵里が転校してしまい独りになった。絵里という支柱を失った清瀬はどこか他のグループに入らざるを得なくなり。今までの自分を捨て、人に同調し、自分を隠し、生きてきたのだろう。それに自分も気付きどうにか否定しようと自分の中で昔の自分を思い浮かべ自分を取り繕おうとした。それが絵里には変に映ったのだろう。

 

絵里「そう。なら、タクは成長してない子供のままってことね。」

 

そう言われ清瀬は黙り込んでしまった。少しの沈黙を破り清瀬が口を開く。

 

拓也「なんか絵里変わったな。」

絵里「当たり前よ。6年近くも経ってるんだから。」

拓也「あ〜あ。昔に告っとけば良かった。そうしたら振られずに済んだのに。」

絵里「昔は私の片思いだったもんね。」

拓也「いいや、両思いだったよ。本当は別れの日に言おうと思ってたんだけど言えなかったんだよな。」

 

凄くいい感じじゃん。これ見たら俺悪もんじゃね?

 

拓也「今好きな奴いる?」

絵里「……まあ、気になる人ならいるかな?」

拓也「そうか。でも、またいつか告白するよ。そんで次はイエスって言わせてみる。」

絵里「そっちの方がタクっぽいわ。」

拓也「そうか?」

 

最後に笑い清瀬は絵里から離れていきそのまま見えなくなった。一方絵里はその場に立ち尽くしたまま動かなかった。

いや〜、いいもん見たね。青春だよ青春。

さて、俺も帰るかな。

希にジェスチャーでそう伝えるとわかったとサインをして、希は俺の背中を勢いよく押した。

 

天満「はあ?」

絵里「天満?」

 

やばい気まずいどうしよう。何がグッだよ。何にもわかってねぇじゃねぇか!

 

絵里「天満見てたの?」

 

絵里は少し驚いたように問うてくる。

 

天満「ああ、悪いな。」

絵里「それは私じゃなくてタクに言うべきじゃない。」

 

空気が重い。希はなんてことしてくれたんだ。2人とも黙っていると絵里がそっと口を開く。

 

絵里「恋って難しいわね。」

天満「絵里がそんなこと言うの珍しいな。」

 

珍しいなんてもんじゃない。明日槍が降ってくるぐらい稀だ。ほぼないと言ってもいい。

 

絵里「タクに言われてようやく気付いたの。昔は片思いだと思ってたんだけど自分に対しての感情にはどうも鈍いみたい。」

 

あはは、と笑っているがどこか辛そうだ。まあ、そうか。振られた本人だけでなく振った本人も辛いのか、俺の時はそんなじゃなかったけどな。俺の過去の話はいいとして笑顔とまでも行かなくてもいつもの表情に戻すぐらいには頑張るか。

 

天満「当たり前だ。もし自分に対しての感情に敏感なら俺は確実に失恋はしてないし、きっと彼女もいた。」

絵里「どんなことがあってもあなたに彼女はできないわよ。まあ、よっぽどの物好きなら別かもね。」

天満「この状況でも毒舌は健在だな。」

 

できれば毒舌も落ち込んでいて欲しかった。

 

天満「なあ、絵里。クリスマスの時は好きな人いないって言ってなかったけ?」

絵里「ええ、好きな人はいないわよ。気になる人がいるだけよ。」

天満「意味は変わらないだろ。」

絵里「そうね。でも、天満は好きな人がいるかを聞いたんだから問題ないんじゃない。」

天満「まあ、問題はねぇけど。」

絵里「それに、女心と秋の空って言うんだからコロコロ変わるものなの。」

 

女怖いな。いつ裏切られるかわかったもんじゃない。そう思うと3周年とか言ってるカップル凄いな。今まで爆ぜろとか言ってすみません。

 

天満「その感じだといるのな。」

絵里「好きというより気になる人ね。」

天満「誰?」

絵里「天満にしてはえらく早い降参ね。当ててみなさい。私の思いを寄せている人、天満にわかるかしら?」

 

絵里は挑発口調で笑ってみせる。その笑顔は小悪魔的で気をしっかり持たないと気を持っていかれそうになる、誘惑的な笑み。

 

絵里「さて、帰りましょ。希も一緒に。」

 

 

「恋って難しいわね。」

絵里の口からこぼれた言葉は俺の耳から離れない。全くだ。いつになってもこの問題だけは解けそうにない。いつになったら自分の気持ちを伝えられるのか。そしてそれはハッピーエンドなのかバットエンドなのか。

 




二度目ですが遅れて申し訳ありません。今回長いですね。自分でもそう思いました。二つに分けても良かったのですが長さと終わりがイマイチいいところがなかったんでこんな感じになってしまいました。今回自分の中で少し急ぎた感じがしたのですが、皆様はどう思われましたか?
よろしければ意見、アドバイスよろしくお願いします。
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