「じゅっ、十五階そ……!? いえ、失礼しました」
俺が地下十五階層まで降りて、そこから飛雷神の術で帰ってきたことをエイナさんに話すと、彼女は顔を真っ青にして叫びそうになり咄嗟に自分で自分の口を塞ぐ。何でも冒険者とってステイタスやダンジョンでの活動内容といった情報はとても重要なもので、それをバラすのはギルド職員にとって最大のマナー違反らしい。
そしてこのエイナさんの様子を見る限り、初日で地下十五階層まで降りるというのはこの異世界の人間から見てかなり「非常識」なことのようだ。
……参ったな。俺ってば、この世界に来て僅か二日で目立つフラグを立ててしまったか?
前の「NARUTO」の世界では知らない内にフラグを立てて、そのせいで散々酷い目に遭ったから、ここでは出来るだけ目立たないようにしようと思っていたのに。
「初日で、それもたった三時間でそこまで行くだなんて、忍者の冒険者の方でもそんな事ができるのは『あの方』以外私は知りません。……砕蔵さんは本当に優秀な忍者なのですね」
エイナさんは驚きと尊敬の色が見える顔を俺の方に向けて言う。どうやら予想通りフラグを立ててしまったようだが、どうやら前例がいるみたいなのでまだマシだと思うことにしよう。
「……でも砕蔵さん? お話ではモンスターを倒しながら十五階層まで降りたと言ってましたけど、荷物はそれだけですか?」
何かを探すように俺の周囲を見ながらエイナさんが訊ねてきた。モンスターを倒せば魔石やドロップアイテムなどが手に入るので、恐らく彼女はそれを探しているのだろう。
「……もしかして砕蔵さん、魔石とか取ってこなかったのですか?」
「いえ、ちゃんと取ってきてますよ?」
俺はエイナさんにそう答えると受付のテーブルの上に巻物を広げた。広げた巻物に書かれていたのは「石」と「物」の文字。
「口寄せ」
片手で印を結び短く呟くと、巻物の上に大量の魔石とドロップアイテムが出現して、それを見たエイナさんが目を見開いて震える声で呟く。
「こ、これって……噂に聞く『サポーター泣かせの術』?」
サポーター泣かせの術? 何ソレ? これは単なる口寄せの術なのですが?
「サポーター? エイナさん。サポーターとは一体何ですか?」
「あ、はい。サポーターというのはですね……」
エイナさんの説明によるとサポーターとは何らかの理由で戦えなくなったり、神の恩恵を受けたはいいが戦闘向けのステイタスではなかったので、戦闘は仲間に任せて自分は戦闘以外の援護や雑用をする冒険者のことらしい。そしてサポーターの最大の仕事というのが「荷物持ち」、アイテムや予備の装備品にモンスターとの戦闘で得た魔石等を持ち運ぶことなのだとか。
……なるほど。確かにそんなサポーター達から見れば、口寄せの術は自分達の存在意義を根底から揺るがす術に見えるだろう。
サポーター泣かせの術。いい得て妙だな。
ちなみに地下十五階層まで得た魔石とドロップアイテムを換金した金額は約81000ヴァリスだった。この金額は多いのか少ないのか? 今一つこの異世界の基準が分からない。
早く馴れないといけないな。
書いていて思った。
砕蔵、存在しているだけでリリの仲間加入フラグを全力でへし折ってない?