「目立った外傷はナシ。ただ爆遁の爆風と音に驚いて気絶しただけか」
俺は助けるつもりが逆に気絶させてしまった少年の看病をしていた。幸い少年は単に気絶しただけで、これぐらいなら十分もすれば目を覚ますだろう。
少年を目立たないところに寝かして、休憩がてらに護衛をしていると予想通り十分くらい時間が経ったところで少年が目を覚ました。
「……あれ? 僕は……?」
「気がついたか?」
「え? 貴方は?」
目を覚ました少年に話しかけると、少年は少しぼんやりした目で俺を見てきた。どうやらまだ完全に目を覚ましたわけじゃなさそうだな。
「覚えていないのか? 君は少し前まで三体の怪物と戦っていて、背後から奇襲されそうだったところを俺が助けたんだ。……まあ、少し加減を間違えて君を気絶させてしまったが」
「っ! そうだ、僕はコボルトと戦っていて……。あの、貴方が僕を助けてくれたのですか? ありがとうございました」
「いや、大したことはしてないよ。それにさっきも言ったように君を気絶させてしまったからね。……それよりも俺は飛斧砕蔵って言うのだが、いくつか君に聞きたいことがあるんだ」
ようやく意識がしっかりした少年が礼を言うが、俺をそれを手で制してからこの場所のことをいくつか質問することにした。少年は俺の質問を聞いて不思議そうな顔をするが、それでも全ての質問に答えてくれた。
まずこの少年の名前はベル・クラネルといい、ここは迷宮都市オラリオの地下にある世界に一つしかない地下迷宮「ダンジョン」。
このダンジョンには怪物、つまりはモンスターが出現して、そいつらを倒すと「魔石」という鉱石が手に入るらしい。ベル君はその魔石やダンジョンでしか手に入らない稀少な物資を集めて、それらを外で換金することで生計を立てている「冒険者」の一人なんだとか。
そしてダンジョンを冒険する冒険者は皆、天界での怠惰な生活に飽きて下界に降りてきた神々の眷属「ファミリア」となっていて、その神の恩恵を受けているらしい。
ダンジョンにモンスター、冒険者か……。どうやら俺は前世のRPGのような世界に転生してしまったようだな。
「あの……飛斧砕蔵さん?」
俺が聞いた情報を整理しているとベル君が話しかけてきた。
「ん? どうした、ベル君? あと俺のことは砕蔵でいいからな」
「あ、はい。砕蔵さんに一つ聞きたいことがあるのですけど」
「聞きたいこと? 何だ?」
「……その、砕蔵さんって、もしかして『忍者』なんですか?」
「……………!?」
ベル君の口から出た言葉に俺は思わず絶句して目を見開いた。
どういうことだ? 何故彼は俺が忍者であることを知っているんだ? というかここは西洋風のRPGのような異世界だと思っていたが、ここにも忍者がいるのか?
「砕蔵さん?」
「え? ……ああ、確かに俺は忍者だが……何でベル君はそれが分かったんだ?」
「噂で聞いたことがあるんですよ。数年前からたまにこのオラリオの周辺やダンジョンの中で不思議な人達が現れるようになったって。そしてその人達は、神様の恩恵を受けていないのに上級冒険者のように強くて、自分達のことを『忍者』だと言っているそうです。……砕蔵さんの格好って、噂で聞いた忍者の人達の格好に似ていたからもしかして、と思っていたんですけど忍者って本当にいたんですね」
「そ、そうだな……」
若干興奮ぎみに話すベル君であったが、俺は内心でかなり驚いていて生返事を返すことしかできなかった。
……この世界に俺以外の忍者がいるだって? マジで?