ロキ・ファミリアについて説明をしてくれたエイナさんはその後、手際よく冒険者登録の書類を作ってくれて、俺の冒険者登録の手続きはすぐに終わった。
「はい。これで手続きは全て完了です。飛斧砕蔵さん、これから頑張ってください」
「ありがとうございます、エイナさん。それで早速ダンジョンに潜りたいと思うのですが構いませんか?」
「ええ、それは全然構いませんよ。ああ、それと登録をしたばかりの冒険者の方には一度だけ武器と防具の支給がされますけど……いりますか?」
冒険者登録をしてくれたエイナさんが武器と防具の支給を提案をしてくれたが、俺は首を横に振ってその提案を断った。現在ベル君が装備している短剣と軽鎧も冒険者登録をした時にギルドから支給されたものらしいのだが、どう見ても俺の手斧と忍び装束の方が断然質が上だろう。
「いえ、自前の装備があるから大丈夫ですよ。……ああ、そうだ。エイナさん、すみませんけどしばらくの間これを預かってもらえませんか?」
あることを思いついた俺は腰に下げていた予備の手斧を一つ取り出すとエイナさんに渡した。
「え? これは砕蔵さんの武器ですか?」
「はい。俺がダンジョンに潜っている間、どこかの壁に邪魔にならないように立てかけてもらえませんか?」
「あっ、はい。それは別に構いませんけど」
「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」
よし。これで帰りの手段は確保できた。俺はエイナさんにお礼を言うとすぐにダンジョンに向かうことにした。
☆
ダンジョンに潜ってしばらくして俺は今、地下十五階層に来ていた。
「体内時計だとダンジョンに入ってから三時間前後といったところか。……三時間前後で地下十五階層というのは早いのか? それとも遅いのか? よく分からないな」
ここまで現れたモンスターはそれほど大したことはなかったのだが、二度目のダンジョンの様子を観察しながら移動していた為、少し遅くなってしまった。
地下一階層から十階層までのモンスターは単なる害獣かゴロツキ程度で、地下十二階層か十三階層くらいから遠距離攻撃をするモンスターが出てきて僅かに戸惑ったが、これも精々盗賊か良くて手裏剣を使うアカデミー生くらいなので問題はなかった。
昨日ベル君から聞いた話によると地下十五階層辺りははLv.2の冒険者がチームを組んで行動するエリアらしい。この辺りで出現するモンスターがこの程度ならまだ先を進むことができるだろうけど……。
「……止めておくか。時間から考えてそろそろベル君とヘスティア様の買い物も終わっているだろうしな。俺も帰るとするか。………飛雷神の術」
今日の冒険はここまでにした俺は、目を閉じて意識を集中して術を発動させた。発動させたのは四代目火影、波風ミナトが得意としたマーキングしたものの側に瞬間移動する時空間忍術「飛雷神の術」。
以前から「NARUTO」の忍術でこの飛雷神の術が一番便利だと思っていた俺は、原作知識を元になんとか習得したのだ。習得したのはまだ俺がアカデミー生の時で、こうして考えると俺は昔から術の習得が異常な程早かったような気がするが、これが転生者特典って奴なのか?
まあ、それはともかく、飛雷神の術が無事に成功したのを感覚で理解した俺が目を開くと……。
「きゃあっ!? さ、砕蔵さん!? ど、どうしてここに?」
先程までダンジョンの中にいた俺はギルドの建物の中にいて、目の前には驚いた顔をしたエイナさんがいた。
エイナさんは事務仕事をしていたようで自分の机に座っていて、彼女の机には俺が預けた手斧が立てかけられていた。なるほどね。だから移動した先がエイナさんの目の前だったってわけか。
「え? え? 砕蔵さん、ダンジョンから帰ってきていたんですか? でもどうしてここに? というかさっきまでいませんでしたよね?」
「落ち着いてください、エイナさん。驚かせてすみませんでした。忍術でダンジョンからこの建物に出てきたら、出た先がエイナさんのすぐ側になってしまったようです」
突然のことに若干混乱しているエイナさんに俺は落ち着かせるように言った。
正直全く説明になっていないが、忍者たる者が自分の術の内容は軽はずみに言うべきではないし、それにこの異世界の人達には「忍術」と言えば大体のことは納得してもらえそうな気もするからな。
「……そ、そうですか。忍術で……。や、やっぱり忍者の方々は不思議な人達なんですね」
案の定、「忍術」と聞いてエイナさんは一応の納得を見せて落ち着いてくれたようだ。……便利な言葉だな、「忍術」って。